企業の有価証券売買に関する税のポイントを説明

法人税の基本

法人が株を売却したときにかかる税金は?注意点を解説!

企業が株式売買

会社として余裕資金がある場合、資産運用を行うことがあるかと思います。

資産運用の対象としてはさまざまなものがありますが、も運用対象の1つです。株で運用を行う場合、資金化するためには株を売却する必要があります。

株の売却を行った場合は、売却益に対して法人税などの税金が課される仕組みです。そのため、経営者としては、株の売却による税金への影響を理解しておく必要があります。

今回は、株の売却に関する税法上の基本的な仕組みと注意点について解説します。


気になる株の売却における法人の税金とは?

法人が株を譲渡して売却益が生じる場合、その売却益は課税対象となります。

法人の所得に課税される税金は、法人税や法人事業税、法人地方税です。株式譲渡所得は譲渡所得に区分され、源泉徴収などの関係で譲渡所得税の名目で負担するケースがありますが、その場合であっても税額控除などで調整され、最終的には法人税などで負担することになります。

法人の株式譲渡による所得に対する税率は、29~42%程度です。株は、非上場株式などが含まれる一般株式と、東京証券取引所などで取引されている上場株式に大別できます。ただし、いずれの株式でも適用される税率は同じです。


税率が29%~42%と一定の幅がある理由は、3つあります。

1つ目は、株の売却益が生じた事業年度によって適用される法人税などが変わることです。世界的な法人税率低下傾向を受けて、法人税率は低下する傾向にあります。税制改正によって、「特定の事業年度以降について生じる法人所得に対する税率は下がる」など、事業年度によって適用される税率が異なる可能性があります。

2つ目の理由は、法人の規模によって適用される法人税率などが変わるためです。会社が法人税法上の中小法人に該当する場合、原則の税率よりも低い税率の適用が認められるケースがあります。

3つ目の理由は、企業の年間法人所得の金額によって、適用される税率が変わるためです。

中小法人の場合、年間所得が一定以下であれば低い税率での税負担で済み、一定額を超えると原則の税率が適用される仕組みになっています。株式譲渡による所得が生じた場合は、事業年度や会社規模、年間所得によって税負担が変わることを認識しておきましょう。


株式譲渡にまつわる注意点

法人は、株式譲渡を行う場合だけでなく、株式譲渡を受けた場合(株を購入する等)にも税金を課される可能性があります。そのため、株式を譲渡する場合だけでなく、「株式購入時にも税負担が生じるかどうか」を確認することが必要です。

法人が株式譲渡を受けた場合は、原則として税負担は生じません。しかし、譲渡側からみて低額譲渡に該当する場合は、譲渡を受けた側でも課税関係が生じることになっています。


低額譲渡とは、時価よりも低い価格で資産の譲渡を行うことです。

一般的には、時価よりも低い価格で株などの資産売却を行っても、すべてが低額譲渡に該当するわけではありません。しかし、一定の条件に該当すると、低額譲渡に該当することになっています。

低額譲渡に該当する場合とは、株式譲渡を受けた会社が、時価よりも低い価格で譲渡を受けたことによって経済的な利益を受ける場合を指します。株を安く買った分、得をしたということです。

得をした分については、経済的利益として受贈益があったとみなされて、企業に法人税などが課税されるのです。

この時、株の低額譲渡を受けた会社に適用される法人税の税率は、15~23.2%です。

23.2%は、2018年4月以降に開始する事業年度に生じる所得に対する原則の税率です。23.2%よりも低い税率が適用されるのは、中小法人の一定以下の所得の分に限られます。

また、株を低額譲渡した側は、売却価格と時価の差として損失が生じた場合には、寄付金と認定され、一部損金不算入になる可能性があることも知っておきましょう。


さて、先ほどは法人から法人への株式譲渡について説明しました。ここで、個人が法人から低額譲渡を受ける場合について少し見てみましょう。

個人が法人から低額譲渡に該当する株式譲渡を受けた場合には、所得適用される税率は、原則として総合課税に適用される超過累進税率になります。所得税の超過累進税率は5~45%で、所得金額が大きくなると税率が上がる構造になっています。

また、株式譲渡を受けた際には、所得税だけでなく、住民税として10%、復興特別所得税として所得税額の2.1%の課税もあることに注意が必要です。適用される税率が決まる要件は複雑であるため、税理士などの専門家に相談することをおすすめします。


会計上と税務上の株の種類と特徴

会社として株の売買を行うなど、株や債券のような有価証券を保有することになる場合は、会計上と税務上それぞれの取り扱いを理解しておくことが必要です。

会計上と税務上では、株や債券の分類や処理方法が異なります。会計上の取り扱いとは、決算書を作成するうえでの処理方法のことです。一方、税務上の取り扱いは、法人税の計算を行うための処理方法のことを指しています。

細かく見ていきましょう。


会計上の分類

会計上では、有価証券の保有目的によって4つに分類して処理することになっています。

1つ目は、売買目的有価証券です。有価証券の短期的な売買によって売却益を得ることを目的としている場合に分類されます。

2つ目は、満期保有目的の債券です。途中で売却することを想定せず、満期まで保有することを目的として取得する国債や社債などが分類されます。

3つ目は、子会社関連株式です。企業が、事業にプラスの影響を与えるために経営に関与することを目的として保有する株などが該当します。

4つ目は、その他の有価証券です。1~3つ目に該当しない有価証券がここに分類されることになります。


税務上の処理

税法上では、有価証券を2つに分けて把握することになっています。

1つは、売買目的有価証券です。会計上の処理の説明時にあげた売買目的有価証券(短期的な売買によって売却益を得ることが目的)とほぼ同じ性質の株などが該当します。

もう1つは、売買目的外有価証券です。売買目的有価証券に該当しないものは、すべてここに分類されることになります。

会計上や税務上で異なるタイプに分類されると、評価益や売却益の認識の有無や認識のタイミング、さらには処理方法や税負担が変わることになります。それぞれの分類基準を把握したうえで、正確に分類することが重要です。専門家のサポートを受けて適切に分類を行うようにしましょう。


法人が売却時に気をつけるポイント

法人が株を売却する場合、売却益の金額を確定させることが必要です。

売却益は、売却代金に相当する譲渡金額から取得原価と譲渡経費を引いて求めることになっています。譲渡金額や譲渡経費を把握することはそれほど難しくはありません。売却益を計算するうえで重要になるポイントは、取得原価を正確に求めることです。

株式の売却益=
譲渡金額 ― 取得原価 ― 譲渡経費
※取得原価の求め方が複雑なので注意!


取得原価とは、売却した株を手に入れるにあたって負担した金額のことです。

譲渡原価にあたる取得原価の計算方法には、総平均法移動平均法があります。

どちらを適用してもよいことになっていますが、総平均法で計算を行いたい場合は、税務署に総平均で計算することを届出しておくことが求められます。

届出を行わない場合に適用できるのは、移動平均法だけです。


総平均法

総平均法とは、事業年度中に購入したすべての株の購入代金などを合計します。その合計金額を取得した株数で割った平均単価を算出し、その平均単価に事業年度中に売却した株数を乗じて譲渡原価を算出する方法です。

この方法で譲渡原価を計算する場合は、事業年度中の譲渡単価はすべて同じ単価で計算することになります。


移動平均法

移動平均法は、売却の都度、平均単価を計算する方法です。

株の売却前までに購入したすべての株の購入代金などを合計し、その合計金額を売却前に保有している株数で割って、売却時の平均単価を求めます。その平均単価に売却した株数を乗じた金額が譲渡原価です。

移動平均法では、売却の都度平均単価を計算することになるため、手間がかかります。


総平均法でも移動平均法でも、すべての事業年度を通算すれば譲渡所得は同じです。しかし、単一の事業年度だけに焦点をあてると、異なる単価を適用して譲渡原価を計算することになるため、譲渡所得に差が生じます。

税負担を考慮して有利な方を選択することも重要です。


株の取得原価の対象となるもの

株の取得原価を把握する場合は、株の購入代金だけでなく、購入時に負担した購入代金以外の支出も含まれることになっている点に注意が必要です。

具体的には、証券会社などを通じて購入する場合に負担することになる売買手数料や委託手数料などが該当します。株を売買する場合は、購入時・売却時、いずれも手数料がかかる仕組みです。このような手数料は、証券会社などから送られてくる売買明細書などで金額を把握することができます。

ただし、購入時に負担する支出であっても、取得原価に算入せず、そのまま損金として処理する支出もあります。

たとえば、株の保有者変更に必要となる名義書換料や株式投資に関連して負担する電話代やネットのプロバイダ料金などの通信費などは、取得原価に含めないことになっています。

これは、通信費などまで含めて取得原価を計算すると、法人税の課税対象となる所得金額を正しく計算することができなくなってしまうためです。

どんな支出が取得原価に含まれ、なにが含まれない支出に該当するのかを正確に把握しておくことが、正しい納税計算につながることを認識しておきましょう。


配当金の取り扱いにも注意が必要

株による運用などを行う場合には、保有している期間中に配当金を受け取ることがあります。

配当金を受け取った場合も課税対象となりますが、配当金に対する課税には、二重課税の負担を軽減する措置がとられていることを知っておく必要があります。

二重課税とはどういうことを指しているのか、詳しく説明します。


株の配当金原資は、株式発行会社が生み出した利益です。

この配当原資には、法人の利益から法人税を引いた後の「税引き後の利益」が充てられています。この配当金を受け取った会社や個人が、再度同じ国税である法人税や所得税を負担することになると、同じ所得に対し二重に課税されている状態になります。

そのため、二重課税の負担を軽減する措置が取られているのです。


では、具体的な措置について見てみましょう。

まず、個人が上場株式について配当金を受け取った場合は、配当金が支払われる段階で、所得税と住民税、復興特別所得税として合計20.315%が源泉徴収されます。

総合課税で確定申告をして配当控除の適用を受けたり、売却損との相殺のためにあえて申告分離課税で申告したりするという選択肢があります。

また、申告をせず、源泉徴収だけで課税関係を終了させることも可能です。

一方、法人が配当金を受け取った場合は、株の種類によって配当金の一定割合を益金として課税対象処理を行うことになっています。

一般的には、運用目的で会社が保有している株は上場株式であることがほとんどです。上場株式を保有していて配当金を受け取った場合は、配当金の20%は益金不算入となり、残りの80%だけが益金となって課税所得に加算される仕組みになっています。

20%の損金不算入が認められる理由は、二重課税に対する配慮だとされています。


法人が売却益を相殺する方法

株の売却によって利益が生じた場合、購入時と比較すると手元資金は増加します。しかし、そのままの状態では、事業年度終了後に法人税の負担が発生することなり、売却益の一部は法人税などの支払いで減少してしまうことになるでしょう。

そのため、売却益を相殺する取引を行って損金を計上し、課税所得を減少させる節税対策についても考えておくことが大切です。

節税対策には、消耗品の購入や社員研修費の支払いなどさまざまな手法がありますが、法人保険に加入することで節税する方法もあります。

法人保険に加入して保険料を支払うと、その保険料を損金として処理することが認められる場合があるのです。

損金として認められれば、株の売却で生じた益金を圧縮することができ、税負担を軽減できます。

保険料の損金算入は、将来的に生じることになる保険金や解約返戻金の受け取りを益金で処理する必要があることを考慮すると、課税を先送りにする効果があるとみることが可能です。このように課税時期を先送りすることを、課税の繰り延べといいます。

課税の繰り延べであっても、直近の資金流出を抑える効果はあるため、資金繰りの観点からは大きな効果があるといえるでしょう。


まとめ

法人が株式売買を行う場合は、株の分類や取得原価の計算について詳しく理解しておくことが求められます。正しく処理を行わないと、正確な税額計算を行うことができません。

ただし、株に関する処理は、専門的な知識が必要です。そのため、株式売買を法人として行う場合は、専門家に依頼して適正に処理することをおすすめします。

また、株式売却益が生じる場合は、法人保険などに加入することで節税することも必要です。保険の種類によって、損金算入できる保険料の金額は異なります。

保険料の全額を損金算入できる場合もあれば、半分だけ損金算入できる場合や、まったく損金算入できない場合もあるため注意が必要です。株に関することだけでなく、法人保険に関することも専門家に相談してみるとよいでしょう。

忙しい経営者ほど、法人保険のプロに相談し、保障と節税効果を得ています。

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