
近年、サイバー攻撃による被害は増加傾向にあり、業務停止・情報漏えい・賠償請求といった損害が現実のリスクとして経営課題に上がっています。
サイバー保険への加入を検討する企業が増えている一方で、「どこに相談すべきか」「どこで加入すればいいか」という疑問に直面する担当者は少なくありません。
サイバー保険は補償内容が複雑で、対象事故・費用・免責条件が複雑に絡み合います。自社に適切な補償プランを設計するなら、代理店への相談も選択肢の1つです。
本記事では、サイバー保険を代理店経由で加入するメリット、代理店の選び方、補償設計の基本や契約までの流れを解説します。サイバー保険を検討中の経営者や情報担当者は、ぜひ加入時の参考にしてください。
サイバー保険に代理店経由で加入するメリット
サイバー保険の加入経路は大きく2つあります。保険会社のWebサイトや窓口から直接申し込む方法と、保険代理店を介して加入する方法です。
どちらにも特徴がありますが、企業のリスク内容に合わせた補償設計が必要なサイバー保険では、代理店経由のほうが「自社に合った補償プラン」を選べる可能性が高くなります。
代理店を利用することで、複数の保険会社のプランを横断的に比較でき、業種・業務内容・保有データの種類に応じた補償の組み合わせを専門家と相談しながら設計可能です。
また、事故発生時に保険会社と契約者の間に立って対応を代行してくれる窓口が一本化されるため、初動対応がスムーズになります。
直接加入と代理店経由の違い
直接加入と代理店経由の違いは、「誰が比較・設計・事故対応の調整役になるか」がポイントです。主な違いを以下の表にまとめました。
| 比較軸 | 直接加入 | 代理店経由 |
|---|---|---|
| 複数社の比較 | 自己調査が必要 | 代理店が比較・提案 |
| 補償設計の相談 | 基本的に対応なし | 専門家がヒアリング・設計 |
| 事故時のサポート | 保険会社窓口のみ | 代理店が代行・橋渡し |
| 契約後のフォロー | 更新案内のみ | 条件変更・見直し相談が可能 |
代理店経由の加入では、担当者が企業の業種・業務内容・委託状況などをヒアリングし、損害シナリオに沿った補償プランを提案します。複数の保険会社の商品を比較した上で、最適な契約を組める点が最大の利点です。
また、事故が発生した際も代理店が保険会社とのやり取りを仲介するため、担当者の負担を大幅に軽減できます。
どちらの加入方法が合っているかは、自社の補償設計の複雑さと、事故発生時に自社だけで対応できるかどうかで判断しましょう。
サイバー保険代理店の選び方
サイバー保険の代理店を選ぶときは、次の5つのポイントを比較しましょう。
- 代理店登録や資格の有無
- 取扱範囲
- 提案力
- 事故対応サービス
保険料の安さや会社の知名度だけで選ぶと、補償の抜け漏れや対応の遅さなど、判明するリスクがあります。最終的にどの代理店が自社に合っているかは、これらの5軸を自社の優先順位に照らし合わせて、総合的に評価しましょう。
代理店登録・損害保険募集人資格を確認する
サイバー保険を含む損害保険を販売できる代理店は、金融庁への登録が義務付けられています。
代理店に所属する募集担当者は「損害保険募集人」の資格を取得している必要があり、資格には一般課程・専門課程・トータルプランナーなどの区分があります。トータルプランナーは損害保険全般の総合的な知識を持つ上位資格であり、補償設計が複雑なサイバー保険の取り扱いには特に有効な資格です。
登録の有無は、金融庁の「保険代理店検索」ページから確認できます。代理店のWebサイトにも登録番号が記載されているのが一般的なので、問い合わせ前に確認しておくとよいでしょう。
取扱範囲を確認する
代理店登録の確認と並行して、「どの保険会社(キャリア)の商品を取り扱っているか」を確認することが重要です。代理店には特定の保険会社1社とのみ契約する「専属代理店」と、複数の保険会社と契約し幅広い商品を扱う「独立系代理店(乗合代理店)」があります。
取扱キャリアの数は、提案できるプランの選択肢に直結します。東京海上日動・三井住友海上・損保ジャパンなどの大手総合損保に加え、サイバー保険に特化した外資系保険会社の商品まで取り扱える代理店であれば、企業の規模・業種・リスクの特性に応じた細かいプラン比較が可能です。
専属代理店の場合、特定の保険会社商品の内容を深く理解している点は強みですが、他社との客観的な比較が難しくなります。
取扱範囲はWebサイトの「取扱保険会社一覧」ページに記載されているのが一般的ですが、情報が見当たらない場合は初回の問い合わせ時に「何社の損保を取り扱っていますか」と直接確認するのが確実です。
提案力を見極める
サイバー保険の補償設計は、企業の業種・業務内容・保有する情報の件数や重要度など、複数の要因で最適解が変わります。
代理店の提案力とは、こうした企業ごとの条件を正確にヒアリングし、損害シナリオに沿って補償の対象・金額・免責条件を組み立てられるかどうかです。
たとえば、ECサイトを運営する企業であれば決済情報の漏えいリスクが高く、PCI DSS関連の費用補償が必要かどうかを確認した上でプランを組むのが標準的な対応です。製造業であれば、サプライチェーン上の委託先を経由した攻撃による業務停止損害が主なリスクとなり、利益損失補償の上限設定がポイントになります。
提案力が高い代理店は、初回の問い合わせ時点から「どのような業務で、どのような情報を扱っているか」を具体的に質問してきます。
まずは見積もりを依頼してみて、その内容が自社の業務実態とかみ合っていないと感じた場合は、別の代理店への問い合わせを検討してみましょう。
事故対応サービスの体制をチェックする
サイバー事故が発生したとき、被害を最小化できるかどうかは初動対応の速さと質に大きく左右されます。そのため、事故発生時のサポート体制について、主に以下の内容を確認しましょう。
- 24時間対応の連絡窓口
- 保険会社への事故報告
- 各種関連事業者(セキュリティ専門会社や法律事務所など)の紹介
保険金の受け取りに関しても、代理店が調査書類の作成支援や保険会社との交渉を代行するかどうかで、手続きにかかる負担と期間が変わります。
代理店に問い合わせる際、「事故が起きたときに何をしてもらえるか」を直接確認すれば、回答の具体性から実務対応力を判断することができます。
また、保険会社によっては付帯サービスとして事故対応サポートや専門家への無料相談制度を提供している場合もあるため、代理店経由でそのサービスを利用できるかどうかも確認しましょう。
問い合わせ対応の質から判断する
代理店の実力は、問い合わせ対応の品質にも現れます。補償内容・免責条件・支払い条件について、口頭での説明だけでなく、文書や見積書で明示できるかどうかがポイントです。
「詳しくは加入後に」「担当者から別途ご案内します」といった曖昧な対応が続く場合は、補償設計の透明性に問題があるかもしれません。
比較資料の有無も重要な判断材料です。複数の保険会社のプランを同じ軸で並べた比較表、補償対象と対象外の事故を整理した資料、免責金額・サブリミットを明示した見積書が揃っている代理店は、情報開示の姿勢が高いと判断できます。
こうした資料を問い合わせ前にWebサイト上で公開しているか、初回相談後に提供できるかを確認してみることで、代理店の対応水準を事前に測ることができます。
相談する前に知っておくべき加入・補償設計のポイント
代理店に問い合わせる前に、サイバー保険の補償構造を最低限理解しておくことで、相談の質が上がり、見積もりの精度も高まります。
最低限の知識を身に付け、代理店の担当者とスムーズに話を進められるようにしましょう。
補償の種類と対象(賠償・費用・利益損失)
サイバー保険の補償は、発生する損害の性質に応じて「第三者賠償補償」「費用補償」「利益損失補償」の3つに分類されます。
| 損害の種類 | 損害の性質 | 補償の対象例 |
|---|---|---|
| 第三者賠償補償 | サイバー事故によって第三者(顧客・取引先・個人)に損害を与えた場合の賠償責任を補償 | 個人情報漏えいによるプライバシー侵害への賠償、ウイルス感染を起因とした取引先への損害賠償請求など |
| 費用補償 | 事故発生後に企業が支出する各種費用を補償 | フォレンジック調査費用・法律相談費用・被害者への通知費用・広報対応費用・行政対応費用など |
| 利益損失補償 | サイバー攻撃や事故による業務停止期間中の逸失利益 | ランサムウェア攻撃によって販売業務・製造ラインが停止した場合の売上損失など |
保険商品によって、どこまでが基本補償なのか、特約を付ければカバーされるのかが変わります。
補償の上限額や免責期間(損害が発生してから補償が開始されるまでの期間)もプラン設計によって異なるため、自社に必要な補償を網羅しているか確認しましょう。
補償プランの考え方
サイバー保険の補償プランは、自社の業種と扱う情報の種類によって優先順位が変わります。同じ「中小企業向けスタンダードプラン」であっても、業種によってリスクの性質が異なるため、補償内容の過不足が生まれやすい点に注意が必要です。
以下は、業種別のリスクの性質と、重視する補償の一例です。
| 業種 | リスクの性質 | 重視する補償 |
|---|---|---|
| EC事業者や小売業 | 情報漏えいに伴うカード会社・加盟店規約上の費用負担が高額になる傾向 | 不正利用等による第三者賠償補償 |
| 医療機関や介護事業者 | 患者の個人情報や診療記録の漏えい時、通知費用・法律相談費用・行政対応費用が高額になりやすい | 各対応に必要な費用補償 |
| 製造業やサプライチェーン企業 | 取引先を経由した不正アクセスや、工場のOT(運用技術)システムへの攻撃による業務停止リスクがメイン | 業務停止による利益損失補償(免責期間と上限額) |
保険会社によって「得意とする業種」「メインターゲットにしている企業規模」は異なりますが、代理店なら中立的な視点で適切な保険会社を提案可能です。
支払い条件
サイバー保険は比較的新しい保険種類であり、対象であるサイバー攻撃も日々進化しています。変化が激しいリスクであるからこそ、保険金の支払い条件は慎重に見極める必要があります。
特に以下の3点は、想定するリスクをカバーできているか慎重にチェックしてください。
- 免責金額(自己負担額)
- 損害が発生した際に契約者が自己負担する金額の下限です。たとえば免責金額が50万円に設定されている場合、50万円未満の損害には保険金が支払われません。保険料を抑えるために免責金額を高く設定したプランは、小規模な事故に対して補償が機能しないケースが生まれます。
- サブリミット
- 特定の補償項目に設けられた個別の上限額です。契約全体の支払限度額が1億円であっても、フォレンジック調査費用のサブリミットが500万円に設定されていれば、調査費用として受け取れる補償は最大500万円に留まります。
- 対象外となる損害
- 保険金支払いの免責事項として契約書に記載されます。対象外になりやすい損害として、内部不正(従業員による故意の情報持ち出し)やセキュリティ対策の不備、ランサムウェア攻撃の身代金などがあります。
自社が想定する事故の被害規模と照らし合わせた上で、各種条件の設定が適切かどうかを確認することが必要です。
「想定していた事故がそもそも補償対象外だった」というケースを防ぐために、代理店に対して「自社が最も懸念する事故シナリオは補償対象になるか」と確認しましょう。
まとめ
サイバー保険の代理店選びは、会社の知名度やホームページの雰囲気など「なんとなく」で判断すると、事故発生後に補償の抜け漏れや対応の遅さとして表面化するリスクがあります。代理店登録や取扱保険会社の数、問い合わせ対応、アフターサービスなどで総合的に評価することが、自社に合った代理店を選ぶためには大切です。
補償設計においては、賠償・費用・利益損失の3分類それぞれの支払限度額・サブリミット・免責金額を個別に確認し、支払い対象外となる損害の範囲が自社の主要リスクと矛盾していないか確認しましょう。保険料を安く抑えることより、補償の実効性(自社のリスクを十分にカバーできるか)を軸に検討すれば、想定外に「補償されない」というケースを防げます。
代理店を選ぶときは、想定する損害や契約後のサービスなど、各種条件を揃えて比較することが、自社に最適なサイバー保険を見つけ出す最大のコツとなります。
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