法人保険の経理処理・税務処理について仕組みを解説

保険の税金対策

法人保険の保険料の経理処理はどうする?計上のルールを解説

法人税対策として、法人保険への加入を検討されている方は少なくないのではないでしょうか。

しかし、商品によっては税務上払い込んだ保険料全額が、経費として計上されるわけではないので、よく検討する必要があります。

さらに、法人税対策をするためには、帳簿上できっちり経理処理を行うことも必要。

今回は保険のプロである私が、法人保険の税務上の取り扱いと、経理処理の方法や保険契約から計上までの流れをモデルケースを使ってご説明します。 会社で経理処理を担当している方には、ぜひ読んで頂きたい内容です。

それでは早速ご紹介していきます。

記事監修者
【記事監修した保険のプロ】
40代/男性
  • AFP
  • トータル・ライフ・コンサルタント(生保協会認定FP)
  • 個人情報保護士
外資系大手保険会社での営業経験を活かし、生保・損保問わず企業向けに保険提案を行っている。保険商品だけでなく、金融商品・税金に関する知識は幅広く、お客様からの紹介が後を絶たない。
趣味:ゴルフ、バイク



税務上の法人保険料は2つに分けられる

法人保険は経理処理上大きく2つのタイプに別れます。保険料を損金計上できるものと、資産計上するものです。

それぞれにメリット・デメリットがあり、単純にどちらが税務上お得とは言い切れません。

具体的な保険の種類を挙げながら計上の仕組みを紹介しているので、しっかり理解しておきましょう。


損金計上

損金計上とは、保険会社に支払った保険料を損金として計上する経理処理のこと。

損金に計上できる金額が大きいほど、法人税が小さくなるという税務上のメリットがあります。では、なぜこれに税務上のメリットがあるのでしょうか。

法人税とは、1年間の売り上げに対して課せられる税金ではなく、法人の売上から事業活動に掛かった費用(損金)を差し引いた所得を対象としたものです。

例をあげると、車の購入や社員旅行にかかった費用を損金として経理処理をすれば、その分法人の所得は小さくなり、法人税も少なくなるということに。

このように、損金計上によって税務対策を行うことが可能なのです。しかし、これらの税金対策は税務署に認められないリスクもあることに注意しましょう。


税務対策の面から見た法人保険

さきほど紹介した損金計上による税務対策の一つとして、法人保険の保険料を損金計上することを検討する企業が多いです。

というのも、法人保険は税務対策ができる上に、企業にとって資金を貯めるメリットがあるため。保険の種類によって異なりますが、法人保険では保険を解約した際の「解約返戻金」の受け取りによって、キャッシュを減ることを防げる場合があるのです。

保険料の一部を損金として計上できるタイプの法人保険は、下記が挙げられます。

  • 逓増定期保険
  • 長期平準定期保険
  • 医療保険・がん保険)
税務対策、資金貯蓄という2つのメリットがあるため、法人保険を活用する企業は多いです。ただし、法人保険の種類によって損金として計上できる保険料の割合が異なるので、法人保険に加入する際によく確認することが必要です。


資産計上

法人保険には、支払った保険料を損金ではなく資産として経理処理するタイプの保険商品もあります。

主に、解約返戻金が発生するタイプの法人保険が対象で、支払保険料の全額を資産に計上する場合や、一部の割合だけを資産計上する場合があります。

保険料を払い込んだ時点では、確かに会社の資産は減ります。しかし、将来的に解約返戻金が発生する法人保険の場合、社外に簿外資産が形成されると考えられるため、税務上では費用ではなく資産として扱われます。

保険料が資産として経理処理される際のメリットは、貸借対照表上の資産が増えるため法人の安全性や信頼性をアップさせることができる点。

将来的に株式公開を検討している場合や、銀行から大型の融資を受ける場合など、法人の価値を高めたいときは高い解約返戻金を見込めるタイプの法人保険を検討すると良いでしょう。

一方デメリットとしては、仮に全額資産計上型の法人保険に加入した場合、保険料を損金として経理処理することはできないので、法人税を減額させるという副次的な税制上のメリットを享受することはできません

税務上、保険料を全額資産として経理処理できる保険には、以下のようなものがあります。

  • 終身保険
  • 養老保険
  • 年金保険
終身保険や養老保険、年金保険は、解約返戻金が戻ってきたり、保険満期を迎えた時に保険金を受け取れたりと、貯蓄性の高い保険商品です。

ただし、解約返戻金がどれだけ戻ってくるのかは保険商品の解約返戻率(※)によって異なるため、加入前に確認しましょう

※解約返戻率:支払った保険料の総額に対して、どれだけの金額が返戻金として戻ってくるのかを表した割合。

さて、法人保険の税務処理の基本は以上の通りです。

では、具体的に法人保険料を損金や資産に計上する場合、どのような手順を踏めばよいのでしょうか?経理処理までの流れを確認していきましょう。


契約~税務処理(資産・損金計上)までの流れ

ここでは税務上、法人保険が損金として経理処理されるまでの流れを説明します。


①契約

まずは法人保険に加入する必要があるので、保険会社や保険代理店で契約を行いましょう。

この際、「とにかく決算までに間に合わせたいから」と言って、やみくもに法人保険を選んでしまってはいけません。これから加入する法人保険がどのような経理処理をされる保険なのか、どういった保障内容なのかといった点を精査した上で契約することが重要です。

契約書に必要事項を記入したら、続いて法人保険料の振り込みをします。年払いの場合は、一括で口座振り込みになるケースが多いです。

②検査

生命保険や医療保険に加入する場合でも、最近は医師の診断書が不要で、いくつかの告知事項に答えるだけのも多くあります。

しかし、法人保険では保障額が高額になるものが多く、医師による健康状態の検査が必要な場合があります。


③査定

加入時の査定とは、保険会社が保険加入者の申込書類や診査医からの報告書に基づき、下記の選択肢を選ぶことです。

  • 無条件で申し込みを承諾するか
  • 一部条件を付けて引き受けるか
  • そもそも契約を結ばないかを決定すること
査定の結果が出るまでに必要な時間はおおよそ2週間程度。この査定が完了した時点で、契約が成立し保障期間が始まることが多いです。


支払った保険料を損金扱いにできるタイミング

税務上、法人保険料を損金として経理処理できるようになる日は「振り込んだ保険料を保険会社が受け取った日」になります。

そのため、極論を言えば契約書を書いた日に保険料を振り込めば申し込みから2,3日後には保険料を損金として経理処理することができる可能性があります。

年度内に法人保険料を費用に計上してすぐに経理処理をしたい場合は、できるだけ早めに保険料の振り込みを行うことがおすすめです。


保険加入前に確認するべき3つのポイント

ここからは、実際に法人保険に加入する際の注意点について解説していきます。


保険商品によって損金の割合が異なる

法人保険の保険料を支払っても、保険料全額を損金算入できるわけではありません。

実際には保険商品の種類によって損金算入できる範囲が決まっており、全額損金算入できる保険商品もあれば、全く損金算入が認められない保険商品もあります

さらには、一定の期間だけ保険料の60%を損金算入できるケースや、40%だけ損金算入が認められるケースも。

税金対策として法人保険を利用する場合も含め、加入する最いは保険料を損金算入できる割合について事前に確認してから契約することが重要です。


全額が損金に経理処理される法人保険

保険料全額を損金算入できる法人保険としては、解約返戻率が50%以下の定期保険、医療保険・がん保険(※)、損害保険(自動車保険、火災保険など)が挙げられます。

これらの法人保険の特徴には、貯蓄性が低いことや、保険料が掛け捨てになること、また一般的に保険料に見合った保険金を受け取れない可能性が高いということが挙げられます。

そのため、支払う保険料は「保障を受けられないで使い切ったもの」と税法上みなされ、全額損金算入が可能になるのです。

※医療保険、がん保険などの第三分野の保険は、一人あたりの年間保険料30万円までを限度に損金算入が認められています。一人あたりの年間保険料が30万円を超えた場合には、保険料の全額を損金として計上できなくたるため、注意が必要です。


特定の割合だけ損金に経理処理される法人保険

法人保険の保険料のうちどれだけを損金計上できるかについては、解約返戻率の大きさによって異なります。

国税庁で定められているルールでは、保険商品の解約返戻率に応じて、下記のように税務処理するよう定められています。

ピーク時の返戻率 項目 取扱
50%超
70%以下
資産計上
期間
保険期間開始~前半4割期間

※一被保険者の年換算保険料合計額が30万円以下の場合は資産計上不要
資産取り崩し
方法
前半3/4期間経過後から均等取り崩し
資産計上
割合
支払保険料×0.4
(6割損金算入)
70%超
85%以下
資産計上
期間
保険期間開始~前半4割期間
資産取り崩し
方法
前半3/4期間経過後から均等取り崩し
資産計上
割合
支払保険料×0.6
(4割損金算入)
85%超 資産計上
期間
① 保険期間開始~解約返戻率ピーク時まで

② 1の期間経過後において、年換算保険料に対する解約払戻金の増加割合が0.7を超える期間があれば、保険期間開始からその期間の終わりまで

③ 1または2の期間が5年未満の場合は、5年間
(保険期間10年未満の場合は、保険期間の1/2期間)
資産取り崩し
方法
解約返戻率のピーク年度経過後から均等取り崩し
資産計上
割合
当初10年間:
支払保険料×ピーク返戻率×0.9

11年目以降:
支払保険料×ピーク返戻率×0.7
このような複雑な税務処理が必要になるのは、長期平準定期保険や逓増定期保険が挙げられます。

同じ保険商品でも契約時の年齢、保険期間によって解約返戻率が変わるため、税務処理のルール(損金計上・資産計上)については保険の加入時に保険会社・保険代理店のスタッフに細かく確認することをおすすめします。

経理処理ができる日には決まりがある

法人保険料の損金処理を行うには、経理処理ができるタイミングを知っておくことも欠かせません。

損金計上する条件を満たしていないにもかかわらず経理処理だけを行っても、損金算入は認められない可能性があります。重要なポイントは、どんな条件を満たせば損金算入を含む経理処理ができるタイミングになるのかを正確に認識しておくことです。

この損金処理が可能になるのは、保険料の支払いを終えた時点になります。

ただし、会社として保険会社に振込処理を行っただけでは保険料の支払いを終えたことになりません。保険料の支払いを終えたと税法上認められるためには、保険会社に保険料が着金していることが条件になります。

もちろん、銀行振込などを行えばほぼ間違いなく送金できます。しかし、午後の一定の時間以後に送金処理を行った場合は、処理が翌日になってしまうこともありえます。

決算日に送金処理をしても、着金が翌日になってしまうと、その事業年度で損金処理をすることができない可能性があります。

事業年度内で処理したい場合や、特定の月内で処理を済ませたい場合は、送金処理のタイミングにも注意を払うことが重要。緊急の場合には、保険料受領通知が来る前に、直接保険会社に着金を確認するという方法も検討しましょう。

間違いなく損金処理を済ませたいという場合は、少なくとも目標の損金処理日の1週間前には申し込みを行うことがおすすめです。また、契約書にサインをして提出した日に保険料を振り込んだ場合、申し込みから2日~3日後には経理処理できるようになるのが一般的です。


法人保険での資産計上のメリットを説明

ここまで、法人保険の税務処理について、特に損金計上に注目して説明してきました。ここからは、資産計上の面に注目して解説していきます。

法人保険の加入は税務対策を主な目的としている方が多いと思いますが、この場合、保険料の一部が資産計上されるタイプの法人保険にあまりメリットを感じない人もいらっしゃるでしょう。

しかし、実は資産計上される法人保険にも大きなメリットがあるのです。


帳簿外に資金を積み立てておける

先ほども説明しましたが、多くの法人保険は解約の際これまで支払った保険料の一部が解約返戻金として戻ってくる場合があります。

保険の種類にもよりますが、払い込んだ保険料の85%以上の解約返戻金が受け取れる場合も。

支払う保険料のうち、一部を損金、残りを資金として経理処理するような法人保険では、解約返戻金と保険料支払い時に税金対策できた額を合わせて、これまで支払った保険料とほぼ同額もしくはそれ以上のお金を受け取ることができる可能性があります。

このように、法人保険に加入しておくことで帳簿外に資金を貯めておくことができるのです。

では、具体的に帳簿上ではどのように経理処理していくのか、以下の法人保険を例に見ていきましょう。


帳簿上の税務処理の方法

【条件】
保険金:1億円、保険料:1,000万円、損金計上割合:40%、満期期間:10年満期、解約返戻率:75%(契約から6年後)
この会社の場合、経理処理として、まず損益計算書では保険料の40%である400万円を支払保険料の名目で”費用”として計上することができます。一方、残額の600万円は貸借対照表の固定資産に保険料積立金として算入します。

この税務処理を解約返戻率がピークになる6年後までまで行うと、貸借対照表の保険料積立金は2,400万円になりますね。そして、同じタイミングで解約を行うと、1,000万円×6年×解約返戻率75%になるので4,500万円もの解約返戻金を受け取れます。

つまりこの保険の場合、解約返戻金の4,500万円から貸借対照表に記載し資金として計上してきた2,400万円を引いた金額である2,100万円を、そのまま帳簿外の資産として手に入れられるのです。

このように法人保険に入ることによって、税金対策だけでなく、事業を行うために必要な資金を効率よく貯められるというメリットがあります。


貯蓄の際の注意点は?

貯蓄の際の注意点は大きく3つです。


解約まで毎年保険料を払うことができるキャッシュフローを維持すること
法人保険に加入すれば、当然定期的に保険料を支払っていかなければいけません。そのため、保険料を支払えるだけの安定したキャッシュフローが必要です。

キャッシュフローを安定させる対策として、保険料を年払いから月払いに変えるということがあげられます。 ただし、月払いは年払いに比べて支払う法人保険料はやや割高になるというデメリットがある点に注意しましょう。


保険料の損金計上額を超える営業利益を出し続ける見込みがある事
よく「1年だけ黒字になったから税務対策として法人保険に加入する」というケースが見られます。

しかし、法人保険は満期になるまで何年も支払い続けなければいけないもの。翌年、損金計上額を下回る営業利益しか出せなければ、一気に赤字となってしまい、税務対策した意味が無くなってしまいます。


解約返戻率が高いタイミングで受け取り、資金の活用方法を決めること
解約返戻金から貸借対照表に記載されている保険料積立金を差し引いた額は課税の対象になります。そのため、解約時に返戻金の使い道を決めずそのまま所得として経理処理してしまえば、税務上のメリットは得られません

よって、貯蓄目的で法人保険に加入する場合であっても、税務上のメリットを得たいケースと同様に出口戦略を明確にしましょう。


まとめ:企業の保険料は目的によって経理処理をわける

さて、ここまで法人保険の保険料の経理処理の方法や、損金計上・資産計上のメリットについて説明してきましたが、いかがでしたか?

税務対策として活用されることの多い法人保険ですが、改めて税務上のメリットを確認しましょう。

2つのメリット
  • 副次的な効果として税制上のメリットが発生すること
    ⇒その場合は損金計上の法人保険を選択する

  • 会社の資産価値向上や信頼形成を図ることができる
    ⇒この場合は資産計上の法人保険を選択する

  • 上記のようなメリットを享受するには、目的に応じて法人保険を選び、きちんと経理処理を行っていくことが大切です。加入を検討する保険が税務上どのように分類されるのかについては、生命保険会社のパンフレットで確認したり、法人保険のプロに相談した上で不安な点が無いようにしましょう。

    また、法人保険に限らず保険選びの大原則ですが、あくまで保険は事業で発生しうるリスクに備えるためのもの。

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