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保険の税金対策
国税庁の通達による税制改正で変わる法人保険

2019年の税制改正通達によって変わる法人保険の損金計上ルール

法人保険の保険料取扱いが大きく変わります

法人保険は経営リスクに保障をかけられるだけでなく、保険料を損金として費用計上できるため節税対策・税金対策として利用される一面があります。

しかし、法人保険による節税対策は本来の保険の目的から逸脱する部分があるため、国税庁が2019年に税制改正に伴う通達を公表し、法人保険の保険料取扱いルールを大きく変更しました。

この税制改正によって法人保険は節税効果が薄まったとされていますが、「法人保険本来の保障を重視する流れに戻った」とも言えます。

この記事では、法人保険に関する税制改正や通達の内容を解説。経営者のみなさんが気になる「今後の法人保険の取扱い方」について説明していきます。

当記事の監修者:金子 賢司

  • CFP
  • 住宅ローンアドバイザー
  • 生命保険協会認定FP(TLC)
  • 損保プランナー

東証一部上場企業で10年間サラリーマンを務める中、業務中の交通事故をきっかけに企業の福利厚生に興味を持ち、社会保障の勉強を始める。
以降ファイナンシャルプランナーとして活動し、個人・法人のお金に関する相談、北海道のテレビ番組のコメンテーター、年間毎年約100件のセミナー講師なども務める。
趣味はジャザサイズ。健康とお金、豊かなライフスタイルを実践・情報発信しています。

国税庁から法人生命保険料に関する通達改正でどう変わる?

令和元年6月28日、かねてから節税目的の法人保険を問題視していた国税庁から、「改正法人税基本通達」が出されました。

国税庁は以前から節税向けの保険商品について個別に通達を出していましたが、今回は法人税基本通達9-3-5の2を新設し、保険業界に対して国の方針を明確化させることにしたのです。

今回税制改正による通達で変わったポイントは、大きく分けて2つ。

  • 最高解約返戻率50%超の定期法人保険は、資産計上が必要
  • 短期払いの第三分野保険(がん・医療保険)は、年間保険料30万円しか損金計上できない

それぞれ細かく見ていきましょう。

① 最高解約返戻率50%超の定期法人保険は資産計上が必要

今回の税制改正で最重要のポイントは、解約返戻金のある定期型法人保険の損金計上についてです。

新設された法人税基本通達9-3-5の2によると、法人保険の最高解約返戻率が50%超となる場合、3つの区分を設けてそれぞれの区分ごとに一定の割合で資産計上することを原則としました。

つまり、今までは保険料の全額を損金計上できていた法人保険が、今後は解約返戻率50%以上の場合は資産と費用に分けて計上するため、節税効果が薄まるということです。

下記の図で詳しく法人保険の資産計上額を見ていきましょう。

税制改正による最高解約返戻率ごとの損金・資産計上ルール

最高解約
返戻率
資産
計上期間
資産
計上額
取り崩し
期間※1
50%超~
70%以下
保険期間の開始日から40%割相当期間を経過する日まで支払保険料
×40%
保険期間の75%
相当経過後から
終了日まで均等に取り崩し
70%超~
85%以下
保険期間の開始日から40%割相当期間を経過する日まで支払保険料
×60%
保険期間の75%
相当経過後から
終了日まで均等に取り崩し
85%超保険期間の開始日から最高解約返戻率となる期間等の終了日まで支払保険料×
最高解約返戻率×
70%(保険期間開始日から10年経過日までは90%)
最高解約返戻率の
期間経過後から
終了日まで均等に取り崩し

※1取り崩し:資産計上期間に資産計上しておいた金額を、残りの期間に分けて均等に損金として計上すること。
※解約返戻率が50%超~70%以下で、なおかつ一被保険者の年換算保険料合計額が30万円以下の場合は、保険料の全額を損金に算入

今回の税制改正通達により、最高解約返戻率50%以上の商品は保険料の一部を資産計上することが必要。

したがって、保険料全てを損金計上するで得られた法人保険の節税メリットが、税制改正通達以前よりも小さくなったということです。

例)保険期間30年、年間保険料500万円の会計処理

最高解約
返戻率
資産
計上期間
資産・損金
計上額
資産計上分を
取り崩す期間
50%超~
70%以下
1年~12年目まで資産計上:200万円
損金計上:300万円
23年目から
70%超~
85%以下
1年~12年まで資産計上:300万円
損金計上:200万円
23年目から
85%超
(15年目
返戻率
ピーク)
①1~10年目
②11年目~
15年目
①資産計上:405万円
 損金計上:95万円


②資産計上:315万円
 損金計上:185万
解約返戻率ピーク終了後

以上のように、最高解約返戻率の高さによって資産計上の比率が高くなり、損金計上できる額が限定されてしまうのが今回の税制改正通達の特徴です。

資産計上した分は資産取り崩し期間に損金として計上できるものの、多くの場合、法人向け生命保険は解約返戻率のピーク時に解約をするもの。つまり、資産取り崩し期間を迎える前に解約することがほとんどのため、損金計上額は少なくなります。

これをふまえると、今回の税制改正によって節税対策効果が非常に抑えられたと言えます。

② 短期払いの第三分野保険(年間保険料30万円以上)

今回の税制改正通達によって変わったポイントの2つ目は、第三分野の保険(医療保険・がん保険など)の短期払いに関するものです。

短期払いとは、終身タイプの保険について、保険料を一定の期間で全て払い終えてしまうこと。

これまでは、解約返戻金のない終身がん保険などは、短期払いにして保険料を全額損金として計上することが可能でした。

しかし、通達による税制改正に伴い、今後は短期払い終身がん保険・医療保険の損金計上額が大きく変更。短期払いにした法人保険の年間支払い保険料が合計30万円以上の場合、所定の割合で資産計上が必要になりました。

よって、短期払いの第三分野保険も、税制改正通達以前と比べて節税メリットが小さくなってしまったのです。

税制改正後も保険料の取扱いが変わらない法人保険

今回の税制改正の通達では、節税効果の高い法人保険が対象となり、保険料の取り扱いが変わりました。

しかし、法人保険の中には保険料の取り扱いが税制改正前と変わらないものもあります。

最高解約返戻率50%以下の法人生命保険商品

税制改正の通達によって、損金の取り扱いが変わった法人保険は解約返戻率50%~70%、70%~85%、85%以上の3種類でした。

しかし、ここに含まれない最高解約返戻率50%以下の法人保険は、税制改正通達以前のルールが適用され、全額損金計上することが可能です。

年間保険料30万円以下の第三分野商品

今回の税制改正の通達では「解約返戻金のない第三分野の短期払い終身保険」に関して制限を設けられましたが、その対象となるのは、年間の支払い保険料が30万円超の法人保険のみ。

つまり、年間支払い保険料が30万円以下の第三分野の法人保険であれば、従来通り全額損金算入が可能となっています。

養老保険(ハーフタックス)

養老保険は、法人が契約者となり、被保険者を役員・従業員として加入する法人保険。被保険者の死亡時には死亡保険金、生存したまま満期を迎えれば満期保険金が支払われるという貯蓄性に優れています。

養老保険では、死亡保険金の受取り人を被保険者遺族、満期保険金の受取り人を法人とすることで、支払った保険料の半分を損金計上することが可能。この「ハーフタックス」と呼ばれる手法が、以前から法人税対策として人気を集めていました。

このハーフタックスは、今回の税制改正の対象にはなりません。したがって、税制改正で法人保険の損金計上が厳しくなるなか、ハーフタックスは法人税対策として再度注目を集めるのではないかと言われています。

ただし、養老保険のハーフタックスプランを利用するには、福利厚生として全従業員を加入対象とするなど、細かな条件があります。

とはいえ、満期保険金による資金貯蓄、損金計上による税金対策と、企業に大きなメリットがあることは確かです。

税制改正は過去の契約に訴求して適用されません

今回の税制改正で損金計上に関するルールが大きく変更されましたが、税制改正の通達によると、新ルールは「2019年7月8日以降に契約する法人保険」が対象。

したがって、2019年7月8日以前に加入している法人保険商品については、従来通りのルールで税務処理が可能です。

同じく、第三分野保険(医療保険、がん保険など)の短期払いの保険商品についても、税制改正通達は契約日が2019年10月8日以降の法人保険のみに適用。それ以前に契約した法人保険は対象外です。

よって、今回の税制改正通達の変更点は、法人保険をこれから契約する経営者、または法人保険の契約満期を迎えて更新する予定の経営者の方が特によく覚えておく必要があると言えます。

【まとめ】今回の通達改正で法人保険の節税色は希薄へ

国税庁による税制改正通達を通して、「法人保険は節税ではなく本来の保障を考える」という指針を改めて打ち出した解釈することができます。

とは言っても、保険料の損金算入が全く否定されたわけではありません。会社に必要な保障を考えながら、副次的にある程度の節税効果を期待するという形で法人保険を選ぶことは十分可能です。

今回の税制改正の通達は、2019年度7月8日以降に新規契約する法人保険が対象になるため、税制改正以前に加入済みの保険は対象となりません。

しかし、これから契約更新を迎える場合には、更新後に税制改正の新ルールが適用されることになるため、税務処理の方法確認や保険商品の見直しなどを適宜行うことをおすすめします。

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