保険活用テクニック
役員退職金の計算方法

役員の勇退を損金計上するには?

企業にとって経営者や役員の存在は欠かせないものです。

日々の会社経営と並行して、退職金の準備をしっかりと整えておくことは、中長期的に見れば会社の業績を向上させることにもつながっていきます。

退職金は準備する手順を踏まえて、ルールに沿って進めていくことが重要ですが、役員退職金をどう設定していいのか悩んでしまうこともあるでしょう。

そこで、役員退職金を用意する際の注意点や損金算入するための具体的な方法について詳しく解説していくので、役員退職金を損金にしようと考えている方や具体的な方法がわからない方にはおすすめの内容となっています。

順序立てて考えよう!役員退職金を決める流れ

役員退職金は客観的に見て、支給されるための合理的な基準作りが必要です。そのために「退職金規程」をきちんと定めておきましょう。支給にあたってトラブルを未然に防ぐことができますし、損金として算入するときの明確な根拠資料にもなります。

退職金はまとまった金額を支給するものですから、損金として取り扱うためには税務上の問題をクリアしておく必要があります。

退職金規程を作成しておくことで、死亡による退職時に支給をする弔慰金についても損金の算入が可能になります。

ただ、役員退職金の損金算入には限度額というものがあるので注意が必要です。同業種・同一規模・同一エリアといった観点が必要になり、基準に沿った退職金規程を作成することが望ましいと言えます。

また、退職金は形式上の退職で受け取れるというものでもありません。実質的な退職の事実を示すことが重要であり、役員報酬の状況や勤務状況、経営への関与の度合いから判断されます。

常勤役員が非常勤役員となる場合や取締役が監査役になるといったときにも、退職金の支給が可能です。

退職の事実がきちんと示せなければ、退職金の税務上の取り扱いにも問題が生じてしまいます。退職の事実が認められない場合には、損金として算入できなくなりますし、退職した個人も給与所得として退職金が取り扱われるのです。

その一方で、退職の事実をしっかりと示せれば、支給した退職金を会社は損金として算入できますし、退職した個人も退職所得として申告することができます。

中小企業の場合は退職金規程を作成していない場合もあるものの、税務上のリスクを回避したり、死亡退職金を巡って遺族とトラブルになったりすることを防ぐために規程を作成しておくことは大切だと言えるでしょう。

退職金規程に盛り込む内容としては、支給時期・支給の決定方法・退職金の計算基準・功績倍率・退職金の増減についての取り決めなどです。

また、役員が死亡したときの退職金の取り扱いや弔慰金の取り決めなどについても、しっかりと盛り込んでおきましょう。

従業員の退職金と同様に、会社が退職金を支給する判断は各企業に委ねられています。ただ、長期的な視点で見れば退職金制度が整えられていることで業務に対するモチベーションも向上し、人材の定着を図ることが可能です。

退職金の主旨として、長く勤め続けるほど受け取れる退職金の総額は大きくなるのが一般的だからです。意欲的な役員や従業員が多い会社であれば、自ずと業績にもプラスに働いていきます。

ある程度の期間が経過してみないと効果を実感しづらい退職金制度であるものの、福利厚生の一環として整えておくことは経営の面でも大事なことだと言えます。

退職金規程を作成したら、退職金額をいくらにするのか検討しましょう。ポイントとしては税務上、損金として否認されない退職金額を決めることにあります。

役員の在任期間や会社への貢献度などを総合的に見て、最終的な金額を決定しましょう。そして、来るべき日に備えて退職金の原資を準備することも欠かせません。

退職金を支給する目安となる時期を決め、現状で退職金にあてられる原資がどれくらいあるのかを確認しましょう。

退職金に不足がある場合には、どのように準備していくのかスケジュールを立てるようにします。特に事業承継や相続対策として退職金を考えている場合には、綿密な計画を作成する必要があるのです。

退職金の原資を準備するための方法として、法人保険を活用するのもいいでしょう。中小企業の場合は会社の利益のなかから、退職金の原資を準備していくのは大変でもあります。

また、現金のまま積み立てを行っていこうとすれば税負担も大きくなってしまうでしょう。

生命保険などの保険金を退職金の原資として充てるなら、支払った保険料の一部または全部を損金として算入することができます。

税金対策を行いながら、退職金の準備もできるため会社にとってメリットが大きいと言えるでしょう。

一時的に資金繰りが悪化してしまった場合も、契約者貸付制度を実施している保険会社も多く、いざというときの経営の備えにもなります。

一口に法人保険と言ってもさまざまな種類があるものの、特徴を踏まえたうえで加入を検討してみましょう。

長期平準定期保険は長期契約に向いており、商品によりますが、保険料の2分の1を損金として算入できます。

逓増定期保険は保険料が高額である一方で、解約返戻金のピークが5年程度と早いのが特徴です。

養老保険は基本的に従業員全員の加入が条件となるものの、保険会社によっては役員のみを対象とした全額損金タイプのものもあります。退職時の満期保険金にプラスして死亡時にも保険金が受け取れる点が特徴です。

そして、がん保険は緩やかに解約返戻率が上昇するのが特徴です。医師による健康診断が不要である場合もあるため、気軽に加入できる保険とも言えるでしょう。

いずれにしても、必要以上に高い保険料の保険に加入することは避けたほうが無難です。

業績が好調なときに基準を置いてしまうと、資金繰りが苦しくなってしまったときに保険料の支払いが大きな負担となってしまうおそれがあります。

退職金の原資としてどの程度の金額を準備するかを明確にして、必要な対策を取っていくようにしましょう。

法人税法における役員の範囲とは?

2017年4月時点で国税庁が公表している役員には範囲があります。

法人税法上の役員とは、法人における取締役・執行役・会計参与・監査役です。理事・幹事・清算人といった立場の人も役員のなかに含まれます。

また、相談役や顧問といった名称で法人の経営に携わっているものの、法人に所属していない人も、法人税法では「みなし役員」として入ります。会長や副会長といった立場の人や同族会社で経営に従事している人も、役員の範囲として該当します。

それから、従業員であっても会社経営に携わっていたり、株式を一定の割合で保有していたりすると、みなし役員として扱われます。法人税法上の役員は、会社法の規定に関わらず、法人の経営について実質的に関与しているかどうかで判断されます。

上限はない?役員退職金の基本的な考え方

役員退職金については、法律上の上限額というものはありません。しかし、損金として算入できるかという視点で見れば、不当に高額な役員退職金は損金として認められない場合もあります。

基準としては同業他社と比べて、退職金の額が適正かといった点を判断されるためです。したがって、法人税法では無制限に役員退職金を損金に算入することは、実質的に認められていないと考えていいでしょう。逆に言えば、損金算入できる金額が役員退職金の限度額ということになります。

役員退職金を計算する方法としては「功績倍率法」といった手段を用いるのが一般的です。

功績倍率法を用いたうえで、同業他社の退職金支給額を参考にしていきます。参考とする基準は地域や業種、退職時期や売上金額などです。退職事由・所得金額・在籍年数なども考慮されます。

ただ、あらかじめ税務当局が認定する役員退職金の適正な額を把握することは困難でしょう。したがって、役員退職金の額を決めるにあたっては、職務内容や会社への貢献度を適正に判断したうえで、支給額を決めていくことが無難だと言えるでしょう。

また、退職金規程を作成するときには不正行為が事後的に発覚した場合の取り決めも盛り込んでおくことが大切です。

役員が退職後に懲戒解雇事由が見つかったときに、何の取り決めもなければトラブルのもとになってしまいます。退職金の減額や不支給の判断を行いやすいように「退職金の支払い時期を6カ月以内とする」など長めにとっておくことが重要です。

不正行為に対する調査には一定の期間を必要としますから、あらかじめ不測の事態に備えて対策をとっておきましょう。

そして、退職金を支給してから不正行為が発覚したときには、退職金を返還する規程も作成しておくことが大切です。退職金制度を健全に維持していくためには、きちんとルール作りを行っていくことが肝心だと言えます。

役員の退職金を損金算入するための計算方法

役員退職金を損金算入するための計算方法として、具体的には「平均功績倍率法」「最高功績倍率法」を用います。

平均功績倍率法を使った役員退職金の計算方法は「最終報酬月額×役員在任年数×功績倍率」で表すことができます。

ポイントとしては、役員在任年数を重視している点だと言えるでしょう。会社への功績を推し量るときに、在任年数が長ければ長いほど大きいと判断されるからです。

そして、最高功績倍率法では「最終報酬月額×役員在任年数×最高功績倍率」といった計算方法を用います。功績の最高倍率を重視する方法であり、退職者が就いていた最高役職を基準としているものです。

功績倍率とは会社への貢献度を倍率で示したものであり、役職によって異なるものの、一般的には3倍前後がひとつの目安となっています。

社長3.0倍、専務と常務2.5倍、取締役と監査役2.0倍といった具合で判断されるものです。たとえば、代表取締役で在任期間が30年、最終報酬月額が80万円だったとすると、80万円×30年×3倍で役員退職金は7,200万円ということになります。

そして、役員退職金は税法上では退職所得として扱われ、給与所得よりも課税割合が低く抑えられているのが特徴です。退職金の目的は引退後の生活を維持することにあるため、税率自体が抑えられています。

また、役員退職金の支給方法は「一括払い」「年金型」「併用型」があり、受取人が自由に選択できるものです。しかし、一般的には一時金として一括で受け取る場合が多いため、退職金の支給時に大幅な赤字とならないように調整することが大切です。

この場合、保険の解約返戻金を退職金の原資とするなら、受け取る保険金と支給する退職金で益金と損金の調整を行うことができるでしょう。

役員退職金の金額を決めるときには、会社が損金算入できる範囲、そして受け取り時の所得税がどの程度かかるのかを把握したうえで決めることが大切です。

損金算入できる範囲で決めるのが重要

経営者や役員が退任するタイミングというのは、個人にとっても会社にとっても重要な節目になります。そのため、円滑に退任して退職金を受け取れる仕組みを整えておくことは、経営においても重要なことだと言えるでしょう。

しかし、役員退職金は単に自社のなかだけで決めれば良いというものでもありません。税務上の損金算入の問題を意識したうえで、適正な退職金額を決めていく必要があります。

過大な退職金は損金として算入できないばかりではなく、退職金を受け取る側にとっても大きな税負担となってしまう可能性があるからです。

退職金規程をきちんと定めて、客観的な視点で見たときにも退職金の支給が適正であると示せることを意識してみましょう。

退職金規程を定めておくことは、死亡退職金の支給時に遺族とのトラブル回避にも役立ちます。取り扱い方を間違えてしまうと、遺族とのあいだで訴訟になってしまう可能性もあるので、リスクマネジメントとしても重要です。

そして、役員退職金とは別に各種保険を活用したり、中小企業倒産防止共済・小規模企業共済などを活用したりすることも検討してみましょう。計画的に活用していくことで、退職金を準備したり積み増したりする原資を確保できますし、税金対策にもつながるでしょう。

役員退職金のための準備は、長期間に渡って行っていくものなので、自社に合った退職金制度の在り方をしっかりと見極めておくことが大切です。

同業他社の退職金支給額などを参考にしつつ、役員の在任年数や会社への貢献度を適正に判断して退職金の額を決めていきましょう。

社歴の長い会社であれ、ベンチャー企業であれ、誰にどのように退職金を支給したのかはその後の前例となるものです。

役員退職金はあくまでも損金の算入が認められる範囲に留めて、経営者や役員が安心して退任できる環境を整えていくようにしましょう。

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