さまざまな経営リスクに備えられる法人保険ですが、いざ加入するとなると「選び方がわからない」と感じる企業は少なくありません。
法人保険を選ぶときは、保険の種類やメリットを理解したうえで、自社の課題や目的に見合ったものを検討する必要があります。
本記事では、基礎知識から実践的知識、企業規模ごとのポイントなど、賢い法人保険の選び方をわかりやすく解説します。
この記事で正しい選び方を把握し、最適な保険商品に加入しましょう。
法人保険の選び方①基礎知識編
まずは、法人保険の選び方において知っておくべき基礎知識を解説します。
経営者が直面する「3つの主要リスク」とは
経営者は、日々の業務や経営判断の中でさまざまなリスクと向き合っています。
その中でも、法人保険の導入を検討する際に重要となる「3つの主要リスク」は、企業の継続性や財務健全性、従業員の安心に直結する極めて重要なテーマです。
- キーマン不在リスク
経営者自身や幹部社員など、企業活動の中核を担う人物の死亡・重病・事故などのリスク。資金繰り悪化(代表の急死による信用不安)や信銀行融資の打ち切り、取引先の離脱や後継者不在など。 - 退職・資産リスク
代表者や役員の退職時に支払う退職金や、引退後の生活資金が負担となるリスク。大規模な退職金支払いによる財務悪化や、退職者との金額トラブルなど。 - 賠償・事故リスク
製品事故や業務中の交通事故・施設内事故・情報漏洩などにより、顧客や第三者に損害を与えてしまうリスク。高額な損害賠償請求や社会的信用の失墜など。
これら3つのリスクは、相互に連動して発生することも多く、分断的に考えると対応が後手に回りがちです。法人保険を上手に組み合わせることで、それぞれのリスクを包括的にカバーでき、結果として企業の安定性を高められます。
法人保険が果たす役割と経営上のメリット
法人保険には、経営に役立つさまざまなメリットがあります。
- 万が一のときの保障
- 貯蓄型保険(満期保険金や解約返戻金がある保険)による積立効果
- 社員を被保険者にして福利厚生を充実
- 保険料の損金算入による短期的な税金対策※
※保険金や解約返戻金(解約時に払い戻される金銭)が課税対象であるため、恒久的な節税効果はありません。
商品によって具体的な保障範囲や損金算入ルールが異なるため、法人保険を選ぶときは「各メリットに対してどのくらいの効果が期待できるか」を確認しましょう。
法人保険を導入するときの注意点
多くのメリットがある法人保険ですが、一方で以下のようなデメリットも存在します。
- キャッシュアウト(資金の流出)が発生する
- 経理処理の方法が複雑、税制が変わる可能性もある
- 恒久的な節税効果はない(トータルで課される税額は同じ)
- 自社のリスクに合っていない保障内容だと保険料が無駄になる
「節税できる」「企業なら必ず加入している」などと聞いて安易に契約すると、かえってリスクを広げる恐れがあります。
保険加入は中長期的な経営戦略の一環と捉え、慎重に導入を判断しましょう。
法人保険の種類一覧
法人保険にはいくつか種類があり、それぞれ特徴も異なります。
生命保険 | 定期保険、終身保険、養老保険など |
---|---|
損害保険 | 火災保険、自動車保険、施設賠償責任保険、サイバー保険など |
第三分野保険(上記2つに属さない保険) | 医療保険、がん保険、介護保険など |
各種類の特性を把握し、加入目的に沿って適切な保険商品を選ぶことが大切です。
法人保険の選び方②実践編
ここからは、法人保険に加入する際の実践的な選び方を詳しく解説します。
保険選びに失敗しないための重要なポイントを紹介するので、ぜひ参考にしてください。
選び方①加入目的を明確にする
法人保険の選び方では、「目的を明確にする」ことが最も重要なステップです。自社の経営課題と法人保険の役割を具体的に定義し、法人保険で何を達成したいのかを言語化します。
加入目的を明確にすれば、選ぶべき保険の種類も自ずとわかります。以下はその一例です。
- 退職金準備に充てたい:定期保険、養老保険
- 貯蓄性と保障を両立したい:逓増定期保険、長期平準定期保険
- 老後の資金を確保したい:終身保険
- 病気やケガのリスクに備えたい:医療保険、介護保険
- 損害賠償対策をしたい:賠償責任保険
「保険で備えるべきとは思うが、具体的に何が必要かわからない…」という場合は、法人コンサルティングなどの専門家に相談してみましょう。外部のアドバイスを取り入れることで、自社では気づきにくい「隠れたリスク」を見つけられる可能性があります。
選び方②保障内容と保険料のバランスを取る
保障内容だけでなく、保険料とのバランスを意識することも法人保険の選び方としては重要です。具体的には、保障額・保険料・損金算入率・キャッシュアウトの4要素を検討しましょう。
- 保障額:目的に対して十分な金額か
- 保険料:保障額に対して適正な金額か
- 損金算入率:保険料のうち何割を経費として計上できるか
- キャッシュアウト:保険料が経営上の負担にならないか
無理なく法人保険を活用するためには、コストパフォーマンスを意識したプラン設計が求められます。
選び方③解約返戻金のピークを確認する
解約返戻金の推移も、法人保険の選び方で押さえておきたい項目です。解約返戻金とは、解約時に保険会社から払い戻されるお金のことで、終身保険や養老保険など貯蓄性が高い保険に設定されます。
退職金準備など、法人保険の活用方法には解約返戻金を前提としたものがあります。ここで注意すべきなのが、解約返戻金は保険期間の経過によって変動することです。
基本的には、契約当初から徐々に増額し、ピークを迎えた後は徐々に減額、最終的には0円となるタイプもあります。ピークとなる時期は商品によって異なり、おおむね10年~30年程度が目安です。
解約返戻金は保険商品や契約内容によって推移が異なるため、必ず契約前に確認しましょう
選び方④信頼できる専門家に相談する
法人保険選びは経営や税制の高度な知識が必要となるため、不安があれば専門家に相談しましょう。
特におすすめなのは、複数の保険会社と提携している保険代理店への相談です。企業のリスク分析から、対策に必要な保障内容、それに適した保険商品の紹介など、一気通貫のアドバイスをもらえます。
また、税務上の取扱いについての悩みは、税理士の専門分野となります。保険商品の紹介や契約手続きなどはできませんが、経理処理や節税効果に関して正しい知識を知りたいときは頼りになる存在です。
法人保険に強い専門家と連携し、より適切な保障プランを選べるようにしましょう。
法人保険加入で失敗しないためのチェックリスト
ここまで解説した通り、法人保険の選び方では「目的の明確性」「保障とコストのバランス」「税務ルールの理解」などが重要です。合わせて、保険会社の信頼性や見直し体制なども不可欠となります。
以下に具体的なチェックリストを用意したので、法人保険の選び方で迷ったときはこちらを参考にしてみましょう。
チェック項目 | 確認のポイント | チェックボックス |
---|---|---|
加入目的が明確か | 「事業継続」「退職金準備」「福利厚生」「節税」など目的が定まっているか | ☑ |
保険料が適正な範囲内か | 保険料支払いがキャッシュフローを圧迫していないか | ☑ |
必要な保障を確保できるか | 加入する保険の保障範囲、返戻率、契約期間などが適切か | ☑ |
保険期間と自社の計画が一致しているか | 保険の返戻金ピークが退職金支給時や資金需要期と一致しているか | ☑ |
信頼できる専門家に相談しているか | 法人保険専門の保険代理店などに相談しているか、アフターフォローなどサポート体制が整っているか | ☑ |
この表を導入前のチェックシートとして活用することで、「保障内容が実態に合っていなかった」「解約のタイミングを逃した」などのよくある失敗を未然に防げるでしょう。
【企業規模別】選び方のポイントとおすすめの保険種類
企業の規模や業種などによって、法人保険の選び方にも違いが生まれます。
ここからは、ケース別に法人保険の選び方とおすすめの保険商品を、具体的な活用方法と合わせて解説します。
スタートアップ・小規模企業:経営者依存リスクへの備えが重要
スタートアップや小規模企業は、創業者依存の強さや事業の不安定さが課題となります。法人保険の選び方としては、事業継続性の確保や信頼性の向上、予期せぬ訴訟・賠償リスクへの備えがポイントです。
- 定期保険(創業者・共同創業者向け)
- 情報漏洩保険/サイバー保険(IT企業向け)
- 業務災害総合保険(在宅勤務・フリーアドレスにも対応)
スタートアップや小規模企業では「保険に費用をかけすぎたくない」と思う経営者も多いですが、企業規模が小さいからこそ法人保険による「信頼性の担保」は経営上の大きなメリットとなります。
中堅企業:保障と資産形成を両立させる戦略がカギ
中堅・成長企業が法人保険を導入するときは、退職金準備や資産形成、キーマン不在時の資金確保などが選び方のポイントです。また、従業員向けの保険で福利厚生を拡充し、採用の競争力アップを狙うのもよいでしょう。
- 逓増定期保険(資金形成+保障強化)
- 長期平準定期保険(退職金積立)
- 団体医療保険・がん保険(福利厚生)
この規模の法人では、単純な保障としてだけでなく、財務戦略の一部として導入する視点が重要です。
大企業:資金積立やESG経営への活用
大企業における法人保険の選び方は、長期的な退職金積立や従業員満足度の向上に加えて、ESG・サステナビリティ経営との整合性もポイントとなります。
※ESG…企業の持続的な成長を支える3つの要素。E:環境(Environment)、S:社会(Social)、G:ガバナンス(Governance)。
- 長期平準定期保険(退職金積立)
- 終身保険(資産形成・相続対策)
- 団体医療・団体がん保険(福利厚生強化)
- 海外赴任者用の総合医療保険
大企業では、法人保険を「経営ブランディングの一部」として活用することで、社内外の信頼構築につながります。
まとめ
本記事で解説した法人保険の選び方をまとめると、以下の4つが重要となります。
- 加入する目的を明確にする
- 保障内容と保険料が適正な保障プランにする
- 解約返戻金のピークと資金需要のタイミングを合わせる
- 保険代理店や税理士などの専門家に相談する
法人保険の選び方は、「リスクの把握」や「目的の明確化」など、事前準備から慎重な検討が必要です。
ポイントを押さえた選び方で、自社に最適な保険を導入し、持続的かつ強固な経営体制を手に入れましょう。
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