福利厚生を充実させたいと考えている企業は、養老保険を活用して充実を図る方法があります。
養老保険にはさまざまなタイプがあり、法人向けの保険商品も豊富です。そのなかでも法人で検討されやすいのが、福利厚生プランと呼ばれる養老保険です。
養老保険の福利厚生プランは、従業員の福利厚生を充実させながら、資金の準備にもつながるプランです。さらに、支払保険料の半分を損金算入できる点がメリットになります(取扱いは契約形態や運用によって変わります)。
今回は、養老保険の福利厚生プランに注目して、福利厚生プランのメリットや注意事項、加入の条件や経理処理のポイントを解説します。
福利厚生のために法人向けの養老保険を検討している方や、保障だけでなく将来の資金準備も視野に入れたい方は、ぜひ参考にしてください。

当記事の監修者:金子 賢司
- CFP
- 住宅ローンアドバイザー
- 生命保険協会認定FP(TLC)
- 損保プランナー
東証一部上場企業で10年間サラリーマンを務める中、業務中の交通事故をきっかけに企業の福利厚生に興味を持ち、社会保障の勉強を始める。
以降ファイナンシャルプランナーとして活動し、個人・法人のお金に関する相談、北海道のテレビ番組のコメンテーター、年間毎年約100件のセミナー講師なども務める。
趣味はジャザサイズ。健康とお金、豊かなライフスタイルを実践・情報発信しています。
企業向けの養老保険はプランを選ぼう
養老保険は、被保険者が死亡した場合には死亡保険金を、契約満期まで被保険者が存命であれば満期保険金を受け取ることができる生命保険です。
死亡保障による社員の福利厚生に加えて、満期保険金によってまとまった資金を準備できる点から、法人でも検討されやすい保険です。
特に、一定の要件を満たすことで支払保険料の半分を損金算入できる(福利厚生プラン)は、死亡保障で従業員の福利厚生を充実させながら、会社としても資金準備を進めやすくなります。
養老保険の福利厚生プランにどのような特徴があるのか、基本の部分から見ていきましょう。
福利厚生プランの基本
養老保険の福利厚生プランでは、死亡保険金の受取人を被保険者の遺族、満期保険金の受取人を法人として契約します。
養老保険の契約期間中は被保険者に対する死亡保障が中心になり、満期を迎えたときには法人に満期保険金が支払われます。
| 契約者 | 被保険者 | 死亡保険金の受取人 | 満期保険金の受取人 |
|---|---|---|---|
| 法人 | 従業員 | 従業員の遺族 | 法人 |
死亡保険金は従業員の遺族が受け取るため、「死亡退職金」として福利厚生に活用できます。
満期保険金は法人が受け取るため、従業員の生存退職金として活用したり、必要な事業資金に回したりと、用途を広く検討できます。
そして、福利厚生目的の養老保険(死亡保険金:遺族/満期保険金:法人)の場合、支払保険料の半分を損金算入できる点がメリットです(残り半分は資産計上となります)。
ただし、福利厚生目的として扱うためには、契約形態だけでなく、対象者の公平性や社内規程(福利厚生規程・死亡退職金規程など)を含めた運用条件があります。
被保険者が役員や特定の使用人に偏ると、会社負担分が給与として扱われるおそれもあるため、対象範囲と社内ルールを確認したうえで取扱いを判断しましょう。
養老保険の福利厚生プランに加入するメリット4つ
養老保険の福利厚生プランに会社が加入する主なメリットは、4つあります。
メリット①:従業員の福利厚生
1つ目は、従業員の福利厚生の充実です。
養老保険に加入すると、被保険者である従業員が亡くなった場合に、遺族が死亡保険金を受け取れます。
会社として支給する弔慰金などと合わせて、遺族が金銭的なサポートを受けられる環境を整えやすくなるでしょう。
メリット②:損金算入
次のメリットは、税務上の取扱いです。
契約形態(死亡:遺族/満期:法人)に加えて、福利厚生としての運用条件を満たすと、支払保険料の半分を損金算入できます。損金算入によって課税所得が減り、結果として法人税負担の軽減につながる場面があります。
ただし、保険料の全額を損金算入する取扱いにはなりません。満期時に満期保険金を法人が受け取る設計のため、資産性も踏まえた扱いとして「半額損金」となります。
また、被保険者が役員や特定の使用人に偏ると会社負担分が給与として扱われるおそれがあるため、対象範囲と運用の設計が重要になります。
税務面だけを主目的にして加入すると、運用や出口の計画が伴わずミスマッチになりやすい点には注意が必要です。あくまで従業員の保障や企業の資金準備を主目的に置き、税務上のメリットは副次的に受ける、という考え方で検討していきましょう。
メリット③:従業員の生産性向上
3つ目のメリットは、従業員のモチベーションアップによって生産性の向上が見込める点です。
福利厚生が充実すると、従業員の会社に対する満足度が上がり、モチベーションの向上につながる可能性があります。
福利厚生の充実度は社員の定着にも影響するため、従業員を大切にする会社という印象につながりやすい点もメリットでしょう。
メリット④:緊急時の財源
4つ目は、解約返戻金を万が一の場合の財源として活用できることです。
養老保険には解約返戻金(解約することで支払保険料累計から一定割合が払い戻されるお金)があるため、経営状況などを見て柔軟に現金化できます。
返戻金をいざというときのバックアップにすることで、余裕を持った税務戦略を立てられます。
デメリット3つ
養老保険の福利厚生プランには、メリットだけでなく、以下のようなデメリットもあります。
「どんな企業・経営者にも最適」というわけではないので、加入は自社のニーズに合わせて検討しましょう。
デメリット①:支払う保険料が高額
養老保険の福利厚生プランは、従業員を広く対象にして検討するため、保険料が高額になりやすい傾向があります。
従業員数が多い会社ほど保険料負担が大きくなりやすい点に注意が必要です。
保険金額を下げれば保険料を抑えることはできますが、そうすると福利厚生としての効果が弱くなる可能性があります。保障と保険料のバランスを見ながら設計しましょう。
デメリット②:資金繰りが悪化する可能性
2つ目のデメリットは、保険料設定を誤ると将来的な資金繰りに影響が出る点です。
保障内容を決めると、それに応じて保険料も決まります。自社の支払い能力を考慮せずに契約すると、翌年以降の事業運営に影響する可能性があります。
また、今年度は良くても、翌年度には経営状況が大きく変わるかもしれません。保障内容だけでなく、保険料を継続的に支払えるかも検証してから判断しましょう。
デメリット③:周知不足によるトラブル
3つ目のデメリットは、権利関係や周知が不十分だと、社内でトラブルにつながる可能性があることです。
周知が不十分だと、「自分は対象外なのか」「福利厚生目的で会社が儲けたいだけじゃないのか」など、不安や疑いを持たれるかもしれません。
従業員とその家族に対して、目的や契約条件、権利関係など、早いうちに社内ルールとして整備しておきましょう。
福利厚生プランを活用する際に注意しておくこと
ここまで養老保険の福利厚生プランについて、メリットとデメリットを説明してきました。
福利厚生プランは魅力的な保険商品ですが、自社で活用しやすい状況かどうかを確認したうえで進めることが重要です。
養老保険の契約にあたって確認したいポイントは、以下の2つが挙げられます。
- 十分なキャッシュフローがあるか
- 被保険者である従業員が長く働くか
十分なキャッシュフローがあるか
1つ目の条件は、十分なキャッシュフローがあることです。
キャッシュフローは会社のお金の流れを指し、法人として保険料を支払う余裕があるかどうかがポイントになります。
たとえば、長期的な請負工事を行う会社は、入金タイミングが限られ、日々のキャッシュフローが大きくない場合があります。その場合、借入金を活用して事業資金を回していくケースも多いでしょう。
積立型の保険は毎月決まった保険料を支払う必要があります。保険料支払いのために借入金額が増えると、金利コストも増えやすくなります。
また、利益が伸び悩みキャッシュフローがぎりぎりの状態だと、保険料を負担し続けるのが難しくなる場合があります。保険料を支払うためのキャッシュフローを確保できるかどうかを確認してから契約しましょう。
被保険者である従業員が長く働くか
2つ目は、被保険者である従業員が長く働いてくれるかどうかです。
加入後すぐに従業員が退職すると、その従業員分の契約を解約することになるケースがあります。
契約後短い期間で解約すると、解約返戻金がゼロとなることもあり得ます。従業員の定着率も踏まえたうえで契約を検討しましょう。
定着率を考える際は、現状だけでなく、福利厚生が充実することによるプラスの影響も含めて判断するのがポイントです。
損金算入するための要件5つ
ここまで、養老保険の福利厚生プランのメリットと、活用するための条件を解説してきました。
ここからは、会社にとって大きなメリットとなる支払保険料の損金算入について、ポイントをまとめていきます。
養老保険の保険料を損金に算入するには、「養老保険に福利厚生目的で加入した」と判断できる契約形態と運用が前提になります。
以下は、確認しておきたいポイントです。
- 養老保険の契約者が法人であること
- 被保険者として、役員または従業員を広く対象としていること
- 満期保険金は法人が受け取ること
- 死亡保険金は被保険者の遺族が受け取ること
- 福利厚生規程・退職金規程が整備されていること
要件①:養老保険の契約者が法人であること
最初のポイントは、<養老保険の契約者が法人であることです。福利厚生プランは法人向けの設計のため、基本となる前提です。
代表取締役が個人契約で活用しようとすると、保険料の支払者が法人ではなくなり、保険料を会社の損金として扱う考え方にはなりにくくなります。
要件②:被保険者として、役員または従業員を広く対象としていること
次に、被保険者が役員または従業員であることです。
福利厚生としての「普遍的加入」の目安として、たとえば全従業員を加入対象とするといった考え方があります。
全員加入にできない事情があるときは、雇用形態や勤続年数など客観的な基準で対象範囲を決め、社内規程と運用を一致させます。
あわせて、対象者の偏りが出ない設計を意識しましょう。福利厚生として扱うためには、特定の人だけが有利になる設計になっていないことも重要です。
役員や特定の使用人など一部の人に対象が偏ると、会社負担分が給与として扱われるおそれがあるため、対象者の範囲と基準を明確にして運用しましょう。
要件③:満期保険金は法人が受け取ること
次のポイントは、満期保険金の受取人を法人にすることです。
福利厚生プランでは、満期保険金の受取人を法人とする設計が前提になります。
要件④:死亡保険金は被保険者の遺族が受け取ること
養老保険の福利厚生プランでは、死亡保険金の受取人を被保険者の遺族とすることが基本になります。
死亡保険金は遺族、満期保険金は法人、という組み合わせで設計します。
要件⑤:福利厚生規程・退職金規程が整備されていること
最後のポイントは、福利厚生規程や退職金規程を整備することです。
福利厚生制度を導入する場合、従業員への周知は欠かせません。制度が周知されていないと、福利厚生としての実態が弱くなり、保険料の損金算入に影響が出る可能性があります。
養老保険のメリットを十分に受けるには、規程を整備し、養老保険の死亡保険金が死亡退職金として遺族に支払われる(福利厚生の一部となる)ことを明確に示しておくことが大切です。
すでに福利厚生規程がある会社は必要な変更を行い、規程がない会社は新たに作成して運用に落とし込みましょう。
養老保険で税務面を考える際の注意点~保険金の使いみち~
養老保険の福利厚生プランで税務面のメリットを考える場合、保険料の損金算入だけでなく、将来的に受け取る満期保険金も含めて計画することが重要です。
ここでは、法人が受け取る満期保険金の注意点について見ていきましょう。
満期保険金は「出口の計画」がポイント
養老保険では、被保険者が生存したまま保険期間の満期を迎えると満期保険金が支給されます。
このとき、受け取った満期保険金をどう使うかが重要なポイントです。
会社が満期保険金を受け取ると、益金処理が必要となり、課税所得が増える要因になります。
そのため、出口で課税負担を増やさないためには、同じ事業年度に退職金支給や設備投資を行うなど、支出のタイミングも含めて工夫と計画が大切です。
従業員の福利厚生を考えているなら検討を!
今回は養老保険の福利厚生プランについて解説してきました。
養老保険の福利厚生プランは、従業員の死亡保障に加えて、満期保険金や解約返戻金による企業の資金準備にもつながるプランです。資金繰りが厳しい局面では、解約返戻金を資金調達の選択肢として考えられる場合もあります。
また、支払保険料の半分を損金算入できる点は、税務面のメリットとして期待できます。
ただし、保険料を損金に算入するには契約形態や社内規程、対象範囲の設計などを確認する必要があります。事前にルールと運用をそろえてから進めましょう。
従業員の福利厚生と、会社の資金準備を考えている経営者の方は、ぜひ加入を検討してみましょう。
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