会社として余裕資金がある場合、資産運用を行うことがあるかと思います。

資産運用の対象としてはさまざまなものがありますが、も運用対象の1つです。株で運用を行う場合、資金化するためには株を売却する必要があります。

株の売却を行った場合は、売却益(または売却損)が当期の損益に反映され、結果として法人税等の負担に影響する仕組みです。そのため、経営者としては、株の売却による税金への影響を理解しておく必要があります。

今回は、株の売却に関する税務上の基本的な仕組みと注意点について解説します。

気になる株の売却における法人の税金とは?

法人が株を譲渡して売却益が生じる場合、その売却益は課税所得の計算に反映されます(原則として益金算入)。一方、売却損が生じた場合は損金算入となるのが基本です。

法人の所得に対して課される主な税金には、国税の法人税地方法人税に加え、地方税の法人住民税法人事業税(特別法人事業税を含む)などがあります。実務上は、これらをまとめて「法人税等」と呼ぶこともあります。

なお、法人の株式売却益には「株式専用の税率」があるわけではなく、その事業年度の課税所得に合算されて法人税等の対象になる点がポイントです。

法人税等の負担感は、所在地(超過課税の有無)や法人区分(外形標準課税の対象かどうか等)、課税所得水準などで変動しますが、法定実効税率の目安は概ね30%前後〜35%前後で見込まれるケースが多いです(個別事情により変動します)。

株は、非上場株式などが含まれる一般株式と、東京証券取引所などで取引されている上場株式に大別できます。ただし、法人の売却損益は原則として同様に所得計算へ反映されるため、株式の種類によって「税率そのもの」が変わるという整理にはなりません。

税負担が変動し得る主な理由としては、たとえば次のような点が挙げられます。

  • 所在地(都道府県・市区町村)や超過課税の有無で地方税部分が変わる
  • 法人規模や外形標準課税の適用関係により、税負担の構造が変わる
  • 課税所得の水準により、法人税率の区分(中小法人の軽減税率の適用範囲など)が変わる
  • 制度改正により、適用関係や前提となる税率が変わることがある

株式譲渡による損益が生じた場合は、事業年度、会社規模、所得水準、所在地などによって法人税等の負担が変わり得ることを認識しておきましょう。

株式譲渡にまつわる注意点

法人は、株式譲渡(売却)を行う場合だけでなく、株式譲渡を受けた場合(株を購入する等)にも、取引内容によっては税務上の論点が生じることがあります。

そのため、株式を譲渡する場合だけでなく、「株式購入時にも課税関係が生じないか」を確認しておくことが大切です。

法人が株式を時価で購入する通常の取引であれば、原則として購入時点で直ちに税負担が発生するわけではありません。
ただし、譲渡側からみて低額譲渡に該当する場合は、譲渡を受けた側でも課税関係が生じることがあります。

低額譲渡とは、時価よりも低い価格で資産の譲渡を行うことです。

一般的には、時価よりも低い価格で株などの資産売却を行っても、すべてが低額譲渡に該当するわけではありません。しかし、一定の条件に該当すると、低額譲渡として税務上の取扱いが問題となることがあります。

低額譲渡に該当しうるのは、株式譲渡を受けた会社が、時価よりも低い価格で譲渡を受けたことによって経済的な利益を受ける場合です(株を安く買った分、得をした状態)。

得をした分については、受贈益などとして課税所得に算入され、法人税等の対象になる可能性があります。税率は「法人税(国税)だけ」で決まるものではなく、法人税等(国税・地方税を含む)として法人区分・所得・所在地等で変動する点に注意しましょう。

また、株を低額譲渡した側は、売却価格と時価の差として損失が生じた場合でも、その全額が損金として認められるとは限らず、寄付金等と認定され、一部損金不算入になる可能性がある点も押さえておきましょう(取引実態により判断が必要です)。

さて、先ほどは法人から法人への株式譲渡について説明しました。ここで、個人が法人から低額譲渡を受ける場合についても見てみましょう。

個人が法人から時価より低い価額で株式等を取得した場合、差額(経済的利益)が課税対象となることがあります。所得区分は、役員・従業員等として受ける場合は給与所得として整理されることがある一方、その他の関係では一時所得等として整理されるなど、関係性や取引実態で変わるため一律に言い切れません。

また、課税関係は所得税だけでなく住民税、復興特別所得税等も含めて整理が必要になる場合があります。適用関係の判断は複雑なため、税理士などの専門家に相談して進めることをおすすめします。

会計上と税務上の株の種類と特徴

会社として株の売買を行うなど、株や債券のような有価証券を保有することになる場合は、会計上と税務上それぞれの取り扱いを理解しておくことが必要です。

会計上と税務上では、株や債券の分類や処理方法が異なります。会計上の取り扱いとは、決算書を作成するうえでの処理方法のことです。

一方、税務上の取り扱いは、法人税等の計算を行うための処理方法のことを指しています。

細かく見ていきましょう。

会計上の分類

会計上では、有価証券の保有目的によって4つに分類して処理することになっています。

1つ目は、売買目的有価証券です。有価証券の短期的な売買によって売却益を得ることを目的としている場合に分類されます。

2つ目は、満期保有目的の債券です。途中で売却することを想定せず、満期まで保有することを目的として取得する国債や社債などが分類されます。

3つ目は、子会社関連株式です。企業が、事業にプラスの影響を与えるために経営に関与することを目的として保有する株などが該当します。

4つ目は、その他の有価証券です。1~3つ目に該当しない有価証券がここに分類されることになります。

税務上の処理

税法上では、有価証券を2つに分けて把握することになっています。

1つは、売買目的有価証券です。会計上の処理の説明時にあげた売買目的有価証券(短期的な売買によって売却益を得ることが目的)とほぼ同じ性質の株などが該当します。

もう1つは、売買目的外有価証券です。売買目的有価証券に該当しないものは、原則としてここに分類されることになります。

会計上や税務上で異なるタイプに分類されると、評価益や売却益の認識の有無・認識のタイミング、さらには処理方法や税負担が変わることがあります。

それぞれの分類基準を把握したうえで、正確に分類することが重要です。専門家のサポートを受けて適切に分類を行うようにしましょう。

法人が売却時に気をつけるポイント

法人が株を売却する場合、売却益(または売却損)の金額を確定させることが必要です。

売却益(売却損)は、売却代金に相当する譲渡金額から取得原価と譲渡経費を引いて求めることになっています。

譲渡金額や譲渡経費を把握することはそれほど難しくはありません。売却益(売却損)を計算するうえで重要になるポイントは、取得原価を正確に求めることです。

株式の売却損益=譲渡金額 ― 取得原価 ― 譲渡経費
※取得原価の求め方が複雑なので注意!

取得原価とは、売却した株を手に入れるにあたって負担した金額のことです。

取得原価の計算方法には、総平均法移動平均法があります。

どちらを適用してもよいことになっていますが、総平均法で計算を行いたい場合は、税務署に総平均で計算することを届出しておくことが求められます。
届出を行わない場合に適用できるのは、移動平均法が原則です。

総平均法

総平均法とは、事業年度中に購入したすべての株の購入代金などを合計します。その合計金額を取得した株数で割った平均単価を算出し、その平均単価に事業年度中に売却した株数を乗じて取得原価(譲渡原価)を算出する方法です。

この方法で取得原価(譲渡原価)を計算する場合は、事業年度中の譲渡単価は同じ単価で計算することになります。

移動平均法

移動平均法は、売却の都度、平均単価を計算する方法です。

株の売却前までに購入したすべての株の購入代金などを合計し、その合計金額を売却前に保有している株数で割って、売却時の平均単価を求めます。その平均単価に売却した株数を乗じた金額が取得原価(譲渡原価)です。

移動平均法では、売却の都度平均単価を計算することになるため、手間がかかります。

総平均法でも移動平均法でも、すべての事業年度を通算すれば売却損益の合計は同じです。

しかし、単一の事業年度だけに焦点をあてると、異なる単価を適用して取得原価(譲渡原価)を計算することになるため、当期の売却損益に差が生じます。

税負担や資金繰りへの影響も踏まえ、適用方法を検討することが重要です。

株の取得原価の対象となるもの

株の取得原価を把握する場合は、株の購入代金だけでなく、購入時に負担した購入代金以外の支出も取得原価に含まれることがある点に注意が必要です。

具体的には、証券会社などを通じて購入する場合に負担することになる売買手数料や委託手数料などが該当します。株を売買する場合は、購入時・売却時、いずれも手数料がかかる仕組みです。

このような手数料は、証券会社などから送られてくる売買明細書などで金額を把握することができます。

ただし、購入時に負担する支出であっても、取引内容によっては取得原価に算入せず、損金(費用)として処理することが一般的な支出もあります。

たとえば、株の保有者変更に必要となる名義書換料や、株式投資に関連して負担する通信費等は、通常は取得原価に含めず費用処理となることが多いです(個別の取扱いは内容により異なります)。

どんな支出が取得原価に含まれ、なにが含まれないかを把握しておくことが、正しい損益計算・納税計算につながることを認識しておきましょう。

配当金の取り扱いにも注意が必要

株による運用などを行う場合には、保有している期間中に配当金を受け取ることがあります。

配当金を受け取った場合も原則として課税所得の計算に反映されますが、配当金に対する課税には、二重課税の負担を軽減する措置がとられていることを知っておく必要があります。

二重課税とはどういうことを指しているのか、詳しく説明します。

株の配当金原資は、株式発行会社が生み出した利益です。

この配当原資には、法人の利益から法人税等を引いた後の「税引き後の利益」が充てられています。この配当金を受け取った会社や個人が、再度同様の課税を受けることになると、同じ所得に対し二重に課税されている状態になり得ます。

そのため、二重課税の負担を軽減する措置が取られているのです。

では、具体的な措置について見てみましょう。

まず、個人が上場株式について配当金を受け取った場合は、配当金が支払われる段階で、所得税と住民税、復興特別所得税として合計20.315%が源泉徴収されます。

総合課税で確定申告をして配当控除の適用を受けたり、売却損との相殺のためにあえて申告分離課税で申告したりするという選択肢があります。

また、申告をせず、源泉徴収だけで課税関係を終了させることも可能です。

一方、法人が配当金を受け取った場合は、二重課税調整の観点から、受取配当等の益金不算入が適用されることがあります。

ただし、益金不算入の割合は一律ではなく、持株割合などにより区分されます(例:持株割合が一定以下の場合は配当金の一部のみが益金不算入となる等)。自社の持株状況に応じて、適用関係を確認して処理しましょう。

法人が売却益を相殺する方法

株の売却によって利益が生じた場合、購入時と比較すると手元資金は増加します。

しかし、そのままの状態では、事業年度終了後に法人税等の負担が発生し、売却益の一部は税金の支払いで減少してしまうことになるでしょう。

そのため、売却益に伴う税負担を見据えて、損金を適正に計上し、課税所得を減少させる税金対策についても検討しておくことが大切です。

税金対策には、消耗品の購入や社員研修費の支払いなどさまざまな手法がありますが、法人保険に加入することで税金対策をする方法もあります。

法人保険に加入して保険料を支払うと、その保険料を損金として処理することが認められる場合があるのです。

損金として認められれば、株の売却で生じた益金を圧縮することができ、税負担を軽減できます。

ただし、保険料が損金算入できるかどうか、また損金算入できる範囲は、契約形態や受取人、解約返戻金の水準等により取扱いが異なります。2019年以降は、一定の返戻率を超える定期保険等で保険料の一部を資産計上(前払保険料等)する取扱いとなるなど、ルールが細分化されています。

保険料の損金算入は、将来的に生じることになる保険金や解約返戻金の受け取りを益金で処理する必要があることを考慮すると、課税を先送りにする効果があるとみることが可能です。

このように課税時期を先送りすることを、課税の繰り延べといいます。

課税の繰り延べであっても、直近の資金流出を抑える効果はあるため、資金繰りの観点からは効果があるといえるでしょう。

まとめ

法人が株式売買を行う場合は、株の分類や取得原価の計算について理解しておくことが求められます。

正しく処理を行わないと、正確な税額計算を行うことができません。

ただし、株に関する処理は専門的な知識が必要です。そのため、株式売買を法人として行う場合は、専門家に依頼して適正に処理することをおすすめします。

また、株式売却益が生じる場合は、法人保険などに加入して税金対策をすることも必要です。

保険の種類によって、損金算入できる保険料の金額は異なります。

保険料の全額を損金算入できる場合もあれば、一部のみ損金算入できる場合や、まったく損金算入できない場合もあるため注意が必要です。株に関することだけでなく、法人保険に関することも専門家に相談してみるとよいでしょう。

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