企業の経営が上手くいけばいくほど大変になるのが、決算対策です。大きな利益を出せることは会社にとって非常に喜ばしいことではありますが、それに伴って税金も増えていきます。

決算対策として法人税を抑える方法を知っておくことは、企業を健全に運営していくために必要不可欠だと言えるでしょう。

決算対策のひとつとして挙げられるのが、法人保険の活用です。保険料を損金算入することで、大幅な所得圧縮が狙えます。

ここでは、経営者や財務担当者の方に向けて、企業が決算対策として法人保険を活用するときの流れや、具体的な保険の種類などを、実務ベースで詳しく解説していきます。

なお、「決算対策として法人保険に加入すべきか」「他の決算対策と何が違うのか」など、経営判断ベースの解説は下記の関連記事をご覧ください。

生命保険を活用した決算対策とは?税務効果や「向いている企業」を解説

決算対策×法人保険

法人保険による決算対策の進め方

忙しい決算期の中、スムーズに法人保険を活用するためには、確認すべき順番を間違えないことが重要です。

ここでは、法人保険による決算対策の進め方を、以下の流れに沿って整理します。

  1. 今期の利益見込みを把握する
  2. 目的を1つに絞る(決算対策+何を実現したいか)
  3. 相談・見積に必要な情報をまとめる
  4. 契約する

① 今期の利益見込みを把握する

まずは、今期の利益見込み(着地見込み)を把握します。「利益がどれくらい出るか」を想定し、決算対策の必要性を検討します。

月次の試算表や直近の業績、決算時の見込み(売上・粗利・経費・特別損益)を整理し、どの程度の納税インパクトがあるかを確認しましょう。税理士に相談して、早めに数字を固めるのが確実です。

② 目的を1つに絞る(決算対策+何を実現したいか)

保険は本来、保障や貯蓄を目的としています。そのため、保障や貯蓄の面で「何のために加入するか」を定めることが大切です。

これは「加入目的の建前」としてだけではなく、保険選びや出口戦略を固めるためにも重要です。目的がはっきりすることで、自社にとって最適なプランを立てやすくなります。

  • 数年以内に退職金を準備したい→返戻率のピークが早い保険を選ぶ
  • 経営者の万が一に備えたい→保障が手厚い保険を選ぶ
  • 長期で少しずつ積み立てたい→低コストで最高返戻率が高い保険を選ぶ

企業ごとに状況が異なるため、まずは保険代理店のFP(ファイナンシャルプランナー)などに相談し、何を重視すべきか検討しましょう。

③ 相談・見積に必要な情報をまとめる

保険代理店などに問い合わせるときは、事前に以下の情報をまとめておきましょう。

  • 決算日
  • 今期の利益見込み
  • 決算対策に回せる予算(年額/月額)
  • 保障の目的(事業保障/退職金/福利厚生など)
  • 被保険者(代表者・役員・従業員など)
  • 現在契約している保険の情報(あれば)
  • 出口のイメージ(数年後に退職金、設備投資予定、借入返済計画など)

予算や出口イメージが固まっていると、提案の精度が上がり、不要な保険を避けやすくなります。

④ 契約する

加入する保険と出口戦略が固まったら、契約手続きを進めます。

決算期に加入する場合、次のポイントは要注意です。

  • 申込から成立までの時間(告知・診査の有無と必要期間)
  • 支払方法の確定(年払い等の選択、引落し日)
  • 経理処理の方針(損金算入・資産計上の考え方、税理士とのすり合わせ)

特に「年払いで当期の費用にしたい」「決算ギリギリで間に合わせたい」という場合は、スケジュールと処理方針を事前に固める必要があります。

契約が完了しても、決算日までに支払いが完了しないと今期の処理に間に合わないため、税理士を含めてスケジュールを確認しましょう。

決算対策で法人保険を活用するときに必要なもの

決算対策として法人保険に加入する際、必要になりやすい書類を解説します。

あくまで一般例なので、詳しくは税理士や保険代理店などにご確認ください。

相談・提案(見積もり作成)で用意するもの

保険代理店への相談や、見積もりを依頼するときに揃えたい情報は以下の通りです。

  • 会社情報(商号・所在地・事業内容・設立・従業員規模など)
  • 被保険者となる個人の基本情報(生年月日・役職・職種)
  • 希望条件(保険種類、保険金額、保険期間、保険料予算、払込方法)
  • 契約中の保険があれば、その資料(保険証券や設計書など)

さらに、決算対策としての提案制度を高めるためには、直近の決算書(または試算表)を求められる可能性があります。

申込(加入手続き)の必要書類

保険の申し込み段階に入ったときは、以下の書類を提出します。

  • 契約書類(申込書・告知書・医師の診査書など)
  • 法人の確認書類(登記事項証明書や印鑑登録証明書など)
  • 手続き担当者の本人確認書類(免許証・マイナンバーカードなど)
  • 実質的支配者(UBO)の申告書(保険会社所定の様式)
  • 口座振替依頼書(口座振替の場合)
  • 委任状+委任者/代理人双方の本人確認(代理人手続きの場合)

保険会社の所定書式がある場合も多いため、事前に確認してから用意しましょう。

決算対策に使える法人保険と商品例

決算対策として活用できる法人保険としては、以下が挙げられます。

  • 逓増定期保険
  • 長期平準定期保険
  • 養老保険

それぞれの特徴と商品例を紹介するので、保険選びの参考にしてください。

※企業の状況や目的によって適切な保険は異なります。必ず保険代理店などの専門家に相談しましょう。

逓増定期保険

逓増定期保険は、保険期間の途中で死亡保険金額が増えていく(逓増する)定期保険です。基準となる保険金額から、最大5倍ほどまで上がっていきます。

解約返戻率のピークが早い傾向にあるため、短期的に出口戦略を取りたい場合におすすめです。

逓増定期保険の商品例

定期保険/低解約返戻金型逓増定期特約Ⅱ(エヌエヌ生命)

エヌエヌ生命
商品名 定期保険/低解約返戻金型逓増定期特約Ⅱ
保険会社 エヌエヌ生命保険株式会社
契約可能年齢 25歳~70歳
保険期間 主契約:年満了10年~34年/歳満了55~100歳
特約:年満了9年~34年/歳満了55~90歳
返戻金 あり(低解約返戻金型、前期は返戻金を抑制)
最高解約返戻率 84.79%(契約例:50歳男性/A1型/100歳満了)
保険料 例:50歳男性/主契約50万円+特約1億円/100歳満了+特約85歳満了/年払 6,338,952円

最大7億円まで逓増する大型保障と、契約前期の返戻金を抑える仕組みが特徴の法人保険です。

公式パンフレットのシミュレーションでは最高解約返戻率が約84%なので、保険料の4割を損金算入できます。

契約例・シミュレーション
  • 被保険者:50歳男性
  • 主契約:定期保険 50万円(100歳満了)
  • 特約:低解約返戻金型逓増定期特約Ⅱ 1億円(A1型・85歳満了)
  • 年払保険料:6,338,952円(主契約 15,452円+特約 6,323,500円)
シミュレーション(契約例:50歳男性/A1型/85歳満了)

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経過年数 年齢 死亡・高度障害保険金 払込保険料累計(A) 解約返戻金(B) 返戻率(B/A)
1年 51歳 1億50万円 6,338,952円 839,450円 13.24%
5年 55歳 1億456万円 31,694,760円 24,609,300円 77.64%
10年 60歳 1億987万円 63,389,520円 53,751,500円 84.79%
21年 71歳 1億2,252万円 133,117,992円 112,800,750円 84.73%
22年 72歳 1億3,228万円 139,456,944円 118,202,050円 84.75%
30年 80歳 2億4,442万円 190,168,560円 134,663,400円 70.81%
40年 90歳 50万円 221,940,580円 399,800円 0.18%
50年 100歳 50万円 222,095,100円 0円 0.00%

※シミュレーション内容は、個別のケースや商品内容の変更により異なる場合があります。

長期平準定期保険

長期平準定期保険は、99歳満期など長期で保障される定期保険です。保険期間が長い分、通常の定期保険より保険料は割安になる傾向があります。

解約返戻率のピーク期間が長い傾向があり、予測が難しい「少し遠い未来」に向けて出口戦略を取りたい場合に向いています。

長期平準定期保険の商品例

PRIME定期(オリックス生命)

オリックス生命
商品名 PRIME定期(無配当定期保険)
保険会社 オリックス生命保険株式会社
契約可能年齢 15歳~75歳
保険期間 年満了:5年、10年~39年/歳満了:60歳・65歳・70歳・75歳・80歳・85歳・90歳~98歳満了
返戻金 あり
最高解約返戻率 84.8%
保険料 例:50歳男性/98歳満了(48年)/年払 2,860,600円

保障期間を選べる保険で、年満了型(最長39年)と歳満了型(最長98歳)があります。

パンフレットのシミュレーションでは、解約返戻率が3年目~20年目まで80%台を維持しており、柔軟に出口戦略を取りやすい点が特徴です。

契約例・シミュレーション
  • 死亡・高度障害保険金額:1億円
  • 被保険者:50歳男性
  • 保険期間・保険料払込期間:98歳満了(48年)
  • 年払保険料:2,860,600円

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経過年数 年齢 払込保険料累計(A) 解約払戻金(B) 払戻率(B/A)
3年 53歳 8,581,800円 6,944,000円 80.9%
5年 55歳 14,303,000円 11,927,000円 83.3%
10年 60歳 28,606,000円 24,277,000円 84.8%
15年 65歳 42,909,000円 36,034,000円 83.9%
20年 70歳 57,212,000円 47,419,000円 82.8%
25年 75歳 71,515,000円 58,112,000円 81.2%
30年 80歳 85,818,000円 67,181,000円 78.2%
35年 85歳 100,121,000円 73,307,000円 73.2%
40年 90歳 114,424,000円 73,978,000円 64.6%
45年 95歳 128,727,000円 55,739,000円 43.3%
48年 98歳 137,308,800円 0円 0.0%

※シミュレーション内容は、個別のケースや商品内容の変更により異なる場合があります。

養老保険

養老保険は、保険期間中に死亡した場合の死亡保険金と、満期まで生存した場合の満期保険金を持つ保険です。満期という出口が決まっているため、退職金準備などの資金計画と合わせやすいという特徴があります。

全従業員を加入させるなど、一定の要件を満たすことで福利厚生費扱いになり、保険料の半額を損金化できます(半額損金)。ただし、要件を満たすためには準備が必要なので、決算直前の対策というより、時間をかけて社内の整備を行いましょう。

養老保険の商品例

養老保険(無配当/5年ごと利差配当付)(ソニー生命)

ソニー生命
商品名 養老保険(無配当/5年ごと利差配当付)
保険会社 ソニー生命保険株式会社
契約可能年齢 0歳~78歳
保険期間 要確認(契約年齢により異なる/例:65歳満期)
返戻金 あり(解約返戻金あり)
最高解約返戻率 要確認
保険料 例:被保険者35歳/保険金額1,000万円/65歳満期/保険料払込期間:65歳まで/無配当/個別扱・月払
男性 30,510円/女性 29,910円

「無配当」と「5年ごと利差配当付」の2タイプが選択できる保険です。無配当なら保険料を抑制、利差配当付なら運用成績次第で配当金があります。

保険金額は100万円~7億円の範囲で設定できるため、企業規模に応じて柔軟な活用が可能です。

契約例・シミュレーション
  • 被保険者:35歳
  • 保険金額:1,000万円
  • 保険期間:65歳満期
  • 保険料払込期間:65歳まで
  • 払込方法:月払
  • 無配当
  • 月払保険料:男性 30,510円 / 女性 29,910円

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年齢/性別 45歳 55歳 65歳(満期)
男性 女性 男性 女性 男性 女性
保険料累計 3,661,200 3,589,200 7,322,400 7,178,400 10,983,600 10,767,600
解約返戻金(満期保険金) 3,120,000 3,120,000 6,410,000 6,410,000 10,000,000 10,000,000
返戻率(概算) 約85% 約86% 約87% 約89% 約91% 約92%

単位:万円

※シミュレーション内容は、個別のケースや商品内容の変更により異なる場合があります。

決算対策で法人保険を使う前に確認すべきこと

法人保険を活用するときは、正しい税務効果や損金算入ルールをわかっていないと、「思ったより税負担が減らなかった」「数年後に税負担が重くなり資金繰りが苦しくなった」といった失敗につながりかねません。

しっかり決算対策をするために、まずは「法人保険を使う前に確認すべきこと」を押さえておきましょう。

法人保険の税務効果を知る

まずは、法人保険でどのようなメリットを得られるのか、税制の面から把握しましょう。
特に大切なのは、以下の2点です。

  • あくまで「課税の繰延」であること
  • 損金算入割合は契約内容で変わること

「恒久減税」ではなく「課税タイミングの調整」と考える

法人保険の税務効果は、恒久的に税金をなくすことではなく、課税の繰り延べ(先送り)になります。

具体的には、保険料を損金算入することで課税所得が減り、ひいては課税額も減るという仕組みです。

一方で、将来受け取る保険金や解約返戻金は益金として課税所得になるため、トータルの課税負担は変わりません。

そのため、法人保険による決算対策は「毎年の課税を先送りして将来の大きな支出と相殺する」というスキームになります。

このスキームでは「大きな支出をどのように用意するか」という出口戦略が重要で、一般的には役員退職金や事業承継、設備投資などの費用があてられます。

※解約返戻金がない場合、課税の先送りではなくなりますが、単純にキャッシュアウト(現金流出)による利益の減少となります。「保険に入ること」がメインで、資金の返還は重視しないのであれば、返戻金なしの保険も選択肢の1つです。

損金算入割合は「保険の種類」や「返戻率」で変わる

「保険料を損金算入する」ことが法人保険による決算対策の根幹ですが、支払った保険料のうち、いくらまで損金算入できるかは契約内容によって決まります。

決算対策でよく使われる「定期保険」や「第三分野保険(医療保険など)」の場合、最高解約返戻率が基準です。

解約返戻率別の損金算入割合

  • 最高解約返戻率が50%以下→全額損金にできる
  • 最高解約返戻率が50%超〜70%以下→60%を損金にできる
  • 最高解約返戻率が70%超〜85%以下→40%を損金にできる
  • 返戻率85%超→ごく一部しか損金にできない

損金算入しない分は資産として計上し、保険期間の後半(解約返戻金が減っていく時期)などに取り崩して損金化します。

保険料を無理なく支払い続けられるか検討する

法人保険に加入すると、当然ながら保険料の支払いが必要です。

初年度の支払いは問題なくても、翌年度以降も継続して支払い続けられるか確認することが大切です。

特に、決算対策は「想定外に利益が上がったとき」に行う企業が多いため、単年度で考えがちです。

保険料の支払いで今後の経営計画に支障がでないか、事前にシミュレーションしておきましょう。

年払い(短期前払費用)の使いどころと落とし穴

決算対策として活用する場合、保険料は年払いが主流です。

年払いにすると、「短期前払費用」として1年分の保険料を損金に算入できます。決算日直前(数日~1か月程度)の駆け込み加入でも、今期の内に損金化できます。

ただし、毎年同じように保険料を支払う必要があるので、翌期以降の負担も含めて判断する必要があります。

年払いが向いている状況

  • 資金繰りに余力があり、年額の支払いでも運転資金が回る
  • 決算期の利益が一時的に大きく、納税負担の山をならしたい
  • 翌期以降も継続して保険料を支払える見込みがある

翌期の利益が読めない場合や、運転資金がタイトな場合に年払いを選ぶと、資金繰りが急に苦しくなることがあります。

短期の効果よりも継続性を優先する場合は、月払いでの契約も検討してみましょう。

出口戦略を立てる

決算対策として法人保険を検討するうえで、もっとも重要なのが出口戦略です。

出口戦略とは、解約返戻金や満期保険金、保険金などを「いつ」「何に使うために」受け取るのかを、加入前に設計しておくことです。決算対策として法人保険を使う場合は、出口が曖昧なまま加入しないことが原則になります。

退職金準備も兼ねたい場合の考え方

退職金準備を兼ねる場合は、「いつ退職金を支給するか」が出口戦略の中心になります。退職の予定時期や後継体制の見込みがある場合、出口の時期を決めやすく、決算対策としての整合性も取りやすいのが特徴です。

この場合は、次の観点を整理すると判断しやすくなります。

  • 退職予定時期と、そのとき必要な金額の目安
  • 退職金以外に、設備投資など大きな支出予定があるか
  • 途中で計画が変わった場合の方針(出口の代替案)

なお、退職金の金額は、同業他社の相場も踏まえ、役職・功績・勤続年数などを考慮して決めなければいけません。不自然に高額な退職金は、法人側にも受け取る側にも税務リスクがあるため、税理士に相談しながら制度設計しましょう。

事業保障を優先する場合の考え方

代表者に万一があった場合の運転資金確保や借入返済など、事業保障を優先する場合は、リスク評価の正確性が重要になります。

  • 借入金の残高や返済期間はどのくらいか
  • 経営者不在でも営業は続けられるか
  • 後継者はいるか、事業承継の準備はしているか

上記のように「事業上のリスク」を洗い出し、過不足のない保障額を設定することが大切です。

まとめ

法人保険を決算対策として検討する場合、最初に押さえるべきは「税金を消す手段ではなく、課税タイミングの調整である」という前提です。入口(保険料)だけで判断せず、出口(解約・満期など)まで含めて整合性を取ることが重要になります。

焦って加入すると、資金繰りの悪化や出口での税負担増につながりやすいので、「やらない判断」も含めて十分な検討が求められます。

決算までの残り時間が限られている場合は、必要情報を準備したうえで、法人保険の専門家(代理店やFP)に相談しましょう。長期的な視点を持ち、翌期以降に無理が生じないよう戦略を練ることが大切です。

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