企業にとって、安定した事業継続のための“備え”は、経営者や財務担当者にとって欠かせない課題です。そんな中、法人向け生命保険は企業が抱えるリスク対策として、退職金準備や事業承継、万が一の事業保障資金や福利厚生など幅広く活用できるサービスです。
しかし、「法人契約できる生命保険とは?」「契約の流れや注意点は?」などの疑問をお持ちの方も多いのではないでしょうか。生命保険商品は複雑で、契約内容によって税務処理が大きく変わるため、法人として慎重に検討する必要があります。
本記事では、法人向け生命保険の種類一覧と、経営に役立つ活用事例や商品選びの視点を解説します。さらに、契約時に失敗しないためのポイントも紹介しますので、ぜひ最後までご覧ください。
法人向け生命保険の種類一覧

法人向け生命保険とは、法人が契約者となり、経営者・役員・従業員を被保険者とする保険商品のことを指します。
法人契約専用の商品もあれば、法人でも個人でも契約可能な商品もあり、目的や企業の課題に応じて最適な契約商品を選ぶことが重要です。
ここでは、代表的な商品とその活用シーンを詳しく解説します。
定期保険
定期保険は、一定期間のみ死亡保障を提供するタイプの生命保険です。保険金額が一定の平準定期、増加する逓増、減少する逓減などに分かれ、契約期間終了とともに保障は終了します。
- 契約期間中のみ保障が有効(例:10年~30年など)
- 終身保険より保険料が安く、コストを抑えて備えられる
- 解約返戻金が出るタイプもある
- 生命保険を初めて検討する法人
- 一定期間のみ事業保障を確保したい法人
- シンプルな生命保険を探している法人
終身保険
終身保険は一生涯にわたり保障が続く法人向け生命保険です。定額タイプから変額・外貨建て・低解約返戻金型・積立利率変動型までさまざまな商品があり、いずれも資産形成や相続・事業承継に役立ちます。
- 保障が一生涯続く
- 貯蓄性が高い
- 事業承継資金などに活用しやすい
- 将来的な相続・事業承継対策をしたい法人
- 中長期的な資産保全や運用を重視したい法人
- 経営者や役員が高齢で、継続的な保障を確保したい法人
養老保険
養老保険は、一定期間の死亡保障に加え、満期時に満期保険金が支給される生命保険です。
保障と貯蓄のバランスが良いため、退職金の原資準備として特に人気があります。また、福利厚生の要件(従業員全員を加入対象にするなど)を満たせば保険料の全額を損金算入できるため、税金対策としても効果が期待できます。
- 満期保険金を受け取れる
- 死亡保障と貯蓄機能の両方を持つ
- 税制上のメリットを活かしつつ計画的な資金形成が可能
- 従業員の福利厚生を充実させたい法人
- 安定経営で長期的な資産運用も視野に入れたい法人
- 税金対策として生命保険を活用したい法人
収入保障保険
収入保障保険は、被保険者が死亡または高度障害となった場合に、保険金が原則として年金形式で支払われる生命保険です。
万一のときの事業継続や資金繰り、借入返済に役立ちます。
- 死亡時に一括ではなく分割・定額で支給される(一括で受け取る設計も可能)
- 長期的な収入補填として事業の安定に貢献
- 保険金の用途は自由で、資金繰り改善にも活用可能
- 属人性が高い(経営者または数名の役員が経営を支えている)法人
- 資金繰りにゆとりがないベンチャーや、借入金・リース契約がある法人
- 事業承継の体制が整っていない法人
生命保険以外の法人保険(損害保険・第三分野保険)
法人向けの生命保険を紹介しましたが、他に法人が加入できる保険にはどのようなものがあるのでしょうか?
大きく分けると、損害保険と第三分野保険の2つに分けられます。
- 損害保険…事故や災害に備える保険。火災保険や傷害保険、賠償責任保険など。
- 第三分野保険…生命保険にも損害保険にも当てはまらない保険。医療保険やがん保険、介護保険など。
生命保険だけでなく、法人向けの損害保険や第三分野保険(医療・がん・介護)も加えることで、包括的なリスク対策が可能になります。
法人向け生命保険で解決できる企業の課題とは?

「リスク対策や税金対策に生命保険を勧められたけど、具体的にどんなことに使えるの?」このような疑問を持つ方も少なくありません。
ここからは、生命保険が具体的にどのような企業課題に対して役立つのか解説します。
退職金の準備
経営者や役員の退任時に支払う退職金は、企業にとって大きな財務負担となります。突発的に退任や死亡が発生すると、資金繰りに大きな影響を与えるかもしれません。
そこで役立つのが、生命保険の解約返戻金を使った資金準備です。解約返戻金がある生命保険なら、死亡退職と勇退退職の両方に備えられます。
また、保険料の一部もしくは全額を損金として計上できるため、課税負担を軽減しつつ計画的に積み立てられる点もメリットです。
資金繰り・課税負担の調整
決算期ごとの利益の増減や法人税の負担増に頭を悩ませている企業にとって、生命保険を活用した「課税負担の平準化」は非常に有効な手段です。
先述の通り、生命保険の保険料は一部もしくは全額を損金として計上できるため、短期的な課税額の軽減ができます。思いがけず収入が増えてしまったときに保険へ加入すれば、決算対策として有効です。
加えて、保険解約時の返戻金と、将来的に発生する大口出費を相殺すれば、全体の課税負担が均等になります。
例えば、年間売上が1億円の企業で、6年後に3,000万円の退職金支給を予定している場合、法人税は以下のよう課税されます(税率30%と仮定)。
加入期間 | 課税額 |
---|---|
1年目 | 100,000,000円×30%=30,000,000円 |
2年目 | 100,000,000円×30%=30,000,000円 |
3年目 | 100,000,000円×30%=30,000,000円 |
4年目 | 100,000,000円×30%=30,000,000円 |
5年目 | 100,000,000円×30%=30,000,000円 |
6年目 | (100,000,000円-30,000,000円)×30%=21,000,000円 |
合計 | 171,000,000円 |
これに対し、年間保険料が600万円、6年後の解約返戻金が3,000万円の生命保険に加入すると、次のように変わります。
加入期間 | 課税額 |
---|---|
1年目 | 94,000,000円×30%=28,200,000円 |
2年目 | 94,000,000円×30%=28,200,000円 |
3年目 | 94,000,000円×30%=28,200,000円 |
4年目 | 94,000,000円×30%=28,200,000円 |
5年目 | 94,000,000円×30%=28,200,000円 |
6年目 | (100,000,000円-30,000,000円+30,000,000円)×30%=30,000,000円 |
合計 | 171,000,000円 |
生命保険に加入した場合、6年目の税額は減りませんが、1~5年目の課税負担は軽減されます。いわば、「退職金支給」という将来の損金(経費)を先取りしている状態です。
ビジネスでは、将来的にまとめて税負担を減らすより、毎年少しずつ軽減したほうが良い場合が少なくありません。「今の資金を無駄にせず、将来のためにうまく使いたい」という企業にとって、法人向け保険は有用なツールとなります。
事業承継・相続対策
中小企業の事業承継や相続対策では、相続税の納税資金や株式の引き継ぎ方法などが課題となります。これらの問題も、生命保険を契約しておけば柔軟に対応可能です。
例えば、死亡保険金を納税資金として活用すれば相続人の負担を軽減できますし、税理士やコンサルタントの手数料に充てれば新体制への移行も円滑に進みます。
「後継者に負担をかけたくない」「スムーズに次世代へ引き継ぎたい」という経営者の切実な悩みも、生命保険の活用で着実に解決へと近づけます。
キーパーソン不在時の事業保障
社長や役員などキーパーソンにもしものことがあった場合、会社の経営そのものが揺らぎます。特に中小企業では、経営者個人の信用が会社を支えているケースも多いため、万が一のときには早急な対応が必要です。
このようなとき生命保険に加入していれば、保険金を事業保障資金として活用できます。具体的には、当面の事業資金や借入金の返済、本人・遺族への見舞金や後任者採用のための費用などです。
「自分に何かあったら会社はどうなるのか?」という不安を抱える経営者にとって、生命保険は経済面での支えになります。
福利厚生の充実
従業員や役員の福利厚生として生命保険や医療保険を導入する企業も増えています。
例えば、従業員に死亡保障を提供し、万が一の安心を保証することで、「あんしんして働ける環境」の整備が可能です。また、対外的にも企業姿勢として評価されやすく、企業のブランディング向上にもつながります。
このように、生命保険による福利厚生の拡充は、法人にとって社内外にメリットがある施策です。
企業が保険に加入する流れ

法人向け生命保険の導入にはさまざまなメリットがある一方、契約内容や税務の扱いには細心の注意が必要です。「なんとなく良さそう」で契約してしまうと、思うように活用できず後悔する恐れがあります。
ここからは、企業が生命保険に加入する際の基本的な流れと、契約で失敗しないためのポイントについて解説します。
相談~契約までのフロー
法人の保険加入は、ただ商品を選ぶだけではなく、事前に自社の課題や財務状況、加入目的などを分析・検討し、保険の設計から税務処理までを一貫して見直す必要があります。
基本的には、次のフローで手続き等を進めましょう。
- 経営課題の洗い出し
…退職金準備、事業保障、承継対策など目的を明確化 - 相談・ヒアリング
…保険会社や代理店などに相談 - 提案書の受領・見積もり比較
…複数商品の比較検討(返戻率、保険料、税務効果) - 契約手続き
…申込・告知・契約内容の確認 - 加入後のフォローアップ
…年度ごとの見直し・目的変更時の再設計
初めての保険導入で不安を感じている方でも、上記のステップを押さえれば安心して進められます。
法人向け生命保険を比較するときのポイント
法人向け生命保険は各社さまざまな商品を提供しているため、自社に最適なものを比較検討する作業が欠かせません。
一見似ている商品内容でも、保険期間や特約の有無など、細かい内容で税務上の扱いが大きく異なります。各商品を比較するときは、以下の軸を意識しましょう。
比較軸 | チェックポイント |
---|---|
保障内容 | 死亡保障額・高度障害の補償範囲 |
返戻率 | 解約返戻金の推移とピーク、解約のタイミング |
税務効果 | 損金算入の可否・契約形態に応じた取り扱い |
柔軟性 | 契約変更・名義変更・一部解約が可能かどうか |
「保険料の安さ」「解約返戻率の高さ」といった一面だけで判断せず、多角的に比べることが大切です。
契約時に確認すべきこと
自社に適した生命保険が見つかっても、契約内容に不備や認識違いがあると最大限の活用ができません。
いざ契約する段階になったら、以下のポイントをしっかり確認し、不明点があればその場で質問しましょう。特に、後から変更が効きにくい部分(契約形態・受取人・税務処理)には要注意です。
- 契約者・被保険者・受取人の関係と課税の有無
- 解約返戻金の試算と受取タイミング
- 保険料支払い方法(年払・月払)と資金繰りへの影響
- 事故発生時の対応フローと免責事項
- 名義変更・中途解約の条件と手数料
相談先の選び方
法人向け保険は税務・法務・経営の3つが絡むため、誰に相談するかが結果に大きく影響します。「とにかく節税できる保険を」という営業担当の言葉を鵜呑みにするのではなく、信頼できる専門家に複数相談することをおすすめします。
種類 | 特徴・メリット | 注意点・デメリット |
---|---|---|
保険会社 | 自社商品については最も詳しく契約手続きもスムーズ。 | 他社の生命保険は取り扱いはなし |
保険代理店 | 複数の保険会社から、さまざまな商品の比較検討ができる。 | 担当者の提案レベルに左右される場合あり。 |
税理士・会計士 | 損金処理や財務面のアドバイスが可能。 | 生命保険自体の提案や契約手続きはできない。 |
FP(ファイナンシャルプランナー) | 中立的立場でライフプランや事業計画を考慮した提案が可能。 | 法人保険に特化しているケースは少ない(保険代理店に属している場合を除く)。 |
公益団体・協会 | 公正・中立な情報提供(例:中小企業団体、商工会議所)。 | 加盟員でなければ相談できない。提携している保険以外取り扱わない。 |
加入したい保険商品が決まっているなら保険会社、複数の商品を比較したいなら保険代理店と、状況に応じて相談窓口を使い分けましょう。
まとめ

法人向け生命保険は、正しく使えば「企業経営のリスクをコントロールする強力なツール」になります。単なる死亡保障だけでなく、企業経営における多くの課題に対応できます。
表面的な保険料の安さや節税効果に惑わされず、「何のために入るのか」を明確にしたうえで、自社にとって本当に必要な保障を設計することが何より重要です。
「よくわからないけど、気になっている」という方こそ、ぜひ信頼できる専門家に相談してみてください。生命保険を活用し、安定した企業経営を実現しましょう。
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- 適正納税の範囲で安定した財務を確保したい
- 損害保険や生命保険など万が一のリスクに備えた法人保険に加入したい
- 財務対策として最適な法人保険をプロの目線から提案してほしい
- 退職金準備や事業継承など出口戦略をそろそろ考えていきたい
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しかし法人保険の2019年の税制改正により全額損金参入が難しくなったように、今求められるのはルールの範囲内で適正納税をしつつ、
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