サイバー攻撃や情報漏えいが発生した場合、原因を特定するために「フォレンジック調査」がを行います。

フォレンジック費用は高額になりやすく、サイバー保険で補償されるかどうかは多くの企業にとって関心の高い論点です。

この記事では、フォレンジック調査にかかる費用とサイバー保険での補償条件などを解説します。サイバー保険の加入を検討中の方や、すでに加入済みで補償範囲を確認したい方は参考にしてください。

サイバー保険における「フォレンジック調査」とは何か

フォレンジック調査とは、サイバーインシデント(不正アクセス、マルウェア感染、情報漏えいなど)が発生した際に、デジタル証拠の収集・保全・解析を行う専門的な調査プロセスです。

インシデントの原因(どこから侵入されたか、何が起きたか)を特定し、訴訟や報告義務の法的証拠として保全するために行います。また、再発防止策の策定に必要な情報を得ることも重要な目的です。

調査の対象は、サーバーやパソコンのログ、ネットワーク通信の記録、マルウェアの検体など多岐にわたります。調査には専門的な知識と機材が必要なため、通常は外部の専門業者(フォレンジック調査会社)に依頼します。

サイバー保険でフォレンジック費用が補償対象となる条件

フォレンジック費用は、多くのサイバー保険で補償対象になりますが、いくつかの条件が設定される場合があります。

主な補償対象の条件

  • 不正アクセスや情報漏えいの被害(またはその疑い)が発生していること
  • 初動対応(システム隔離、ログ保存など)が適切に行われること
  • 保険会社への通知期限を守ること
  • 保険会社が提携するフォレンジック調査会社を利用すること

具体的な補償条件は、保険会社によって異なります。たとえば、サイバー攻撃の疑い・兆候段階でも補償されるのか、補償されるとしてもどのような状況なら対象になるのかは、保険商品の約款やパンフレットで確認する必要があります。

補償の対象外となるケース

サイバー保険には、補償対象から除外する「免責事項」が設定されます。

免責事項の例

  • 被保険者の故意または重過失による被害
  • 内部不正による被害
  • 既知のセキュリティ問題を放置していたことによる被害
  • 自然災害に起因する被害
  • 戦争やテロ行為、国家レベルの有事に起因する被害
  • 規約違反(通知の遅れや関連調査会社以外への依頼など)/li>

免責事項に該当すると、たとえ実損害が発生していても保険金が支払われない可能性があります。具体的な判断は個々の契約・状況によるため、保険会社への確認が大切です。

フォレンジック費用の相場:数百万円~1,000万円以上

フォレンジック調査の費用は、事案の内容、調査対象の端末数、調査範囲(ネットワーク全体か特定端末のみか)によって大きく変動します。

一般的な目安としては、PC端末1台あたり数十万円、サーバー1基あたり数百万円が相場です。また、1GBあたりなどデータ量で計算する場合もあります。

また、IPAの中小企業向け調査では、サイバー攻撃の可能性がある場合のフォレンジック調査費用の中央値は275万円、約7割が299万円以下、最大825万円という結果でした。

一方、JNSAの資料では目安として300万〜400万円、実例では、1,600万円の費用が示されています。

調査機関概要費用
IPA(独立行政法人情報処理推進機構)
※請負事業者:富士ゼロックス株式会社
シナリオ 1:「サイバー攻撃のおそれ」における予想損失額299万円以下:73%
300-499万円:15%
500万円以上:12%
JNSA(日本ネットワークセキュリティ協会)フォレンジック調査のアウトソーシングコスト目安および被害企業への実例インタビュー300~400万円
※情報通信業の事例として「事故原因・被害調査費用で1,600万円」を紹介

【出典】

IPA「令和2年度中小企業サイバーセキュリティ対策支援体制構築事業(サイバーセキュリティお助け隊事業)(実証対象:千葉県、埼玉県)成果報告書」
https://www.ipa.go.jp/security/reports/sme/ug65p90000019dx6-att/000091313.pdf

JNSA「サイバー攻撃を受けるとお金がかかる~インシデント損害額調査レポートから考えるサイバー攻撃の被害額~」
https://www.jnsa.org/seminar/2025/cross/data/20250827_02.pdf

上記はあくまでフォレンジック費用のみを評価したもので、その他の対応(損害賠償や法律相談、広告・宣伝費用など)を含めると、中小企業でもサイバー攻撃全体で数千万円~1億円以上の損害になる恐れもあります。

サイバー保険でどこまで補償されるか(限度額と免責)

サイバー保険でフォレンジック費用が補償される場合、単独枠ではなく、費用損害の一部として補償されるケースが一般的です。損害全体としての補償上限は1,000万円〜5,000万円が主流ですが、商品によっては数億円まで対応するものもあります。

ただし、商品によってはサブリミット(費目ごとの上限)が設定される場合があります。たとえば、「費用損害全体で5,000万円まで補償されるが、フォレンジック費用はそのうち300万円が上限」といった設定です。

また、損害全体の補償に対して、免責金額を設定するプランもあります。仮に100万円の自己免責があれば、その金額は自己負担になるという仕組みです。

加入時に、フォレンジック費用の補償上限がどの程度か、免責金額はいくらかなどを確認しておくと、事故発生時の費用見通しが立てやすくなります。

フォレンジック調査の流れ

フォレンジック調査は、一般的に以下のような流れで進みます。

STEP 1インシデント検知・初動対応

不正アクセスやマルウェア感染の疑いを把握し、被害拡大を防ぐために端末隔離・アカウント停止などの初動を行う。

STEP 2調査方針の確認

何が起きたのか、どこまで調べるのか、証拠保全を優先するのか、復旧を急ぐのかを整理する。

STEP 3証拠保全

ログ、端末、サーバー、メール、通信記録などを改変しない形で保存し、調査用データを確保する。

STEP 4原因調査・侵入経路分析

侵入経路、利用されたアカウント、不正プログラムの有無、攻撃者の行動範囲を分析する。

STEP 5被害範囲の特定

発生時刻、原因、被害内容、影響範囲、必要な対外対応を整理し、経営層や関係者へ報告する。

STEP 6事実関係の整理・報告

どの端末・サーバー・アカウント・データに影響が及んだか、情報漏えいの有無や対象件数を確認する。

STEP 7封じ込め・復旧対応

脆弱性修正、パスワード変更、端末再構築、監視強化などを行い、再発や被害拡大を防ぐ。

STEP 5再発防止策の実施

原因を踏まえて、運用改善、設定見直し、教育、セキュリティ対策強化を進める。

保険会社への通知とフォレンジック調査の手配は同時並行で進めることが多く、どちらかを後回しにすると対応が遅れる原因になります。

保険付帯のフォレンジックサービスと自社手配の違い

サイバー保険の付帯サービスとして手配されるフォレンジック調査会社と、自社で独自に調査会社を手配する場合とを比較すると、いくつかの違いがあります。

保険付帯サービスを利用する場合、保険会社が提携する調査会社が手配されるため、業者選定や保険会社との連携が円滑です。一方で、調査会社の選択肢が限定される場合や、対応地域・対応時間に制約がかかる場合もあります。

自社で調査会社を手配する場合は、自社の要件に合った業者を選定できる利点があります。ただし、保険金請求時に「保険会社の事前承認を得ていたかどうか」が補償の可否に影響することがあるため、手配前に保険会社へ確認を取ることが必要です。

いずれの場合も、事故発生後に業者を探し始めると対応が遅れます。平時のうちに、保険付帯サービスの窓口情報や、候補となるフォレンジック調査会社の連絡先を整理しておきましょう。

まとめ

フォレンジック調査は、サイバー事故の原因特定と証拠保全に欠かせないプロセスであり、費用だけで数百万円~数千万円かかります。

他の事故対応費用や損害賠償費用まで考えると、自力ですべてのコストをまかなうのは非常に困難です。そのため、サイバー保険による「金銭的損失への備え」が重要になります。

まずは、保険会社や代理店などに相談し、自社に必要な補償範囲や金額を検証してみましょう。

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