近年、サイバー保険の需要が高まっていますが、「価格の相場はどれくらいなのか」「補償内容との関係はどうなっているのか」という疑問を持つ企業は少なくありません。
サイバー保険の価格は、会社の大きさ・業種・補償の内容・セキュリティ対策で大きく変わります。安ければ月額5,000円前後、高ければ月額10万円以上と、保険料に大きな幅があります。
本記事では、サイバー保険の価格相場や補償内容との関係性、料金が変動する理由、実際の保険料例を解説します。サイバー保険の価格がどのように決まるのか把握し、自社にとって最適なプランを見極めましょう。
サイバー保険の価格相場は月額5,000円~10万円以上と幅広い
サイバー保険の料金相場は、企業規模・業種・売上・補償内容・セキュリティ対策の有無などによって大きく変動します。
中小企業の場合は月額5,000円前後から加入できるケースもありますが、重要な個人情報や機密情報を扱う業種では10万円を超えることも珍しくありません。これは、事故発生時の損害が高額になりやすく、必要となる対応サービス・支払範囲が広がるためです。
どの補償が自社に必要かを決め、ムダを省くことが、サイバー保険の価格を抑えるコツとなります。
補償内容と価格の関係性
以下は、サイバー保険の一般的な補償内容と、それぞれが価格に与える関係性をまとめたものです。「サイバー保険で得られる補償と予算感」をイメージする参考にしましょう。
- 情報漏えい対応費用
- 個人情報が漏洩した場合の通知・調査・コールセンター設置など、事故発生時に必要な対応コストを補償。範囲が広いほど保険料も増える。
- サイバー攻撃によるシステム復旧費用
- 不正アクセスやランサムウェアにより事業システムが停止した場合の復旧作業に対応。技術者の確保が難しい場合、費用は高額になる。
- 賠償責任補償
- 顧客情報が漏えいした場合の損害賠償に備える補償。業種によって賠償リスクが大きく異なるため、料金差が生まれやすい。
- 事業中断による損害補償
- 事故により売上が減少した場合の損害を補填する特長を持つ補償。事業規模が大きい企業ほど保険料が高くなる。
- 外部専門家サポート費用
- 発生原因を特定し再発防止策を行うための専門サービス。高度なセキュリティ技術が必要なため、補償範囲が広いと料金が増加。
補償内容を絞れば価格は下がりますが、実際に事故があったとき「補償が足りない」となっては意味がありません。自社の業種や扱う情報の特性、想定されるリスクを踏まえ、必要な補償を選ぶことが最適な料金設定につながります。
実際の保険料例
実際に公表されている料金例を見ることで、どの補償が価格に影響するのかがより具体的に理解できます。
ここでは、損保ジャパンが公開しているサイバー保険の保険料例を参考として紹介します。
| 事業内容 | 保険料 | |
|---|---|---|
| 売上高5億円の場合 | 売上高30億円の場合 | |
| 小売業 | 7,920円 | 16,090円 |
| 製造業 | 5,810円 | 11,800円 |
| 卸売業 | 5,280円 | 10,730円 |
| 物流業 | 14,080円 | 27,250円 |
| 建設業 | 5,280円 | 10,730円 |
| 飲食業 | 10,560円 | 21,460円 |
※参照:損保ジャパン「情報漏えい事故対応|サイバー保険」
(https://www.sompo-japan.co.jp/hinsurance/cyberrisk/)
※支払限度額:賠償1億円・費用3,000万円、自己負担額10万円、任意性の「セキュリティ対策申告」について項目の半分程度を実施している想定。
あくまで試算ですが、卸売業や建設業などは低価格、飲食業や物流業などは高価格の傾向であることがわかります。
また、上記の表にはありませんが、サイバーリスクが高いIT事業者や、取り扱う情報の量や機密性が高い業種(医療機関や金融系など)は、より高価格になる可能性があります。
サイバー保険の価格を決める3大要素
サイバー保険の価格は、主に以下の3要素で決まります。
- 事業内容
- 売上高
- セキュリティ対策の状況
各種要素を比較し、自社のサイバーリスクに即した選び方をすることが重要です。それぞれどのような影響があるのか解説します。
①事業内容
事業内容のサイバーリスクが高いか低いかで、サイバー保険の価格は大きく変わります。
特に、医療・IT・EC・金融・教育など、個人情報や機密情報を大量に扱う業種は、漏えい・不正アクセス時の損害や第三者賠償が高額になりやすく、価格も高めの傾向です。
一方、製造業や建設業などはサイバーリスクが相対的に低いため、保険料を抑えられる傾向にあります。
業種別リスクの高低を把握し、自社に必要な補償を過不足なく選ぶことが、合理的な価格の判断につながります。
②売上高
売上高が大きいほど、サイバー攻撃で事業が止まった場合の逸失利益が増え、結果として想定損害が拡大します。保険会社は「発生しうる損害額」を基準に支払限度額や料金を設定するため、同じ補償内容でも売上高の高い企業は保険料が上がる傾向です。
さらに、取引先・顧客数が多い場合は、情報漏えい時の通知や賠償の対象が広がり、対応コストも増加します。したがって、売上規模に見合った補償額の設定と、免責・条件の調整が重要です。
補償は小さいと不十分に、大きすぎると費用の無駄につながるため、保険代理店などと相談て「適正水準」を見極めることが大切です。
③セキュリティ対策の状況
セキュリティ対策が整っている企業は、事故の発生確率や被害拡大リスクが低いため、保険料の割引や有利な条件が適用される場合があります。
指定の対策項目を満たすことで割引が適用される商品もあり、「保険に依存しない企業体制」の構築が保険料の節約につながります。
セキュリティ対策とサイバー保険を組み合わせて、総合的な備えを整えましょう。
費用を抑えるために企業が取るべき対策
「サイバー保険に加入したいが、価格はなるべく抑えたい」
このように考える企業は少なくありません。
サイバー保険の費用は、選び方と事前のセキュリティ対策で大きく変わります。ここでは、無駄なコストをカットできるよう、企業がサイバー保険に加入する際のコツを解説します。
自社の「サイバーリスク」と「必要な補償」を検討する
第一に、「自社がどのようなサイバーリスクを抱えているか」「それらに対して必要な補償はどのくらいか」を把握しましょう。
具体的には、自社が扱う情報の種類(個人情報・機密情報・決済データなど)や事業プロセス、外部公開システムの範囲を棚卸しし、発生しうる事故と損害を具体的に想定します。そこから想定シナリオを作成し、対応費用の内訳と必要な補償範囲を整理します。
ただし、補償範囲を絞り込みすぎると補償が不足し、逆に広げすぎると料金が膨らみます。法人向けの保険代理店などに相談し、精度の高いシミュレーションを行うことが大切です。
自己負担額(免責金額)を高くする
サイバー保険における「自己負担額(免責金額)」とは、事故が発生した際、契約者が自己負担する費用のことです。自己負担額の設定がある場合、その金額を差し引いて保険金が支払われます。
自己負担額の内容はさまざまで、10万円などの金額ベースの場合もあれば、「補償額に対して10%」などの割合の場合、「事故発生から3時間」の時間ベースのものもあります。
自己負担額を引き上げると、保険会社の支払開始ラインが上がるため、保険料は下がります。軽微な事故や小口の対応費用は自社負担、重大事故は保険でカバーという仕組みなので、合理的なプラン設計が可能です。
設定のコツは、過去に発生した小規模なインシデントや、同業種の事故例などを参考に、キャッシュフローで吸収可能な水準に合わせることです。想定最大損害や売上規模とのバランスを取り、条件(免責方式の種類や適用基準)も確認のうえ設定しましょう。
セキュリティ対策を強化する
多くの保険商品で、所定のセキュリティ対策を満たす企業は割引や有利条件の対象になります。
以下は。セキュリティ対策の具体例一覧です。
- 多要素認証(管理系・外部アクセス)
- パスワードにもう1つの鍵(スマホの確認コードや認証アプリ)を設定する。
- 脆弱性管理とパッチ適用の徹底
- 更新状況を適切に管理し、システムやソフトの脆弱性を解消する。
- EDR/アンチマルウェアの最新化
- 最新のウイルス対策システムやEDR(不審な動きを検知・隔離するツール)を使用する。
- バックアップの多層化と復旧手順のテスト
- データを複数の場所・方法でコピーし、定期的な復元テストも実施する。
- 特権アクセスの最小化
- 従業員や管理者の権限を整理し、属人化や乗っ取りを防ぐ。
- ログ監査とアラート運用
- 不審なアクセスなどを監視し、記録・通知を自動化する。
- 従業員教育・フィッシング訓練
- データや各種端末の取り扱い、メールの確認プロセスなど、各種ルールを徹底させる。
これらを実行すれば、事故の発生確率と拡大リスクを同時に下げ、対応に要する費用も抑えられます。
商品によってはセキュリティ診断や事前申告で割引が適用される場合があるため、条件や評価項目を事前に確認し、対策の優先順位を決めましょう。
複数の商品プランを比較する
同じサイバー保険でも、提供する保険会社や商品プランによって、価格は変動する可能性があります。
たとえば、「A社は賠償補償に対する保険料が割安」「B社は休業補償がオプションではなく標準」など、強みとする部分は異なります。それらを1つずつ精査し、自社と相性が良いサイバー保険を選ぶことが、価格を抑えるためには大切です。
比較するときは、補償内容や支払限度額、支払基準、対応サポートやオプションの有無などを比較しましょう。保険代理店に複数社の見積りを依頼すると、効率的に比較できます。
よくある質問
サイバー保険の加入にあたっては、価格以外にも多くの疑問や不安があります。
よくある質問とその回答をまとめてたので、スムーズな検討・手続きにお役立てください。
サイバー保険の加入は義務?
法的な加入義務はありません。一方で、取引先のセキュリティ要件や業界ガイドライン、個人情報保護の徹底が求められる場合には、「契約上の加入義務」があるケースも増えています。
たとえば、海外取引(特に米国やEU)がある企業や、特定のサプライチェーン(防衛産業や自動車産業など)においては、実質的な義務化が進んでいます。
近年はサイバー攻撃による被害も多発しているため、義務はなくてもリスク対策として加入を検討することを検討してみましょう。
サイバー攻撃を受けたときの復旧費用はいくら?
事故の規模次第ですが、「小規模だと100万円〜」、深刻だと「数千万円規模」になることがあります。
下記は、主な費用と金額相場です。
- 初動対応・原因調査
300〜400万円(機器数台規模の調査の場合) - 端末・サーバの調査費
機器1台あたり数十万円〜 - システム復旧
数十万円〜数百万円 - 情報漏えい時の通知・問い合わせ対応
120〜200万円程度 - 消費者への賠償
1人あたり数千円程度~
これらの費用は各条件で総額が大きく変わるため、まずは自社条件での見積り検討が重要です。
サイバー保険を選ぶときに見るべきポイントは?
サイバー保険は「価格(保険料)の安さ」だけで決めず、事故のとき本当に使える内容かを、同じ条件で比較することが大切です。
- 補償の範囲
原因調査・復旧・顧客対応(通知/問い合わせ)・損害賠償・事業停止の損失まで入るか。対象外(出ないケース)も確認。 - 金額条件
上限額/自己負担額(免責)/補償される期間(何日・何か月まで)をチェック。 - 事故対応サービス
24時間連絡できるか、専門家を手配してくれるか、初動対応が早い仕組みかなど。 - 業種・規模の適合性
医療・IT・小売など、業種別リスクへの補償やサービスの有無。また、補償内容が中小企業向けか中堅企業以上向けか。 - 加入条件
加入するための最低条件(セキュリティ対策の要件)、価格の割引条件など。
補償範囲と上限額、自己負担額を揃えて見積りを取り、各サイバー保険の価格を横並びで比較しましょう。
まとめ
サイバー保険の価格は、業種・売上・セキュリティ対策と補償内容で決まります。月額数千円程度で収まる場合もあれば、10万円以上かかる場合もあり、企業ごとに千差万別です。
適正価格で契約するためには、まず自社のサイバーリスクと想定損害を整理し、必要補償に絞って条件を設計することが大切です。免責や限度額を調整しつつ、複数プランを比較することで、費用対効果を向上できます。
価格重視で契約した結果、補償が不十分になってしまっては意味がありません。保険代理店などの専門家とも相談し、自社に最適な価格とプランでサイバー保険に加入しましょう。
法人保険比較.netの
専門家マッチングサービス

- 法人保険を経営に役立てたい
- いま加入している保険を見直したい
- 退職金制度や福利厚生を導入したい
- 事業継承や相続について考えてたい
- 税金対策や財務戦略を相談したい
法人領域を専門とするコンサルタントが、業界の傾向や各種法規も踏まえて"無料"で最適な保険プランを提案します。




















