会社設立
NPO法人設立のポイント

非営利組織設立にあたっての基本事項と利用したい制度

内閣府のNPOホームページによると、日本において認証されたNPO法人は2018年5月31日現在で51,829件

年々増加傾向にあることからも、NPO法人設立、起業にメリットを感じている会社経営者様が多いといえそうです。また、税金対策としてNPO法人を利用するという方も中にはいるそうです。

そこで今回はNPO法人に設立に関するあらゆる情報を調べまとめてみたので、会社設立に興味のある方や、NPO事業に興味がある方はぜひ参考にして頂き、NPO法人の設立や起業に役立ててみてはいかがでしょう。

それでは早速、NPO法人の概要から説明していきたいと思います。

そもそもNPO法人とは?会社と違う点、制度の在り方など

NPO法人とはどのような組織なのでしょうか。設立条件やメリット、デメリットを紹介する前に、まずは基本的な概要をおさえておきましょう。

NPO法人は社会貢献活動を期待される組織

NPOは、「Non-Profit Organization 」の略称です。他にも「Not-for-Profit Organization」と呼ばれることもあります。

簡単にいえば、収益を目的としない団体を指します。そのため団体を組織する構成員に収益が分配されることはありません。

もちろん収益を得ることが禁止されているわけではありませんが、活動によって得た収益は社会貢献活動に充当することとなります。

つまり収益を目的とし、社員に収益を分配する「会社」とは一線を画すものとなるでしょう。

キーワードは「特定非営利活動促進法」という制度

NPO法人の健全な発展を目的として、1998年12月に施工された「特定非営利活動促進法(※通称NPO法と呼ばれることもあります。)」

特定非営利活動の内容や制度の目的、税法上の特例などさまざまな制度が掲載されています。2003年には法の制度改正が行われ、特定非営利活動の範囲が大幅に拡大されました。

そのあとも2005年から2年連続で法人格の認定要件制度を大幅に緩和。インターネットの普及に伴って認証申請添付書類のオンライン公表を行ったり、貸借対照表を電子公告によって掲載したりと、時代の流れに合わせた制度の改正が適宜行われています。

非営利活動の制度に沿った内容とは

では、具体的に会社と一線を画す非営利活動とはどのような活動を指すのでしょうか。

内閣府のNPO公式ホームページによると、以下の20の活動に限定しています。

  1. 保健、医療又は福祉の増進を図る活動
  2. 社会教育の推進を図る活動
  3. まちづくりの推進を図る活動
  4. 観光の振興を図る活動
  5. 農山漁村又は中山間地域の振興を図る活動
  6. 学術、文化、芸術又はスポーツの振興を図る活動
  7. 環境の保全を図る活動
  8. 災害救援活動
  9. 地域安全活動
  10. 人権の擁護又は平和の推進を図る活動
  11. 国際協力の活動
  12. 男女共同参画社会の形成の促進を図る活動
  13. 子どもの健全育成を図る活動
  14. 情報化社会の発展を図る活動
  15. 科学技術の振興を図る活動
  16. 経済活動の活性化を図る活動
  17. 職業能力の開発又は雇用機会の拡充を支援する活動
  18. 消費者の保護を図る活動
  19. 前各号に掲げる活動を行う団体の運営又は活動に関する連絡、助言又は援助の活動
  20. 前各号に掲げる活動に準ずる活動として都道府県又は指定都市の条例で定める活動

引用元:「特定非営利活動とは」内閣府NPOホームページ

キーワードは、”不特定多数の人のために収益を与える活動かどうか”という点。

NPO法人の起業、設立に興味がある方は、これから行おうとしている活動がいずれかに該当するかどうかチェックする必要があるでしょう。

認証法人と認定法人

特定非営利活動法人は大きく分けて2つの種類に分類されます。一つは「認証法人」、もう一つは「認定法人」です。

どちらも特定非営利活動促進法に基づいていることには変わりませんが、ステップアップの段階に違いがあるようです。それぞれ詳しくみていきましょう。

特定非営利活動法人として認められるためには、3つのフォローを遂行する必要があります。 

NPO法人設立までの流れ

引用元:「特定非営利活動法人(NPO法人)設立までの流れ」内閣府NPOホームページ

まず一つ目の段階として、必要書類を揃えて所轄庁に提出します。所轄庁とは、NPO法人の認定・認証・監督などの重要な役割を担う組織です。

基本的には活動を行う団体が属する都道府県となります。ただ大阪市や横浜市など、特別に指定されている都市の管轄内であれば該当の指定都市が管轄することになります。

判断に迷う場合は、各所轄庁へ問い合わせてみてください。必要書類とは具体的に以下の通りです。

  1. 定款
  2. 役員名簿(役員の氏名及び住所又は居所並びに各役員についての報酬の有無を記載した名簿)
  3. 役員の就任承諾書及び誓約書の謄本
  4. 役員の住所又は居所を証する書面
  5. 社員のうち 10 人以上の氏名及び住所又は居所を示した書面
  6. 認証要件に適合することを確認したことを示す書面
  7. 設立趣旨書
  8. 設立についての意思の決定を証する議事録の謄本
  9. 設立当初の事業年度及び翌事業年度の事業計画書
  10. 設立当初の事業年度及び翌事業年度の活動予算書

引用元:「 申請書類の提出」内閣府NPOホームページ

これらを所轄庁がチェック、審査し、特に問題がなければ認証へのフローへと進みます。

また所轄庁が必要書類を受け取った日から1カ月間は、書類の一部の内容が世間へ公表されるという点もポイントです。

閲覧可能とされている内容は、「申請された年月日」「NPO法人の代表者名」「NPO法人の目的」などです。これは所轄庁の市民全員が自由に閲覧できることを意味し、健全なNPO法人を設立、起業する礎ともなります。

所轄庁がチェックするポイントは「営利を目的とした団体ではないか」、「10人以上の社員を有しているか」などといった基準です。無事設立が認証されれば申請者、つまりNPO法人の代表者が登記を行います。これで晴れて特定非営利活動法人が誕生します。

ここまでは「認証法人」と呼ばれる法人格です。認定法人となるためには、認証法人として設立、起業してから1年を超える活動実績が必要です。

認定申請書を提出する前に所轄庁へ相談し、欠陥事由がないと判断されれば認定の申請を行うことが可能です。

そして「情報の公開をしっかりと行っている」、「収益を得る活動が全活動のうち50%を下回る」などの条件を満たしていれば、認定法人として認められます。

増え続けるNPO法人数

特定非営利活動法人として認められている認証法人数は2018年5月31日現在で51,829件、認定法人数は1,079件。認証法人数を所轄庁別に並び替えると、一番多い都道府県は首都である東京都の10,414法人です。

そして大阪府の1,786件、埼玉県の1,771件、千葉県の1,641件、神奈川県の1,515件と続きます。認定法人数の場合は東京都の285件、横浜市の52件、大阪市の39件、埼玉県の32件、千葉県の31件という順です(特例認定法人数も含む)。

こうしてみてみると、首都圏や主要都市を中心にNPO法人が多いことが分かります。企業の本社機能や支社、営業所の数が集中している場所にNPO法人も設立、起業されていることがみてとれますね。

それではNPO法の制度が大幅に改正された、2011年以降の特定非営利活動法人認定数の推移を確認してみましょう。

NPO法人の認定数の推移

引用元:「特定非営利活動法人の認定数の推移」内閣府NPOホームページ

こちらは認定法人数のみの推移表です。2011年から2018年までの8年間でおよそ4.4倍というスピードで増えていることが分かります。

認証法人数はというと、2011年から2018年までの8年間でおよそ1.1倍。認定法人数と比較すると少ないように感じるかもしれませんが、実際の数でいえば6,691件の増加です。どちらも短期間に驚異的なスピードで増加していますね。

このような傾向を受けて、内閣府では今後も堅実に増加をするという見方を示しています。

誰でも設立、起業できる?活動していくにあたっての条件や対策とは

それでは具体的にどのような条件がそろえば、NPO法人として活動を継続できるのでしょうか。いくつかの条件や対策をまとめてみたのでご紹介いたします。

たとえ利益が出ても非営利活動のために使用しなければならない

序盤でも説明した通り、特定非営利活動法人の目的は社会貢献活動です。そのため収益を積極的に得ようとする行為は許されません。

特定非営利活動促進法の第5条第1項では、以下のように定められています。

「その他の事業を行う場合において、利益を生じたときは、これを特定非営利活動に係る事業のために使用しなければならない」

つまり活動をした上で得た収益は、社会貢献活動又は法人を支える財源として使用されることが望ましいとされています。

情報公開を適切に行う

NPO法人として活動していくためには、事業年度が始まって3カ月以内に必要書類を作成しなければなりません。提出先は所轄庁です。

ここで主な必要書類を3つ紹介します。

  • 前年度の事業報告書
  • 計算書類
  • 役員名簿

また、作成した書類は全ての事業所に据え置く必要があります。組織の構成員や利害関係者がすぐにみられる状態にしておくことが大切です。適切な情報公開を行い、健全な組織体制を目指す対策をとりましょう。

明確明瞭な会計処理

NPO法人の活動内容は、「特定非営利活動に係る事業」「その他の事業」とに分けられます。

「特定非営利活動に係る事業」は、上記で紹介した「保健、医療又は福祉の増進を図る活動」や「職業能力の開発又は雇用機会の拡充を支援する活動」などを指し、「その他の事業」はそれらに該当しない活動内容を指します。

もちろんNPO法人が公益を目的とした団体である以上、収益を目的とした事業以外に絞られるので注意してください。そして「その他の事業」として活動するなら、「特定非営利活動に係る事業」の会計と分けて処理をする必要があります。

明確明瞭な会計処理は、認証法人になるための条件「運営組織及び経理が適切であること」、「事業活動の内容が適切であること」にも関連する大切な義務です。

健全なNPO法人を運営するためにも、必ず会計は別にして対策をとりましょう。 

納税

収益を主たる目的としないNPO法人でも、税金を納める必要がある場合もあります。例えば以下の通りです。

  • 法人税
  • 事業税
  • 地方税
  • 消費税
  • 相続税
  • 贈与税

他にも不動産取得税、固定資産税などさまざまです。

管轄される自治体によっては減税、免税されることもあるので、まずは所轄庁へ税金のことを相談してみると良いでしょう。

設立、起業におけるメリット!税金対策にもつながる?

NPO法人が驚異的なスピードで増えていることは分かりましたが、なぜそれほど注目される組織にまで成長したのでしょうか。

ここでは、考えられるメリットをいくつか紹介します。

社会的な信用力がある

NPO法人は内閣府や都道府県などが認める法人格。適正なフォローを踏まなければ設立、起業できないため、社会的な信用は大きいでしょう。

それに伴って以下のようなさまざまなメリットを享受できそうです。

  • 各種取引が行いやすくなる
  • 世間の認知度が高くなる
  • 法人名義で契約をすることができる

低資金で設立できる

一般的な企業の設立、起業と異なる点は、定款認証代金・印紙代・登録免許税などの費用や税金の免除です。

また、出資金や資本金といった法的な決まりもないため、比較的低資金で設立することができます。 

税金面での優遇措置

会社経営者の皆様にとって気になるメリットは、税金制度面での優遇といえるかもしれません。一般的な法人の場合は法人税、個人事業主の場合は累進課税による所得税が課せられます。

その一方でNPO法人は所得税が課せられません。ただし収益事業を行っていない場合のみに限られるので、注意が必要です。また、NPO法人に寄付をすればその分「寄付金控除」として税金対策効果が得られる場合も。

具体的な例を紹介しましょう。 

【前提条件】

  • 法人(普通法人):今年度の所得金額(益金-損金)が600万円
  • 法人税の計算式:所得金額×15%
  • 寄付金控除額の計算式:特定寄附金の額の合計額-2,000円(どちらの計算式も2017年4月1日現在法令などによる)

①NPO法人に寄付をしない場合

  • 600万円×15%=90万円

②NPO法人に50万円の寄付をした場合

  • 600万円×15%=90万円
  • 50万円-2,000円=49万8,000円
  • 90万円-49万8,000円=40万2,000円

→40万2,000円の税金対策効果(他に控除金額が何もない場合)

寄付を受けたNPO法人は、またその資金を組織の発展や活動のために使用することができます。

社会貢献というアピールを世間にできるだけでなく、税金対策効果が期待できるという点は、会社経営者の皆様にとって大きなメリットといえそうです。

設立におけるデメリット!様々な制約がある?

メリットがある反面、デメリットももちろんあります。以下でご紹介していきます。

活動の範囲が限定されてしまう

NPO法人として活動できる基本的な範囲は、特定非営利活動促進法に定められた20項目の活動だけです。

他にもさまざまな規制があるため、設立に二の足を踏んでしまうという会社経営者の方もいるかもしれません。

設立、起業や認証に時間がかかる

NPO法人の最終的な決定権は「所轄庁」にあります。

そのため書類の申請や事前相談などが必要となり、設立認証までの期間を考えると、4~6カ月程度かかるという場合も。

今すぐに設立を目指すというケースには向いていない場合もあるでしょう。

NPO法人向けの保険とは?保険の特徴と加入条件

NPO法人を設立したら、保険もいっしょに検討しましょう。

NPO法人向けの保険概要

個人や一般法人に保険商品があるように、NPO法人にも各種保険商品が販売されています。プランは保険会社によってさまざまですが、「基本契約+オプション契約」というセットの保険がメジャーなようです。

補償内容をいくつか紹介しましょう。

  • 訴訟費用
  • 事故対応の費用
  • 活動中の構成員のケガ治療費用
  • 構成員の横領、犯罪による補てん費用

基本的には賠償責任や傷害保険などを含んだ保険構成となっているようです。

また民間企業の保険だけでなく、全国福祉協議会でもボランティア、イベント用保険としてNPO法人を対象としている保険もあります。

加入するための条件とは

加入するにあたっての条件は保険会社やプランによってさまざまです。

  • NPO法人であること
  • 構成員の名簿を提出すること
  • 加入に必要な書類の提出

詳しい内容は、各保険会社か法人保険の専門家に尋ねてみましょう。

助成金を活用できる場合もある

あらゆる分野で活躍することができるNPO法人。

寄付金や会費以外にも収入源を確保できるということは、会社経営者の皆様にとって大きなメリットとなるでしょう。財団は大手企業の基金や機構などさまざま組織。活動の目的によって使える助成金の種類が異なるので注意が必要です。

まずは自身のNPO法人が行っている活動内容がどのような助成金とマッチしているのか確認、検討してみましょう。 

具体的に助成金の一部を紹介します。

助成制度名 草の根技術協力事業
(草の根パートナー型)
実施団体 (独法)国際協力機構(JICA)
対象事業 事業プロジェクト、その他
募集期間 2018年7月1日~2018年11月30日
助成制度名 2019年度助成
(地域文化の振興)
実施団体 (公財)三菱UFJ信託地域文化財団
対象事業 事業プロジェクト
募集期間 2018年8月1日~2018年11月30日
助成制度名 日母おぎゃー献金基金
(施設助成金)
実施団体 (公財)日母おぎゃー献金基金
対象事業 施設・設備
募集期間 2018年8月1日~2018年11月30日
助成制度名 芸術活動への助成
実施団体 (公財)朝日新聞文化財団
対象事業 事業プロジェクト
募集期間 2018年7月1日~2018年11月28日
助成制度名 平成30年度
美術に関する国際交流助成
実施団体 (公財)ポーラ美術振興財団
対象事業 事業プロジェクト
募集期間 2018年10月1日~2018年11月12日
助成制度名 助成事業 
(地域文化の振興をめざして)
実施団体 (公財)全国税理士共栄会文化財団
対象事業 事業プロジェクト
募集期間 2018年6月5日~2018年10月31日

※どの助成金も募集期間が設定されているので注意が必要 

2018年7月末現在では、およそ120件の助成金が用意されています。どんな助成金があるのかはこちらのサイトで確認できるので、こまめにチェックしてみるといいでしょう。

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【まとめ】会社経営者様はNPO法人設立のポイントをおさえた上で検討を

ここまでNPO法人の概要やメリット、デメリットなどについて説明してきました。

いくつかのポイントをおさらいしておきましょう。

ポイント5つ

  • NPO法人は収益を目的としない会社とは一線を画す組織
  • 特定非営利活動は20の活動に限定される
  • 相談や申請先は主たる事業所がある所轄庁へ
  • 低資金での設立が可能
  • 場合によっては税金対策効果が得られる場合も

NPO法人の設立にメリットがあるかどうかは会社経営者様それぞれ。会社の状況を鑑みたうえで、ご検討ください。

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