自分に万が一のことがあった時、残された家族のために資金を残したい。
そう思って生命保険の加入を検討してみたけれど、保険料がなかなか悩ましいポイントになってしまう…という方も多いのではないでしょうか?
保険料はなるべく低く抑えたいけれど、だからといって保障内容が充実していない保険は困る。
そんな方には、収入保障保険がおすすめです。
収入保障保険は、被保険者が死亡・高度障害になった際、毎月お給料のように一定の保険金が支払われる保険です。
自分自身の保障よりも残された家族のための生活保障といった意味合いが強く、掛け捨てタイプの保険であるため、月々の保険料も大きな負担となりません。
このページでは、収入保障保険の基本的な仕組みから、メリット・デメリットについて説明します。
個人での加入だけでなく、法人目線での加入のポイントについても解説しているので、経営者の方もぜひ参考にしてみてください。
生命保険の1つ 収入保障保険とは?
収入保障保険は生命保険に近いものであり、死亡保障を備えた掛け捨ての保険です。
掛け捨てタイプの保険であるため、保険の解約返戻金や、満期返戻金はありません。
保障対象となるのは死亡・高度障害のときに限られており、保険契約者の家族に対して、保険期間が満了するまで、一定の保険金が月々定額で支払われるタイプのものが多いです。
自分の死亡時や高度障害になったときに、毎月のお給料のように保険金がおりて、自分の家族を支えてくれるというイメージが分かりやすいでしょう。
収入保障保険は、契約してから死亡・高度障害になった時期が遅いほど、受け取れる保険金の総額が減る点が特徴です。
これは、死亡・高度障害になった時を起点として、保険契約期間が終了するまで一定の金額が月々継続して払われるという仕組みのためです。
例えば、「死亡時、月々5万円の保険金がおりる」、「60歳が保険期間の満了」のケースで考えてみましょう。
30歳で死亡・高度障害になった場合
保険金がおりる期間:60-30=30年間
得られる保険金:月5万円×12ヶ月×30年間=1800万円
一方、同じ保険金・満了時期で、40歳の時に亡くなった場合を考えてみましょう。
◎40歳で死亡・高度障害になった場合
保険金がおりる期間:60-40=20年間
得られる保険金:月5万円×12ヶ月×20年間=1200万円
以上のケースだと、死亡時期が10年遅いと、受給できる保険料が600万円も違うのです。
ざっくりとした計算ではありますが、死亡時期が遅いほど、受け取ることができる保険金の総額が少なくなることが分かっていただけたでしょうか?
収入保障保険は、下の図のようにグラフで描いたときに保険金が三角形の形で減っていくため、三角の保険とも呼ばれています。
契約者が若いうちは、住宅ローンや子どもの養育費、家族を今後養っていくための資金が多く必要となるため、受け取れる保険金も多くなっています。
一方、契約者が年を重ねると、子どもが独立していたり、住宅ローンを完済していたりするため、必ずしも多くの資金が必要になるわけではありません。
契約者のライフプランに合わせて、柔軟な制度設計になっているのです。
また、収入保障保険では受け取れる保険金総額が減っていく分、他の死亡保険に対して割安な保険料で加入でき、契約期間も長いため、加入をしても大きな負担にはなりにくいと言えます。
収入保障保険の特徴
- 被保険者が死亡・高度障害になった時に保険金が下りる
- 掛け捨て保険のため、満期返戻金などはない
- 保険金は、月々定額で支払われるタイプのものが多い
- 契約期間の満了に近づくほど、払われる保険金が少なくなる。その分、割安な保険料で加入可能。
収入保障保険のメリット
収入保障保険のメリットは、主に2点あります。
- 月々の保険料が安くすむ
- 他の定期保険からの乗り換えが比較的検討しやすい
詳しく見ていきましょう。
月々の保険料が安くすむ
先ほども少し説明しましたが、収入保障保険は、内容にもよりますが、月々の保険料が安くすむ保険です。
通常、死亡保障をともなう生命保険は加入期間が長くなるため、高い保険料だと負担も大きくなってしまいがちです。また、契約者の年齢が上がるにつれて保険料が上がるケースが多いです。
一方、収入保障保険は、割安な保険料で一般的な定期生命保険よりも長い契約期間を設定でき、加齢とともに保険料が上がることもありません。
また、割安な保険料であっても、収入保障保険の場合は死亡した月から契約終了まで、毎月一定額の保険金を受け取ることができます。
保険金を長期にわたって受け取ることができるため、万が一の時でも家族の生活に対する資金をカバーできるでしょう。
他の定期保険からの乗り換えが検討しやすい
収入保障保険は、ほかの生命保険からの乗り換えを検討しやすいというメリットがあります。
生命保険では、一般的に、加齢とともに死亡率が高まるので更新があるタイプの保険であれば、更新がある度に保険料が上がっていきます。しかし、収入保障保険では、契約終了まで保険料が上がることはありません。
年齢が高くなっていくほど、まとまった金額を保険金として受け取ることに魅力を感じなくなってしまう可能性もあります。
そうしたときには、毎月一定額が受け取れる収入保障保険に乗り換えてみるのも良いでしょう。
ほかの生命保険から収入保障保険に乗り換えることによって、保険料の負担が軽くなる可能性もあります。
以上の2つが、収入保障保険のメリットでした。
月々の保険料が安くすむというメリットから分かるように、収入保障保険は、収入や貯蓄が少ない場合に大きな効果を発揮します。
必要に応じて、がん保障などの特約も設定できるため、幅広く保障を受けることも可能な保険です。
加入する時期の状態や将来的なライフプランニングを考えたうえで、「もしものときに、家族の生活を保障したい」「月々の保険料はできるだけ安くしたい」といったときに、加入を検討してみましょう。
収入保障保険のデメリット
収入保障保険には、メリットだけではなく、デメリットもあります。
主なデメリットは、下記の3つです。
- 貯蓄性がない
- 所得税の課税対象になる可能性がある
- “最低支払保証期間”で保険料が割高になる
簡単に説明していきます。
貯蓄性がない
まず、収入保障保険は、あくまで掛け捨てタイプの生命保険であるため、満期まで支払い続けたとしても満期保険金などを受け取れるわけではありません。
死亡時や高度障害になった時だけ保険金を受け取れる仕組みのため、貯蓄性といった点では別の保険を考える必要があります。
また、毎月一定額の保険金を受け取ることが可能であるものの、まとまったお金を手にするものではない点にも注意をしておきましょう。
保険によっては、毎月の保険料を一時金として一括で受け取ることができる場合も多いですが、基本的には月々に分割されています。
例えば、自分が死亡した後の子どもの養育費を考えて保険をかけたとしても、入学金などまとまった金額が必要になる時には、資金調達に別の手立てが必要になることもあるため、注意しましょう。
所得税の課税対象になる可能性
また、収入保障保険によっておりた保険金は、所得税の課税対象になる可能性があります。
これは、保険会社を通じて資金を運用したものとみなされるためです。
課税の仕方については、保険金を月々の受け取りとしているか、一時金として一括で受け取るかどうかで違います。こちらに関しては、後ほど詳しく説明します。
保険金にかかる税金は、案外見落としがちです。保険に加入する際に、相談員に確認してから保険に加入するか検討すると良いでしょう。
“最低支払保証期間”で保険料が割高に
収入保障保険には、保険金の“最低支払保証期間”があります。
例えば、被保険者が保険期間満了の1ヶ月前に死亡した場合、保険金の受取人は、1ヶ月分しか保険金を受け取ることができません。
しかし、ここで最低支払保証期間を3年と設定しておけば、保険満了期間が間近に迫っていたとしても、死亡時から3年は保険金を受け取ることができるのです。
最低支払保証期間は、1年や2年という短い期間から、10年という長い期間を保証してくれることもあります。
しかし、最低支払保証期間を長く設定すると、その分だけ保険料が高くなってしまうというデメリットがあるため、注意しなければなりません。
収入保障保険は、あくまでも家族の生活や会社の事業が軌道に乗るまでのつなぎといった性質の保険であるため、最低支払保証期間を長めに設定しておく必要はあまり無いでしょう。
むしろ、少しでも保険料の負担を軽くしたいならば、最低支払保証期間は短めに設定しておくのも良いでしょう。
保険金に税金がかかる?
保険金の受け取りを考える際には、税金に注意しなければいけません。
収入保障保険は、年金のように定額で受け取る方法のほかに、一時金として一括で受け取ることもできますが、いずれのケースも保険金に税金が課されます。
保険金に課せられる税金としては、所得税・相続税・贈与税があげられます。これは、契約者と被保険者、保険金の受取人の関係によって変わります。
家族を具体例に挙げてみましょう。
被保険者 | 保険料負担者 | 保険金受取人 | かかる税金 |
---|---|---|---|
夫 | 夫 | 妻 | 相続税 |
夫 | 妻 | 妻 | 所得税 |
夫 | 妻 | 子 | 贈与税 |
最も税金を少なく済ませたい場合には、保険金を一時金として一括で受け取り、控除額の大きい相続税として処理するのが最適です。
上の表の場合、夫を被保険者・負担者にして、妻が受取人になるケースです。
相続税は、控除額が大きく設定されており、「500万円×法定相続人の数」と決められています。
さらに、生命保険金控除だけではなく、基礎控除として「3000万円+600万円×法定相続人の数」までが認められています。
一方、所得税は「払込保険料(自分が今までに払った保険料)+特別控除額の50万円」、贈与税は「年間110万円」の控除額しか認められていません。
控除額が多ければ多いほど、課税対象となる金額は少なくなります。もし、相続税の基礎控除の範囲に、保険金を含めた遺産総額が収まるのであれば、相続税はかからないことになります。
個人名義で保険に加入する際はもちろん、法人として保険に加入する場合も、契約者名義を役員や社員、受取人を会社とすることによって、税金対策の効果を高めることができるでしょう。
事業の安定化にも役立つ!
さて、これまでは個人で収入保障保険に加入する場合に焦点をあてて説明してきましたが、ここでは法人加入の目線から収入保障保険のメリットを説明していきます
法人が収入保障保険に加入する際のメリットは、主に2つあります。
- 事業の安定化
- 税金対策
事業の安定化
収入保障保険は、万が一の時に保険金を受け取ることができるので、経営者や役員に事故があっても事業の安定化を図れます。
保険金を一時金として会社が受け取ることによって、経営に対するダメージを少しでも軽くできるでしょう。
また、保険金を年金形式で受け取れば、経営者家族の生活保障となるため、経営に集中して取り組んでいけるはずです。
税金対策
2つ目のメリットは、税金対策です。
収入保障保険の月々の保険料は、一定額が損金として算入できます。
会社の利益が減るため、課せられる所得税が減り、税制上の効果を期待できるでしょう。
以上の2つが、法人が収入保障保険に加入する際のメリットでした。
しかし、単に税制上のメリットだけを考えて収入保障保険に加入するのは、保険を上手く活かしきれないため、非常にもったいないです。
保険である以上、保障内容についてよくチェックしておくことは必要であり、自社に合った最適な保険を選ぶことが大切です。事業を安定的に続けるという目的のためにも、収入保障保険に加入する際は、しっかりと比較検討しましょう。
法人が加入する場合の注意点
法人で加入する収入保障保険は、保障が手厚くなるわりに、保険料が割安です。運転資金が少ないような場合は、経営を安定させるために効果的でしょう。
しかし、会社が安定していて、運転資金にあまり不安がないときには、収入保障保険の保障額が減っていく仕組みになっています。
そのため、事業の拡大などによって運転資金が大幅に増えた時には、収入保障保険は不向きな保険となってしまう可能性もあるでしょう。
事業を安定化させるための1つの方法としては有効であるものの、初めから唯一の手段としないほうが賢明だといえます。
収入保障保険は、あくまで事業のために必要な資金の一部を補てんしてくれる役割として考え、別の資金調達方法も検討しておくのがベストです。
どんな保障内容がおすすめ?
収入保障保険と一口に言っても、いくつか種類があるため、よく比較して選んでいく必要があります。
収入保障保険に良く見られるタイプを挙げてみました。
- 健康状態によって保険料が安くなる
- ケガや病気に備えた特約をつけられる
健康状態を加味して保険料が安くなるタイプの保険は、保険に加入時の年齢が若く健康である、もしくは喫煙していないなどの条件によって、月々の保険料の負担が軽くなる可能性があります。
また、ケガや病気に備えた特約がある収入保障保険もおすすめです。
例えば、がん保障付きの収入保障保険であれば、被保険者が払込期間中にがんを患った場合には、その後の保険料を免除されるケースがあります。
また、死亡原因の上位を占める「がん」「脳疾患」「心疾患」の三大疾病をまとめて保障する特約もおすすめです。
がん保障タイプのものと同じように、所定の三大疾病を患ってしまったときには、保険料の免除や年金の受給ができます。
ただし、三大疾病保障がついた収入保障保険では、高度障害の場合の保険金は重複して受け取ることができません。
収入保障保険の加入時によく確認しておく必要があるものの、どちらか一方しか受け取れない点に注意をしておきましょう。
このような特約をつけると、通常の収入保障保険よりも保険料は高くなってしまいがちですが、もともと掛け捨てタイプの保険であるため、それほど保険料の負担が気になることもないでしょう。
特約は保険の加入時にしかつけられない場合もあるため、特約の存在を忘れず、かつ慎重に考えてみてください。
万が一の安定のため
収入保障保険は、万が一のときに長期にわたって定期的に保険金を受け取れるのが特徴です。
掛け捨てタイプの生命保険のため保険料も安く、収入や貯蓄が少なかったり、子どもが幼かったりする人に向いています。
また、会社であれば、事業を始めたばかりの時や経営が不安定な時に効果的な保険です。
会社にとっても個人にとっても、手元の資金がそれなりにできるまでのつなぎとしての役割を果たす保険と言えるでしょう。
「今の段階では、そこまで高額な保険に入りたくない」「万が一のときのために、最低限の保障があれば十分」という方々は、収入保障保険への加入を検討してみてはいかがでしょうか?
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