法人税を納付する手段の1つとして、クレジットカード納付があります。
2017年には、法人税などを含めた約30税目の国税を、クレジットで支払うことが可能になったのです。
では、一般的な法人税の納付方法と、クレジットカード納付では、どのような違いがあるのでしょうか。
ここでは、クレジットカード納付の具体的なメリットと注意点を解説していきます。
法人税支払い手続きに関してもご説明しますので、「法人税の支払いに時間や手間を掛けたくない」という方は、是非ご覧ください。
クレジットを法人税の支払いで利用する5つのメリット
2017年に、国税庁によって「国税クレジットカードお支払いサイト」が開設されたことによって、クレジットカードを利用して法人税の支払いを行うことが可能になりました。
とはいえ、クレジット払いできるのは、法人税を含めた30税目の国税です。
税金全てをクレジットで支払うことはできませんが、法人税の支払い方法にクレジットカードを検討するかしないかだけで、会社の資金繰りにも影響が出ます。
上手く利用すれば、法人税の支払い猶予期間を生み出して、一時的に会社のキャッシュを多く残すことも可能です。
こちらではまず、法人税の支払いにクレジットを利用する5つのメリットをご説明いたします。
カード払いをすることで猶予期間ができる
法人税をクレジットカード払いすることのメリットの1つとして、実際の法人税の支払いまでに猶予期間が生まれる点が挙げられます。
一般的な法人税の納付は、税務署から送られてきた納付書に金額を記載して、銀行などの金融機関または税務署で支払いを行います。
したがって、そのときに必ず現金を持って行かなくてはなりません。
しかし、クレジットカードで法人税を納付した場合、納付手続きを行った当日に納付があったものとみなされるものの、実際の引き落としは約2カ月後となります。
そのため、約2カ月の間、法人税の支払い猶予期間ができるのです。
法人の中には、資金繰りが苦しいというところも少なくありません。会社の運営状況によっては、法人税が高額になる可能性も考えられます。
実際の法人税引き落としまでに、ある程度の期間を設けることができれば、会社の運転資金を残しながら法人税を納めるといったことが可能です。
税目ごとに別のクレジットカードで納付することも可能
法人がクレジットカードで支払うことが可能な税金は、法人税や地方法人税、消費税、申告所得税、相続税など約30税目あります。
クレジットカード納付では、一括で法人税を支払うこともできますし、それぞれの税目ごとに違うクレジットカードを使用して支払うことも可能です。
さらに、法人税の支払いでもクレジットカードのポイントを貯めることができるので、
税目ごとに違うカードを利用して、それぞれの税金支払いでポイントの恩恵を受けられます。
その上、各クレジットカード会社のポイントプログラムのグレードアップやボーナスポイントの付与といった特典も得られることができます。
ただし、税目ごとに別々のカードを使用して法人税を支払う場合は、その都度、支払い手続きが必要になります。
そのため、税目ごとに手続きを行うと、一括で支払いを行った場合よりも、時間や手間をかけてしまうことになるので、あらかじめ法人税の支払いに使用するクレジットカードの枚数を限定するなど、手間のかからない方法を考えておきましょう。
限度額が足りない場合は分けて納税する
クレジットカード納付では、決済手数料を含めた1000万円以上の法人税の支払いはできません。
したがって、1回当たり1000万円未満でしか納税ができないため、会社によっては1回の法人税の支払いで限度額を超えてしまうという可能性も考えられます。
しかし、どうしても法人税をクレジットカードで納付したいという場合には、一括ではなく分割払いということも可能です。
たとえば、法人税の納税額が1500万円だった場合、800万円+700万円のように2回に分けて納付手続きを行うことで納税することができます。
そして、分割で支払った場合にも、支払った法人税は税務署のほうで合算してもらえます。
このとき注意しておくべきなのが、使用するクレジットカードの限度額です。
もし、納税額が1500万円でクレジットカードの限度額が500万円だとした場合、法人税は3回に分けて納税することになります。
そうなると、3カ月間毎月500万円の支出が発生してしまうことになります。長期的に多額の支出があるということになれば、会社の運営にも深刻に関わる問題です。
そのため、限度額の大きいクレジットカードを使って短期で全額支払うようにするなど、工夫が必要なことも覚えておきましょう。
カードで納税することで与信枠を増やすことにつながる
クレジットカードの与信枠を増やしたいのであれば、金額の高い法人税の支払いをクレジットカードで行うと効率的です。
与信枠とは、クレジットカードの限度額のことをいいます。最初のクレジットカード与信枠は、
事業主や法人の年収などの情報をもとに銀行が審査をして支払限度額を算出し、決定しています。
このように限度額が年収によって決まっていることから、すぐに与信枠を増やすということは難しいです。
そこで、クレジットカードの与信枠を増やしたいという場合には、できる限り法人税の支払いをクレジットカードで済ませる必要があります。
なぜなら、クレジットカードを使用すると、利用履歴(クレジットヒストリー)が積み上がり、クレジットカード会社からの信用が得られます。
クレジットカード会社からの信用を得られれば、結果的に与信枠が広がることに繋がるのです。
したがって、「この利用者は必ず支払いをしてくれる」と認めてもらうまでクレジットカードを使用することが大事になるのです。
クレジットカードを使用して高額になりやすい法人税の支払いを何度も遅滞なく済ませることができれば、与信枠を早期に増やすことが可能です。
与信枠を増やしたい場合は、法人税を含む、法人に関わる支払いで法人名義のクレジットカードを使用していくことが確実な方法だと言えます。
金融機関に足を運ばなくていい
法人税をクレジットカードで支払うメリットには、時間の節約ができるという点もあります。
納税時期になると、多くの企業が金融機関や税務署に出向いて法人税などの納税をすることになります。
また、企業だけでなく個人事業主や一般の人も税金の支払いをするため、金融機関の窓口は混雑することも多いかと思います。
場合によっては、法人税を納税するためだけに1日の大半を費やしてしまう恐れもあるので、忙しい経営者にとっては非常にもったいないと感じる方も多いはず。
しかし、クレジットカードを利用した法人税の納付は、「国税クレジットカードお支払サイト」で手続きをするだけなので、銀行や税務署の窓口に出向く必要がありません。
そのため、経営者や経理担当の貴重な時間を無駄にせずに済みます。
しかも、「国税クレジットカードお支払サイト」は24時間手続き可能なので、自分の好きなタイミングで申請ができるのもメリットだと言えます。
ただし、クレジットカード納付の場合、支払いには手数料がかかります。
クレジットカード納付でかかる手数料は、税金1万円当たり82円(税込)。たとえば、納付税額が10万円であれば手数料は820円(税込)になります。
1万円当たりの手数料は安いものの、金額が大きくなればなるほど、手数料分の支出も増えていきます。
気をつけるべきなのが、1万円を1円でも超えれば、手数料が加算されるということです。
1万円当たりの手数料は82円ですが、1万円を1円でも超えると、さらに82円が加算されます。
つまり、1万1円の納付税額になると、164円(税込)の手数料がかかるということです。
銀行などの金融機関での窓口支払いには時間がかかりますが、クレジットカードの支払いでは手数料が発生します。
これらのメリットとデメリットを比較して、法人税の支払い方法を決定しましょう。
法人税納税のための具体的な手順
クレジットカードで法人税を納税するためには、まず国税庁の「国税クレジットカードお支払サイト」にアクセスして、WEB上で手続きを行う必要があります。
なお、銀行や税務署、コンビニでのクレジットカード納付の申請はできません。
具体的な法人税納付までの流れは、最初に「国税クレジットカードお支払いサイト」へアクセスして、クレジットカード納付の注意事項を確認することから始めます。
注意事項には、以下の5つのことが書かれています。
- クレジットカード納付では、領収書が発行されません。領収書が必要なときは、銀行もしくは税務署の窓口での納付をしなくてはなりません。
- 延滞税や利子税の発生について。延滞税や利子税は、納付手続きが完了した時点で計算されます。したがって、法定納期限内の手続きであれば問題ありませんが、法定納期限後に手続きをした場合は延滞税などを支払わなくてはなりません。
- 納付手続きが完了した場合、取り消せない。もし、手続きを誤って行ったときは、税務署で還付金の手続きが必要になります。
- 納税証明書の発行までにかかる期間について。納税証明書の発行には3週間程度かかる可能性があります。
- 支払手数料について。納税額1万円で82円(税込)の手数料がかり、1万円を超えるとさらに加算されます。
分割払いやリボ払いを利用するときは、各クレジットカード会社で手数料が発生することになります。
これらの注意事項を確認して、問題がなければ注意事項の確認済み欄にチェックを入れて手続きを開始します。
まず、納税に関する情報の記載です。利用者の名称や住所、税金の種類や金額、申告区分など指定通りに記入していきます。
納税に関する情報の記入が完了したら、クレジットカード情報の記入です。カード番号や有効期限、支払回数などの必要事項を記載します。
これらの記入が完了したら、「納付」ボタンを押して手続き完了です。なお、記載情報はサイト内で保存することはできません。
今後もクレジットカード納付を利用するのであれば、記載情報を印刷して保管するようにしましょう。
納付手続きが完了した場合、記載情報にメールアドレスを登録したときは、「国税クレジットカードお支払サイト」からメールが届きます。
そして、クレジットカードでの決済は、カード会社の規約に基づいて行われます。クレジットカード決済の詳細が知りたい場合は、利用明細に情報が記載されるので確認可能です。
たとえば、支払った税金が法人税であれば、「ホウジンゼイ」または「法人税」と記され、納税額と決済手数料の合算金額が記載されます。
もし、明細に記載がされていないときは、税務署やクレジットカード会社に確認を取りましょう。
源泉所得税の場合はe-TAXを利用する
クレジットカード納付では、源泉所得税の支払いも可能です。
しかし、他の税金とは違ってe-TAX(国税電子申告・納税システム)のメッセージボックスを経由してからでないと利用はできません。
なお、源泉所得税のクレジットカード納付は次のような流れで行います。
まず、国税庁のe-TAXのサイトにアクセスして、e-TAXソフト(WEB版)をクリックします。ログインするには、「利用者識別番号」と「暗証番号」の2つを入力が必要です。
e-TAXを初めて利用する場合は、利用者識別番号の取得が必要です。なお、利用者識別番号の取得するためには開始届出書を提出しなくてはなりません。
サイトにある「開始届出書の作成・提出」をクリックすることで、開始届出書の提出が可能です。
次に、源泉所得税の納税データの作成です。源泉所得税の納付については、所得税徴収高計算書の提出が必要になります。
そして、クレジットカード納付をするときは所得税徴収高計算書のデータをe-TAXに送付しなくてはなりません。
まず、サイトの「申告・申請・納税」から「新規作成」にある「操作に進む」をクリックして、必要項目を記載して所得税徴収高計算書を作成します。
指定の情報をすべて記載したら、画面の案内に沿ってデータを送信すれば手続き完了です。
なお、情報の印刷もできるので、必要に応じて利用するようにしましょう。
データの送付が完了すると、審査が開始されます。審査の結果は、e-TAXの「受信通知の確認」に送られ、そこから「国税クレジットカードお支払サイト」へアクセスします。
サイトにアクセスしたら、クレジットカードの情報を記入して支払いをすれば完了です。
支払いの詳細は、クレジットカードの明細に記載されますが、記載がない場合は税務署に問い合わせをするようにしましょう。
注意したいのが、所得税徴収高計算書の作成時です。1度やると慣れるのですが、記載する項目が非常に多いため初めての人は戸惑うかもしれません。
また、記載事項を間違えてしまうと、取消はできないので税務署に行って還付金の請求をすることになります。
したがって、初めてe-TAXを利用するときは、慎重に行うことが大切です。
納付後はカード利用明細書で確認
クレジットカード納付の手続きを済ませると、1~2週間程度でクレジットカード会社の利用明細書に反映されます。
すぐにでも詳細を確認したい場合は、WEB上から明細書を確認することができます。
インターネット環境があればいつでも支払いの内容が確認できますし、明細に記載されるのも早いため非常に便利です。
なお、WEBで明細を確認するためには、サイトに情報を登録するなど事前の手続きが必要になる可能性があります。
手続きの内容はクレジットカード会社によって異なるため、直接問い合わせて確認してください。
クレジットカード納付は銀行での手続き程、手間も時間もかかりません。
「少しでも時間を大切にしたい」と考えている経営者の方であれば、ぜひ一度クレジットカードでの法人税納付を検討してみてはいかがでしょうか。
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