※当記事での法人保険の保険料の損金算入割合等の税務上の扱いに関する記載は、2018年12月以前の国税庁の通達を前提としております。
2019年4月11日に国税庁が新たなルール案を公表しており、今後意見公募(パブリックコメント)の手続を経て、新しいルールによる運営が行われることになっております。詳細は国税庁・金融庁・各保険会社が公表する内容をご参照ください。
なお、当サイトでも新ルールの内容につきましては「【節税保険が販売停止】国税庁の新ルールを解説」で詳しく解説していますので、ご確認下さい。
※2019年6月25日更新 法人契約のがん保険や医療保険について、全額損金算入できる保険料の範囲が1契約当たり年間30万円までに制限される可能性があります。
法人の経営者やオーナーにとって、リスクマネジメントは必須の課題だと思います。
そのなかでも法人のお金に関わる部分は法人の代表者が1人で考え抜いて決定する、いわば孤独の部分ともいえるのではないでしょうか。
今回はその中でも養老保険をモデルに、法人保険の加入によるお金の運用をご紹介します。
養老保険加入で得られる、お金に関するメリットやデメリットをご説明させて頂きます。
当記事を通して、養老保険に関する知識を深めて頂ければと思います。
シーンによって法人向けの養老保険でのメリットは異なる
まず法人向けの養老保険とは、下記2パターンの法人保険金を受け取ることができる保険です。
- 満期前に被保険者が死亡した場合、死亡保険金が支払われるパターン
- 無事に満期を迎えることができれば、満期保険金を受け取ることができるパターン
死亡保険金と満期保険金は同額のため、条件を満たせば確実に保険金を受け取ることができることになります。
また、法人向け養老保険はシーンによっては「ハーフタックスプラン」と呼ばれ、税制の優遇を受けることができる場合があります。
ハーフタックスプランとは、その名の通り「半分税金」という意味です。
法人が支払った保険料の2分の1を損金計上することができます。
しかし、法人向けの場合はシーンによってメリットが異なるため一つずつ見ていきましょう。
シーン1:役員が被保険者、保険金受け取りが法人の場合の養老保険
一つ目のシーンは、法人保険の被保険者を役員として、死亡保険金・満期保険金ともに法人が受け取る養老保険の場合です。
これは、経営者に万が一のことがあった場合は、法人を存続させるために保険金を充当します。
また、無事に退職を迎えた場合は、退職金の原資として養老保険は活用されます。この場合、死亡保険金も満期保険金も「法人」のものであるため、全額資産計上されます。
この場合の法人向け養老保険は、損金算入はされません。
メリット
- 退職金の原資を確保しつつ、経営陣の万が一の事態に備えることができる点
デメリット
- 税制上のメリットを得たいという観点であれば、全額資産計上され損金扱いにならないこと
「保険金積立金」という勘定科目で計上されますが、税引き後の利益から支払うためキャッシュフローの悪化の原因となります。
法人本体に潤沢なキャッシュフローがない場合は経営に支障が出かねませんのでお気を付けください。
シーン2:役員が被保険者、保険金受け取りが被保険者の場合の養老保険
二つ目のシーンは、被保険者を役員として、保険金を被保険者の遺族もしくは本人が受け取る養老保険の場合です。
このように全額損金計上できるケースがありますが、注意点もありますので確認しましょう。
法人としては、給与は損金扱いで法人税を圧縮できますが、給与を受け取る側の従業員は所得が増加することになります。
そのため所得税・住民税の支払いが多くなります。
また、それに伴い社会保険料も増額されます。
そして社会保険料は労使折半、すなわち法人としても支出が増加することになります。
メリット
- 養老保険料の支払いを「給与」とすることで、法人は損金計上できる点
⇒よって被保険者は負担なしで保障を確保することが可能です。
デメリット
- 所得税と住民税の支払いが大きくなる点
⇒個人としては支払保険料が所得とみなされるためです。またそれにより労使折半の社会保険料の負担も増大します。
シーン3:役員or従業員が被保険者、保険金受け取りが被保険者の家族or法人の場合の養老保険
3つ目のシーンを見ていきましょう。この養老保険のパターンは被保険者を役員として、死亡した場合は遺族が保険金を受け取ります。
もし何事もなく満期を迎えた場合は、退職金の原資に充てるというものです。
法人が養老保険を契約する場合のもっとも一般的なパターンで、福利厚生を目的に加入するケースとなります。
また、このような養老保険の契約の仕方は「ハーフタックスプラン」と呼ばれています。
満期より前に(まだ現役で働いているうちに)被保険者が死亡してしまった場合の遺族の生活を養老保険で守るのと同時に、勤め上げた暁には退職金として支給されることになります。
この場合死亡保険金は企業には入ってこないため、養老保険で支払った保険料の2分の1を損金として計上することができます。
メリット
- 法人税負担を軽減させることが可能な点
⇒養老保険で支払った保険料の半分を損金計上できるため、利益を減少させることが可能です。 - 福利厚生を拡充させることが可能な点
⇒法人従業員の家族にとっては、万が一にも備えられるためメリットは大きいです。
デメリット
- ハーフタックスプランとして損金計上させるためには、法人の全従業員の加入が必要になり、保険料の支払いが大変になる可能性があること
⇒法人は、対象者に法人保険に加入させることを説明し、同意のうえ署名・捺印を徴収することが求められます。
さらに養老保険の加入に際しては健康に関する審査も必要になり、規模の大きい法人であればかなり手続きが煩雑になります。
シーン4:特定の役員or従業員が被保険者、保険金受け取りが被保険者の家族or法人の場合の養老保険
こちらのシーンは先ほどの③のシーンとよく似ていますが、被保険者が法人の特定の役員もしくは従業員に限られています。
法人向け養老保険をハーフタックスプランとして半分損金計上するためには、「客観的な基準に基づいて全従業員もしくは役員が加入する」必要があります。
「客観的な基準」には通例勤続年数や年齢などが用いられ、「5年以上勤務している法人の従業員全員が対象」というような場合にのみ認められます。
〇〇さんだけ、というのは通常、法人向け養老保険において認められません。
メリット
- 特定の従業員や役員に対するインセンティブ効果をもつ可能性がある点
デメリット
- 労使とも社会保険料の負担も増えることになる点
⇒損金計上が認められず、給与として扱われる可能性があります。そのため②と同様に個人の所得税・住民税が増加することになります。
シーン5:役員が被保険者、保険金受け取りが法人or被保険者の場合の養老保険
最後は「逆ハーフタックスプラン」と呼ばれる養老保険の契約になります。
死亡保険受取人と満期保険受取人が反対になっているため、このように呼ばれます。
養老保険の支払保険料全額の損金計上が認められるなど、減税効果が高いといわれています。
しかしハーフタックスプランとは異なり、明確なルールが存在していません。
実際に今まで全額損金として養老保険を処理してきた法人は多くあると思いますが、ルールがないから問題がないというわけではありません。
養老保険による死亡保険金を法人が受け取る以上、少なくとも半分は資産計上するのは合理的ではないでしょうか。
メリット
- グレーではあるが、損金計上による法人税負担を軽減できる点
デメリット
- 明確なルールが存在せず、もし規制された場合にはさかのぼって課税される点
また、養老保険の逆ハーフタックスプランを熟知した税理士や営業員が少なく、誤った情報の散布や処理がされている可能性が高いです。
よって、この養老保険の手段を取るのはリスクが高いといえます。
法人向け養老保険に加入する際の注意点
ここからは養老保険加入時の注意点についてまとめていきます。上記でも触れている部分はありますが、重要なポイントなのでしっかりと押さえましょう。
養老保険の課税関係に注意しないと損をする
養老保険の受取人が法人の場合
まず法人が養老保険金を受け取る場合ですが、「雑収入」として益金に算入され、課税の対象となります。
しかし、法人が受け取る場合は基本的に退職金に充当するため、退職金をして支給した場合は損金に計上することができ、税負担を軽減することができます。
養老保険の受取人が被保険者の場合
次に被保険者自身が受け取る場合を見てみましょう。
この場合、本来は従業員が給与の中から支払うべき保険料を法人が肩代わりしているとみなされます。
ですので、法人としては「給与」として従業員に支給しているのと同じと考えられます。法人としては「給与」として損金に計上できますが、養老保険の保険金を受け取るときに所得税が課税されます。
このように、一時的に税負担を軽減した分、後で課税されることを「課税の繰り延べ」といいます。
また、所得が増えることになりますので、所得税と住民税が増えることになります。
それに伴い法人としても社会保険料の負担が増えることになりますので注意が必要です。
受取人が遺族の場合
最後に遺族が養老保険による死亡保険金を受け取る場合を考えます。
この場合、本来は被保険者本人が受け取るはずだった「給与」を遺族が相続すると考えられます。
そのため、相続税の課税対象となります。
ただし、相続税は「法定相続人×500万円」の控除の対象となりますので、実際に税金を負担しなくていい場合も多いです。
保険に全員加入できない時は普遍的加入で対応
養老保険ではハーフタックスプランで保険料の半分を損金計上した場合、全従業員が保険に加入することが原則となります。
しかし、諸事情でそれが難しい場合もあるかと思います。そのような場合にどうやって養老保険に加入すればよいのでしょうか。
現実的に養老保険への全員加入が困難な場合は、「客観的な基準」を設けることで条件を満たすことができます。
主に年齢や勤続年数など、福利厚生の一環として合理的な基準であることが求められます。
「営業課のみ」や「男性社員のみ」といった基準では、養老保険においては認められない可能性が高いので注意が必要です。
まとめ:受取人と被保険者はしっかりチェックする
ここまで法人向け養老保険についてまとめてみましたが、いかがでしたか。
法人向けの養老保険は保険金を必ず受け取ることができる保険ですので、汎用性の高い保険といえるでしょう。
養老保険の法人契約をお考えの際には、被保険者と受取人はしっかり確認し、利益を享受できる契約を組むことが肝心です。
社内外問わず、「養老保険における、頼れるアドバイザー」はいらっしゃると思いますので、一度法人向け保険加入の前にはご相談されてみてはいかがでしょうか。
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