法人税の税金対策や、従業員の福利厚生の観点から法人保険を検討している方もいらっしゃるでしょう。

ここでは法人保険の中の一つ、「がん保険」について取り上げます。

がん保険はがんに備える保険ですが、基本概要に加えて、法人契約の観点から次の点も解説します。

  • 「がん保険は税金対策として有用なのか?」
  • 「企業の福利厚生としておすすめか?」
  • 「経理処理はどのようにすれば良いのか?」

がん保険を検討している経営者・ご担当者向けに、加入判断のポイントもあわせて解説します。

知っておきたい!がん保険は会社にとって税金対策になるか?

法人税を少しでも減らしたいと考える企業経営者は多いことでしょう。そのためにはできるだけ多くの金額を損金として算入し、課税所得を減らしたいところです。

保険契約をすることで、どのくらいの額を損金扱いにできるのでしょうか。全額損金(以下、「全損」とします)扱いできるのが理想ですが、がん保険(第三分野保険)の保険料の取扱いは、契約内容によって変わります

法人が契約者となり、役員・従業員を被保険者とするがん保険では、解約返戻金相当額の有無や、最高解約返戻率などの条件によって、保険料の一部を損金、一部を資産計上し、一定期間経過後に取り崩して損金算入していく取扱いとなるケースがあります。

法人向け保険では、解約返戻金を目的に加入するケースもあります。解約返戻金の使い道は様々ですが、例えば退職金対策として使うことも可能です。

被保険者(例えば経営者)が退職するであろう時期に合わせて、保障内容・払込期間・解約返戻金の水準などを検討することで、保障と資金準備を両立しやすくなる場合があります。

ただし、税務上の取扱いは契約内容により異なるため、税金対策の観点だけで判断せず、保障目的やキャッシュフローとあわせて検討することが大切です。

「法人税対策商品としてはうまみが少ないのでは?」

と思われがちな法人向けがん保険ですが、一概には言えません。企業によっては相性がよいことがあります。次章以降で、法人向けがん保険が会社にとってメリットになり得るポイントを紹介します。

※補足
がん保険(第三分野保険)の保険料の取扱いは、解約返戻金相当額の有無など契約内容により異なります。例えば、解約返戻金相当額がないタイプは、原則として保険期間に応じて損金算入(期間配分)となります。
また、一定の要件を満たす場合に限り、支払った事業年度で損金算入が認められる取扱いがあるため、契約前に取扱いの確認をおすすめします。

がん保険は法人にとって必要か?

税金対策も重要ですが、万一のリスクへの備えも企業経営には欠かせません。

そこで「がん保険」があることで、どんなリスクヘッジができるのかを考えてみましょう。

法人向けがん保険の必要性 企業において「がん保険」が何故必要になると思いますか?

企業にとっての大きなリスクの一つは、「経営者の不在」です。

がんは誰にとっても身近なリスクの一つです。国立がん研究センターの統計(2021年データに基づく推計)では、生涯でがんに罹患する確率は、男性で約63%、女性で約51%とされています。経営者ががんになる可能性も決して低くはありません。

もしがんになってしまったとしたら、治療に専念するために、長期の通院・入院が必要になるケースもあります。経営者が不在となることで、企業によっては資金繰りや意思決定に影響が出て、経営に支障をきたしてしまうかもしれません。

がん保険があれば、診断給付金などにより大きな一時金を確保できる場合があります。一時的なものになるにせよ、苦境を耐える助けになることがあります。

罹患率の高いがんに備えることは、企業を継続させる上で重要なテーマと言えるでしょう。

法人向けがん保険の保障内容

がん保険とは名前の通り、がんになった場合の保障を備えることのできる医療保険です。がん保険の保障内容としてはいくつかのタイプがあるのでご紹介します。

  • がんと一度でも診断されると一時金が給付される「診断給付金」タイプ
  • 上記の「診断給付金」に加え、がんによる手術等の保障が付くタイプ
  • 入院給付金や死亡保険金など、様々な保障が付くセット型
  • 特定の治療を受けた場合に一定の給付金が支払われるタイプ

などが挙げられます。

法人向けのがん保険は、上記のうち複数の保障を組み合わせたセット型が選ばれることもあります。個人向けがん保険は商品選択の幅が広い一方、解約返戻金のないタイプが多く、その分保険料が抑えられるケースもあります(商品・設計により異なります)。

法人向けでは、1,000万、2,000万など高額の一時金保障を検討するケースもあります。個人向けは、法人契約に比べて保障額が抑えめに設計されるケースも見られます(加入目的や商品設計により異なります)。

おすすめの理由をご紹介

がん保険には解約返戻金のあるタイプとないタイプがあります。一般的に「法人向けがん保険」と呼ばれるタイプでは解約返戻金があるものもありますが、契約の目的によっては解約返戻金のないタイプの方が合う場合もあります。

例えばこのようなイメージになります。

解約金の有無 対象者 目的
経営者 ・退職金の積立
・がん保障(主に終身型)
経営者 及び 従業員 ・がん保障(主に定期型)
・在職中及び一生涯のがん保障(主に終身型)

解約返戻金のあるタイプを契約したとしましょう。

このタイプは保険料を払うたびに解約時の解約返戻金が積み上がっていきます。この解約返戻金を退職金にあてることが可能です。

その場合、退職時期と解約返戻金がピークになる時期が重なるように設計すると検討しやすくなります。なお、保険料の税務上の取扱いは契約内容により異なり、支払保険料の一部を損金に算入し、残りを前払保険料等として資産計上し、所定の期間経過後に取り崩して損金算入するケースがあります。

経営者の退職金は高額な損金となる一方、解約返戻金の受け取りがある場合は、その事業年度の課税所得に影響することがあります。退職金支給のタイミングやキャッシュフローとあわせて、無理のない設計が重要です。

ただ、退職金積立だけが目的であれば、がん保険以外の選択肢も含めて比較するのがよいでしょう。では何故、法人で「がん保険」を検討するケースがあるのか。その理由を挙げていきます。

1.検討しやすい

生命保険を契約する際、健康審査が必要となる場合が多いのをご存知でしょうか。

その内容によっては契約自体できない場合もあります。また、引受が可能でも保険料が通常より高くなったり、条件が付く場合もあります。

一方、がん保険の中には比較的簡単な告知で引受判断が行われる商品もあり、検討しやすいケースがあります。ただし、告知は正確に回答する必要があり、内容によっては給付金が支払われない場合もあるため注意しましょう。

2.がんリスクに備える

前述しましたが、経営者にとっての「がんリスク」とは、がんの治療に専念することにより会社経営に与える影響を指します。

日本のがん罹患は決して珍しくありません。国立がん研究センターの統計(2021年データに基づく推計)では、生涯でがんに罹患する確率は、男性で約63%、女性で約51%とされています。
※出典:国立がん研究センター がん情報サービス(統計)

がん保険では、一度がんと診断された場合に「診断給付金」として一時金が給付される商品があります。保険は、必要書類が整えば比較的早期に資金を確保できることがあります。

ただし、商品によっては保障開始から一定期間(例:90日程度)が免責となっており、給付金が支払われない場合もあります。加入前に免責期間や支払条件を確認しておきましょう。

また、従業員(経営者を含む)への福利厚生の一環としてがん保険を用意するのであれば、解約返戻金のないタイプを選ぶケースもあります。

定期型と終身型がありますが、福利厚生としては在職中の保障を中心に考える会社も多く、定期型を選ぶケースが見られます。
※福利厚生として扱うためには、原則として条件を満たす従業員が広く加入できる設計が必要です

3.税金対策の観点も含めて福利厚生の準備ができる

解約返戻金相当額のない第三分野保険は、原則として保険期間に応じて損金算入(期間配分)となりますが、一定の要件を満たす場合に限り、支払った事業年度で損金算入が認められる取扱いもあります。

また、福利厚生として取り扱う場合は、加入対象・運用ルールを明確にするために福利厚生規程を整備しておくと安心です。税務調査等で説明が必要になった際にも、運用実態とあわせて示しやすくなります。

4.退職金代わりに一生涯のがん保障が用意できる

解約返戻金のないタイプで終身型のがん保険は、定期型に比べると保険料が高くなることがあります。しかしこのタイプは、従業員(経営者も含め)の退職後も保障を継続できる設計を検討するケースがあります。

例えば、保険料の払込を定年までで終えるように設定し、定年後に契約者(名義)を退職者に変更する方法が検討されることがあります。そうすることで、退職後の保険料負担を抑えながら保障を継続できる場合があります。

ただし、名義変更や権利移転の扱いは契約内容や保険会社の取扱いにより異なり、会社または従業員側に課税関係が生じることがあります。実行前に、保険会社の取扱いと税理士等への確認を行いましょう。

経理処理についてはどうなる?

法人向けがん保険の場合、保険期間、保険料払込期間、そして受取人を誰にしているかによって経理処理方法が変わってきます。

ここでは契約者:法人、被保険者:役員もしくは従業員、受取人が変わるケースをみていきましょう。

受取人:法人の場合

条件①保険期間:終身、保険料払込期間:終身

保険期間 前半 後半
経理処理 ・(例)一部損金
・(例)一部資産計上(前払保険料として)
・契約内容に応じて損金算入
・資産計上額を残存期間に応じて取り崩し、損金算入

※終身の第三分野保険は、税務上の計算では保険期間の開始日から被保険者年齢が116歳に達する日までを保険期間として扱います。
※実際の資産計上の有無や割合は、解約返戻率等の契約内容により異なります。

条件②保険期間:終身、保険料払込期間:定期

保険期間 前半 後半
保険料払込期間中の経理処理 ・(例)一部損金
・(例)一部資産計上(前払保険料として)
・契約内容に応じて資産計上額を調整し、損金算入
・資産計上額を所定の期間で取り崩し、損金算入
保険料払込終了後の経理処理 契約内容に応じて損金算入(資産計上の累計額から取り崩し) 資産計上した前払保険料等を残存期間に応じて取り崩し、損金算入

受取人:役員・従業員などの場合

役員・従業員が広く被保険者となっている場合、福利厚生としての性格が強いと判断されることがあり、この場合は「福利厚生費」として損金処理されるケースがあります(加入範囲や運用実態が重要です)。

一部の役員や役職者などに限定されている場合は、保険料全額がその人の給与として取り扱われることがあります。給与となる場合は、その分所得税・住民税の負担が増える可能性もあるため注意しましょう。

法人は加入すべき?

ここまで法人向けがん保険について紹介してきました。企業における有用性や活用のポイントが見えてきたのではないでしょうか。

税務上の取扱いが一律ではないため、法人向けがん保険は「税金対策だけを目的にすると判断が難しい」面があります。

しかし、がんへの保障とあわせて考えると、退職金対策や資金繰りリスクへの備えを検討する手段になり得ます。

従業員にとってもメリットがあり、福利厚生を整えたい企業にとっても、選択肢に入れてよいでしょう。

会社の形態や経営状況によって、がん保険が最適かどうかは異なります。保障の目的、加入対象、保険料負担とキャッシュフローのバランスを踏まえて検討することが大切です。

税務上の取扱いは契約内容によって変わるため、法人保険に詳しい担当者や税理士等に相談すると、納得感のある選び方につながります。

また、保険料は決して安くありません。キャッシュフローが圧迫されないよう注意しつつ、必要性に応じて検討しましょう。

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