逓増定期保険の経理処理は、2008年~2019年の間に3度ルールが変わっています。
契約したタイミングによって節税効果も全く異なるので、きちんと把握しておくことが重要です。
この記事では、逓増定期保険の経理処理について、税制の改正前・改正後の違いを解説します。
改正前に加入した保険の経理処理もお伝えするので、逓増定期保険の見直しや新規加入を検討をしている経営者の方は、ぜひご確認ください。
逓増定期保険とは?

逓増定期保険は、契約期間中に保険金額が増え続ける、法人向けの定期保険です。
保険金額は基準保険金額の最大5倍まで増加し、最大金額に達した後でも満了時まで保障されるのがメリットです。一定の保険料で、経営者の保険事故や会社の業績低迷、事業承継などの資金確保に備えられます。
また、解約返戻金が比較的短い期間で高率になるのも、逓増定期保険が人気の理由の1つです。
税制の改正前・改正後における逓増定期保険の経理処理

ここでは税制の改正前・改正後における、逓増定期保険の経理処理を解説します。
改正前①:2008年以前の経理処理
年齢・期間の基準 | 保険期間の60%まで | 残りの保険期間40%まで |
---|---|---|
保険期間満了時の年齢が60歳超かつ加入年齢+(保険期間×2)が90歳超 | 50%を損金算入、50%を資産計上 | 保険料は全額損金算入、それまでの資産計上分を残りの期間で均等に取り崩して損金算入 |
保険期間満了時の年齢が70歳超かつ加入年齢+(保険期間×2)が105歳超 | 33.333%を損金算入、66.666%を資産計上 | 保険料は全額損金算入、それまでの資産計上分を残りの期間で均等に取り崩して損金算入 |
保険期間満了時の年齢が80歳超かつ加入年齢+(保険期間×2)が120歳超 | 25%を損金算入、75%を資産計上 | 保険料は全額損金算入、それまでの資産計上分を残りの期間で均等に取り崩して損金算入 |
上記3区分に該当しない | 保険料は全額損金算入 | 保険料は全額損金算入 |
2008年2月27日までに契約が完了した逓増定期保険は、契約初期から保険料を全額損金算入できるパターンがありました。
たとえば、49歳の男性が保険期間20年で、逓増定期保険に加入するとします。
保険期間満了時の年齢を計算式にあてはまると「49 + (20×2) = 89歳」なので、保険料の全額損金算入が可能です。
全額損金算入ができれば、当年度の法人税を大幅に抑えられるため、節税効果が高いとされていました。
改正前②:2008年~2019年の経理処理
年齢・期間の基準 | 保険期間の60%まで | 残りの保険期間40%まで |
---|---|---|
保険期間満了時の年齢が45歳超 | 50%を損金算入、50%を資産計上 | 保険料は全額損金算入、それまでの資産計上分を残りの期間で均等に取り崩して損金算入 |
保険期間満了時の年齢が70歳超かつ加入年齢+(保険期間×2)が95歳超 | 33.333%を損金算入、66.666%を資産計上 | 保険料は全額損金算入、それまでの資産計上分を残りの期間で均等に取り崩して損金算入 |
保険期間満了時の年齢が80歳超かつ加入年齢+(保険期間×2)が120歳超 | 25%を損金算入、75%を資産計上 | 保険料は全額損金算入、それまでの資産計上分を残りの期間で均等に取り崩して損金算入 |
2008年の改正前と比較すると、契約初期の全額損金算入が封じられています。
保険期間の60%が経過するまで、最大で半額まで損金算入となります。
改正前より全額損金算入の難易度が上がり、節税商品としての使い勝手が悪くなりました。
改正後:2019年以降の経理処理
最高解約返戻率 | 資産計上期間 | 資産計上額 | 取崩期間 |
---|---|---|---|
50%以下 | なし | なし | なし |
50%超〜70%以下 | 保険期間開始日から40%を経過するまで | 保険料の40% | 保険期間の75%経過後から終了日まで |
70%超〜85%以下 | 保険期間開始日から40%を経過するまで | 保険料の60% | 保険期間の75%経過後から終了日まで |
85%超 | 次のいずれか長い期間まで
①保険期間開始日から最高解約返戻率となる期間の終了日まで ②①の期間経過後で「(当年の解約返戻金相当額-前年の解約返戻金相当額)÷年換算保険料相当額」が70%を超える期間 |
保険期間開始日から10年経過するまでは「険料×最高解約返戻率の90%」、11年目以降は「保険料×最高解約返戻率の90%」 | 解約返戻金相当額が最も高い金額となる期間経過後から保険期間終了日まで |
2019年7月8日以降に契約が成立した逓増定期保険は、年齢ではなく最高解約返戻率※によって区分されます。
※最高解約返戻率…解約返戻率(支払った保険料に対する解約返戻金の割合)がもっとも高くなるときの数値。
損金算入のルールが複雑化し、最高解約返戻率が高いほど損金算入できる割合が減少しました。
節税効果が実質なくなり、元本割れする可能性が高くなっています。
改正前に加入した保険の経理処理はどうなる?

税制改正前に逓増定期保険に加入していた場合は、契約当時の損金算入ルールが適用されます。
具体的な切り替えタイミングは下記のとおりです。
- 2008年2月27日までの契約…改正前①(2008年以前の税制で経理処理)
- 2008年2月28日〜2019年7月7日までの契約…改正前②(2008年~2019年の税制で経理処理)
- 2019年7月8日以降の契約…改正後(現行の税制で経理処理)
ただし、保険料の増額や払済保険への変更、契約更新などを行うと、現在のルールが適用される可能性があります。
逓増定期保険の節税効果は改正ごとに薄れているため、契約内容の変更などは出口戦略の検討が重要です。
税制の改正で起きた影響とは?

税制改正は経営者にどのような影響をもたらしたのでしょうか。
加入者目線が意識すべきポイントを詳しく解説します。
改正前より損金算入のルールが厳しくなり、節税効果がほとんど失われた
税制が改正されるたびに損金算入のルールは厳しくなり、逓増定期保険の節税効果はほとんど失われました。
「節税目的の商品は生命保険の本来の趣旨から逸脱している」といった理由から、規制はどんどん強化されています。
保険会社側も商品設計を見直しており、現在は節税を目的とした保険商品は市場から姿を消しています。
節税だけでなく保障目的での利用にシフト
節税効果が減少した結果、逓増定期保険は保険本来の目的である「保障のための利用」にシフトしています。
経営者に万一の事態があったときの運転資金や、役員退職金資金の積立といった活用方法があります。
損金算入がゼロになったわけではありませんが、今後新たな税制改正で経営処理のルールがさらに厳しくなる可能性もあるため、注意しましょう。
まとめ

逓増定期保険の経理処理は、契約したタイミングによって適用されるルールが異なります。
切り替わるタイミングは下記のとおりです。
- 2008年2月27日の契約(現行の2つ前の税制)
- 2008年2月28日の契約(現行の1つ前の税制)
- 2019年7月8日の契約(現行の税制)
以前は全額損金算入が可能でしたが、現行はルールが厳しくなり、実質的な節税効果は見込めなくなっています。
また、税制改正前に契約した逓増定期保険でも、契約内容の変更などを行えば現行の税氏に従って経理処理をする必要があるため、注意が必要です。
逓増定期保険の見直しや新規加入を検討している場合、法人保険のプロに相談してみることも検討してみましょう。自社の財務状況に合わせて、最適なプランをアドバイスしてもらえます。
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