「法人向け変額保険って、資産運用もできるって聞いたけど、本当に法人にとってメリットになるの?」
そんな疑問をお持ちの法人経営者や法人の経理担当者の方は少なくありません。
法人向け変額保険は、「死亡保障」と「資産形成」が同時に狙える法人専用の保険商品です。法人の資金を活用して運用によるリターンを期待できる反面、保険料や解約返戻金が減る可能性もあるため、法人が契約する際には慎重な判断が必要です。
この記事では、法人が変額保険を契約する際のメリット・デメリット、保障内容、法人向けの商品例までをわかりやすく解説。法人にとっての活用価値や契約前に押さえておくべきポイントを整理し、安心して検討できる判断材料をお届けします。法人として変額保険を導入すべきかどうか、ぜひ最後までご確認ください。
法人向け変額保険は「死亡保障」と「資産運用」が組み合わさった商品

変額保険は、生命保険に資産運用を組み合わせた商品です。法人が契約者として加入することで、保険料を保険会社が特別勘定として株式や投資信託、債券などに投資し、リターンを追求できます。
保障を確保しながら資産運用ができるのが、法人向け変額保険の最大の特長です。
法人が加入すれば、「経営者の死亡保障」「将来の資金準備」「インフレ対策」という三つの経営課題に、一つの法人保険で対応できます。
運用実績に応じて保険金や解約返戻金が変動する
変額保険の大きな特徴は、法人が支払った保険料の一部が運用され、その実績によって死亡保険金や解約返戻金が変動する点です。
運用が好調であれば法人として保有資産の増加が見込めますが、不調時には元本割れのリスクも存在します。
法人が変額保険を導入する場合は、どの程度のリスクがあるかを把握し、事業に支障のない範囲で契約することが大切です。
商品によっては最低保証がある
法人向けの変額保険には、死亡保険金に最低保証がある商品も多く見られます。最低保証があれば運用成果にかかわらず最低限の保障を受け取れるため、万が一の際のリスクヘッジとして機能します。
ただし、解約返戻金については最低保証がない商品が大半です。法人としては、最低保障の有無を確認し、自社の資産計画に応じて適切な商品を選ぶ必要があります。
投資先は複数のファンドから契約者が選べる
法人向け変額保険は、法人自身が投資先を選べる点も特徴です。
保険会社が用意する複数のファンド(国内株式型、海外債券型、バランス型など)から、法人の方針に合ったものを選べます。
また、契約後もスイッチング(変更)が可能な商品もあり、法人が自社の経営状況や市場動向に応じて柔軟に対応できます。
保険期間や受取方法に応じて3つの種類がある
法人向け変額保険には、保険期間の長さや保障・返戻金の受け取り方の違いに応じて、主に「終身型」「定期型」「個人年金型」の3種類が存在します。目的や運用方針に応じて適したタイプを選ぶことが重要です。
1. 終身型変額保険
終身型の変額保険は、被保険者が亡くなるまで保障が継続するタイプの変額保険です。死亡保障額は契約時に定められており、解約返戻金も長期運用によって増える可能性があります。
経営者の退職金準備や長期資産形成を主目的とする法人に適しており、相続対策としても活用されるケースがあります。
2. 定期型変額保険
定期型の変額保険は、あらかじめ定めた保険期間(例えば10年、15年など)で契約するタイプです。保険料が割安である一方、保険期間終了後には保障が消滅します。短期的な保障や資金計画に合わせて、柔軟に活用できる点が特長です。
保険期間中に解約すれば返戻金を受け取ることができ、運用次第では資産形成にも寄与します。
3. 個人年金型(法人向けでは限定的)変額保険
個人年金型の変額保険は、老後に年金として分割で受け取る形式の変額保険です。法人向けにはあまり一般的ではないものの、一部の保険会社では役員退職金制度の一部として導入されることもあります。
運用成果によって年金額が変動するため、将来の生活資金や退職金を計画的に受け取りたい場合に選ばれます。
法人向け変額保険に加入するメリットとデメリット

ここからは、法人が変額保険に加入するメリットとデメリット、それぞれ具体的に解説します。
自社のニーズにマッチしているか、しっかり見極めましょう。
法人向け変額保険のメリット
資産形成と保障が同時に可能
先述の通り、法人向け変額保険は「死亡保障」と「資産運用」を同時に行えますが、これはそれぞれ別々に契約・運用する場合とは異なる利点があります。
貯蓄型保険は保険料を「積立金」と見立てることも多いですが、実際には保険金や解約返戻金といった形でしか手元に戻せず、銀行口座のように引き出せるものではありません。好きなときに使えない状態、言い換えれば「資産を眠らせている状態」です。
一方、変額保険の保険料は運用資金として利益を生み出すため、「資産を働かせている状態」であり、より有効活用しているといえます。
このように、変額保険は「保障=守りの戦略」と「投資=攻めの戦略」を同時に行えるため、資産を無駄なく有効活用したい法人に魅力的な金融商品です。
損金算入による法人税の繰延
法人が保険契約者となる場合、支払った保険料を損金として計上できます。これにより法人税の課税所得を減らせるため、当年の税負担を軽減できます。
ただし、損金算入できる割合は「解約返戻率」によって変わるため注意が必要です。2019年の税制改正により、最高解約返戻率(支払済み保険料に対して解約返戻金の割合が最も高いときの数値)が高いほど、損金算入割合が制限されるようになりました。
また、保険料を損金算入しても、保険金や解約返戻金は益金として課税されるため、トータルでの課税額は変わりません。保険料の損金算入は「永続型の節税」ではなく、あくまで課税の繰延(先送り)になります。
課税の繰延効果を最大限活かすのであれば、退職金支給などの大型支出に合わせて解約する方法が一般的です。解約返戻金を支出で相殺することで、解約時の高額課税を避けられます。
インフレ対策になる
変額保険は、運用先として株式や不動産投資信託などを選べるため、インフレに連動して資産価値が増える可能性があります。
このため、保険金や返戻金が契約時点で定額に固定される保険商品と比べると、インフレによる実質的な価値の目減りを抑えやすく、インフレ対策として有効といえます。
ただし、インフレ局面でも市場が下落するケース(スタグフレーションなど)や、短期的な相場変動によって元本割れとなるリスクもあるため、契約後も市場動向を注視し、必要に応じてファンドの見直しやスイッチングを検討することが重要です。
法人向け変額保険のデメリット
運用リスクで元本割れの可能性がある
変額保険は投資型商品であるため、元本保証がない点は大きなリスクです。
特別勘定での運用は、株式・債券など複数の資産に分散されますが、市場全体が下落すれば、支払った保険料よりも解約返戻金が下回ること(元本割れ)も十分にあり得ます。
特に契約から短期間での解約は、初期コストや運用実績がマイナスであることから、大きく損失を被るリスクが高まります。元本を割っても解約せざるを得ない状況にならないように、余裕資金での契約を基本とし、長期保有前提での導入を検討しましょう。
解約返戻金の変動に注意
返戻金の金額は、契約からの経過年数と運用成績によって大きく変わります。10年、15年といった長期保有によって返戻率がピークに達し、その後は再び下落する設計の商品が一般的です。
このピークを見誤って解約した場合、資産形成どころか損失を被るリスクもあります。また、契約時に設定された年齢や満期条件によっても返戻率の推移は異なるため、自社に合ったタイミングを把握したうえで計画的に契約することが不可欠です。
運用費用の負担がある
変額保険は、保障に必要な手数料に加えて、運用にかかる費用(信託報酬)も契約者の負担となります。
契約者の負担費用は保険料や運用益から控除され、年率1%未満~数%程度です。ごく少額ではありますが、保険や投資商品を単体で契約するよりコストは高くなります。
変額保険が向いている法人の特徴

変額保険は仕組みは特殊なので、法人によって向き不向きもあります。
具体的にどのような法人が変額保険に向いているか解説していくので、ぜひ自社の状況と照らし合わせてみてください。
経営者退職金や事業承継を視野に入れた長期戦略を組みたい法人
変額保険は、リスクヘッジをしつつ長期的な視点で資産形成ができる手段なので、経営者の退職金準備や事業承継資金の確保などロングスパンで戦略が必要な対策に向いています。
例えば退職金準備は、社内留保だけだと財務状況が不透明になり、承継後の経営者や後継者に負担がかかるケースもあります。一方、変額保険を活用すれば、計画的に保険料を積み立てながら制度としての透明性が高まります。
また、解約返戻金のピークを退職時期に合わせて設計することで、合理的かつ効率的な引退準備が可能になります。企業としての持続性や、世代交代の円滑化を重視する法人にとって、有効な選択肢といえるでしょう。
福利厚生を強化したい中小企業・ベンチャー企業
中小企業やスタートアップでは、資金繰りや人的リソースの制約から福利厚生制度の充実が難しい企業もあります。そうした状況下で法人向けの変額保険を活用すれば、保障付きの資産形成制度を無理なく提供できるようになります。
例えば、一定の勤続年数を経た従業員への退職金制度や、幹部社員へのインセンティブ設計などにも応用が可能です。さらに、経営者自身に対しても保障と資産形成を両立させる仕組みを導入することで、事業の安定化と企業の魅力向上につなげられます。
福利厚生制度の整備は、従業員満足度やブランドイメージの向上に直結します。今後の成長を見据えて組織づくりを固めたい法人にとって、変額保険は戦略的に有効なツールの1つです。
資金を効率的に活用したい法人
先にも述べた通り、変額保険は資産形成と保障が同時に可能です。言い換えれば、保険料に「保障」と「投資」という二重の機能が付くということです。
1つの支出で2つの役割を持たせられるため、キャッシュフローの観点でいえば効率性が向上します。また、将来の資金準備やインフレ対策としての側面も考慮すれば、より多様な機能があります。
幅広い課題をカバーできる変額保険は、「色々施策を打ちたいけどキャッシュが足りない」「あれこれ手を出すと管理が面倒」と考える法人に最適な経営支援ツールです。
代表的な商品例

ここからは、各社が提供する代表的な変額保険をご紹介します。
実際に変額保険の加入を検討する際は、ぜひ参考にしてください。
変額保険 ライフインベスト:メットライフ生命
「ライフインベスト」は、万一の保障と資産形成を両立できるよう設計された変額保険です。
保険期間の終了や死亡・高度障害時に、運用実績に応じた満期保険金や死亡保険金を受け取れます。特約を付加すれば、三大疾病(がん・急性心筋梗塞・脳卒中)で所定の状態に該当したとき以降、以後の保険料支払いが免除されます
特別勘定のコースは国内外の株式や債券など13種類あり、運用方針やリスク許容度に応じて選択可能です。
バリアブルライフ 変額保険:ソニー生命
「バリアブルライフ」は、ソニー生命が提供する変額保険です。終身型と有期型の2種類があります。
終身型は一生涯保障が続き、死亡時まで確実に保険金が支払われます。一方、有期型は保険期間満了時に満期保険金を受け取れる点がメリットです。
災害死亡給付特約やがん特約、払込免除特約(高度障害等対象)など特約も豊富にあり、柔軟にカスタマイズできる商品設計となっています。
変額保険(定期型):エヌエヌ生命
エヌエヌ生命の「変額保険(定期型)」は、最長100歳までの死亡・高度障害保障を備えつつ、運用実績に応じて保険金額や解約返戻金が変動する法人向け変額保険です。
定期型でありながら、保障期間を終身に近い100歳まで設定できるため、長期的なリスク管理に向いています。
保険料の運用比率は1%から指定可能で、地域・株式を自由に設定できます。オートリバランスという機能で、相場変動による資産比率の変動に対して自動的に構成比率を調整することも可能です。
マーケットリンク 新変額保険(有期型):東京海上日動あんしん生命保険
東京海上日動あんしん生命保険の「マーケットリンク 新変額保険(有期型)」は、死亡・高度障害保障を一定期間確保しつつ、特別勘定の運用実績に応じて満期保険金や解約返戻金が変動する法人向け変額保険です。
積立金は8種類の特別勘定で運用され、その運用成果に応じて、満期保険金や解約返戻金の金額が増減します。満期保険金の年金受取や一時払終身保険への切替も可能なので、将来的な保障ニーズに合わせて柔軟に活用できます。
ただし、満期保険金や解約返戻金には最低保証がないため、払込保険料を下回るリスクに注意が必要です。
契約時の注意点

法人向け変額保険を導入する際には、以下の点に注意が必要です。
- 導入目的の明確化
- 退職金準備、福利厚生、死亡保障、余剰資金の運用など、契約目的を明確にすることで適切な商品選定が可能になります。目的に応じては他の保険や制度の方が適している場合もあります。
- 返戻率のピーク確認
- 解約返戻金は10~30年程度で返戻率のピークを迎えます。解約時期を誤ると元本割れのリスクがあるため、事前にシミュレーション資料で返戻スケジュールを確認しましょう。
- 会計処理・仕訳への理解
- 保険料の損金処理や返戻金の益金計上など、法人会計上の処理が複雑になる可能性があります。経理部門や顧問税理士と連携して、仕訳ルールや処理方法を確認しておくことが重要です。
- 税負担のシミュレーション
- 契約中は税負担を抑えられても、解約時に課税が発生します。節税効果は「繰延べ」に過ぎないケースもあるため、契約期間全体を通じた損益と税額の推移を事前に試算しておく必要があります。
これらの点を事前に整理しておくことで、より効果的に変額保険の活用ができます。専門家と連携しながら、自社に合った契約設計を行いましょう。
まとめ

法人向け変額保険は、資産形成と死亡保障が一体化できるユニークな商品です。一方で、運用リスクや解約タイミング、税制面の留意点も多く、経営計画に沿った目的整理と試算が欠かせません。
具体的な商品選びに進む前に、自社の目的やキャッシュフロー、会計処理の制度をしっかり整理することが大切です。
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