「保険料の支払いを続けるのが難しい」「保障内容を見直したい」といった理由から、長期平準定期保険を払済保険に変更するケースがあります。
払済保険とは、保険料の払い込みを中止して、解約返戻金を残りの保険料の支払いに充てつつ保障を継続できる仕組みのことです。
この記事では、長期平準定期保険を払済保険に変更する場合の経理処理を解説します。
国税庁の法人税基本通達をもとに洗替経理処理はどういう時に必要かもお伝えするので、保険を見直したい方はぜひ参考にしてみてください。
長期平準定期保険を払済保険に変更するときの経理処理

もともと、長期平準定期保険から払済保険に変更するには洗い替え処理(会計上適正になるよう更新処理すること)が必要でしたが、2019年の税制改正に伴い任意となりました。
ただし、保険タイプが変わると洗い替え処理を行う必要があるため、注意が必要です。
払済保険における経理処理の基本ルール(法人税基本通達9-3-7の2)
法人税基本通達9-3-7の2をもとに、払済保険における経理処理の基本ルールを確認しましょう。
原則として、法人が加入している生命保険を払済保険に変更した場合、「変更時の解約返戻金相当額」と「それまでに資産計上している保険料の額(資産計上額)」との差額を当該事業年度の益金または損金として算入します。
ただし、既に加入している生命保険の保険料の全額(特約に係る保険料の額を除く)が役員又は使用人に対する給与となる場合は、この限りではありません。
具体的な計算方法は、以下の通りです。
解約返戻金相当額 – 資産計上額 = 雑収入(雑損失)
同タイプの払済保険なら洗い替えは不要
前述の「解約返戻金相当額と資産計上額の差額を当該事業年度に算入」というルールは、例外があります。
下記5つの保険から同タイプの払済保険に変更する場合、特約が付加されていなければ洗い替えの経理処理が不要となるルールです。
- 養老保険
- 終身保険
- 定期保険
- 第三分野保険(医療保険やがん保険、介護保険など)
- 年金保険
長期平準定期保険は定期保険の一種なので、払済後も定期保険なら洗い替えの経理処理は不要となります。
終身保険に変更となる場合は洗い替えが必要
長期平準定期保険の場合、払済保険への変更時に終身保険に変更される商品もあるので注意が必要です。
長期平準定期保険から終身保険に変更されると、「同種の払済保険であれば洗い替えの経理処理は不要」という例外ルールが適用されません。基本ルール通り、解約返戻金相当額と資産計上額の差額を算入する経理処理が発生します。
終身保険に変更されるかどうかは商品によるため、契約中の長期平準定期保険がどちらにあてはまるか調べておきましょう。
長期平準定期保険を払済保険にするメリットは?

例外ルールがあるとはいえ、払済保険への変更は経理処理の手間が増える可能性もあります。
では、長期平準定期保険を払済保険にするメリットは何なのでしょうか?
主に2つのメリットが挙げられるため、詳しく解説していきます。
メリット①保障を維持しつつ保険料の支払いを止められる
長期平準定期保険を払済保険にすると、保障を維持しつつ保険料の支払いをストップできます。
通常、保険を解約した場合は保障も受けられなくなります。「保険料の支払いが苦しくても、万が一のリスクを考えると解約しにくい」というケースは少なくありません。
一方、長期平準定期保険を払済保険にすれば保険金額は少なくなるものの保障は維持でき、そのうえで保険料の支払いをストップできます。
また、現行の保険を払済保険にしつつ新たな保険に加入することで、コストを増やさずに保障を厚くすることが可能です。
メリット②変更後も解約返戻金は減らずに増えていく
長期平準定期保険を払済保険に変更した場合、それまでに積み立てた解約返戻金は一次払い保険料として充てられます。
しかし、一次払い保険料として支払った分は引き続き運用されるため、解約返戻金は少しずつ増えていきます。払済保険を解約すれば、解約返戻金を受け取ることが可能です。
保険料の支払いはストップするため、コストをかけずに運用できることになります。
まとめ

長期平準定期保険を払済保険に変更すると、保険料の支払いをストップしつつ保障を継続できます。
保険金額は少なくなるものの、当初の期間通り保障を受けられるのは大きなメリットです。
払済保険に変更する場合は、変更時の解約返戻金相当額と、それまでに資産計上している資産計上額との差額を、当該事業年度の益金の額又は損金の額に算入します。
経理処理は複雑なため、国税庁からの通達もチェックしつつ、税理士やFPのアドバイスも受けることをおすすめします。
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