
逓増定期保険は、法人の保障準備や資金計画の中で検討されることが多い保険です。
その背景として、保障と資金準備を組み合わせて設計できる点に加え、契約内容によっては保険料の一部を損金算入できるため、当期の税負担の見え方に影響する場合があることが挙げられます。
ただし、逓増定期保険は税務上の取扱いや、解約返戻金を受け取る際の課税関係を踏まえて検討する必要があります。
税務の前提を誤ると、想定していた資金計画や出口のプランとずれが生じるおそれがあります。
そこで今回は、逓増定期保険に加入した際の税務上の取扱いについて解説していきます。
そもそも逓増定期保険とは?
逓増定期保険は、保険期間の経過に応じて保険金額が増える設計の定期保険です。増額幅は商品・設計によって異なりますが、例えば満了時に当初の保険金額の5倍程度まで増える設計もあります。そのため、他の定期保険と比べて大きな保障を準備できる場合があります。
逓増定期保険の保障額が増えていく理由は、会社の成長に伴う必要資金の増加を想定して設計されているためです。
会社が成長すれば運転資金はさらに必要になります。一方で、経営者に万一のことがあると資金繰りが厳しくなる局面もあり得ます。逓増定期保険は、このような状況に備えるための選択肢として検討されます。
さて、保障額が増えていく点が大きなポイントと言える逓増定期保険ですが、そのほかにも知っておきたい特徴があります。
まず、逓増定期保険の特徴のひとつとして、契約時の年齢が保障期間に影響する点が挙げられます。
商品によっては、契約時の年齢によって長期の保障期間が設定できない場合もあるため、事前に確認しておきましょう。
さらに、逓増定期保険には満期保険金がありません。
法人向けの生命保険には、養老保険のように保障期間が終わった時に死亡保険金と同額の満期保険金が出る保険があります。
しかし、逓増定期保険は定期保険であり、一般に満期保険金はなく、保険期間満了後は保障が終了します。
一方で、逓増定期保険は定期保険でありながら、解約返戻金がある商品が多い点が特徴です。解約返戻金の推移は商品・設計によって異なり、契約の途中で返戻率が高まる設計もあります。
ただし、契約初期の解約では返戻金が小さい場合もあるため、返戻金推移(ピークの時期)を設計書で確認したうえで判断しましょう。
以上が、逓増定期保険の基本的な情報でした。まとめると、以下のようになります。
まとめ
- 逓増定期保険は、保険期間の経過に応じて保険金額が増える設計の定期保険
- 契約時の年齢によって、設定できる保険期間が変わる場合がある
- 満期保険金はないが、解約返戻金がある商品が多い
- 解約返戻金のピーク時期は商品・設計によって異なる
上記のような特徴のある逓増定期保険ですが、ではこの保険に加入するとどんなメリットがあるのでしょうか?
次の章で確認していきます。
逓増定期保険のメリット・デメリット
逓増定期保険には、主に下記の4点のメリットがあります。
- 万が一の時のために大きな保障を準備しやすい
- 保障を確保しながら資金準備を進められる場合がある
- 契約者貸付制度を利用できる
- 保険料の損金算入により当期の税負担の見え方に影響する場合がある
メリット1:大きな保障を準備しやすい
まず挙げられるのが、経営者や役員の死亡保障を用意できる点です。
一般の定期保険でも死亡保障はつけられますが、法人向けの逓増定期保険は、年数の経過に応じて保険金額が増える設計のため、将来の保障を厚くしたい場面で検討されます。
増額幅は商品・設計によって異なりますが、例えば契約時の保険金額の5倍程度まで増える設計もあります。
例えば、経営者の影響力に依存している会社では、万一経営者が亡くなった後に資金繰りが厳しくなる可能性があります。
逓増定期保険で保障を準備しておくことで、資金面の手当として活用できる場合があります。
メリット2:保障を確保しながら資金準備を進められる場合がある
次に、逓増定期保険は保障を確保しながら、将来の資金化の選択肢を持てる点がメリットになる場合があります。
商品によっては、返戻率のピーク時に、払い込んだ保険料の90%以上の解約返戻金が見込まれる設計もあります(返戻率やピーク時期は商品・設計によって異なります)。
解約返戻金の活用方法として検討されるのが、経営者や役員の退職金です。
退職のタイミングと返戻率のピーク時期を合わせるように設計し、解約返戻金を退職金の原資に充てる考え方です。
この場合、解約まで死亡保障を確保しながら、資金化の選択肢も持てる点が特徴になります。
ただし、契約初期の解約では返戻金が小さい場合もあるため、資金繰りと返戻金推移を前提に検討しましょう。
メリット3:契約者貸付制度を利用できる
また、逓増定期保険に加入していると、契約者貸付制度を利用できるという点も、メリットのひとつです。
契約者貸付制度とは、保険を解約しなくても、解約返戻金の範囲内で保険会社から資金を借り入れられる制度です。急な資金需要が生じたときの選択肢として検討されます(取扱い条件や金利などは契約内容で異なります)。
メリット4:当期の税負担の見え方に影響する場合がある
最後のメリットとして、契約内容によっては支払った保険料の一部を損金算入できる点が挙げられます。
損金算入できる保険料の割合や資産計上が必要な割合は商品・設計によって異なりますが、保険料が損金算入される分、当期の課税所得に影響し、結果として当期の税負担が軽く見える形になる場合があります。
ただし、解約返戻金を受け取ると益金(雑収入)として計上する局面があるため、入口(損金算入)と出口(受取り時の課税)をセットで検討します。
一方で、逓増定期保険にはデメリットもあります。
デメリット1:保険料が高額になりやすい
まず挙げられるのが、契約内容によりますが、保険料が高くなりやすい点です。
逓増定期保険は、大きな死亡保障を準備でき、解約返戻金がある設計も多いことから、保険料が高くなりやすい傾向があります。
そのため、保険料の支払いが会社の資金繰りに影響する可能性があります。契約時は、会社の運営状況と照らし合わせ、無理のない保険料水準で設計することが重要です。
デメリット2:返戻率のピークを過ぎると返戻金が下がりやすい
次に、返戻率にはピークがある点です。返戻率が100%以上になる場合もありますが、一定のピークを過ぎると低下し、保険期間満了に近づくほど返戻金が小さくなる設計が多いことに注意が必要です。
返戻金を考える上で重要なのは、解約のタイミングです。
役員の退職時に返戻率のピークが来るように設計するなど、出口まで見据えた設計が求められます。
ただし、当初想定していた退職時期がずれるなど、事情が変わることもあります。返戻金の活用は、その都度、会社の状況に合わせて見直す前提で考えておきましょう。
デメリット3:早期解約のリスク
次のデメリットは、早期解約では返戻金が小さくなりやすい点です。
逓増定期保険は返戻率のピークが比較的早い設計もありますが、契約後1年目~2年目の時期は解約返戻金が少ないケースが見られます。商品や設計によっては、解約返戻金がゼロとなる場合もあります。
契約初期の解約は、返戻金が少ない一方で保障も失うため、資金繰りを前提に慎重に判断しましょう。
デメリット4:解約返戻金は益金(雑収入)になり得る
また、解約返戻金は益金(雑収入)として計上する局面がある点にも注意が必要です。
受取額は原則として益金(雑収入)に計上しますが、同時に、これまで資産計上してきた前払保険料(保険積立金等)を取り崩し、受取りと相殺する形で損益を計算します。
そのため、解約のタイミングによっては、当期の利益が増えたように見え、法人税等の負担が増える形になる場合があります。
解約返戻金を受け取るときは、同じ年度に損金算入できる支出(退職金の支払いなど)を組み合わせるなど、出口の計画も含めて検討します。
以上が、逓増定期保険のメリットとデメリットでした。
メリット・デメリットのどちらでも言及したとおり、逓増定期保険は、保険料と解約返戻金がポイントです。
保険料も解約返戻金も、税務上の取扱いと資金繰りの両方に関わります。
次の章から、逓増定期保険の保険料、返戻金、被保険者の死亡時の保険金が税務上どのように扱われるのかを確認していきます。
税務上の扱い
~保険料~
逓増定期保険の保険料は、契約内容(最高解約返戻率など)に応じて、損金算入できる部分と資産計上が必要な部分に分かれます。
一般的に、逓増定期保険は、設計によって2分の1損金として処理される商品もあります。
この場合、保険料の半分を損金に算入し、残りの半分は前払保険料(保険積立金等)として資産計上します。
ほかに、設計によっては3分の1損金、4分の1損金といった取扱いとなる商品もあります。この場合も、損金算入できない部分は益金ではなく、前払保険料(保険積立金等)として資産計上するのが基本です。
また、契約内容によっては、保険料のすべてが損金算入となる設計の保険も存在します。
いくら分を損金算入できるのか、資産計上が必要なのかは商品・設計によって大きく異なります。具体的な処理は、設計書(返戻金推移)と、保険会社が提示する税務上の取扱いの前提を確認したうえで判断しましょう。
保険料を支払っている間の注意
逓増定期保険に加入した際の税務上の扱いについて、注意したいのは資産計上と取崩しのタイミングです。
損金算入できない保険料は、前払保険料(保険積立金等)として資産計上し、契約内容に応じた一定期間の経過後に、取り崩して損金算入していきます。
そのため、年度ごとの損金算入額は「その年度に支払う保険料」だけで決まらず、資産計上した額の取崩しが入る期間では、損金算入額が増える場合があります。
また、解約返戻金のピーク時期を過ぎると返戻金が低下しやすい設計も多いため、返戻金推移と資金繰りを前提に、解約の時期を検討することが重要です。
税務上の扱い
~返戻金を受け取った場合~
次は、返戻金を受け取った場合の税務上の扱いについて解説します。
解約返戻金を受け取った場合は、原則として受取額を益金(雑収入)に計上します。
そのうえで、これまで資産計上してきた前払保険料(保険積立金等)を取り崩し、受取りと相殺する形で損益を計算します。
例えば、2分の1損金の設計で、保険料の半分を資産計上している場合、解約時には「解約返戻金(雑収入)」と「資産計上分の取崩し」を組み合わせて処理することになります。
解約の年度に益金が増える形になる場合もあるため、解約返戻金を受け取るタイミングでは、同じ年度に損金算入できる支出(退職金の支払いなど)を組み合わせるかどうかも含めて検討します。
税務上の扱い
~保険金を受け取った場合~
逓増定期保険の活用方法は、解約返戻金だけではありません。被保険者が亡くなったときに多額の死亡保険金が出るのも、逓増定期保険の特徴です。
では、死亡保険金を受け取ったときの税務はどうなるのでしょうか?
2分の1損金の設計で死亡保険金を受け取った場合には、資産計上している前払保険料(保険積立金等)を保険金から差し引き、残りを益金(雑収入)として計上します。
たとえば、保険金額が1億円で年間保険料が615万円の逓増定期保険に加入していたと仮定しましょう。
被保険者が契約から3年後に死亡した場合、資産計上累計は922万5,000円(615万円×2分の1×3年)となります。
法人税等の課税対象として計上される金額は、保険金額の1億円から、資産計上累計を差し引いた金額です。
つまり、
1億-(615万円×2分の1×3年)=
9,077万5,000円
9,077万5,000円が、益金(雑収入)として計上される金額になります。
保険金から死亡退職金を支払うなら?
逓増定期保険の被保険者が亡くなった場合、死亡保険金が支払われます。
この保険金を死亡退職金として、亡くなった経営者、もしくは役員の遺族に支払うことを検討するケースもあります。
死亡退職金は、要件を満たす範囲で損金算入できるため、出口の計画として組み合わせを検討する余地があります。
ただし、逓増定期保険の被保険者が経営者や役員になってから間もない時期に亡くなった場合には、社会通念上、過大な死亡退職金の支給は難しくなることがあります。
また、役職期間が長い場合でも、死亡退職金や見舞金に社会通念上相当と認められない金額を支給すると、損金算入が制限される場合があります。
死亡保険金の活用を考える際も、支給の妥当性や税務上の取扱いまで含めて検討しましょう。
いかに損金と出口を組み合わせるかがポイント
ここまで解説してきたとおり、逓増定期保険に加入した場合に重要になるポイントは、保険料(損金算入・資産計上)と解約返戻金(受取り時の課税)です。
保険料は契約内容に応じて損金算入できる部分がありますが、解約返戻金は益金(雑収入)として計上する局面があるため、入口と出口をつなげて設計することが欠かせません。
損金算入できる割合が高い設計は、当期の税負担の見え方に影響しやすい一方で、返戻率のピークまでの期間や返戻金の水準が設計によって変わる点にも注意が必要です。
また、解約返戻率のピークは、出口の設計で無視できないポイントです。解約返戻金を受け取る年度に、損金算入できる支出を組み合わせるなど、準備も含めて検討しましょう。
逓増定期保険に加入する場合には、損金算入と返戻金推移のバランス、メリットと注意点を比較して選ぶことが大切です。
とはいえ、商品数が多く、比較項目も複雑になりがちです。迷う場合は、保険の専門家であるファイナンシャルプランナーや保険代理店に相談し、設計書(返戻金推移)と税務上の前提を確認しながら検討するとよいでしょう。
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