近年のサイバー事故増加に伴い、サイバー保険に加入する企業も増えています。
しかし、中小企業の多くは、コストなどの問題からサイバー保険への加入も慎重にならざるを得ません。
本記事では、
- 中小企業に起こり得るサイバーリスクと損害
- 中小企業がサイバー保険を選ぶときのポイント
を解説し、中小企業がサイバー保険を検討するための基礎知識をお伝えします。
自社に必要な補償内容を見極め、サイバーリスクに対する防衛体制を強化しましょう。
中小企業にもサイバー保険は必要!考えられるリスクと損害
結論から言うと、中小企業はサイバー保険への加入を積極的に検討すべきです。
理由は次の3つが挙げられます。
- 狙われやすい:
セキュリティ対策が不十分なケースが多いため、規模が小さくても攻撃対象になり得る - 事故対応コストが重い:
調査・復旧・連絡など各種対応にかかる費用と時間が、経営に打撃を与える - 取引先要求が増えている:
企業のセキュリティ意識が高まり、取引先から対応体制を求められる
「うちの規模なら狙われない」と考える経営者もいますが、規模の小さい企業はセキュリティ対策が不十分なケースが多いことから、むしろ狙われやすい場合があります。
また、中小企業だと事故対応に必要な費用が、経営に深刻な悪影響を及ぼす恐れがあります。
加えて、近年は取引条件にサイバー対策を盛り込む企業も増えており、業務上サイバー保険への加入が取引条件として必須となる場合も珍しくありません。
中小企業が攻撃対象になる理由:“踏み台化“と取引先への連鎖
中小企業の場合、「大企業のような機密情報がないから安全」「情報が流出しても大した損害にならない」と考える場合も多いでしょう。
しかし、中小企業へのサイバー攻撃は、取引先への攻撃が狙いである場合も少なくありません。
たとえば、自社が保有・管理する情報やアカウントが起点となり、取引先のシステムがハッキングされるケースがあります。取引先のシステムに接続していたり、委託先として業務データを扱っていたりすると、サイバーリスクはより高くなります。
セキュリティが比較的弱い会社を踏み台にし、そこから取引先の大企業や関係会社へ侵入を広げる「サプライチェーン攻撃」は、サイバー攻撃の常套手段です。「自社が保有する情報の価値」だけで被害規模を考えると、事故対応や損害賠償で想定以上の損失を生む可能性があるため注意しましょう。
サイバー保険が必要になりやすい中小企業の特徴
以下の特徴に当てはまる場合、中小企業でもサイバー保険の必要性は高くなります。
- 取引先システムへ接続している(影響範囲が広がりやすい)
- 個人情報や取引情報など、外部説明が必要な情報を扱う(漏えい時の対応が増える)
- クラウド利用が多く、権限管理が属人化している(不正アクセスや誤設定のリスクが上がる)
- 外部委託があり、委託先が情報に触れ得る(委託先起点でも自社が対応を迫られる)
- 専任人材がいない/事故対応の社内フローがない(初動が遅れて損害が拡大しやすい)
また、業種としては以下に挙げる業界のリスクが高いため、該当する企業はサイバー保険への加入を検討してみましょう。
- IT:クラウド利用や外部接続が多く、侵入されると取引先まで被害が広がりやすい。
- EC:ログインや決済など外部公開の入口が多いため、不正アクセスや不正利用の被害が起きやすい。
- 金融:資金や決済に直結する情報を扱うため、不正送金など金銭目的の攻撃を受けやすい。
- 医療:診療情報など機微な個人情報が多く、停止すると診療継続に直結する。
- 製造:工場や設備の停止が生産停止に直結し、業務中断の損害が大きくなりやすい。
- サービス:顧客接点が多く、漏えい・乗っ取りが起きると信用の失墜が広がりやすい。
中小企業がサイバー保険を選ぶときのポイント4つ
中小企業がサイバー保険を選ぶときは、次の4つが重要です。
- 補償内容に過不足がないか
- 事故対応サポートの内容・条件は十分か
- 付帯サービスが自社の弱点をカバーできるか
- 既存の各種保険と重複していないか
企業規模に合わせた補償を確保するために、各ポイントをしっかり押さえておきましょう。
ポイント1:補償内容に過不足がないか
まずは、サイバー事故が起きたときに発生しやすい支出(賠償・事故対応費用・業務停止による損失)を、必要な範囲だけカバーできるか確認しましょう。
具体的には、次の3点で見極めます。
- 賠償補償:事故の影響が取引先や顧客に及んだ場合に、賠償や補償の支払いに対応できるか
- 事故対応費用の補償:調査や復旧、連絡など、事故を収束させるために必要な費用が出るか
- 業務停止(利益損害)の補償:システム停止で売上や利益が落ちたときに、必要な期間分が出るか
賠償補償は、事故時に影響が出る相手を想定します。特に取引先や委託元に影響が出る可能性がある会社は、賠償補償を薄くすると事故後の負担が大きくなりやすいため、優先して確認しましょう。
事故対応費用の補償は、社内だけで対応しきれない前提で考えます。原因調査(フォレンジック)、復旧支援、弁護士などの法務対応、取引先や顧客への連絡・問い合わせ対応といった費用が、補償対象になるかが重要です。
業務停止の補償は、自社がどれくらいの停止期間まで耐えられるかを基準にします。加えて、待機期間(事故発生から補償までの空白期間)の有無も見ておきます。
これらの条件を満たすかどうかで、補償内容の過不足を判断しましょう。
ポイント2:事故対応サポートの内容が充実しているか
金銭的な補償だけでなく、事故が起きた直後のサポート体制も大切です。事故対応サポートが弱いと、復旧が遅れて損害拡大につながります。
中小企業は専任人材がいないことも多いため、事故対応サポートの充実度は特に重要です。
基本的なチェックポイントとして、以下の4つが挙げられます。
- 窓口:緊急時に連絡がつき、初動を指示してくれる体制があるか
- 専門家手配:調査・法務・広報など、必要な専門家を手配できるか
- 費用負担:サポート利用にかかる費用が補償の対象か(立替の有無も含む)
- 条件:連絡期限や対象となる事故の範囲など、使うための条件が厳しすぎないか
また、中小企業なら以下の2点も重要です。
- 事故が「発生した後」だけでなく、不正アクセスの疑い(検知)段階でも相談できるか
- 専門家の紹介だけで終わらず、調査・復旧・対外説明まで前に進む支援になっているか
事故対応サポートの有無だけではなく、パンフレットの説明などから「実際に使うときのイメージができるか」で判断しましょう。
ポイント3:付帯サービスが自社の弱点をカバーしているか
サイバー保険の中には、補償だけでなく様々なサービスが付帯する商品もあります。保険料を押し上げる要因にもなりますが、適切に選べば事故の確率や損害を減らせます。
- 予防:脆弱性診断、ルール整備支援、アカウント管理改善など
- 検知:監視、アラート、ログ活用支援など(早期発見で被害を抑える)
- 教育:標的型メール訓練、社内研修、マニュアル整備など
ポイントは、自社の弱点を埋めるサービスを利用することです。
たとえば、社内のIT教育が手薄なら、メール訓練や社内研修を利用することで、損害の抑制につながります。セキュリティ対策へのリソースが不足しているなら、監視やアラートで「水際対策」を強化する、といった使い方も効果的です。
逆に、使わないサービスはコストが膨らむ要因となります。自社にとって価値のある付帯サービスを見極め、無駄を省くようにしましょう。
ポイント4:既存の加入保険と重複していないか
現在加入している法人保険があれば、補償内容が重複しないよう注意しましょう。
以下は、サイバー保険と重複しやすい法人保険の一例です。
| 保険商品 | 重複しやすい補償 |
|---|---|
| 個人情報漏えい保険 | ・情報漏えい(またはそのおそれ)に関する賠償 ・事故対応費用(法律相談、コンサル、広告宣伝、見舞金等) |
| 企業総合保険 | ・サイバー攻撃・情報漏えいに起因する賠償責任 ・発生原因の調査費用などの費用損害 |
| 業務過誤賠償責任保険(E&O) | ・業務ミス起点の情報漏えい等に関する賠償 ・危機管理・事故対応の各種費用 |
企業向け損害保険の中には、特約でIT業務を補償するものも多くあります。それらのオプションで自社のリスクをカバーできるなら、重ねてサイバー保険に加入しなくても大丈夫です。
【実務で使える】比較検討時の確認リスト10項目
複数のサイバー保険を比較するなら、問い合わせの時点で確認項目を固定し、同条件で見積もりを取ることが重要です。
確認すべき10項目は次の通りです。
- 賠償補償の限度額(取引先・顧客への賠償はいくらまでか)
- 事故対応費用の限度額(調査・復旧・通知・広報などはどこまでか)
- 業務停止(利益損害)の限度額(支払上限と算定の考え方)
- 業務停止の待機期間(何時間/何日から補償対象か)
- 免責(自己負担額)(いくらまで自社負担になるか)
- 主な対象外・免責事項(どの事故・どの条件が対象外か)
- 事故対応サポートの範囲(調査・法務・広報などの手配可否)
- ランサム被害の扱い(周辺費用の補償範囲、支払条件)
- 事故対応サポートの利用条件(連絡期限、疑い段階の相談可否、立替の有無)
- 見積の前提条件(売上規模、業種、対策状況、希望する補償範囲)
この10項目を揃えて見積もりを取り、限度額・免責・業務停止日数の設計と合う商品を選べば、補償と費用のバランスが取れた加入判断ができます。
まとめ
中小企業にとってサイバー保険は、サイバーリスクによる損害を資金面で支える重要な備えです。
特に、ITやEC、金融・医療・製造・サービス業など、サイバーリスクが高い業種は、企業規模にかかわらず加入の検討をおすすめします。
加入や商品選びでは、自社のリスクに対して補償が足りるか、逆に不要に盛りすぎていないかを重視しましょう。必要最低限の補償に絞れば、保険料のコストも抑えられます。
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