日本のサイバー保険加入率は、中小企業では8.8%にとどまり、全体で見ても十分に普及しているとは言いにくい状況です。
一方で、ランサムウェアなどのサイバー攻撃は業界や企業規模を問わず広がり、被害が出たときの対応費用(調査・復旧・通知・賠償など)によって経営が圧迫される企業も少なくありません。
本記事では、最新の調査からサイバー保険の加入率を分析し、日本国内で普及が進まない原因を解説。あわせて、企業がサイバー保険を検討する際、判断基準となるポイントも解説します。
サイバー保険の加入に迷っている経営者やIT担当者の方は、ぜひ参考にしてください。
日本のサイバー保険加入率は中小企業で8.8%
日本損害保険協会の「中小企業におけるリスク意識・対策実態調査2025」によると、サイバー保険の加入率は8.8%となっています。

一方、同調査で「サイバーリスクを認識している」と答えた企業は32.7%となっており、認識と加入状況にギャップがある状態です。
また、実施しているサイバーリスク対策としては「ソフトウェア等の脆弱性管理・ウイルス対策ソフトの導入」が29.4%でもっとも高く、対する「サイバー保険の加入」は10.4%と、3分の1近く低い数値です。
サイバー攻撃に対する「防御」への備えに対して、「事後対応にかかる費用」は半数程度しか備えていないことがわかります。
大企業を含めた全体調査でも加入率は40%程度
野村総合研究所グループのNRIセキュアテクノロジーズによる調査「NRI Secure Insight 2024」では、従業員数1万人以上の大企業なども含めたサイバー保険加入率が算出されており、結果は40.2%となっています。
前述した中小企業のみの調査よりは高い数値ですが、それでも半数以上はサイバー保険に加入していない状況です。
すべての企業にサイバー保険が必要というわけではありませんが、リスク対策に見直し余地がある企業は多いと考えられます。
海外の加入状況との比較
海外と日本でサイバー保険の加入率を比較すると、アメリカやヨーロッパなどに比べて低い傾向です。
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| 地域 | 加入率(推計) | 市場の特徴と背景 |
|---|---|---|
| 北米 | 45%~50% (大企業は80%超) |
世界最大の市場(保険料シェア約63%)。 訴訟リスクが非常に高く、加入が一般的だが、中小企業は未加入の場合も多い。 |
| 欧州 | 約50% | GDPR(EU一般データ保護規則)などの規制が厳しい。 加入率では北米と同等か、国によっては上回る傾向。 |
| アジア (APAC) | 4%~6% | 急速に成長しているが、加入率は低い。 セキュリティ投資が「防御(ソフト/ハード)」に偏っている傾向。 |
| 日本 | 中小企業で8.8% (全体では40%程度) |
北米や欧州より低い傾向だが、関心は高まりつつある。 |
国際的な比較において、日本を含むアジア地域は「未成熟市場」であり、普及は遅れているといえます。
しかし、近年は日本でもサイバー攻撃などによる被害が深刻化しており、今後は欧米型に近い加入動向(急増)へシフトする可能性があります。
【出典・参考文献】
・Munich Re / Morgan Lewis (2025):Cybersecurity Insurance – A Burgeoning Global Market
・DeepStrike:Cyber Insurance Statistics 2025
・Aon :Asia-Pacific’s Commitment to Cyber Security Pays Off
・一般社団法人 日本損害保険協会:中小企業におけるリスク意識・対策実態調査2025
・NRIセキュアテクノロジーズ株式会社:NRI Secure Insight 2024
サイバー保険の加入率が伸びない理由
日本でサイバー保険の加入率が伸びないのは、いくつかの理由が考えられます
特に、中小企業ではサイバーリスクの認識と加入率にギャップがあることから、「関心があっても加入していない(できていない)企業」が一定数いることが推測できます。
加入率が伸びない理由は、「社内でサイバー保険への理解が進まない理由」「保険加入が稟議に通らない理由」にもつながる問題です。保険加入にあたって判断が止まりやすいポイントを把握し、スムーズな導入検討につなげましょう。
理由① サイバーリスクを過小評価している
加入率が伸びない最大の要因として、「うちは中小だから狙われない」「今まで起きていないから大丈夫」という、サイバーリスクへの過小評価が考えられます。
日本損害保険協会の調査でも、損害保険に加入しない理由に「リスクが発生する可能性は低いと考えている」を挙げる企業が最多(33.4%)となっており、サイバー領域でも「被害を受ける可能性が低い」といった認識が一定数あります。
しかし、攻撃者がサイバー攻撃を仕掛けるとき、主な判断基準となるのは「侵入しやすさ」です。また、中小企業を踏み台に、取引先の大企業へ侵入する「サプライチェーン攻撃」も増えているため、たとえ中小企業でも楽観はできません。
過小評価を現実的な判断に変えるコツは、「起きるかどうか」よりも、起きたときにどのような影響が及ぶか分解することです。最低限、次の3点を確認するだけでも、自社にとっての重要度がはっきりします。
- 止まると困る業務の有無:
受注・出荷・請求・顧客対応・生産など、サイバー攻撃によって売上や納期に直結する業務はあるか - 守るべき情報の有無:
個人情報、取引先情報、契約・見積、設計・図面など、漏えい時の影響が大きい情報はあるか - 外部接点の有無:
メール、VPN、クラウド、委託先、リモート端末など、侵入経路になり得る接点があるか
理由② 補償内容がわからない
サイバー保険の補償内容がわからず、必要性を判断できない企業も少なくありません。
保険会社によって多少の違いはありますが、サイバー保険の主な補償内容は以下のとおりです。
- 事故対応の費用:
原因調査、復旧、外部専門家費用、通知対応、顧客窓口(コールセンター等) - 賠償責任:
顧客・取引先など第三者への損害賠償、争訟費用(弁護士費用等) - 営業・事業への影響:
業務停止に伴う損失や、事業継続のための追加費用
主に、サイバー攻撃が発生した後の対応や損失補填が補償対象となります。
また、付帯サービスでセキュリティ診断やメール訓練、社内研修などの「事前予防」をフォローしている場合もあり、セキュリティ向上にも一定の効果が期待できます。
理由③ コストパフォーマンスがわかりにくい
保険の性質上、費用対効果が見えにくいこともサイバー保険の加入率が伸びない要因です。
サイバー攻撃による損害や、保険料の相場がわからないと、コストパフォーマンスの判断は難しくなります。
具体的な数値を挙げると、たとえばJNSA(NPO法人 日本ネットワークセキュリティ協会)による調査では、2022年7月~2024年6月におけるランサムウェア感染の被害金額は平均値6,019万円で、ほとんどのケースで1,000万円を超える結果となっています。
【出典・参考文献】
・JNSA(NPO法人 日本ネットワークセキュリティ協会):インシデント損害額調査レポート 別紙 2025年版
また、加入費用も個別の契約によりますが、月額保険料は5,000円~10万円以上と幅広い相場となっています。サイバーリスクの高い業種(医療・IT・EC・金融・教育など)や売上高が高い企業ほど、保険料は高くなります。
サイバー保険の価値を評価するときは、保険料によるランニングコストと、被害に合ったときの推定コストのバランスが重要です。自社が抱えるリスクを洗い出し、必要十分な補償に絞ることで、コストパフォーマンスを高められます。
自社が保険に加入すべきか検討するときの判断基準は?
サイバー保険に入るべきかどうかは、他社の加入率より、自社の事業がサイバー事故でどれだけダメージを受けるかで判断すべきです。
デジタル依存が進む現代において、ビジネスにおけるサイバーリスクを止めることはできません。万が一の被害に備えるためにも、サイバー保険の重要度は今後ますます高まると考えられます。
以下に挙げる基準で、自社にとってサイバー保険が必要かどうかを判断しましょう。
基準① 狙われやすい業種・業態ではないか
攻撃者は、「この会社に侵入できそうか」「侵入後にどれだけの圧力を与えられるか」「どれくらい金銭や機密情報を引き出せそうか」を見て標的を選びます。
以下の業種・業態に当てはまる企業は特に狙われやすいため、サイバー保険の検討優先度は上がります。
- 個人情報を大量に扱う業種
- 医療・介護、調剤、健診機関、教育(学校・学習塾)、人材(派遣・紹介)、不動産(賃貸管理・仲介)、会員制サービス(サブスク、フィットネス等)
- 決済・金銭情報に近い業種
- EC事業者、決済代行、金融(保険代理店を含む)、通販、チケット・予約サイト、オンラインサービスで課金がある事業
- 取引先の機密を扱う業種
- 製造(部品・装置・OEM)、建設(施工・設備)、設計事務所、IT受託(SIer、開発会社)、広告・制作、コンサル
- 業務停止が直撃する業種
- 物流(倉庫・配送)、小売(POS/在庫)、飲食チェーン(予約/発注)、宿泊(予約/決済)、コールセンター、BtoB受発注・請求がシステム依存の企業
- 委託・外注が多い業態
- 多拠点展開、リモートワーク中心、SaaS多用、外注先が多い(制作・開発・運用を外部に出している等)
また、業種に限らず、受注や出庫など止まると致命的な業務をデジタルに強く依存している企業は、サイバー保険の加入を検討することをおすすめします。
基準② 自己資金のみで「万が一の支出」をカバーできるか
サイバー事故による支出を自己資金だけでカバーできるかも、加入判断の重要な基準です。賄えないなら、保険は資金繰りと復旧スピードを守るための現実的な選択肢になります。
サイバー事故の発生時は、主に次のような支出が発生します。
- 原因調査・影響範囲の特定(外部専門家を含む)
- システム復旧・再構築、代替手段の手配
- 顧客・取引先への連絡、説明対応の増加(窓口対応や外注を含む)
- 法務対応や賠償対応(請求対応、弁護士費用など)
- 業務停止による売上減、納期遅延による影響
これらの支出に対して「短期に支払が集中しても運転資金が尽きない」「支出の意思決定面をスムーズに進められる」「業務停止中も固定費(人件費・家賃・リース等)を払い続けられる」と言えるかどうかが、判断のポイントです。
どこまで自己資金でカバーすべきか迷ったときは、「自社が耐えられる上限額」を設定してみましょう。上限額を超えたときにサイバー保険で補填するという設計にすれば、無理のない補償プランになります。
基準③ 取引上の都合で「実質的な加入義務」があるか
サイバー保険の加入は任意ですが、取引によっては「実質的に加入が義務となる場合」もあります。
実質的な加入義務が生まれやすいのは、次のようなケースです。
- 契約条件に、事故時の費用負担や賠償責任が設定されている
- 取引先とのシステム連携があり、事故が相手側の業務にも波及し得る
- 競合他社が補償体制を整備しており、自社も保険に加入しないと不利になる
取引上の要件があるケースでは、ただ「加入しているか」だけでなく、「取引先が求める補償条件を満たしているか」がポイントです。契約の獲得や維持のために、どのような補償が必要か逆算してプラン設計する必要があります。
まとめ
日本のサイバー保険加入率は、中小企業では8.8%にとどまり、全体で見ても十分に普及しているとは言えません。
しかし、サイバーリスクは今後ますます増える可能性があるため、万が一のときにも落ち着いて対処するための備えは大切です。
サイバー保険の加入判断でやるべきことは、以下のとおりです。
- 自社のサイバーリスクを棚卸しする
- 想定される損害に対して、必要な補償内容を見極める
他社の加入率に惑わされず、自社の状況を判断軸にして保険加入を検討しましょう。</p>
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