「サイバー保険はいらない」「本当に加入する必要があるのか」と悩む企業は少なくありません。
近年はサイバー攻撃や情報漏洩の件数が増えている一方で、サイバー保険の加入率は高いとは言えない実情があります。その背景には、サイバー攻撃や情報漏洩による被害の実感を持ちにくいことや、補償内容・費用のわかりにくさがあります。
しかし、充分な検討をしないまま「いらない」と判断してしまうと、万が一の損害に対応できず、経営にも大きな影響を及ぼすかもしれません。なんとなくで入るのは避けるべきですが、加入が不要かどうか冷静に判断する必要があります。
本記事では、なぜサイバー保険はいらないと言われるのかという理由と、企業がサイバー保険の必要・不要をどのように決めるべきか、判断基準を解説します。
サイバー保険はいらないと言われる5つの理由
一般的に「サイバー保険はいらない」と言われる理由は、以下の5つがあります。
- サイバー攻撃の被害が自社には起きないと思っている
- サイバー事故による損害額がイメージできない
- 保険料に対して補償内容がわかりにくい
- セキュリティ対策をしているので保険は不要だと考えている
- サイバー保険に加入している企業が周囲に少ない
企業側の判断としてなぜ上記のように考えられやすいのかを分析し、その妥当性を解説します。
理由① サイバー攻撃の被害が自社には起きないと思っている
「サイバー保険はいらない」と考える理由として最も多いのが、「自社は攻撃されない」という認識を持っていることです。特に中小企業では、「狙われるのは大企業だけ」「有名な企業でなければ被害はゼロに近い」と思われがちです。
しかし実際には、日本国内でも無差別型のサイバー攻撃が多発しており、セキュリティ対策が十分でない企業ほど標的になりやすい傾向があります。
攻撃者にとって重要なのは企業規模ではなく、侵入しやすさです。機器やシステムの更新が遅れている企業、対策が徹底されていない企業は、結果として被害に遭うリスクが高くなります。
本当にサイバー攻撃のリスクが低いかどうかは、「なんとなく」のイメージではなく、専門家による分析が必要となります。
理由② サイバー事故による損害額がイメージできない
次に「サイバー保険はいらない」と言われる理由は、サイバー事故による損害や費用が具体的に想像できないことです。事前に具体的な事例を知らないと、「そこまでの損害は出ないだろう」とリスクを過小評価してしまい、結果として加入の必要性が感じられなくなります。
情報漏洩や不正アクセスが起きた場合、企業は単にシステムを直せば終わるわけではありません。実際には、以下のような金銭的負担が発生します。
- 個人情報漏洩に対する賠償対応
- 被害範囲を調査するための専門業者への費用
- 顧客や取引先への説明・対応コスト
- 信用低下による事業への影響
こうした損害は一度の事故で高額になるケースもあり、被害が大きいほど企業経営への影響も深刻となります。
理由③ 保険料に対して補償内容がわかりにくい
サイバー保険がいらないと言われる理由として、保険料と補償内容の関係がわかりにくい点も挙げられます。保険料の相場や価格の考え方が見えにくく、「費用に見合った補償が本当に受けられるのかわからない」という懸念を持つ企業は少なくありません。
また、サイバー保険は商品ごとに補償内容や条件が異なり、約款を読まなければわからない点も多く存在します。このわかりにくさがデメリットとして捉えられ、「よくわからないなら加入しなくてもよい」という判断につながる実情があります。
補償内容で何がカバーされ、どのくらいの保険料になるかは、公式サイトやパンフレットで把握できます。また、保険代理店に依頼すれば、複数社の比較も含めて丁寧に説明してもらえるので、まずは無料相談に申し込んでみましょう。
理由④ セキュリティ対策をしているので保険は不要だと考えている
すでにセキュリティ対策を施しているため、サイバー保険がいらないと判断する企業もあります。
ウイルス対策ソフトの導入、社内ルールの整備、社員教育の実施などを行っている企業ほど、「これ以上の対策は必要ない」「事故は未然に防げる」と感じやすい傾向があります。しかし、セキュリティ対策とサイバー保険の役割は本質的に異なるため、注意が必要です。
セキュリティ対策は攻撃や事故を防ぐための手段である一方、サイバー保険は事故が起きた後の金銭的損害や対応費用を補償する仕組みです。どれだけ対策を徹底しても、サイバー攻撃や情報漏洩を完全にゼロにすることは難しく、事故が発生する可能性は残ります。
実際、最新のセキュリティ機器を導入していても、設定ミスや人的ミス、想定外の攻撃手法によって被害が発生する事例は少なくありません。「対策をしている=事故は起きない」という前提で考えてしまうと、事故発生時に大きな損害を受ける可能性があります。
理由⑤ サイバー保険に加入している企業が周囲に少ない
「周囲でサイバー保険に加入している企業を聞かない」という理由で、サイバー保険をいらないと判断するケースもあります。経営者同士の情報交換や同業他社との比較の中で、「誰も入っていないなら自社も不要ではないか」と判断されることは珍しくありません。
しかし、サイバー保険は比較的新しい商品であり、火災保険や賠償責任保険と比べると、企業間で話題に上りにくいのが実情です。そのため、実際には加入していても表に出てこないケースが多く、「加入企業が少ない=必要性が低い」という誤解が生まれやすくなります。
また、サイバー被害の実数と認知件数にズレがあり、それほど事故が起きていないように見える点も判断を難しくします。実際、令和6年におけるサイバー犯罪の検挙件数は13,164件ですが、一般的なイメージより多いと感じる人もいるでしょう。

画像引用:令和6年におけるサイバー空間をめぐる脅威の情勢等について(令和7年3月警察庁サイバー警察局)
被害事例や事故対応の実態が見えにくいことが、サイバー保険の加入判断を先送りにする要因となり、「いらない」という結論につながりやすい理由です。
「サイバー保険はいらない」と判断してよい企業の条件
サイバー保険は多くの企業にとって有益となり得ますが、すべての企業に必ず必要というわけではありません。
中立的な立場で見ると、一定の条件を満たす場合には、「現時点ではサイバー保険はいらない」と判断しても合理的と言えるケースが存在します。
重要なのは、「加入しない」という選択が意識的なリスク判断に基づいているかどうかです。以下では、「サイバー保険はいらない」と判断しやすい企業の条件を解説します。
条件① 扱う情報が限定的で事故時の影響が小さい企業
扱っている情報の量や重要性が限定的で、事故が起きても被害や損害が比較的小さい企業は、サイバー保険に加入しなくても大きな損害にはつながりにくいと言えます。
具体的には、次のようなケースが挙げられます。
- 個人情報や顧客情報をほとんど保有していない
- 会員情報や決済情報を扱わない事業形態である
- 業務の多くがオフラインで完結している
このような企業では、万一サイバー事故が発生しても、賠償や高額な対応費用が発生する可能性は相対的に低くなります。その結果、サイバーリスクに対する金銭的影響も限定的となり、サイバー保険の必要性は必ずしも高くありません。
ただし、従業員情報や経理データなどの内部情報はどのような企業でも保有しているため、最低限のリスク管理は必要です。また、現在は影響が小さくても、将来的に事業拡大や情報の取り扱いが増える場合には、再検討が必要になる可能性があります。
条件② 保険以外のリスク対策で十分に対応できている場合
もう一つの条件は、サイバー保険に頼らなくても、他の手段でリスクに対応できている場合です。
具体的には、次のような状況が挙げられます。
- サイバー事故時の対応フローが明確で、専門家とも連携できている
- 高額な損害が発生しても、自己資金で負担できる体力がある
- 契約や業務設計によって、賠償リスクを外部に移転できている
これらの対策が十分であれば、サイバー事故が起きた場合でも経営への影響を抑えることが可能であり、サイバー保険に加入しなくてもリスク管理として成立していると言えます。
ただし、サイバー攻撃や事故の手口は変化が早く、想定外の被害が発生することもあります。現時点で不要と判断した場合でも、定期的に対策の有効性を見直すことが重要です。
保険でサイバーリスクに備えるべき企業の特徴
ここまで「サイバー保険はいらない」と言われる理由や、不要と判断できる条件を見てきました。
一方で、サイバーリスク加入の必要性が高い企業も存在します。
この章では、感覚論ではなく、どのような企業でサイバー保険の必要性が高まるのかを具体的に解説します。
情報漏洩や事故が起きた場合の影響が大きい企業
情報漏洩や事故が発生した際に、経営への影響が大きくなりやすい企業は、サイバー保険の必要性が高くなります。
例えば、以下のような情報を扱っている場合、情報漏洩や事故による被害が大きくなる傾向です。
- 個人情報(顧客・会員・取引先担当者の情報)
- 業務上の機密情報や契約情報
- 決済情報やID・パスワードなどの認証情報
これらの情報が漏洩すると、賠償対応や謝罪対応だけでなく、信頼低下による取引停止や売上減少といった二次的な損害が発生します。事故時の金銭的負担が甚大になりやすいため、サイバー保険でカバーする意義も大きくなります。
サイバー攻撃後の対応を社内だけで完結できない企業
サイバー攻撃や情報漏洩が起きた場合、企業には迅速かつ専門的な対応が求められます。しかし、多くの中小企業では、事故対応をすべて社内で完結させることは難しいのが現実です。
実際の事故対応では、以下のような対応が必要になります。
- 被害状況や侵入経路を特定するための調査
- 顧客・取引先への説明や問い合わせ対応
- 再発防止に向けた対策の検討と実行
これらを外部の専門家に依頼すると、高額な費用が発生することもあります。
こうした対応費用まで含めて備えたい企業にとって、サイバー保険は効果的なリスク対策となります。
同業他社で被害事例がある企業
同業他社で被害事例が起きている場合、サイバー保険の必要性は高いと言えます。
無差別型の攻撃や、セキュリティ対策が手薄な企業を狙った攻撃が頻発しており、中小企業であっても損害対策は大切です。
事例を見ると、多くは「想定していなかった費用負担」「対応の遅れによる被害拡大」が共通点として挙げられます。こうした事態を避けるためにも、企業が規模に関係なく、サイバー保険への加入を一度検討してみましょう。
まとめ
サイバー保険が「いらないか」「必要か」は、企業の状況によって答えが異なります。
重要なのは、世間の意見やイメージではなく、自社の情報の扱い方、事故時の影響、対応体制を踏まえて判断することです。
- 扱う情報が限定的で、事故時の影響が小さい
- 保険以外の対策で十分にリスク対応できている
このような場合は、現時点で加入しない判断も合理的です。一方で、
- 情報漏洩時の影響が大きい
- 事故対応を社内だけで完結できない
- 想定外の費用負担が経営リスクになる
こうした条件に当てはまる企業では、サイバー保険は有効な選択肢となります。
「本当にいらないのか」を一度立ち止まって考え、自社に合ったリスク対策を選びましょう。
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