法人保険の基礎知識
法人保険の会計処理の仕組みとは?6つのケースにわけて解説

パターン別!企業保険の会計処理の仕組み

法人保険の経理処理は、様々なケースに合わせて方法が異なります。

そのため、企業が法人保険に加入する場合は、契約内容だけでなく経理処理の方法についても正確に把握しておくことが必要です。

たとえば、法人保険で経理処理が発生するケースとして、保険料を支払ったケースや解約返戻金を受け取ったケース、保険金受け取りのケース、さらには退職金や弔慰金を支払ったケースなどが挙げられます。

パターンが多いため複雑だと思われやすい法人保険の経理処理ですが、こちらでは一般的によく発生する6つの経理処理について解説します。

ケース別!法人保険の経理処理方法

法人が法人保険に加入した場合、保険料の支払いによって会社の資金繰りがどのように変化するかは気になるかと思います。

「法人保険料は、損金に算入できるのか」「法人保険解約時に受け取る返戻金はどう扱うのか」などはよく話題になりますが、解約返戻金を退職金として支払う場合や、死亡保険金を受け取った場合の経理処理は想像以上に複雑です。

こちらでは、法人保険に関する経理処理の仕組みについて、6つのケースを取り上げて解説します。

ケース1.保険料の支払いをしたとき

企業が法人保険の保険料を支払った場合の経理処理からご紹介します。

保険料は「費用」か「資産」かで扱いが変わる

法人保険料の経理処理は、法人税法上の考え方(損金・資産計上)に沿って社内で処理するのが一般的です。

会社が支払った保険料は会計上「費用」として扱われることが多い一方で、保険の設計(解約返戻金の有無・水準、受取人など)によっては、保険料の一部(または全部)を資産(前払保険料・保険料積立金など)として計上するケースもあります。

したがって、法人保険の保険料は常に全額が損金(費用)になるわけではなく、契約内容に応じて損金算入と資産計上が分かれます。

また、法人税の課税所得は、益金から損金を差し引いて求めます。よって損金が増えるほど課税所得が減少し、結果として税負担が軽くなる仕組みです。

損金算入されやすい保険の例

たとえば、解約返戻金がない(または極めて少ない)掛け捨てタイプの定期保険や医療保険などは、保険料が費用(損金)として処理されるケースが多いです(商品設計により異なります)。

資産計上が関係しやすい保険の例

一方で、保険金や満期金の受取人が法人に設定されている養老保険終身保険など、貯蓄性がある保険では、支払った保険料の全部または一部を資産として計上する取扱いになることが多く、毎期の費用化(損金算入)のされ方が契約内容によって変わります。

このように、損金算入できなかった(または費用化されない)保険料は、法人の資産として計上しておくことになります。

福利厚生プラン(養老保険)の「半損」について

死亡保険金の受取人を従業員の遺族、満期保険金の受取人を法人として加入する福利厚生目的の養老保険では、契約条件・対象者範囲などを満たす場合に、保険料の一部を損金算入(費用計上)し、残りを資産計上する取扱いが用いられることがあります。

※役員や一部の従業員だけを対象にするなど、福利厚生としての性格が弱い設計の場合、損金部分が給与扱いとなることがあります。対象者範囲や社内規程も含めて確認しましょう。

支払い時のポイント

法人保険料の支払い時は、契約内容(受取人・解約返戻金の有無や水準など)を確認したうえで、損金と資産への計上を行いましょう。

ケース2.法人保険の解約返戻金を受け取ったとき

法人保険に関する経理処理は、保険料を支払ったときだけではありません。保険会社からお金を受け取る場合にも経理処理が必要です。

主な受取は、解約返戻金、そして死亡保険金・満期保険金です。ここでは、解約返戻金の処理から見ていきます。

解約返戻金が出やすい保険・出にくい保険

解約返戻金とは、保険期間の途中で解約した場合に、保険会社から契約者に支払われるお金のことです。

掛け捨てタイプの定期保険などでは、解約返戻金がない(または少額)設計が多く、解約返戻金が発生しないケースも珍しくありません(商品によります)。

一方、養老保険や終身保険など貯蓄性がある保険では、保険会社が将来の保険金支払い等に備えて保険料の一部を留保しており、解約時にはその留保から手数料等を差し引いた金額が戻る仕組みです。

解約時に同時に起きる「資産の増加」と「資産の取り崩し」

法人が解約返戻金を受け取ると、現預金が増加するため、帳簿上の資産が増えます。

一方で、契約期間中に次のような資産が計上されていることがあります。

  • 配当金を積み立てていた場合の配当積立金
  • 損金算入せず資産計上していた前払保険料・保険料積立金など

これらは、保険契約が消滅するのに伴って取り崩す必要があります。つまり、解約返戻金による資産増加資産計上分の取り崩しによる資産減少が同時に発生する点がポイントです。

【考え方】

解約返戻金(受取額)-(配当積立金+保険料の資産計上額などの取り崩し合計)= 雑収入 または 雑損失

この場合の処理は、資産の増加額と減少額の差額を計算し、増加が多ければ雑収入、減少が多ければ雑損失として処理するのが一般的です。

ケース3.従業員に退職金を支払ったとき

法人保険に関する経理処理は、保険金や解約返戻金として受け取った資金を原資に、従業員や役員に退職金を支払うときにも発生します。

退職金の準備に法人保険を活用している場合は、退職金の処理も法人保険に関する経理処理の一環として考え、理解しておく必要があります。

従業員の退職金

法人が従業員に退職金を支払った場合、給料やボーナスの支払いと同様、原則として支払額を損金算入できるケースが多いです。

役員退職金(「相当額」がポイント)

ただし、役員退職金の場合は、功績や退職理由、在任期間などを踏まえた「相当額」を超える部分について損金算入が認められないことがあります。

こういったトラブルを避けるためには、役員退職金規定を作成し、金額算定方法をあらかじめ明確にしておくことが有効です。

退職金の算定方法には様々な種類がありますが、功績倍率方式による算定方法を採用するケースも見られます。功績倍率方式とは、役員の退任時点の報酬と在任期間、在職中の成果などを考慮して退職金を算定する考え方です。

税務上の判断が必要になる場面もあるため、役員への退職金を支払う場合は、事前に規程整備とあわせて確認しておきましょう。

ケース4.死亡保険金を受け取ったとき

法人保険に関わる経理処理は、死亡保険金を受け取った際にも発生します。

生命保険の保険期間中に被保険者が死亡すると、保険会社から死亡保険金が支払われます。経理処理が必要になるのは、死亡保険金の受取人が法人の場合です。

遺族が受取人となっている場合、保険金の受け取り自体について法人側の経理処理は不要ですが、契約内容によっては資産計上分の取り崩しが必要になるケースがあります。

解約返戻金と同じ構造で考える

経理処理の流れは、解約返戻金を受け取った場合と近いと理解すると分かりやすいです。

死亡保険金の受け取りで現預金が増加する一方、契約消滅により、配当積立金や保険料の資産計上分などは取り崩しが必要になります。結果として、資産の増加と減少が同時に生じます。

ポイントは資産増加と減少の差額を計算することです。

死亡保険金による資産増加の方が多い場合は雑収入、配当積立金や保険料の資産計上分の方が多ければ雑損失を計上します。

雑収入になりやすいケース

掛け捨て型の定期保険など、資産計上がほとんど生じない設計では、死亡保険金受取り時に雑収入となりやすい傾向があります(ただし、解約返戻金がある定期保険では資産計上が生じる場合があります)。

雑収入は法人税法上で益金の扱いとなるため、課税所得が増え、法人税負担が重くなりやすい点に注意しましょう。

ケース5.弔慰金を支払ったとき

法人保険を利用して弔慰金を支払った場合にも経理処理を行います。

弔慰金と死亡退職金の違い

弔慰金とは、従業員が死亡した場合に会社から遺族へと支払うもので、死者を弔って遺族を慰めるという意味があります。

死亡退職金も会社から遺族に支払うお金ですが、目的が異なるため税法上の取り扱いが異なる点があります。

福利厚生費としての処理と限度額

従業員の遺族に対して弔慰金を支払った場合は、弔慰金を福利厚生費として処理するのが一般的です。

事前に会社が弔慰金を支払う制度を整えているのであれば、弔慰金は福利厚生制度の一環として認められやすく、福利厚生費は税法上で損金算入できるケースが多いです。

ただし、弔慰金は、業務上の死亡か業務外の死亡かで限度額の考え方が異なるため、限度を超えると死亡退職金扱いになることがある点に注意しましょう。

その場合、経理処理上でも、「福利厚生費」ではなく「退職金」として処理することになります。

役員の遺族へ支払う場合

役員の遺族に弔慰金を支払う場合も注意が必要です。社会通念上過大と判断されると、損金算入が認められない可能性があります。

役員の遺族へ弔慰金の支払いが想定される場合は、役員退職金規定とともに弔慰金に関する規定も定め、恣意的な支払いにならない制度を作っておくことでトラブルを防ぎやすくなります。

ケース6.法人保険の名義変更をしたとき

法人保険の経理処理は、保険契約を法人から個人へ名義変更(契約者変更)した場合にも発生します。

会社が契約していた保険を、役員が退任したときや従業員が退職したときに、退職金代わりに譲渡する場合があります。その際の経理処理も確認しておきましょう。

資産計上分の取り崩し

名義変更により保険契約は法人のものではなくなるため、契約に関して計上していた資産を取り崩します。

これにより、保険料積立金、前払保険料、配当積立金などの資産を取り崩す処理を行います(計上科目は会社の会計方針により異なります)。

譲渡代金(評価)の考え方

続いて、名義変更により保険契約を取得する個人から、保険契約譲渡の代金を受け取ることになります。

譲渡代金(評価)は、名義変更時点の解約返戻金相当額を基準に考えるのが一般的です。ただし、低解約返戻期間など一定の契約では、名義変更時点の解約返戻金が「名義変更時点の資産計上額」の70%未満の場合、資産計上額で評価する取扱いが適用されることがあります。

※名義変更は課税関係が大きく変わるため、実行前に必ず契約内容と評価方法を確認しましょう。

差額の処理(益金・損金)

最後に、譲渡代金と資産の取り崩しの差額を計算して、譲渡代金が大きければ益金処理、資産取り崩し額が大きければ損金処理を行います。

無償譲渡(退職金扱い)をする場合の注意点

退職金として法人保険の譲渡を行う場合、譲渡代金を役員や従業員から受け取らずに無償譲渡とすることがあります。

この場合、無償譲渡を受けた役員や従業員は、一定の評価額に相当する経済的利益(退職金など)を受け取ったのと同様の扱いになることがあります。

経理上は退職金として処理されることがありますが、役員への退職金支払いでは過大と判断される部分は損金算入が認められない可能性がある点に注意しましょう。

法人保険を活用する際の注意点

法人保険活用時の注意点

法人保険の活用において注意すべきことは、受け取った解約返戻金や保険金のその後の取り扱いです。

解約返戻金や保険金の受け取り額が、資産計上の取り崩し額よりも多い場合は、益金が発生します。

特に、資産計上がほとんど生じない設計の保険では、受取時の益金が大きくなりやすい場合があります。また、福利厚生目的の養老保険など、保険料の一部を損金算入する取扱いがある契約でも、受取額との関係で益金が大きくなることはあり得ます(契約内容によります)。

経理処理を行い、益金が多額になればその分だけ課税所得は増加します。法人税は課税所得の大きさによって決まるため、結果として法人税の納税額が増える可能性があります。

そういった事態を避けるために、解約返戻金や保険金の受け取りによって増加した資金をどのように使うか、あらかじめ想定しておくことが重要です。

受け取り年度に退職金の支給など損金が発生する施策と組み合わせることで、課税所得の増加を抑えられる場合があります。ただし、役員退職金は「相当額」などの要件があるため、金額や手続を含めて確認が必要です。

また、会社の設備投資費に返戻金などを充当するという選択肢もあります。この場合は、設備や建物を使用している期間中、減価償却費という形で複数年に分割して損金として経理処理します。

法人保険を利用する場合は、正しい経理処理を行うだけでなく税務的な影響も考慮して、受け取った資金の使途まで計画しておくことが必要です。

状況によって経理処理は変わる

法人保険の経理処理

法人保険の経理処理は、保険料が損金に算入可能かどうかだけがポイントではありません。

保険料の支払い以外にも、保険会社から保険金や解約返戻金を受け取った場合には益金が生じることがあります。

また、保険契約が消滅する際には、それまでに計上していた保険料積立金や配当積立金などの資産を取り崩す必要がある点も押さえておきましょう。

法人保険は活用方法を工夫すれば保障を得るだけでなく、一時的な資金需要への備えとして検討されることもあります。
ただし、契約内容に合わない処理をすると、損益や税負担の見え方が大きく変わるため注意が必要です。

とはいえ、法人保険の出口戦略や経理処理は、1人で行うには手間も時間もかかるものです。そのうえ、契約内容や税務の前提を取り違えると、想定外の負担が生じることもあり得ます。

法人保険は事業保障や、経営者の安心と安全のための保険です。最大限有効に活用するためにも、契約内容と経理処理の両面から、慎重に検討するようにしましょう。

なお、法人保険の経理処理は税務上の影響にも関わります。具体的な考え方については、下記の関連記事も参考にしてください。

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