法人向けの保険にはさまざまな種類がありますが、中でも賠償責任保険は事業活動に伴うリスクに備える重要な保険です。
法人が営む事業の種類や規模、業種に応じて、必要な補償内容も異なります。
どの法人向け保険を選ぶかによって、リスクへの備え方や万が一の際の負担も大きく変わるため、法人にとって適切な保険を選ぶことが重要です。
この記事では、法人の賠償責任保険の基本から、業種ごとの必要な補償内容、保険選びのポイントまでを解説します。
自社に合った保険を検討している方や、既存の契約を見直したい方は、ぜひ参考にしてください。
法人向け保険とは?法人が備えるべき賠償責任保険の基本

法人の事業活動にはさまざまなリスクが伴います。
その中でも、事故やトラブルによって他者に損害を与えた際の賠償に備えるのが「賠償責任保険」です。
法人が加入する保険の基本とともに、賠償責任保険の重要性を見ていきましょう。
そもそも法人保険とは?
法人保険とは法人が契約し、保険料を支払うことで、法人そのものや経営者・役員・従業員を守るための保険です。個人向け保険との違いは、契約者が法人(組織)である点です。
法人保険にはさまざまな種類があり、代表的なものに「賠償責任保険」があります。これは、企業が業務の中で他者に損害を与えた際に、賠償金や訴訟費用を補償する保険です。
事業内容や業種に応じて、適切な保険を選ぶことが求められます。
企業が負う可能性のある賠償責任
法人の事業活動にはさまざまなリスクが伴い、場合によっては損害賠償を請求されることがあります。
特に、以下のようなケースでは賠償責任を負う可能性があるため、注意が必要です。
賠償責任の種類 | 想定される発生場面 |
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施設の管理や業務中の事故 | 映画館の火災時の誘導ミスでのケガ/飲食店での熱いコーヒーによる火傷 |
工事や作業中の事故 | 工事現場での工具落下事故/清掃業での作業ミスによる破損 |
製品や施工ミスによる被害 | 食品の食中毒、補修工事後のタイル落下事故 |
預かった車両の破損や盗難 | 駐車場での車両破損/修理工場での車両盗難 |
情報漏えい・サイバー攻撃による損害 | 顧客情報の流出/ハッキングによる損害賠償請求 |
海外での製品トラブルによる賠償 | 輸出先の国で製品不良による訴訟 |
役員の業務遂行による損害賠償請求 | 経営判断のミスによる株主訴訟 |
企業の事業内容によって、どの賠償責任を負う可能性があるかは異なります。万が一の事態に備えて、事前のリスク管理と適切な保険加入が重要です。
法人の賠償責任保険|どんな種類がある?

賠償責任保険には、事業の種類や規模に応じたさまざまなタイプがあり、選び方によって補償の範囲や負担額が大きく変わります。
ここでは、法人が加入できる主な賠償責任保険の種類と、それぞれの特徴について詳しく解説します。
店舗・オフィスの事故に備える保険
法人が店舗やオフィスを運営していると、施設の管理不備や業務中のミスで第三者に損害を与えることがあります。
具体的には、以下のようなケースが補償の対象になります。
- 床が滑りやすく、来店客が転倒した
- 看板が落下し、通行人にケガをさせた
- 災害、事故による機材や備品の損害
特に、不特定多数の人が出入りする飲食店や小売店などでは、予期せぬ事故への備えが重要です。
施設賠償責任保険 | 事業所・店舗・工場の管理ミスによる事故の補償 |
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業務遂行賠償責任保険 | 業務中に発生した事故の補償 |
宿泊施設賠償責任保険 | ホテル・旅館の宿泊客に対する補償 |
イベント賠償責任保険 | イベント開催中の事故や来場者への補償 |
店舗総合保険 | 火災や水漏れ、盗難などによる顧客の損失への補償 |
製造業・販売業におすすめの保険
法人の製造業や販売業では、提供する製品やサービスが原因で事故が発生することがあります。
具体的な事故としては、以下のようなケースが考えられます。
- 製造した家電がショートし、火災が発生
- 販売した食品が原因で食中毒が発生
- 製品の欠陥に伴うリコール
特に、製品の欠陥による事故では、企業の過失の有無にかかわらず賠償責任を問われる可能性があるため、しっかりとした備えが必要になります。
生産物賠償責任保険(PL保険) | 製造・販売した製品による損害補償や、訴訟にかかる費用の補償 |
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リコール費用補償保険 | リコール(回収)費用をカバー |
倉庫業者賠償責任保険 | 倉庫での事故リスク補償 |
運送業者賠償責任保険 | 輸送中の損害リスク対応 |
貨物賠償責任保険 | 貨物の破損・紛失リスクを補償 |
環境汚染賠償責任保険 | 製造過程での環境汚染リスクを補償 |
IT・情報漏えいリスクに対応する保険
サイバー攻撃による情報漏えいやシステム停止が増えています。こうしたトラブルは事業の継続を脅かし、多額の賠償請求につながることもあります。
具体的には、以下のような事例が考えられます。
- ウイルス感染により社内データが暗号化され、業務が停止
- 不正アクセスで顧客情報が流出し、多額の賠償請求を受ける
- DDoS攻撃(大量の通信を発生させる攻撃)によるシステムダウン
特に、顧客情報を扱う企業にとっては、万が一の際の信頼回復にもつながる重要な保険です。
サイバーリスク保険(情報漏えい賠償責任保険) | データ漏洩・サイバー攻撃の補償 |
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システム障害賠償責任保険 | ITシステムの障害による賠償リスクをカバー |
広告・メディア賠償責任保険 | 名誉毀損・著作権侵害リスクに対応 |
役員を守るための保険
企業の役員は、経営判断の結果に対して法律上の責任を問われることがあります。訴訟や損害賠償請求が発生した際に、弁護士費用や賠償金などが必要です。
具体例として、以下のようなケースが考えられます。
- 業績の悪化に対して、株主から「経営判断のミス」として訴えられる
- 企業買収の決定に対して、取引先から損害賠償請求を受ける
- コンプライアンス違反を理由に、行政機関から責任を問われる
こうした事態をカバーできる保険に入っておけば、役員が安心して経営に集中できる環境を整えられます。
役員賠償責任保険(D&O保険) | 役員が経営判断で訴訟リスクを負った場合の補償 |
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使用者賠償責任保険(EPL保険) | 従業員からの訴訟リスクを補償 |
従業員を守る保険
従業員が業務中に事故でケガをしたとき、企業はその補償を負わなければいけません。労災保険だけではカバーできない部分もあるため、法人保険での備えは重要です。
例えば、以下のようなケースが考えられます。
- 工場の機械トラブルで指を負傷
- 建設現場での転落事故による重傷
- 事務所内の設備不良によるケガ
これらの事故に対して、企業が負担する治療費・損害賠償金・示談交渉費用などを保険で補償すれば、万が一の事態にも迅速に対応できます。
労働環境の安全確保は企業の責任であるとともに、従業員のモチベーションを上げるためにも重要なので、しっかりと整備しておきましょう。
労災上乗せ保険 | 法定労災ではカバーしきれない部分を補償 |
---|---|
使用者賠償責任保険(EPL保険) | 不当解雇・ハラスメント・差別による訴訟をカバー |
医療賠償責任保険 | 医療従事者向けの業務リスク補償 |
業務災害総合保険 | 労働災害に対する包括的な補償 |
法人向け賠償責任保険の選び方

法人向け賠償保険を選ぶ際は、以下の4つのポイントを確認しましょう。
- まずは自社のリスクを整理する
- 必要な補償内容が揃っているか確認する
- 保険料が適切か見極める
- 保険会社・代理店を比較する
それぞれについて詳しく見ていきましょう。
まずは自社のリスクを整理する
まずは、事業を行う上で、どのような賠償リスクがあるのかを把握することが重要です。
リスクを整理することで、適切な保険を選ぶ判断材料になります。
一例として、飲食業では食中毒、建設業では作業中の事故といったリスクが考えられます。
自社の業種や業務内容によって生じうるリスクは異なるため、どのような賠償責任が発生する可能性があるのかを具体的に洗い出しましょう。
必要な補償内容が揃っているか確認する
起こりうるリスクが明確になったら、洗い出したリスクに対応できる補償内容が揃っているかを確認します。
具体的には、ネットショップを運営している場合は、サイバー攻撃による情報漏えいリスクに備えた補償が必要でしょう。一方で、実店舗を持たない企業であれば、施設に関する補償は不要かもしれません。
必要な補償内容は法人ごとに異なります。自社のリスクと照らし合わせながら、どの補償が必要なのかを明確にする必要があります。
保険料が適切か見極める
賠償責任保険を選ぶ際には、保険料が適切かどうかも重要なポイントです。安すぎる保険料は補償が不十分な可能性があり、高すぎる保険料は経営の負担になります。
事業規模によって必要な補償が異なるため、保険料にも差が出ます。
たとえば、年間売上高10億円の機械製造業と、5,000万円の販売小売店では、求められる補償内容が異なるため、保険料も変わってくるでしょう。
経営への影響も考慮し、保険料と補償内容のバランスを見極めることが大切です。
保険会社・代理店を比較する
賠償責任保険を選ぶ際は、保険会社や代理店を比較して選ぶことも大切です。それぞれ保険料やサービス内容が異なるため、慎重に検討しましょう。
特に重要なのは、事故が起きたときの対応です。24時間体制で事故の連絡を受け付けているか、示談交渉を代行してくれるかなど、サポート体制を確認すると安心です。
また、保険の説明がわかりやすいか、疑問点に丁寧に答えてくれるかといった点もチェックしましょう。複数の保険会社や代理店に相談し、自社に合ったパートナーを選ぶことが重要です。
法人向け賠償責任保険に関するよくある質問

ここでは、法人向けの賠償責任保険についてよくある質問と、その回答をお伝えします。
賠償責任保険は全業種で必要?
法人向けの賠償責任保険は、すべての業種で義務付けられているわけではありません。
ただし、業種によっては契約条件として求められることがあります(例:商業施設の出店条件に保険加入が含まれるなど)。
法律で義務付けられている業種もあれば、契約の条件として加入が求められるケースもあります。
保険金が支払われないケースはある?
はい、保険契約の内容や事故の状況によっては、保険金が支払われない場合があります。
たとえば、以下のようなケースでは、契約内容で補償範囲に含まれない場合が多いです。
- 申告内容に虚偽があった場合
- 免責事項に該当する場合
- 戦争や地震といった対象外のリスクの場合
- 契約内容で補償範囲に含まれない場合
海外取引にも対応できる?
はい、海外取引に対応できる賠償責任保険もあります。
例えば、海外PL保険は輸出製品の賠償リスクに、グローバル賠償責任保険は海外事業のリスクに対応しています。
まとめ|自社に合った賠償責任保険を選ぼう

法人が加入する賠償責任保険は、法人の業種や事業内容によって必要な補償内容が異なります。
どの賠償責任保険が適しているかは、企業の事業内容によって異なるため、自社に必要な補償をしっかり見極めることが重要です。
また、保険を選ぶ際は補償範囲だけでなく、保険料やサポート体制も確認し、適切なプランを選ぶようにしてください。
法人の賠償責任保険の新規加入や見直しを検討している場合は、専門家に相談するのも1つの方法です。
自社のリスクに合った保険を選び、安心して事業を運営できる環境を整えましょう。
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