逓増定期保険(ていぞうていきほけん)とは、どのような法人保険でしょうか?

法人保険の活用策として検討されることも多い逓増定期保険は、「事業の発展に合わせて保障額が増える設計を取り入れた定期保険」です。万が一への備えを厚くしながら、将来の資金需要に合わせた活用が検討されます。

一方で、返戻率の推移や解約時の税務など、判断に影響する点もあります。

今回は逓増定期保険の特徴やメリット・デメリットについて、押さえるべきポイントを解説します。

逓増定期保険の特徴

逓増定期保険は、保険期間の経過に伴って保障額が増える設計が特徴の定期保険です。段階的に保障額が上がるため、企業の成長に合わせた保障を確保でき、経営者・役員の万が一に備える手段として検討されます。

また、解約返戻金(解約時に保険会社から払い戻されるお金)があるため、保険料の一部を損金算入しつつ、資金需要(退職金準備、投資資金、予備資金など)に合わせて解約するという活用方法もあります。

主な特徴

  • 保障額が増える設計により、事業保障を厚くしやすい
  • 契約条件によっては、保険料の取扱いが「損金算入」と「資産計上」に分かれる
  • 解約返戻金が発生する設計では、資金需要に合わせて解約時期を検討しやすい

保障額が増える設計で、万が一の事業保障を厚くしやすい

逓増定期保険は、一定の条件のもとで保障額が段階的に増える設計が特徴です。基準となる保険金額があり、そこから最大5倍程度まで上がる設計が一般的です。

たとえば、基準保険金額が1,000万円であれば、2年目に2倍の2,000万円、3年目に3,000万円…と少しずつ上がっていく設計です(実際の逓増率は保険商品によって異なります)。

段階的に保険金額が増えるため、成長途上にある企業に多く採用されます。設計資金調達や取引継続など、万が一の局面で必要となる資金の備えが可能です。

損金算入・資産計上の考え方(2019年の改正以降)

法人が逓増定期保険に加入した場合、保険料の一部を損金算入できます。
2019年の税制通達改正以降、契約の条件によって「当期の保険料を損金算入できる部分」と「いったん資産計上し、後から損金算入していく部分」に分かれます。

ポイントは、最高解約返戻率(保険期間を通して最も高い返戻率)が何%になるかです。

※解約返戻率…それまで支払った保険料累計に対して、解約返戻金が何割になるかを示す数値。

最高解約返戻率が50%以下の契約は全額損金算入となり、50%を超える契約は一定割合を資産計上する取扱いが基本です。資産計上した金額は、所定のタイミングで取り崩し、損金算入します。

最高解約
返戻率
資産計上期間 資産計上額 取り崩し期間
50%以下 全額損金算入
50%超~
70%以下
保険期間の当初40%の期間 支払保険料×40%
(支払保険料×60%は損金算入)
保険期間の75%相当経過後、保険期間終了日までの期間で均等に取り崩して損金算入
70%超~
85%以下
保険期間の当初40%の期間 支払保険料×60%
(支払保険料×40%は損金算入)
保険期間の75%相当経過後、保険期間終了日までの期間で均等に取り崩して損金算入
85%超

①保険期間の開始日から最高解約返戻率となる期間等の終了日まで


②1の期間経過後において、年換算保険料に対する解約払戻金の増加割合が0.7を超える期間があれば、その期間の終わりまで

保険期間開始日から10年経過日までは、保険料×最高解約返戻率×90%を資産計上


11年目以降は、支払保険料×最高解約返戻率×70%を資産計上
(残りの割合は損金として計上)

解約返戻金が最高金額になったあと、保険期間終了日までの期間で均等に取り崩し
最高解約返戻率:50%以下
全額損金算入
最高解約返戻率:50%超~70%以下
資産計上期間 保険期間の当初40%の期間
資産計上額 支払保険料×40%
(支払保険料×60%は損金算入)
取り崩し期間 保険期間の75%相当経過後、保険期間終了日までの期間で均等に取り崩して損金算入
最高解約返戻率:70%超~85%以下
資産計上期間 保険期間の当初40%の期間
資産計上額 支払保険料×60%
(支払保険料×40%は損金算入)
取り崩し期間 保険期間の75%相当経過後、保険期間終了日までの期間で均等に取り崩して損金算入
最高解約返戻率:85%超
資産計上期間

①保険期間の開始日から最高解約返戻率となる期間等の終了日まで


②1の期間経過後において、年換算保険料に対する解約払戻金の増加割合が0.7を超える期間があれば、その期間の終わりまで

資産計上額

保険期間開始日から10年経過日までは、
保険料×最高解約返戻率×90%を資産計上


11年目以降は、
支払保険料×最高解約返戻率×70%を資産計上
(残りの割合は損金として計上)

取り崩し期間 解約返戻金が最高金額になったあと、保険期間終了日までの期間で均等に取り崩し

参照:国税庁「定期保険や第三分野保険に係る保険料の税務上の取扱い(法人契約)」

保険料を損金算入することで、当期の課税所得を減らせるため、税負担の軽減につながります。

ただし、解約返戻金等を受け取る年度には益金計上が発生する※ため、あくまで「課税の繰延」である点には注意が必要です。

※解約返戻金等の受け取り時、受取金額が資産計上分を差額が上回れば益金、下回れば損金となる。

益金発生による課税負担を抑えるためには、「解約時に退職金支給など大きな支出を合わせる」など、出口戦略も含めた計画を立てることが大切です。

関連:「法人保険にはどんな種類があるの?生命保険と損害保険に分けて解説」

4つのメリット

これらの特徴を踏まえ、ここでは逓増定期保険について具体的な4つのメリットをお伝えしていきます。

  • 将来の事業承継や投資などに向けて、資金計画を立てやすい
  • 解約返戻金により、緊急時の事業資金の選択肢を確保しやすい
  • 契約者貸付制度により、解約せずに資金を確保する手段を持てる

将来の事業承継や投資などに向けて、資金計画を立てやすい

逓増定期保険は、返戻率のピークが加入から5~10年の場合が多いため、短中期の資金計画に向いています。

退職金支給や事業承継、新規投資など、返戻率のピークを合わせて計画すれば、必要なタイミングに資金を準備することが可能です。

解約返戻金により、緊急時の事業資金の選択肢を確保しやすい

解約返戻金は、予期せ支出の備えとしても有効です。

たとえば、天災や事故による操業停止、取引先の急な倒産など、事業に大きなダメージを受けることもあるかもしれません。そんな時、逓増定期保険を解約し、解約返戻金を受け取ることで一時的に事業資金を調達する選択肢が生まれます。

ただし、返戻率の水準やピーク時期、ピークが続く期間は商品・設計条件で変わります。緊急予備資金として検討する場合は、設計書で解約返戻金の推移を確認したうえで判断しましょう。

契約者貸付制度により、解約せずに資金を確保する手段を持てる

契約者貸付制度とは、解約返戻金の7〜9割程度を上限として、保険会社から借入ができる制度で、保障を継続したまま資金を得られます。

金融機関からの借入と異なり、簡易的な審査でスムーズに借りられ、利率も低い傾向があります。また、返済日が固定されていない(保険期間中に返済できれば良い)ことが多いなど、柔軟な返済が可能です。

利息や「借りすぎ・滞納による保障の消滅」などの注意点もありますが、資金の確保手段として選択肢の幅が広がります。

2つのデメリット

逓増定期保険には、返戻率の推移など注意しておきたい点もあります。ここでは逓増定期保険について特に注意してほしい2つのデメリットをお伝えします。

  • 返戻率のピークが短い
  • 保険料が高額になり、資金繰りに影響する可能性がある

返戻率のピークが短い

逓増定期保険は、商品や設計条件によって返戻率のピークが短い場合があります。予定していた事業承継や新規投資などのタイミングがずれた場合、最高解約返戻率での解約タイミングを逃してしまう可能性があります。

また、解約返戻金等を受け取る年度に費用計上が想定どおり進まない場合、益金が残り、手取りが想定より少なくなることがあります。解約時期と資金使途は、無理のない計画を立てること大切です。

保険料が高額になり、資金繰りに影響する可能性がある

逓増定期保険は、高い保障額を設定できる分、保険料も高くなるケースがあります。会社の経営状況によっては、保険料の支払いが資金繰りに影響する可能性があります。

無理のない保険料水準で設計し、必要に応じて複数の設計プランを比較しながら判断しましょう。

解約返戻金を明確にするため専門家に話を聞こう

このように、逓増定期保険は魅力がある一方で、将来の見通しが重要な保険商品です。

設計書で解約返戻金の推移や税務上の取扱いを確認し、会社のニーズに合う形で活用できれば、もしもの時の保障を持ちながら、将来の資金需要に備えることも可能です。

逓増定期保険を検討する際は、解約返戻金の使用用途を明確にし、専門家などに相談しながら保険設計を進めてください。

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