「法人保険で節税したいけれど、最近は規制が厳しくてややこしい…」
そんな悩みを抱える経営者の方も多いのではないでしょうか。/p>
実際、2019年の税制改正以降、法人保険の保険料を損金にできる割合は大幅に見直されました。その代表的なルールが「4割損金」です。
本記事では、法人保険の4割損金とは具体的にどのようなルールなのか、税制上の基本から実務レベルまで詳しく解説します。
「法人保険の加入や見直しを検討している」「4割損金について知識があいまいなので正しく知りたい」という方は、ぜひ最後までご覧ください。
「4割損金」とは法人保険における経理処理のルール

法人保険に加入した場合、保険料を会計上どのように処理し、どのように申告するかは、複雑なルールがあります。
そのルールのうちの1つが「4割損金」で、文字通り保険料の4割を損金に算入するという意味です。
4割損金を理解するためには、経理処理の全体像を把握する必要があるため、まずは基本的な仕組みを解説していきます。
損金算入の基本的な仕組み(2019年税制改正以降)
法人保険、特に「節税保険」と呼ばれていたものは、2019年(令和元年)の税制改正で経理処理のルールが大幅に見直されました。
従来は保険料の全額を損金にできるケースも多かったものの、改正後は「最高解約返戻率」に基づき、一定のレンジ内でのみ部分的に損金算入が認められるようになります。
以下は、具体的なルールを一覧表にしたものです。
最高解約返戻率 | 資産計上期間 | 資産計上額 | 取崩期間 |
---|---|---|---|
50%以下 | なし | なし | なし |
50%超〜70%以下 | 保険期間開始日から40%を経過するまで | 保険料の40% | 保険期間の75%経過後から終了日まで |
70%超〜85%以下 | 保険期間開始日から40%を経過するまで | 保険料の60% | 保険期間の75%経過後から終了日まで |
85%超 | 次のいずれか長い期間まで ①保険期間開始日から最高解約返戻率となる期間の終了日まで ②①の期間経過後で「(当年の解約返戻金相当額-前年の解約返戻金相当額)÷年換算保険料相当額」が70%を超える期間 |
保険期間開始日から10年経過するまでは「保険料×最高解約返戻率の70%」、11年目以降は「保険料×最高解約返戻率の90%」 | 解約返戻金相当額が最も高い金額となる期間経過後から保険期間終了日まで |
最高解約返戻率が50%超の場合、保険開始日から一定の間、「資産計上期間」が設けられます。その期間中は保険料の一部を資産として計上し、残りを損金算入します。
4割損金は、保険料の一部を資産計上した後、残った部分が4割になる(=保険料の4割を損金算入する)ということです。上記の表でいえば、「最高解約返戻率70%超85%以下」の法人保険に当てはまります。
4割損金の適用要件
法人保険で4割損金が適用される要件をまとめると、次のようになります。
- 最高解約返戻率が「70%超85%以下」であること。
- 契約者が法人であり、被保険者が役員または使用人(親族含む)であること。
- 保険期間が3年以上の定期保険※1または第三分野保険※2であること。
※1 定期保険…生命保険のうち、保険期間の定めがあるもの。満期保険金は原則なし。
※2 第三分野保険…生命保険および損害保険以外の保険。
最高解約返戻率以外にも、保険の種類や契約形態による要件もあるため覚えておきましょう。
4割損金が適用される法人保険の例
法人保険のうち、4割損金の対象になりやすいものは以下が挙げられます。
- 長期平準定期保険
- 定められた期間中、一定の保険金額で死亡保障が継続する法人向け保険。長期間の契約により返戻率が70〜85%に設定され、4割損金になる場合が多い。
- 逓増定期保険
- 保険期間の経過とともに死亡保険金額が増加する定期保険。契約から5~10年ごとに解約返戻率のピークを迎え、4割損金の対象になりやすい。
- 定期保険
- シンプルな保障内容で、解約返戻率のコントロールが可能な法人保険商品。商品設計により返戻率が4割損金の基準に合致する場合がある。
- 一部の変額定期保険
- 運用成果により返戻率が変動するが、保守的設計で返戻率が85%以下に抑えられているケースでは、4割損金の対象となり得る。
他にも、解約返戻金がある法人保険は4割損金の適用を受ける可能性があります。
ただし、実際の最高解約返戻率は契約ごとに異なるため注意が必要です。同じ保険商品でも、契約期間や保険金額の設定などで解約返戻率の推移は変わります。
加入前にプラン内容を確認し、税理士など専門家とも連携しながら正しい経理処理を心がけましょう。
4割損金が適用された法人保険の経理処理例

以下では、「法人保険の4割損金が適用される場合」の実際の経理処理を整理します。
各期間に応じた処理のイメージを具体的に示しているので、会計実務の参考例としてもお使いください。
1. 前期(資産計上期間):保険料の4割を損金算入
4割損金が適用される法人保険の場合、保険期間のうち前期40%が資産計上期間となります。保険期間が20年間であれば、資産計上期間は8年間です。
資産計上期間中、支払った保険料のうち6割を資産、4割を損金として計上します。仮に年間保険料が40万円だとしたら、24万円が資産計上、16万円が損金算入となります。
借方 | 貸方 |
---|---|
前払保険料 240,000円 支払保険料 160,000円 |
現金・預金 400,000円 |
2. 中期(資産計上期間から取り崩し期間の間):保険料全額を損金算入
資産計上期間の終了後、取り崩し期間になるまでは保険料全額をそのまま損金算入します。
保険料40万円の場合、仕訳は以下の通りです。
借方 | 貸方 |
---|---|
支払保険料 400,000円 | 現金・預金 400,000円 |
3. 後期(取り崩し期間):資産計上分を按分して損金に加える
4割損金の場合、保険期間のうち75%の経過から契約終了日までが「取り崩し期間」です。契約期間が20年であれば、15年目以降が該当します。
取り崩し期間では、前期に資産計上した金額を残存期間で按分し、毎年の損金算入に上乗せします。
ここまでの例の場合、「24万円×8年間=192万円」の資産計上分があるため、これを5年間で按分すると1年につき「120万円÷5年=38万4,000円」です。当年度分の保険料40万円と合わせると、78万4,000円の損金算入となります。
借方 | 貸方 |
---|---|
支払保険料 784,000円 | 現金・預金 400,000円 前払保険料 384,000円 |
4. 解約・保険金の受取時:資産計上分との差額を損益計上する
法人保険を中途解約したり、死亡などで保険金が支給されたりした場合、それまでの資産計上分との差額を計上する必要があります。
例えば、5,000万円の死亡保険金が支給されたとき、それまでの資産計上した累計額が120万円であれば、資産計上分を取り崩して差額の4,880万円を雑収入として計上します。
借方 | 貸方 |
---|---|
現金・預金 50,000,000円 | 前払保険料 1,200,000円 雑収入 48,800,000円 |
また、解約返戻金として160万円を受け取り、資産計上の累計額が120万円というケースであれば、差額の40万円を雑収入として計上します。
借方 | 貸方 |
---|---|
現金・預金 1,600,000円 | 前払保険料 1,200,000円 雑収入 400,000円 |
上記は差額がプラスのときの例ですが、資産計上額が返戻金額を上回っている場合は、雑収入ではなく雑損失として損金算入します。
「4割の損金算入」による節税メリットは?

法人保険のメリットとして「法人税の節税になる」という言葉を聞いた方も多いと思います。損金算入で課税所得を圧縮することで、節税につながるという理屈です。
確かに損金算入は、当該年度の課税所得を減らし、ひいてはその年の法人税を減らす効果があります。ただし、実際には「永久的な節税効果ではない」点に注意が必要です。
損金算入で課税所得を減らしても、将来的に支給される保険金や返戻金は、受取時に益金として課税されます。つまり、法人保険に加入しても、全体での課税額は下がらないということです。
4割損金に限らず、法人保険における損金算入の効果は「課税の繰延(先送り)」であり、永久的な節税は原則できないと考えましょう。
課税の繰延によるキャッシュフロー上のメリットがある
永久的な節税こそできない法人保険ですが、税務上のメリットも存在します。それが先にも述べた課税の繰延です。
課税の繰延をすることで当該年度の課税額は軽減できるため、短期的な手元資金の負担を緩和でき、キャッシュフロー改善につながります。
また、解約返戻金を設備投資や退職金に充てるよう受取時期を計画することで、中長期的な税負担をコントロールできます。
このように、法人保険は「保障+課税の調整」として機能できる点が魅力です。
まとめ

法人保険における「4割損金」は、2019年税制改正により導入された制度であり、保険料の損金算入について定めたルールの1つです。
4割損金をしても永続的な節税にはなりませんが、キャッシュフロー改善のツールとして機能します。
実際の活用にあたっては、自社の経営状況や目標、抱えるリスク、最新の税制など、さまざまなことを考慮する必要があります。まずは税理士や保険の専門家と相談し、自社に最適な法人保険を検討しましょう。
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