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長期平準定期保険の経理処理はどうやる?損金算入のルールを解説

長期平準定期保険の経理処理のやり方を解説!改正後の損金算入のルール

長期平準定期保険の経理処理はどうやる?損金算入のルールを解説

長期平準定期保険は、長期間にわたって一定の保障を受けられる法人向け生命保険商品です。

かつては高い節税効果がありましたが、税制改正により以前ほどの節税効果はなくなり、経理処理も複雑化しました。

この記事では長期平準定期保険の経理処理方法を、損金算入のルールに沿って解説します。

長期平準定期保険の経理処理における基本的な取扱い

長期平準定期保険の経理処理における基本的な取扱い

長期平準定期保険とは法人向けの生命保険商品で、保険期間が長く、解約返戻金が比較的高いのが特徴です。

保険金額が一定で、経営者の死亡・高度障害リスクや退職金対策、会社の経営が厳しくなったときのために資金準備を行えます。

長期平準定期保険を正しく経理処理するためには、損金算入ルールの把握が大切です。

ここから、長期平準定期保険の経理処理における基本的なルールを見ていきましょう。

損金算入のルール(2019年の税制改正後)

長期平準定期保険の損金算入ルールは、2019年の税制改正時に大きく変更されています。

最高解約返戻率※に応じて資産計上期間が設けられ、支払った保険料の一部を資産に、残りを損金に算入するというルールです。

※最高解約返戻率…支払った保険料に対して解約返戻金の割合が最も高いときのその割合。

最高解約返戻率の割合に応じて、「50%以下」「50%超〜70%以下」「70%超〜85%以下」「85%超」の4つに区分されています。

最高解約返戻率 資産計上期間 資産計上額 取崩期間
50%以下 なし なし なし
50%超〜70%以下 保険期間開始日から40%を経過するまで 保険料の40% 保険期間の75%経過後から終了日まで
70%超〜85%以下 保険期間開始日から40%を経過するまで 保険料の60% 保険期間の75%経過後から終了日まで
85%超 次のいずれか長い期間まで
①保険期間開始日から最高解約返戻率となる期間の終了日まで
②①の期間経過後で「(当年の解約返戻金相当額-前年の解約返戻金相当額)÷年換算保険料相当額」が70%を超える期間
保険期間開始日から10年経過するまでは「険料×最高解約返戻率の90%」、11年目以降は「保険料×最高解約返戻率の90%」 解約返戻金相当額が最も高い金額となる期間経過後から保険期間終了日まで

資産計上した保険料は、取崩期間になった際に分割して損金算入するのがルールです。

損金算入ルールの改正により、2019年7月8日以降に契約した長期平準定期保険は損金算入できる割合が少なくなっています(※改正以前に契約していた保険は以前の損金算入ルールが適用)。

税制改正による節税効果への影響は?

税制改正前は、保険料の3分の1~全額を損金算入可能で、かつ解約返戻率が100%を超える長期平準定期保険は珍しくありませんでした。

しかし、税制改正後は最高解約返戻率が高いほど損金算入できる保険料の割合が少なくなっています。

さらに、解約返戻金の受取時に資産計上分との差額が益金算入される(課税の対象になる)ようになったため、基本的には節税につながらなくなっています。

節税につなげるためには、解約時期にあわせて大きな支出を行うなどの工夫が必要です。

長期平準定期保険の経理処理方法【保険料支払い時】

長期平準定期保険の経理処理方法【保険料支払い時】

先述のとおり、長期平準定期保険の損金算入ルールは4つの区分があり、それぞれ計算方法も異なります。

各区分の経理処理方法を解説するので、自社の状況にあわせて理解を進めましょう。

最高解約返戻率が50%以下の場合

長期平準定期保険の最高返戻率が50%以下の場合は、保険料全額を損金に算入します。

資産計上期間はなく、保険加入の直後から支払った保険料をすべて損金計上する事が可能です。

最高解約返戻率が50%超~70%以下の場合

長期平準定期保険の最高解約返戻率が50%超〜70%以下の場合、被保険者1人あたりの年間保険料が30万円を下回る場合は全額損金算入できます。

一方、年間保険料が30万円超の場合は、下記のとおり資産計上を行います

保険期間の40% 保険料の60%:損金算入、保険料の40%:資産計上
保険期間の40%〜75% 保険料は全額損金
保険期間の75%〜期間満了 保険料は全額損金、積み立てた資産計上分を均等に取り崩して損金算入

例えば、「年間保険料が300万円で保険期間40年の長期平準定期保険」と仮定した場合、下記のように経理処理します。

①保険期間の40%までの経理処理

保険期間の40%まで(40年×40%=16年)の経理処理は、保険料の60%を損金算入、保険料の40%を資産計上します。

帳面としては、下記のようになります。

借方 貸方
支払保険料 1,800,000円
前払保険料 1,200,000円
現金・預金 3,000,000円

②保険期間の40%~75%までの経理処理

保険期間の40%経過後(17年)~75%まで(40年×75%=30年)の経理処理は、保険料の全額を損金に算入します。

帳面は下記のとおりです。

借方 貸方
支払保険料 3,000,000円 現金・預金 3,000,000円

③保険期間の75%以降の経理処理

保険期間の75%以降(31年~40年)の経理処理は、保険料を全額を損金するほかに、16年目までに資産計上した分(1,200,000円×16年=19,200,000円)も均等割して損金算入します。

帳面に直すと、下記のとおりです。

借方 貸方
支払保険料 4,920,000円 現金・預金 3,000,000円
前払保険料 1,920,000円

最高解約返戻率が70%超~85%以下の場合

長期平準定期保険の最高解約返戻率が70%超~85%以下の場合、保険料の経理処理は次のとおりです。

保険期間の40% 保険料の40%:損金算入、保険料の60%:資産計上
保険期間の40%〜75% 保険料は全額損金
保険期間の75%〜期間満了 保険料は全額損金、積み立てた資産計上分を均等に取り崩して損金算入

最高解約返戻率70%以下の区分と比較して、初期に損金算入できる割合が低くなります。

先ほどと同じように、「年間保険料が300万円で保険期間40年の長期平準定期保険」と仮定した場合の経理処理は以下のとおりです。

①保険期間の40%までの経理処理

保険期間の40%まで(40年×40%=16年)の経理処理は、保険料の40%を損金算入、保険料の60%を資産計上します。

借方 貸方
支払保険料 1,200,000円
前払保険料 1,800,000円
現金・預金 3,000,000円

②保険期間の40%~75%までの経理処理

保険期間の40%経過後(17年)~75%まで(40年×75%=30年)の経理処理は、保険料の全額を損金に算入します。

借方 貸方
支払保険料 3,000,000円 現金・預金 3,000,000円

③保険期間の75%以降の経理処理

保険期間の75%以降(31年~40年)の経理処理は、保険料全額に加えて、16年目までに資産計上した分(1,800,000円×16年=28,800,000円)も均等分割して損金算入します。

借方 貸方
支払保険料 5,880,000円 現金・預金 3,000,000円
前払保険料 2,880,000円

最高解約返戻率が85%超の場合

長期平準定期保険の最高返戻率が85%を超える場合は、下記の4段階で経理処理を行います

  1. 保険期間開始から10年間:年間支払保険料 × 最高解約返戻率 × 0.9を資産計上、残りを損金算入
  2. 下記AもしくはBのいずれか長いほうの期間:年間支払保険料 × 最高解約返戻率 × 0.7を資産計上、残りを損金算入
  3. 上記期間の終了から解約返戻金額が最高額になるまでの期間:保険料全額を損金算入
  4. 残りの期間:保険料全額に加え、積み立てた資産計上分を均等に割って取り崩して損金算入
  • A:最高解約返戻率となる時期まで
  • B:最高解約返戻率となる時期の経過後、解約返戻金増加割合※が70%超である期間まで
  • ※解約返戻金増加割合=(当年の解約返戻金-前年の解約返戻金)÷年換算保険料相当額

「年間保険料が300万円で保険期間40年の長期平準定期保険」のケースで、AもしくはBの期間を5年間、解約返戻金額が最高額になるまでの期間を15年間とすると、下記のような経理処理になります。

①保険期間開始から10年間の経理処理

保険期間開始から10年間の経理処理は、保険料の10%を損金算入、90%を資産計上します。

借方 貸方
支払保険料 300,000円
前払保険料 2,700,000円
現金・預金 3,000,000円

②最高解約返戻率となる時期(もしくは解約返戻金増加割合が70%超の期間)の経理処理

最高解約返戻率となる時期(もしくは解約返戻金増加割合が70%超の期間)の経理処理は、保険料の30%を損金算入、70%を資産計上します(ここでは5年間と仮定)。

借方 貸方
支払保険料 900,000円
前払保険料 2,100,000円
現金・預金 3,000,000円

③上記期間の終了から解約返戻金額が最高額になるまでの経理処理

最高解約返戻率となる時期(もしくは解約返戻金増加割合が70%超の期間)から解約返戻金額が最高額となるまで経理処理は、保険料全額を損金算入します(ここでは10年間と仮定)。

借方 貸方
支払保険料 5,880,000円 現金・預金 3,000,000円
前払保険料 2,880,000円

④残りの期間の経理処理

解約返戻金額が最高額となった時期以降は、保険料全額に加えて、先に資産計上した前払保険料を均等割して損金算入します。

前払保険料の計算は下記のとおりです。

(2,700,000円×10年間)+(2,100,000円×5年間)=37,500,000円

帳面にすると下記になります。

借方 貸方
支払保険料 3,000,000円 現金・預金 3,000,000円
前払保険料 3,750,000円

保険料支払い時以外での計上方法

保険料支払い時以外での計上方法

ここまでは長期平準定期保険の保険期間中(保険料支払い時)の経理処理について解説しましたが、解約や払済変更など、ほかにも経理処理が必要なタイミングはあります

ここからは各タイミングの計上方法を解説するので、長期平準定期保険に加入している方、これから加入を検討している方はチェックしておきましょう。

死亡保険金を受け取ったとき

長期平準定期保険の死亡保険金を受け取ったときの経理処理は、いままで資産計上した前払保険料を取り崩し、死亡保険金との差額は雑収入として益金算入します

仮に死亡保険金100,000,000円、前払保険料を35,000,000円とした場合、下記のように経理処理します。

借方 貸方
現金・預金:100,000,000円 前払保険料:35,000,000円
雑収入:65,000,000円

解約返戻金を受け取ったとき

長期平準定期保険を解約して解約返戻金を受け取ったときは、これまで資産計上した前払保険料を取り崩します。

前払保険料よりも解約返戻金が少ない場合は差額を雑損失として損金算入、多い場合は雑収入として益金算入します。

下記は、解約返戻金が3,800,000円、前払保険料が20,000,000円だったときの経理処理です。

借方 貸方
現金・預金:3,800,000円
雑損失:16,200,000円
前払保険料:20,000,000円

払済保険に変更したとき

長期平準定期保険を払済保険に変更するときは、解約返戻金相当額がいままでに資産計上した前払保険料を上回れば差額を雑収入として益金算入、下回るときは差額を雑損失として損金算入しましょう。

払済保険に変更時の解約返戻金が2,800万円だった場合の経理処理は、下記のとおりです。

借方 貸方
保険積立金:28,000,000円 前払保険料:15,800,000円
雑収入:12,200,000円

ただし、同タイプの払済定期保険に変更する場合は、払済後も前払保険料を契約終了時まで据え置きができます。資産計上額は事故や解約などの理由で契約が終了するまで、そのまま資産計上しても問題ありません。

退職金として現物支給(名義変更)するとき

長期平準定期保険を役員退職金として現物支給するときは、解約返戻金と現物支給分の合計額を退職金として損金算入します。

また、前払保険料と配当金積立金(ある場合)も取り崩し、退職所得に係る源泉徴収税額を預かり金として負債計上します。

差額は雑収入または雑損失として、益金算入または損金算入しましょう。

まとめ

記事まとめ

この記事では、長期平準定期保険の経理処理や仕訳方法について解説しました。

2019年の国税庁からの通達で、最高解約返戻率が高いほど損金算入割合が少なくなり、経理処理も複雑化しています。

長期平準定期保険は商品ごとに保障内容や保険料が異なるため、無駄なく活用できる商品選びが重要です。

「経理処理に不安がある」「自社に必要な保障内容を見極めたい」という方は、FPへの相談も検討してみましょう。

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