財団法人を活用した節税スキームは、一部の富裕層に人気の税金対策です。
公益性の高い活動を目的として財団法人を設立し、資産や事業を移転することで、相続税や法人税の対策が可能になります。
ただし、無条件で節税できるわけではなく、適切に運用・管理しなければ税制上の優遇措置は受けられません。
この記事では、財団法人の基本的な仕組みをお伝えしたうえで、具体的な節税メリットと注意点を解説します。
財団法人の使った節税や資産承継に関心のある方は、ぜひ参考にしてください。
財団法人とは?

財団法人は、共通の目的のために拠出された財産の集合に法人格が認められたものです。主に、当該財産の運用によって得られる利益で運営されます。
設立には300万円以上の財産の拠出と、評議員3人以上、理事3人以上、監事1人以上の設置が必要です。
よく似た用語に「社団法人」がありますが、財団法人は「財産が主」、社団法人は「人が主」という違いがあります。社団法人では財産の拠出は不要ですが、財団法人は必須となります。
一般財団法人と公益財団法人の違い
財団法人は大きく「一般財団法人」と「公益財団法人」に分かれ、それぞれ設立要件や税制上の取り扱いが異なります。
一般財団法人は、公益性の有無にかかわらず、一定の財産を拠出することで比較的簡易に設立できる法人です。税法上、営利型と非営利型に分けられます。
- 営利型…普通法人と同じ扱いで、全ての所得が課税対象。
- 非営利型…所得のうち、課税されるのは34業種の収益事業のみ。非営利型の運営実態や定款が必要。
一方、公益財団法人は内閣総理大臣または都道府県知事から公益認定を受けた法人で、明確な公益目的に沿った継続的活動を行う必要があります。
公益認定を受けると、公益目的事業に関する税制上の優遇措置を受けることが可能です。代表的な事業には、「青少年の健全育成」「差別の防止」「学術振興」などがあります(全23類型)。
財団法人設立による節税メリット

財団法人の設立によって一定の条件を満たすと、税務上の優遇措置を受けられる場合があります。以下に代表的なものを紹介します。
資産の移転で相続税を減らせる可能性がある
公益財団法人へ資産を移転すると、相続税対策になる可能性があります。資産を財団法人に拠出(寄贈)することで、個人の相続財産から除外されるためです。
日本の相続税率は最大55%と高いため、課税所得の減額による対策は非常に重要です。不動産や有価証券など、高額資産を移転すれば大幅な節税効果が期待できます。
ただし、非営利目的の活動に用いられることが前提であり、本人やその親族などが移転資産によって経済的利益を受けていると、否認されるリスクもあります。過度な節税とみなされないよう、慎重な手続きが必要です。
公益目的事業は法人税が免除される(公益財団法人の場合)
公益認定を受けた財団法人が行う事業のうち、公益目的事業として認定されたものは、法人税の課税対象外となります。
公益目的事業として認められる事業は34業種あり、たとえば以下のようなものが挙げられます。
- 学術その他公益に資する出版業
- 社会的に有用な資格の検定事業
- 医療・検診に関する非営利活動
ただし、収益事業として区分される活動については、たとえ公益財団法人であっても法人税の課税対象となります。
寄付金控除を利用できる(公益財団法人の場合)
個人や法人が公益財団法人に寄附をした場合、寄附金控除を適用できる場合があります。
個人の場合、以下2つの控除方式から選択して適用可能です(所得税額の25%相当額が限度)。
- 所得控除…「寄附金額 – 2,000円」を所得から控除。
- 税額控除…「(寄付金額 – 2,000円)× 40%」を所得税額から控除。
法人の場合は、一般寄付金とは別枠で損金算入できます。損金算入上限は以下のとおりです。
- 通常の普通法人等が寄付者の場合:{(資本金 × 3.75%)+(所得 × 6.25%)}× 1/2
- 資本や出資を有しない法人(NPO法人など)が寄付者の場合:所得 × 6.25%
寄付金控除を活用することで、寄付した側の所得税や法人税を軽減できる可能性があります。
節税スキーム活用時の注意点

財団法人を使った税金対策は、富裕層にとって効果的な節税といえますが、一方で注意点もあります。
適切に設立・運用できるよう、重要なポイントを押さえておきましょう。
設立者による支配があると否認されるリスクがある
財団法人を用いた節税スキームでは、「設立者やその家族が財団を通じて財産を支配・利用している」とみなされると、相続税や贈与税の課税対象となるおそれがあります。
たとえ形式上は財団名義であっても、実態として設立者が恩恵を受けていれば、税務上は否認される可能性が高く、節税効果は失われます。
対策としては、理事や評議員に第三者を含める、財団資産を個人的に使用しない、公益性のある活動を継続して社会的信用を確保するなど、実態面での独立性と透明性を確保することが不可欠です。
税理士や弁護士のアドバイスを受けつつ、客観的な体制を整えておくようにしましょう。
節税だけでなく継続的な公益活動が必要
財団法人を設立・運営する際は、節税効果だけに着目するのではなく、公益性を維持することが重要です。
特に公益財団法人として認定を受けている場合、適正な公益活動を継続していなければ、内閣府による認定の取消しや変更命令の対象となる可能性があります。
認定が取り消されると、保有していた財産を他の公益法人や公共団体に移転する義務が生じたり、過去の寄付金に対する損金算入の否認や修正申告が求められる場合もあります。
一方で、社会的に有意義な活動を継続していれば、企業や個人からの寄付も得やすく、安定した資金基盤の形成が可能です。
そのため、節税だけにとらわれず、公益法人としての責任ある活動と中長期的な運営体制の確立を心がけましょう。
まとめ

財団法人を活用することで、一定の条件を満たせば、相続税や法人税の負担を軽減できる可能性があります。
ただし、制度の趣旨はあくまで「公益性の高い活動の支援」にあり、節税目的だけでの設立や運営は認定が否認されるリスクを伴います。
制度活用を検討する際は、税理士や弁護士など専門家へ相談し、適切な組織設計と活動に注意しましょう。
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