退職金準備
中小企業の退職金相場はいくら?中小企業退職金共済の仕組みも解説

企業の退職金制度を考える

中小企業が社内の資金だけで退職金を準備するのは、負担が大きくなりがちです。

また、退職金の相場感がつかめないと、制度設計や積立計画も立てにくくなります。

そこで本記事では、退職金制度の必要性や種類、中小企業退職金共済(中退共制度)の仕組みを解説します。退職金の仕組みを整えることは、従業員の安心感や定着にもつながることがあります。

導入時の注意点も押さえながら、検討のポイントを確認していきましょう。

ズバリ!中小企業退職金の相場はいくら?

相場を見るときのポイント

退職金は、業種や会社規模、地域のほか、勤続年数や退職事由(自己都合・会社都合)などによって水準が変わります。相場はあくまで目安として捉え、自社の人事制度や資金繰りに合わせて考えることが大切です。

東京都の調査に基づく目安(最新版)

東京都産業労働局が公表する「令和6年 中小企業の賃金・退職金事情」(都内中小企業:従業員数10~299人)では、モデル退職金(定年時)の概要が示されています。

モデル退職金(定年時)の目安(都内中小企業:従業員数10~299人)

学歴 モデル退職金(定年時)
高校卒 9,741千円
大学卒 11,495千円

※出典:東京都産業労働局「令和6年 中小企業の賃金・退職金事情」(2024年12月23日公表)。金額は概要に掲載されたモデル退職金(定年時)の目安です。

相場を自社に落とし込む

上記のように、同じ「中小企業」でも学歴などの属性で水準に差がみられます(上表では高校卒は大学卒の約85%程度)。一方、制度設計によっては、勤続年数が一定に満たない場合に退職金を支給しない設計となっていることもあります。相場の見方と合わせて、自社の支給条件も整理しておきましょう。

退職金はないとだめ?その必要性とは?

退職金制度は義務?

退職金は制度として備える法的な義務はありません。したがって、就業規則に退職金の支払いに関する定めをしていなければ、会社が支払う必要がないものだと言えます。

制度を設ける背景

雇用形態が終身雇用から実力成果主義に変化してきたため、景気の低迷などの影響によって、退職金制度を設けている企業の数も減少傾向にあるのです。

以前よりも雇用環境が流動的になっており、働く側も転職によって仕事を変える機会が多くなってきたことも背景にあります。

制度がもたらす効果

ただ、その一方で退職金制度を導入することによって、従業員のモチベーションアップにつながるメリットもあるでしょう。

退職金があることで従業員は、退職後の生活の安定を思い描くことができ、安心して業務をこなしてくれるという期待が持てます。業界内で将来性のある事業を行っている会社であれば、雇用の安定化が競争力の源にもなるでしょう。

自社の実情に合わせて、退職金制度を設けるかどうか慎重に見極めることが大切です。

退職金には2種類ある!

退職一時金と退職年金(企業年金)

退職金には「退職一時金」「退職年金(企業年金)」の2種類があります。

退職時に一括で支払われるのが退職一時金です。退職年金(企業年金)は、国民年金や厚生年金などの公的年金とは別に、企業が任意で導入する年金制度を指します。

どちらかの制度を導入している企業もあれば、どちらも導入していない企業もあるでしょう。また、退職一時金と退職年金を併用している企業もあり、複数のパターンに分かれます。

給付設計:確定給付型/確定拠出型

退職金制度は、給付設計の考え方として「確定給付型」「確定拠出型」に分かれます。

確定給付型の退職一時金(社内規程で支給額を定める方式)

確定給付型の退職一時金制度としては、基本給連動型・ポイント制・定額制の3種類が代表的です。

「基本給連動型」は退職時の基本給をベースに計算する方式のことです。基本給に勤続年数をかけて、さらに給付率をかけ合わせたものを退職一時金として算出します。企業業績に関係なく金額が算出されるため、見直される傾向にあるのです。

「ポイント制」は、役職や職能、保有資格や社内評価などをポイント化して退職金を算出する方法です。ポイントの合計で退職金額を決めるため、貢献度を反映しやすい設計になります。

「定額制」は基本給をベースとせず、勤続年数など一定の基準で給付額を決める方式です。比較的シンプルな制度設計にしやすく、中小企業でも採用されることがあります。

社外積立型の退職一時金制度(共済等)

社外積立型の退職一時金制度として、「中小企業退職金共済制度(中退共制度)」や、商工会議所などが運営する「特定退職金共済制度」があります。

どちらも自前で退職金制度を整えるのが難しい中小企業などで活用されることがあり、掛金を拠出して退職金の原資とする仕組みです(制度の詳細や加入要件は運営団体ごとに異なります)。

確定給付型の退職年金(企業年金)

確定給付型の退職年金は、例えば確定給付企業年金(DB)などが代表的です。給付額を制度で定めるため、従業員側が運用リスクを直接負いにくい点が特徴です。

なお、厚生年金基金は歴史のある制度ですが、2014年4月1日以降は新規設立ができません。企業年金を新たに検討する場合は、確定給付企業年金(DB)や確定拠出年金(DC)などを比較することが一般的です。

確定拠出型の退職年金(確定拠出年金:DC)

確定拠出年金(DC)は、掛金を拠出し、その運用商品を加入者が選ぶ仕組みです。運用結果により将来の給付額が変動するため、制度設計や従業員への情報提供が重要になります。

制度選びの考え方

退職金の準備は、資金繰り、継続性、制度運営の負担などの観点も踏まえて検討することが大切です。内部留保、共済、企業年金、金融商品、保険など選択肢は複数あるため、自社に合う方法を比較して考えましょう。

創業したら加入を検討!中小企業退職金共済(中退共制度)のしくみ

制度の概要

中小企業が活用できる退職金制度として「中小企業退職金共済(中退共制度)」があります。事業主が共済契約を結び、掛金を負担することによって従業員の退職金を用意できる仕組みです。

従業員は退職時に所定の手続きを行うことで、退職金は本人に直接支払われます。事業主の倒産時であっても、共済制度に基づき支給されるため、従業員にとって安心材料になりやすい点が特徴です。

国の掛金助成

中退共制度には、国の助成制度があります。

  • 新規加入の場合:掛金月額の2分の1(従業員ごと上限5,000円)を、加入後4か月目から1年間、国が助成します。
  • 短時間労働者向けの特例掛金月額(2,000円・3,000円・4,000円)を設定した場合は、助成が上乗せされる仕組みがあります。
  • 掛金月額を一定の範囲で増額した場合に、増額分に対する助成が受けられることがあります(対象・条件は制度の定めによります)。

掛金の設定と変更

掛金月額は従業員ごとに設定でき、基本は5,000円~30,000円の範囲で選択します(短時間労働者の場合は特例掛金月額の選択肢もあります)。

掛金月額は、増額・減額の手続きがあります。増額は比較的行いやすい一方で、減額は従業員の同意が必要になるなど要件が設けられています。変更の際は制度要件に沿って進めましょう。

税務上の取扱い

掛金は全額事業主負担です。税務上は、法人の場合は損金、個人事業の場合は必要経費として算入できます。

管理・手続きのイメージ

納付状況の確認や各種手続きは、共済の仕組みに沿って進めます。日々の管理負担を抑えながら制度運用しやすい点も、検討材料になります。

通算制度

中退共には通算制度があり、一定の要件を満たす場合に、転職時などの加入期間を通算できます。通算の可否や範囲はケースにより異なるため、手続き要件を確認して活用しましょう。

加入できる事業者の要件(目安)

加入条件は業種により異なります。目安は次のとおりです。

  • 一般業種(製造業・建設業等):資本金3億円以下または常用従業員数300人以下
  • 卸売業:資本金1億円以下または常用従業員数100人以下
  • サービス業:資本金5,000万円以下または常用従業員数100人以下
  • 小売業:資本金5,000万円以下または常用従業員数50人以下

退職金額の仕組みと注意点

中退共の退職金は、掛金月額と納付月数に応じて定まる「基本退職金」と、運用状況等に応じて支給されることがある「付加退職金」で構成されます。

また、納付月数が12か月未満の場合は退職金が支給されず、納付月数が短いと支給額が掛金総額を下回ることがあります。加入期間と掛金設定は、退職予定時期や資金繰りを踏まえて設計しましょう。

同居の親族を加入させる場合

家族従業員であっても、従業員としての実態がある場合は加入できることがあります。ただし、事業主と生計を一にする同居の親族を加入させる場合は、要件確認のため追加書類の提出が必要になることがあります(例:小規模企業共済に加入していないこと、賃金の支払い実態を示す資料など)。

退職金規程もあわせて整える

社内に退職金制度を導入するときには「退職金規程」を定め、従業員に分かりやすい仕組みを提示しておくことも大切です。算定方法や支給条件を明確にしておくことで、運用のブレを防ぎやすくなります。

自治体によっては掛金の補助を行っているところもあるため、事業展開をする自治体の制度も確認してみましょう。

従業員の生活を支えるために

企業が退職金制度を設けるかどうかは、義務的なものではないため自主判断ということになります。しかし、退職金制度を取り入れることによって、従業員が将来を見通しやすくなり、長く働いてもらえる環境づくりにつながることがあります。

自前で退職金を積み立てていくのは負担が大きい場合もありますが、中小企業退職金共済(中退共制度)などの制度を活用すれば、掛金設定を工夫しながら退職金準備を進めることができます。

国の助成が受けられる場合があることに加え、制度に基づき退職金が支給される点も特徴です。掛金は全額事業主負担となりますが、法人は損金、個人事業は必要経費として算入できるため、退職金準備の手段として検討される理由の一つになります。

従業員が安心して働ける環境を整えていくことは、長期的な人材確保にもつながります。複数の制度を比較し、自社に合った方法で退職金制度を検討してみましょう。

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