保険の税金対策
経営者保険料を損金算入する

経営者のための保険と節税効果

※当記事での法人保険の保険料の損金算入割合等の税務上の扱いに関する記載は、2018年12月以前の国税庁の通達を前提としております。

2019年4月11日に国税庁が新たなルール案を公表しており、今後意見公募(パブリックコメント)の手続を経て、新しいルールによる運営が行われることになっております。詳細は国税庁・金融庁・各保険会社が公表する内容をご参照ください。

なお、当サイトでも新ルールの内容につきましては「【節税保険が販売停止】国税庁の新ルールを解説」で詳しく解説していますので、ご確認下さい。

※2019年6月25日更新 法人契約のがん保険や医療保険について、全額損金算入できる保険料の範囲が1契約当たり年間30万円までに制限される可能性があります。

法人が事業活動を安定的に続けるためには、万が一のリスクや将来的な備えに対してしっかりと準備しておく必要があります。

そこで、経営者にとって強い味方となってくれるのが「法人保険(経営者保険)」です。しかし、法人保険(経営者保険)を活用する際は、その仕組みについて基本的な知識を知ってなければいけません。

法人保険(経営者保険)への加入を検討する際には、保険の種類や注意点についておさえておきましょう。また、単に保険料や経理上の損金算入処理のことだけに意識を向けてしまうのではなく、保障内容を含めて、その保険が自社に合ったものかどうかを検討することが大切です。

この記事では、法人保険(経営者保険)をうまく活用するための4つのポイントについて解説していきます。

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当記事の監修者:金子 賢司

  • CFP
  • 住宅ローンアドバイザー
  • 生命保険協会認定FP(TLC)
  • 損保プランナー

東証一部上場企業で10年間サラリーマンを務める中、業務中の交通事故をきっかけに企業の福利厚生に興味を持ち、社会保障の勉強を始める。
以降ファイナンシャルプランナーとして活動し、個人・法人のお金に関する相談、北海道のテレビ番組のコメンテーター、年間毎年約100件のセミナー講師なども務める。
趣味はジャザサイズ。健康とお金、豊かなライフスタイルを実践・情報発信しています。

税効果がある?法人保険と損金算入の関係

法人保険と損金の関係

法人保険(経営者保険)に加入すると、支払う保険料の全額、または一部は「損金算入」処理をすることができます。損金は経費と同様のものだと思われがちですが、会計上と税務上では経理上の取り扱いが少し異なります

まず、会計上では、その年の売上から事業活動を行うために使った経費を差し引いたものが利益です。

その一方で、税務上では、企業が事業活動を通じて得た売上等(益金)から、収入を得るために使用したとされる損金を引き、残った残額が最終的な法人所得となります。

この法人所得に対して法人税などの税金が課税されるため、税務上で損金として認められるかどうかは非常に重要となります。

しかし、会計上で経費処理が認められても、税務上では損金処理に該当しない支出は数多くあります。そして、法人保険(経営者保険)の保険料は基本的に損金として認められるものもありますが、保険の種類によって会計上の処理が異なります。

保険料の全額を損金処理できるものもあれば、保険料の2分の1のみを損金処理できると認めるものもあるからです。

ただ、経理上全額が損金となる法人保険(経営者保険)だからといって、必ずしも自社にとって最適な保険とは限りません。受けられるサービスや保障内容によって、慎重に判断をしていく必要があります。

また、法人保険(経営者保険)は保険料が高額なものもあるため、保険契約期間中に、会社の資金繰りに影響がないかも検討する必要があります。

法人保険(経営者保険)に加入する際には、保険解約時に受け取ることができる解約返戻金をどのように利用するのかについても、加入段階からあらかじめ決めておくことが大切です。

このように法人保険(経営者保険)は、取引先の倒産や代表者の死亡といった経営リスクに備えることはもちろん、積み立てた保険金を引退後の生活資金の確保や従業員の退職金に充てるといった方法で活用することができます。

さらに、法人保険(経営者保険加入)を検討する際には、自社の経営状況を見直すきっかけにもつながります。

以下では、法人保険(経営者保険)の活用法や全額損金算入可能な法人保険(経営者保険)のメリット・デメリットについて解説していきます。

ポイント1.法人保険(経営者保険)で赤字対策をする

法人保険(経営者保険)に加入すると、保険料を損金算入することができるので、法人税の節税対策になります。

また、保険期間内に赤字が出そうな年があった場合は、法人保険(経営者保険)の一部を解約処理して返戻金の一部を受け取り、赤字の補てんを行うことができます。これにより、経常利益をプラスに押し上げることも可能です。

会社の財務状況が健全であれば、金融機関からの信用を得ることができるため、融資を受ける場合には有効な方法であるといえます。

ただし、こうした決算対策は場当たり的に行ってしまうと、経営状況を悪化させてしまう可能性があります。

法人保険(経営者保険)の加入時には、まとまった資金が必要になるタイミングを見極めることが大切です。

ポイント2.全額損金算入が可能な定期保険のメリット

法人保険(経営者保険)の中には、「全額損金定期保険」という商品があり、その名前の通り、保険料の全額を損金算入処理することができ、法人税の節税効果が期待できるというメリットがあります。

保険料の損金算入の割合が低い法人保険(経営者保険)と比べると、税制上のメリットが大きいため、活用の仕方によっては企業の経営でプラスとなることも考えられます。

また、解約返戻金の返戻率のピークは5~15年と長い期間で続くため、返戻金をどのように取り扱うか計画も立てやすいのも特徴です。

解約返戻金は、経理上益金として計上されるものの、適切なタイミングで法人保険(経営者保険)を解約すれば、赤字の補てんや役員の退職金として利用することができます。

一時的に経営状況が悪化した場合には、経営者保険の一部を解約することもできるため、柔軟な運用ができるのもメリットです。

全額損金定期保険は、単に解約返戻金を受け取れるだけではなく、手厚い保障サービスを受けらることもできます。

死亡・高度障害の場合に限らず、条件を満たせば介護が必要になった状態や三大疾病(がん・脳卒中・急性心筋梗塞)などに罹患してしまったときにも、保険金が受け取れる仕組みとなっています。

特に、中小企業にとっては、経営者が大きな病気や事故などで経営を離れることになると、それだけで業績悪化に陥りかねません。

このような経営リスクを考えると、経営者自身の保障に加えて、解約返戻金という形で企業に資金を残せる点が法人保険(経営者保険)の大きなメリットだといえます。

ポイント3.全額損金算入が可能な定期保険のデメリット

全額損金定期保険に加入する際の注意点は、保険解約のタイミングによっては、解約返戻金がほとんど見込めない場合や解約返戻率が低くなってしまうことが挙げられます。

全額損金定期保険の解約返戻率は、保険会社によって異なるものの、一般的に60%~80%に留まるため、長期平準定期保険や逓増定期保険と比べても低い割合だと言えます。

また、全額損金定期保険は保障内容が手厚い分だけ、保険料も割高になる場合があります。

法人保険(経営者保険)に加入している間は、保険料全額を損金算入処理できるものの、解約返戻金を受け取れば、経理上一気に益金が計上される点にも注意が必要です。

ただし、あらかじめ解約返戻金の用途を決めてあれば問題ありませんので、法人保険(経営者保険)加入時に出口戦略を描いておきましょう。

なお、全額損金算入が可能な定期保険の中には、解約返戻金がないことから保険料の低い保険商品もあります。

法人保険(経営者保険)は、保険料の全額損金算入処理が可能なことから、財務面での負担を抑え、万が一の保障を受けたいと考える場合におすすめです。

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経営者保険を選ぶときの注意点

保険選びの注意点

法人保険(経営者保険)への加入を検討する場合には、押さえるべきポイントがいくつかあります。

まずは、法人保険(経営者保険)の保険料が経理上損金として計上処理できるかという点です。

法人保険(経営者保険)であれば、どのような商品でも保険料を損金算入処理できるというわけではなく、保険料の全額を損金算入できるものもあれば、一部しか損金算入処理できないものがあります。

法人保険(経営者保険)に加入する目的を考えたうえで、経理上損金処理できる割合にも注意することがポイントです。

また、法人保険(経営者保険)は加入期間が長期であったり、保険料が高額だったりするため、経営に無理のない範囲で保険料の金額を設定しておく必要があります。

さらに、法人保険(経営者保険)解約時には、解約返戻金を受け取れるものの、経理上全額が益金として計上されてしまいます。

会社の経営が好調なときに多額の益金が発生すると、一時的に法人税の負担が大きくなってしまう可能性があります。法人保険(経営者保険)加入時に、解約するタイミングを見定めておくことも必要です。

企業によって必要な保険は異なるため、他社の事例をそのままあてはめようとせずに、自社の現状や将来への備えに最適な法人保険(経営者保険)を選ぶことが大切です。

損金算入ルールが改正に

2019年6月28日に「定期保険及び第三分野保険に係る保険料の取扱い」の法人税基本通達が改正されたことにより、法人保険として加入する定期保険と第三分野保険の保険料の損金算入処理が変更されることになりました。

定期保険については、改正前のような保険商品の種類ごとではなく、「解約返戻率」によって、支払った保険料のうち資産計上すべき割合が異なります。

また、医療保険などの第三分野の保険は、改正前は年間に支払う保険料の金額にかかわらず事業年度に損金算入することができましたが、改正後は年間支払い保険料が30万円以下か超かで経理処理が異なります。

なお、これらの詳しい改正内容については次章で詳しく解説します。

税制改正の対象となる保険商品は、2019年7月8日以降の新契約分が対象となり、それ以前に契約した法人保険(経営者保険)は遡及して適用されません。

損金算入できる代表的な法人保険(経営者保険)

経理上、保険料を損金算入処理できる法人保険(経営者保険)を紹介します。

損金算入可能な法人保険①:長期平準定期保険

長期平準定期保険は、定期保険の中でも保険期間が99歳、100歳のように長期間で設定している保険です。

生命保険期間中に、死亡・高度障害状態になった場合は生命保険金が支払われ、一定期間経過後に解約すると、解約返戻金を受け取ることができます。なお、この解約返戻金は退職金として活用されることが一般的です。

また、長期平準定期保険に支払った保険料の一部は経理上損金算入することができます。万が一の保険に備えながら退職金準備にも活用でき、なおかつ保険料の一部を損金算入処理できるメリットがあります。

損金算入できる割合は、最高解約返戻率(解約返戻率がピークを迎える時期)によって下表のように異なります。

最高解約返戻率 資産計上割合 資産計上期間 資産計上取崩期間
50%以下 全額損金算入 全額損金算入
50%超~70%以下 40% 保険期間の4割 保険期間の100分の75経過後~保険期間満了
70%超~85%以下 60% 保険期間の4割 保険期間の100分の75経過後~保険期間終了時
85%超 保険期間開始から10年間は90%、11年目以降は70% 保険期間開始から解約返戻率がピークになるまで 解約返戻率がピーク~保険期間終了時

契約例と損金算入の仕訳

法人保険として加入した長期平準定期保険の保険料は、最高解約返戻率の割合によって経理処理方法が異なります。

1) 最高解約返戻率が50%以下の場合
法人保険で支払った保険料の全額が損金算入できます。

契約例

法人保険種類 定期保険
保険期間 25年
払込方法 年払い
保険料 35万円
最高解約返戻率 32%

仕訳

借方 貸方
支払保険料 350,000円 現金・預金 350,000円

2)最高解約返戻率が50%超70%以下の場合
「保険期間の40%(資産計上期間)」、「保険期間の75%」、「保険期間の75%経過後」の3つの期間に分けて経理処理をします。資産計上割合は40%です。

契約例

法人保険種類 定期保険
保険期間 30年
払込方法 年払い
保険料 300万円
最高解約返戻率 60%

保険期間の40%(資産計上期間)
支払保険料の40%を前払保険料として資産計上し、60%を支払保険料として損金算入します。保険期間は30年の40%なので12年間となります。したがって、契約1年目から12年目までは以下のような仕訳を行います。

仕訳

借方 貸方
前払保険料 1,200,000円 現金・預金 3,000,000円
支払保険料 1,800,000円

※前払保険料=300万円×40%=120万円、支払保険料=300万円×60%=180万円

保険期間の75%
保険期間の75%は、30年×75%=22年6か月と計算できるので、13年目から22年目までは次のように仕訳を行います。支払保険料の全額が損金算入できます。

借方 貸方
支払保険料 3,000,000円 現金・預金 3,000,000円

保険期間の75%経過後
保険期間の75%経過後、つまり23年目からは、支払保険料の全額を損金算入します。と同時に、資産計上期間で資産計上した前払保険料を期間の経過に応じて均等に取り崩します。その金額をその年度の支払保険料として損金算入します。

前払保険料について

  • 前払保険料の合計額:120万円×12年=1,440万
  • 毎年の取り崩し金額:1,440万円÷7.5年(7年6か月)=192万円

なお、23年目は192万円×0.5年(6か月)=96万円

仕訳

<23年目>

借方 貸方
支払保険料 3,960,000円 現金・預金 3,000,000円
前払保険料 960,000円

<24年目~30年目>

借方 貸方
支払保険料 4,920,000円 現金・預金 3,000,000円
前払保険料 1,920,000円

3)最高解約返戻率が70%超85%以下の場合
この場合も、「保険期間の40%(資産計上期間)」、「保険期間の75%」、「保険期間の75%経過後」の3つの期間に分けて損金算入金額を求めます。ただし、資産計上割合は60%となります。

契約例

法人保険種類 定期保険
保険期間 40年
払込方法 年払い
保険料 350万円
最高解約返戻率 80%

保険期間の40%(資産計上期間)
支払保険料の60%を前払保険料として資産計上し、40%を支払保険料として損金算入します。保険期間は40年の40%なので16年間となります。したがって、契約1年目から16年目までは以下のような仕訳を行います。

仕訳

借方 貸方
前払保険料 2,100,000円 現金・預金 3,500,000円
支払保険料 1,400,000円

※前払保険料=350万円×60%=210万円、支払保険料=350万円×40%=140万円

保険期間の75%
保険期間の75%は、40年×75%=30年と計算できるので、17年目から30年目までは次のように仕訳を行います。支払保険料の全額が損金算入できます。

借方 貸方
支払保険料 3,500,000円 現金・預金 3,500,000円

保険期間の75%経過後
保険期間の75%経過後、つまり31年目からは、支払保険料の全額を損金算入します。と同時に、資産計上期間で資産計上した前払保険料を期間の経過に応じて均等に取り崩します。

その金額をその年度の支払保険料として損金算入します。

前払保険料について

  • 前払保険料の合計額:210万円×16年=3,360万円
  • 毎年の取り崩し金額:3,360万円÷10年=336万円

仕訳

<31年目~40年目>

借方 貸方
支払保険料 6,860,000円 現金・預金 3,500,000円
前払保険料 3,360,000円

4)最高解約返戻率が85%超の場合
損金計上割合が保険期間開始から10年間は90%に、11年目以降は70%になります。また、資産計上期間は保険期間開始から解約返戻金がピークになるまでです。

契約例

法人保険種類 定期保険
保険期間 30年
払込方法 年払い
保険料 500万円
最高解約返戻率 90%(契約開始から10年)
解約返戻金増加割合>70%の期間 11年目
解約返戻金額がピークになる時期 20年目

保険期間開始~10年間(資産計上期間)
法人保険で支払った保険料のうち、「支払保険料×最高解約返戻率×90%」で計算した金額を前払保険料として資産計上し、残りを支払保険料として損金算入します。

仕訳

借方 貸方
前払保険料 4,050,000円 現金・預金 5,000,000円
支払保険料 950,000円

11年目
法人保険で支払った保険料のうち、「支払保険料×最高解約返戻率×70%」で計算した金額を前払保険料として資産計上し、残りを支払保険料として損金算入します。

仕訳

借方 貸方
前払保険料 3,150,000円 現金・預金 5,000,000円
支払保険料 1,850,000円

解約返戻金がピークになるまで
法人保険で支払った保険料の全額を支払保険料として損金算入します。

仕訳

<12~20年目>

借方 貸方
支払保険料 5,000,000円 現金・預金 5,000,000円

解約返戻金ピーク後
法人保険として支払った保険料の全額を支払保険料として損金算入します。

また、すでに計上してある前払保険料の合計を期間の経過に応じて均等に取り崩します。その事業年度にごとの金額を支払保険料として損金算入します。

前払保険料について

  • 前払保険料の合計額:405万円×10年+315万円=4,365万円
  • 毎年の取り崩し金額:4,365万円÷10年=436.5万円

仕訳

<21~30年目>

借方 貸方
支払保険料 9,365,000円 現金・預金 5,000,000円
前払保険料 4,365,000円

損金算入可能な法人保険②:定期保険(無解約返戻金)

一般的な定期保険で、長期平準定期保険ほど保険期間の長くない保険です。

10年、20年で加入することが多く、解約返戻金はほとんどないかあってもごくわずかなので、経営者の万が一に備えて加入します。

解約返戻金がほとんどないので、退職金準備の用途には利用されることはありません。支払った保険料は経理上全額損金算入処理が可能です。

なお、毎月30万、40万という保険金の受け取り方ができる収入保障保険も定期保険の一部です。

契約例と損金算入の仕訳

解約返戻金なしの定期保険の保険料はその支払い時に全額を損金算入することが認められています。

契約例

法人保険種類 定期保険
保険期間 30年
保険料払込期間 30年
保険料払込方法 年払い
保険料 25万円
払戻金 なし

仕訳

借方 貸方
支払保険料 250,000円 現金・預金250,000円

損金算入可能な法人保険③:養老保険

養老保険は、保険期間中に万が一のことがあった場合は保険金を支払い、満期を迎えた場合は満期保険金を受け取ることができる法人保険(経営者保険)です。

養老保険は2019年の税制改正において経理処理に特に変更はなく、改正前と同様に「死亡保険金」と「満期保険金」の受取人が誰かによって、下表のように経理上損金算入できる割合が異なります。

死亡保険金受取人 満期保険金受取人 経理処理方法
法人 法人 全額資産計上
被保険者の遺族 被保険者 全額損金算入
被保険者 法人 2分の1:損金算入、2分の1:資産計上

なお、特定の役人や従業員を被保険者としている場合は、福利厚生費ではなく「給与」扱いになります。

契約例と損金算入の仕訳

1.死亡保険金・満期保険金受取人がともに法人の場合
死亡保険金・満期保険金受取人がともに法人の場合は、支払った法人保険料が全額資産計上されます。

契約例

法人保険種類 養老保険
契約者 法人
死亡保険金受取人 法人
満期保険金受取人 法人
保険料払込期間 20年
年払保険料 50万円
死亡保険金・満期保険金 15,000,000円

仕訳

借方 貸方
保険料積立金 500,000円 現金・預金 500,000円

また、満期保険金を受け取った際の仕訳は以下の通りです。

借方 貸方
現金・預金 15,000,000円 保険料積立金 10,000,000円
雑収入 5,000,000円

満期保険金受取時に、受け取り額が保険料積立金より多い場合は「雑収入」、少ない場合は「雑損失」で経理処理します。

2.死亡保険金・満期保険金受取人が従業員やその遺族の場合

契約者が法人で死亡保険金・満期保険金受取人がともに従業員やその遺族である法人保険は、従業員の保険料を給料として支給したとみなされ、福利厚生費として全額が損金算入できます。

また、保険金の受け取りに法人は関与しないため、受取時の経理処理は必要ありません。

契約例

法人保険種類 養老保険
契約者 法人
死亡保険金受取人 従業員・役員の遺族
満期保険金受取人 従業員・役員
保険料払込期間 20年
保険料 30万円
満期保険金 800万円

仕訳

借方 貸方
福利厚生費 300,000円 現金・預金 300,000円

3.死亡保険金は従業員の遺族、満期保険金は法人が受け取る場合
法人が契約者、被保険者が従業員や役員とした法人保険で、死亡保険金は従業員の遺族が、満期保険金は法人が受け取る場合は、支払保険料のうち2分の1を保険料積立金、2分の1を福利厚生費として損金算入できます。

契約例

法人保険種類 養老保険
契約者 法人
死亡保険金受取人 従業員・役員の遺族
満期保険金受取人 法人
保険料払込期間 20年
保険料 40万円
満期保険金 1,000万円

仕訳

借方 貸方
保険料積立金 200,000円 現金・預金 400,000円
福利厚生費 200,000円

死亡保険金受取時
法人保険の死亡保険金を従業員や役員の遺族が受け取った場合は、保険料積立金を取り崩し雑損失として損金算入します。

死亡保険金受取例

死亡保険金 10,000,000円
保険料積立金 4,000,000円

仕訳

借方 貸方
雑損失 4,000,000円 保険料積立金 4,000,000円

満期保険金受取時
法人保険の満期保険金を法人が受け取った場合は、保険料積立金を取り崩し、差額を雑収入として益金算入します。

満期保険金受取例

満期保険金 10,000,000円
保険料積立金 8,000,000円

仕訳

借方 貸方
現金・預金 10,000,000円 保険料積立金 8,000,000円
雑収入 2,000,000円

損金算入可能な法人保険④:医療保険

医療保険などの第三分野の保険も法人保険(経営者保険)として活用でき、経営者が医療保険に加入すると、入院・手術を受けた場合に給付金を受け取ることができます。

医療保険も、2019年以降の新しい損金算入処理が適用されることになり、全額損金算入できる範囲が制限されています。

終身払いの場合

保険料の払い込み期間が終身払いの場合、支払った保険料は全額損金算入処理ができます。

法人保険として、終身払いの医療保険に加入した場合の仕訳は、すでに解説した長期平準定期保険の仕訳と同様の経理処理を行います。

短期払いの場合

医療保険の被保険者1名につき1年間に損金算入可能な金額は、払込保険料が30万円以下か超えるかによって、以下のように異なります。

  • 1年間の支払い保険料が30万円以下:全額損金算入可能
  • 1年間の支払い保険料が30万円超:年間保険料×保険料払込期間÷(116年-契約年齢)

契約例と損金算入の仕訳

1年間の支払い保険料が30万円以下の場合

契約例

法人保険名 終身医療保険
保険料払込期間 10年
契約時年齢 50歳
年間支払保険料 288,000円

年間保険料が30万円以下なので、支払った保険料は全額損金算入ができます。

仕訳

借方 貸方
支払保険料 288,000円 現金・預金 288,000円

1年間の支払い保険料が30万円超の場合
法人保険の払い込み期間中は、上記の計算式で求めた金額を支払保険料として損金算入し、残りの金額は資産計上します。

契約例

法人保険名 終身医療保険
保険料払込期間 5年
契約時年齢 50歳
年間支払保険料 500,000円

この場合の損金算入できる金額は、次のように計算できます。

損金算入金額=年間保険料×保険料払込期間÷(116年-契約年齢)

=500,000円×5年÷(116年-50歳)=37,878円

仕訳
仕訳方法は、1~5年目と6年目以降で以下のように異なります。

<1~5年目>

借方 貸方
支払保険料 37,878円 現金・預金 500,000円
前払保険料 462,122円

<6年目以降>

借方 貸方
支払保険料 37,878円 前払保険料 37,878円

法人保険の保障内容について検討する

経営者保険の保障内容に注目

法人保険(経営者保険)への加入は、節税対策として有効な手段ではあるものの、「保険料をできるだけ多く損金算入処理したい」といった目的だけでは、せっかくの保険のメリットを活かすことができません。

そのため、法人保険(経営者保険)を選ぶ場合は、損金算入割合や解約返戻金以外の部分にも目を向ける必要があります。

例えば、経営者や従業員にもしものことがあった場合、どのような生活保障や医療保障を受けられるとリスクに備えることができるでしょうか。

また、法人保険(経営者保険)加入時の年齢や家族構成、事業の見通しなどを考えたうえで、将来的なリスクを予想しておく必要があります。

経営者自身や従業員の引退後の生活に不安がある場合には、解約返戻金を受け取れるタイミングとそのときの経営状況を予想しておく必要があります。

法人保険(経営者保険)は、一度加入してしまうと途中で保障内容を見直すことがないまま、長期間契約し続けてしまうことも少なくありません。

実際に、解約返戻金を受け取る際に慌てないためにも、法人保険(経営者保険)の加入時に出口戦略をしっかりと設計しておくことが重要です。

また、経営リスクに対する不安が大きいからといって、とりあえず保障の大きな法人保険(経営者保険)に加入するのはおすすめできません。

というのも、手厚い保障を受けられる法人保険(経営者保険)は、月々の保険料も高額なものになることが多く、経営を圧迫するおそれがあるためです。

これらの点に注意した上で法人保険(経営者保険)を選ぶと、有効に保険を活用することができるでしょう。

まとめ:節税対策だけでなく保障内容の検討も大事

失敗しない経営者保険選び

会社ごとの事業内容や、経営者のさまざまな都合に合わせた法人保険(経営者保険)は数多く販売されています。

しかし、企業を取り巻く経営リスクはその会社ごとに異なるため、いきなり法人保険(経営者保険)の加入を考えることは危険です。まずは、しっかりと自社の経営状況を振り返ることが大切だと言えるでしょう。

その上で、将来的に起こる可能性のある経営リスクに対応した保障があるのか、あるいは月々の保険料の支払いが無理なく行えるかなど、時間をかけて保険の検討をする必要があります。

当サイトと提携している保険総合代理店「R&C株式会社」でも、法人保険や節税に関する無料相談を行っています。保険商品を紹介するだけでなく、企業の潜在的なニーズや課題まで解決する本質的なソリューションを提供しているので、保険や経営でお悩みの方はぜひ相談してみましょう。

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当サイトでは、法人保険を扱う保険代理店と提携し、お忙しい経営者の方に向けて、法人保険の資料送付や、財務状況に合った最適な保険商品のご提案を無料で行っております。

  • 法人向けの損害保険に加入したい
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忙しくて自分で法人保険をチェックする暇がない、どんな保険があるのか調べるのが面倒。そういった経営者の方に向け、法人保険や税の専門知識をもつ保険のプロが、本当に最適な保険を選ぶための力になります。

経営者の皆様の目的に合わせて、ニーズにあった最適な選択肢をご提案いたします。お問い合わせは無料ですので、ぜひご活用ください。

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