
サイバー保険は、企業のサイバーリスク管理における選択肢として認知が広がっています。
市場規模については、サイバー攻撃の増加や被害の深刻化に伴い、拡大傾向にあるとされています。
国内では決して普及しきっているとはいえませんが、事業の継続性を高めるための重要な施策であることは確かです。
本記事では、サイバー保険に関する国内の普及データ・海外との比較・保険料や引受条件の変化といった市場動向を整理し、加入検討の判断材料を提供します。
市場動向①:国内のサイバー保険の普及状況
日本損害保険協会が実施した「中小企業におけるリスク意識・対策実態調査2025」によると、中小企業のサイバー保険加入率は8.8% です。2021年の4.1%と比較すれば2.1倍の増加となっています。

一方、火災保険の加入率58.6%と比較すると大きな開きがあり、サイバー保険の普及はまだ途上にあることがわかります。
また、同調査ではサイバーリスクを認識する企業の割合は32.7%となっています。2024年調査(43.2%)からは約10ポイント低下したものの、2023年以前(2022年:20.1%、2023年:20.3%)と比べれば依然として高い水準を維持しています。
さらに、「損害保険でカバーしたいリスク」としてサイバーリスクを挙げた企業は25.5%で、自然災害(39.5%)に次ぐ2位となりました。サイバー保険未加入企業のうち「今後加入したい」と回答した割合は24.0%で、業務災害補償保険(25.1%)に次ぐ高い水準です。
2024年調査では全保険種別トップだった加入意向は2025年に若干低下したものの、サイバーリスクへの関心は引き続き上位に位置しています。
普及が進まない要因
同じく本調査では、サイバー保険に加入していない理由として以下が上位に挙がっています。
- リスクが発生する可能性は低いと考えているため(27.9%)
- リスクによって生じる影響・損失が分からないため(9.2%)
- 対策をする費用に余裕がないため(8.8%)
上記から推察できるのは、「自社がサイバー被害にあうと思っていない」「サイバーリスクに対する保険のコストパフォーマンスがわからない」という意識です。
しかし、同調査で「実際に被害を受けたリスク」としてサイバーリスク(サイバー攻撃・情報漏えいなど)は16.8%で、前年から0.5ポイント、4年前からは11ポイント上昇しています。

さらに、実際にサイバー被害にあった企業の約8割は「リスクに対する備えが不足していたと思う」と回答しており、実際に被害が起きてから後悔している割合が高くなっています。
国内では十分に普及しているとはいえない状況ですが、サイバーリスクの被害が増えつつある現在、不要と考えている企業も再度「サイバー保険の必要性」を検討する価値があるでしょう。
【参考資料】
日本損害保険協会「中小企業におけるリスク意識・対策実態調査2025」
https://www.sonpo.or.jp/sme_insurance/assets/pdf/survey/sme_report2025.pdf
市場動向②:海外との比較(米国・欧州)
米国と欧州では、日本と比較してサイバー保険市場の成熟度が高いとされています。その背景には、法制度と訴訟文化の構造的な違いがあります。
米国の場合、各州の個人情報漏えい通知法(Data Breach Notification Laws)や高額な訴訟リスクが、保険加入を促す制度的要因として機能してきました。サイバー保険市場は比較的成熟しており、商品の種類や補償内容に関する情報も豊富に流通しています。
欧州の場合、GDPR(一般データ保護規則)の施行以降、データ保護規制への対応が企業の重要課題です。EUに拠点がなくても「EU居住者の個人データを扱う組織」は対象になるため、EU向けに商品やサービスを提供している企業は現地のリスクを踏まえて備えることが大切です。
また、日本市場と海外市場の差異は、主に「規制の強度」「訴訟リスクの水準」「市場の成熟度」に起因しますが、国内の法制度やガイドラインの動向によっては、今後海外基準のルールが導入されるかもしれません。
保険料・引受条件の変化傾向
2020年代以降、ランサムウェア被害の世界的な増加に伴い、保険会社の損害率が悪化しました。これを受け、サイバー保険市場全体として保険料の上昇と引受審査の厳格化が進みました。
主な変化の傾向は以下のとおりです。
- 保険料の上昇
- 損害率の悪化に伴い、一部の商品で保険料を引き上げる動きが見られます。
- 引受審査の厳格化
- 加入時や更新時に、MFA(多要素認証)の導入状況、EDR(エンドポイント検知・対応)の有無、バックアップ体制の運用状況などが審査項目として確認されるケースが増えています。
- 補償範囲の見直し
- 身代金関連費用やランサムウェアに関する免責条項が見直された商品があります。国内ではいわゆる「身代金」の支払いを補償対象外とする商品が一般的です。
こうした引受厳格化の背景には、経済産業省が公表する「サイバーセキュリティ経営ガイドライン(Ver 3.0)」に示されるような、経営層主導でのセキュリティ対策強化の流れがあります。
同ガイドラインは、ランサムウェア被害の顕在化やサプライチェーン全体でのリスク増大を背景に改訂されたもので、企業に対し組織的なセキュリティ対策の実施を求めています。
保険会社の引受審査で確認されるセキュリティ対策項目は、こうしたガイドラインが示す方向性と重なる部分が多く、加入検討の際には自社のセキュリティ体制の現状把握が出発点になります。
今後の注目論点
現状は国内での普及が進んでいないサイバー保険ですが、将来的にはどのように展開していくでしょうか?
法規制やサイバーリスクの傾向から、「これからの市場動向」を予測します。
規制強化と保険加入の関係
国内では2022年4月施行の改正個人情報保護法により、一定の要件に該当する個人データの漏えい等が発生した場合、個人情報保護委員会への報告および本人への通知が義務化されています。
その後、いわゆる「3年ごと見直し」の検討が進み、2026年1月9日に個人情報保護委員会が「制度改正方針」を公表しました。
この方針では、漏えい等発生時の本人通知義務について、本人の権利利益の保護に欠けるおそれが少ない場合の緩和が示される一方、課徴金制度の導入など規律強化の方向性も含まれています。改正法案は2026年の通常国会への提出が見込まれていますが、具体的なスケジュールは流動的であり、確定していません。
このように、個人情報保護法の改正は「緩和」と「強化」の両面を持つ見直しとなっています。課徴金制度の導入や罰則強化が実現すれば、企業の財務リスクは従来よりも拡大する可能性があり、リスク管理の選択肢としてサイバー保険の検討につながる場面が増えると考えられます。
欧州の規制動向
欧州ではNIS2指令(ネットワーク・情報セキュリティ指令の改訂版)の施行により、各国の法規制強化と企業への適用が進んでいます。グローバルに事業展開する日本企業にとっては、間接的な影響が生じる可能性があります。
こうした規制動向が直接的に保険加入を義務化するわけではありませんが、リスク管理上の要請として保険の検討につながる場面が増える傾向が見られます。
脅威の高度化と商品設計の変化
AIを活用したフィッシング攻撃の巧妙化、サプライチェーン攻撃の増加、クラウド環境を標的とした攻撃手法の多様化により、脅威の性質が変化しています。これに伴い、保険商品の補償対象・免責条項・付帯サービスにも見直しが進んでいます。
具体的には、クラウドサービス障害や委託先経由のインシデントへの対応が商品設計上の論点となっています。加入時には「どのような事故類型が補償対象か」を約款で確認することが重要です。
今後の市場規模は拡大が見込まれる
調査会社IMARC Groupは、日本のサイバー保険市場規模を2025年時点で10億566万米ドルと推計し、2034年に47億9,800万米ドルまで拡大すると予測しています。
また、同社の別資料によるとグローバル市場は2024年時点で142億米ドル、2033年には735億米ドルまで増加すると予測されており、サイバー保険市場の拡大トレンドは世界共通のトレンドとなっています。
【参考資料】
・IMARCグループ「日本のサイバー保険市場:業界動向、シェア、規模、成長、機会、および予測2026-2034」
https://www.imarcgroup.com/report/ja/japan-cyber-insurance-market
・IMARCグループ「サイバー保険市場レポート コンポーネント別(ソリューション、サービス)、保険タイプ別(パッケージ、スタンドアロン)、組織規模別(中小企業、大企業)、エンドユース産業別(BFSI、ヘルスケア、IT・通信、小売、その他)、地域別 2025-2033」
https://www.imarcgroup.com/report/ja/cyber-insurance-market
まとめ
国内のサイバー保険市場は普及途上ですが、今後はサイバーリスクの高まりとともに拡大していくと見込まれています。一方で、企業の「サイバーリスクに対する危機感」は十分とはいえない状況です。
加入を検討する際は、自社のリスクの大きさ・既存のセキュリティ対策・保険でカバーすべき領域を整理することが大切です。その上で、最新の商品内容・引受条件を複数社で比較し、代理店や保険会社に相談することをおすすめします。
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