損害保険
サイバー保険とは?企業に必要な補償と費用の基礎知識

サイバー保険で会社を守る!企業が備えるべきリスクと補償を解説

サイバー保険とは?企業に必要な補償と費用の基礎知識

サイバー保険とは、サイバー攻撃や情報漏えいに対する保障を行う保険商品です。

近年、国内でもサイバー攻撃の被害が増えており、今やどの企業にとっても他人事ではないリスクです。

この記事では、サイバー保険の補償内容や必要性、保険料の相場などをわかりやすく解説します。

「サイバー保険の基礎を押さえたい」「自社に導入すべきか悩んでいる」という方は、ぜひ本記事を参考にしてください。

サイバー保険とは「サイバー攻撃などの損害と対応費用」を補償する保険

サイバー保険は、サイバー攻撃や情報漏えいが起きたときに、企業が負う損害と対応費用を補償する保険です。

以下は、補償の対象となる被害の代表例です。

  • 不正アクセスによる個人情報の流出
  • ランサムウェアによるデータ暗号化
  • クラウドや社内システムの停止
  • ビジネスメール詐欺による不正送金

サイバー攻撃や情報漏えいが起きると、損害賠償や各種対応で大きな損失が発生します。サイバー保険は、これらの費用や損失を補償します。

損保ジャパンやAIG、あいおいニッセイ同和損保など、多くの損保会社がサイバー保険を販売しています。単独の商品として契約する場合もあれば、既存の法人向け保険に特約として付ける場合もあります。

中小企業向けのシンプルなプランも増えてきており、大企業やIT企業以外にも注目されつつある法人向け保険です。

企業がサイバー保険に加入すべき理由

「うちは狙われるほど有名ではない」「IT会社ではないから不要」と考えている企業も多いですが、実際のサイバー攻撃は、企業規模や業種を問わず発生しています。

無差別に送信される不審メールや、パスワード流出を狙った攻撃、テレワーク環境のすき間を突いた侵入など、特定の企業を狙わない攻撃も多く、中小企業が被害に遭うケースも少なくありません。

一度事故が発生すると、顧客や取引先への賠償対応に加え、フォレンジック調査(原因や被害状況の特定)や対応窓口の設置など、さまざまな費用が積み上がります。さらに、取引停止や信用低下といった、金額に直しづらい損害もあります。

サイバー保険に加入すれば、これらの「サイバー攻撃による損害」を保険金でカバーし、事故対応に必要な資金を確保可能です。

保険金と保険料の相場

サイバー保険の保険金や保険料は、事業規模や業種によってリスクが大きく異なるため、一律の相場は出しにくくあります。

おおまかな保険料のイメージは、以下のとおりです。

売上高 支払限度額 年間保険料
5億円 賠償1億円、その他費用3,000万円 6〜10万円前後
10億円 10〜25万円前後
30億円 13〜25万円前後

IT・EC専業、医療・金融などの高リスク業種になると、同じ支払限度額でもこの数倍〜10倍近い保険料になるケースもあります。

重要なのは「自社が抱えるリスクと必要な補償範囲」を見極めることなので、単純な金額に惑わされず、複数社の見積もりを比較するようにしましょう。

サイバー保険で対策できるリスク

サイバー保険によって対策できる企業のリスクは、以下の3つに分けられます。

  1. 賠償損害補償:顧客・取引先への賠償費用
  2. 事故対応費用:調査・通知・謝罪・広報の実務コスト
  3. 利益損害:システム停止による売上減少と営業継続費用

具体的な補償内容を把握し、加入の判断材料にしましょう。

リスク①賠償損害補償:顧客・取引先への賠償費用

賠償損害補償は、個人情報や取引先情報が漏えいしたときに発生する賠償(対外的なお金の支払い)をカバーするための補償です。

顧客の個人情報がクラウドから流出し、本人から損害賠償を請求された場合や、情報管理の不備を理由に取引先から損害を求められた場合などが対象になります。

通常は、賠償金そのものに加えて、和解するための支払い、弁護士費用や訴訟費用なども補償範囲に含まれます。

「自社がどれくらいの金額を請求され得るか」は、業種や扱うデータの量によって違います。個人情報を大量に扱う法人ほどリスクは高くなるため、賠償損害補償の金額設定は、代理店や保険会社と相談しながら慎重に決める必要があります。

リスク②事故対応費用:調査・通知・謝罪・広報の実務コスト

事故対応費用は、サイバー攻撃や情報漏えいが起きたあとに社内外で発生する「実務のためのコスト」をカバーする補償です。

実務コストの例

  • 原因を特定するための技術的調査
  • 影響範囲の確認
  • 被害が出た可能性のある個人への通知やお詫び
  • 問い合わせ窓口の設置
  • 記者発表やウェブサイトでの告知

サイバー保険のなかには、事故対応費用の補償にくわえて、専門会社による初動対応サービスが付帯している商品もあります。技術調査や広報対応を外部のプロに任せられるため、社内のセキュリティ体制が十分でない中小企業にとっては大きな安心材料になるでしょう。

リスク③利益損害:システム停止による売上減少と営業継続費用

利益損害の補償は、サイバー攻撃でシステムやサービスが止まったことで減少した売上や、営業を続けるためにかかった費用に備えるものです。

たとえば、ECサイトが数日間停止し、その間まったく受注ができなかった場合や、工場のシステムが止まり、生産と出荷が止まってしまった場合などが対象になります。

利益損害補償は、特約として用意され「付けるかどうか」を選べることが多く、補償を付けると保険料が上がりやすい部分でもあります。自社のビジネスがシステム停止したときの影響を整理し、「どこまで保険でカバーしたいか」を考えたうえで、加入するかどうかを決めることが大切です。

サイバー攻撃による被害例

サイバー攻撃がどれほどの脅威なのかをイメージするためには、過去の被害例を知ることが大切です。

ここでは、実際に起きた3つの被害例を紹介するので、サイバー保険の検討にあたってぜひ参考にしてください。

被害例①大規模な個人情報漏えいで信用を失ったケース

企業名 ベネッセホールディングス
インシデント(出来事) 個人情報漏えい事件
概要 データの不正持出しにより、数千万件の顧客情報が流出

2014年、ベネッセホールディングス(ベネッセコーポレーション)で、通信教育「進研ゼミ」などの顧客情報が大規模に漏えいしました。

業務委託先元社員が顧客データを不正に持ち出し、名簿業者に売却したもので、流出した可能性がある情報は約2,895万件〜3,504万件とされています。

同社は対象顧客の問い合わせ窓口の設置や見舞金の支払いなど、膨大な事故対応に追われました。特別損失として260億円を計上し、ブランドイメージにも大きな打撃を受けています。

被害例②ランサムウェアで工場が稼働停止に追い込まれたケース

企業名 アサヒグループホールディングス
インシデント(出来事) 社内システム障害
概要 サイバー攻撃(ランサムウェア)で商品受注・出荷が停止

2025年9月29日、アサヒグループホールディングスがランサムウェア攻撃を受け、システム障害により商品受注・出荷が広範囲で停止しました。

同社の説明によると、約191.4万件の個人情報漏えいと、出荷停止による供給混乱が発生し、「ビールが店頭から消える」という形で一般消費者にも影響が出たと報じられています。

被害例③ビジネスメール詐欺により数億円を振り込んだケース

企業名 スリー・ディー・マトリックス株式会社
インシデント(出来事) 不正送金被害
概要 取引先を装った詐欺メールで数億円の被害

2024年1月、医療機器メーカーのスリー・ディー・マトリックス株式会社は、ビジネスメール詐欺(BEC)による不正送金被害を公表しました。

海外子会社や取引先を装った偽のメールにより、実在の取引と見せかけた請求に応じてしまい、約2億円の誤送金をしたとされます。

社内外の確認体制に不備があったことも背景にあげられており、ヒューマンエラーと巧妙な詐欺手口が重なって被害が拡大した典型例と言えます。

サイバー保険を検討すべき企業の特徴

多くの企業に役立つサイバー保険ですが、以下に挙げる企業は、特に加入のメリットが大きい(=サイバー攻撃のリスクが高い)と言えます。

  • DX化が進んでいる企業(ITへの依存度が高い企業)
  • 個人情報や機密情報を取り扱う企業
  • EC事業を行う事業

これらの企業がどのようにリスクを抱えているのか把握し、自社と照らし合わせてサイバー保険の加入を検討してみましょう。

DX化が進んでいる企業(ITへの依存度が高い企業)

DX化を進めている企業ほど、セキュリティ対策とあわせて「万一止まったときにどうするか」という視点が欠かせません。サイバー保険は、その中で使える選択肢の1つです。

たとえば、基幹システムやクラウドサービスがサイバー攻撃で使えなくなると、事業そのものがストップしてしまいます。復旧までに時間がかかればかかるほど、売上の減少や追加費用は増加します。

事業の大部分でクラウドや業務システムを利用している企業は、サイバー保険で利益損害や対応費用をカバーし、システムが止まったときの影響を減らしましょう。

個人情報や機密情報を取り扱う企業

顧客の個人情報や、取引先の機密情報を多く扱う企業は、情報漏えいが起きたときの賠償リスクが大きくなります。会員サイトや顧客管理システム、医療・保険・教育などの業種は、とくに注意が必要です。

個人情報が漏えいすると、損害賠償だけでなく、顧客・取引先への対応、監督官庁からの指導など、さまざまな業務が発生します。サイバー保険に加入していれば、こうした負担の軽減が可能です。

どれだけ社内のセキュリティ対策を講じても、情報漏えいのリスクはゼロにできません。大量の個人情報や機密情報を持つ企業ほど、サイバー保険の必要性は高くなります。

EC事業を行う事業

自社サイトやモール出店などでEC事業を行っている会社は、サイバー攻撃の影響を受けやすいタイプです。サイトが使えなくなると、その間の注文は入らず、売上が激減してしまいます。

また、ECサイトでは、クレジットカード情報や住所、連絡先などの重要な個人情報も扱います。カード情報の漏えいが起きた場合は、賠償やブランドからの求償など、高額の損失が生じるかもしれません。

サイバー攻撃によって「逃した利益」と「賠償リスク」の両方を、サイバー保険ではカバーが可能です。

よくある質問

サイバー保険の加入にあたって、よくある質問とその回答をFAQ形式で紹介します。

疑問や不安を解消し、自社にとって最適な選択ができるようにしましょう。

サイバー保険の加入率は?

サイバー保険の加入率は、まだそれほど高くありません。「自社が狙われる可能性は少ない」「費用対効果がわかりにくい」といった理由から、サイバー保険に加入していない会社が多いのが実情です。

しかし、大企業やIT・EC・医療など、サイバー攻撃のリスクが高い業種では、加入が当たり前になりつつあります。取引先からサイバー保険を含めたリスク対策を求められる中小企業も増えています。

サイバー保険の加入に要件はある?

サイバー保険に加入する際、保険会社から「一定のセキュリティ対策を講じているか」を見られる場合があります。

そのため、セキュリティポリシーがまったくなかったり、パスワードやデータの管理体制が定まってなかったりすると、引き受けを断られるかもしれません。過去に大きなサイバー事故を起こしている企業も、条件が厳しくなることがあります。

サイバー保険に加入するときは、会社としてどこまでセキュリティ対策をしているかを整理しておくと、契約がスムーズに進みます。

サイバー保険で保証されないIT被害は?

サイバー保険にも、「補償されないケース(免責)」があります。例としては、次のようなものが代表的です。

  • 故意の不正行為
  • 重大なルール違反や、明らかな放置があった場合
  • 契約前から分かっていた事故や損害

また、不正送金や詐欺メールによる被害については、商品によって補償されない場合があります。サイバー保険を選ぶときは、約款を見たり保険代理店に相談したりなどして、「どのような事故が補償対象か」を確認しておきましょう。

サイバー保険と情報漏えい保険の違いは?

サイバー保険と情報漏えい保険は似た商品ですが、補償の範囲に違いがあります。

情報漏えい保険は文字通り情報漏えいのみに限定して補償しますが、サイバー保険はシステム停止やデータ破損、それらに起因する営業損失など、より広範囲をカバーします。

情報漏えい保険のほうが保険料は安価な傾向ですが、より確実なリスク対策を施したい企業は、サイバー保険を検討してみましょう。

まとめ:保険とセキュリティ対策を組み合わせてサイバーリスクに備える

サイバー保険に加入しておけば、サイバー攻撃による損害賠償や事故対応、売上減少などの補償を確保できます。

ITへの依存度が高い企業や、個人情報や機密情報を多く扱う企業、EC事業を行う企業などは、特に加入を検討すべき保険です。

まずは、サイバー攻撃が発生したときの影響をシミュレーションし、必要な補償内容を予測しましょう。保険代理店などの専門家に相談すれば、より精度の高い予測も可能です。

セキュリティ対策とサイバー保険を組み合わせて、会社と取引先、そして顧客を守る体制を少しずつ整えていくことが、これからの企業に求められる備えです。

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