法人税の基本
法人保険についての国税庁のパブリックコメント【税制改正通達の概要】

法人保険に関する国税庁のパブリックコメントを紹介

法人保険についての国税庁のパブリックコメント|税制改正通達の概要

国税庁から、「法人税基本通達の制定について」のパブリックコメントが公開されています。

以前から指摘されていましたが、低解約返戻金型保険などの解約返戻金額が低い保険契約を利用した節税対策として、法人から個人に名義変更する際の時価を、これまでの解約返戻金額ではなく「資産計上額」で評価することとする改正内容になっています。

この記事では、国税庁からの通達「法人保険のパブリックコメント」の概要について解説します。

法人保険のパブリックコメントとは

各行政機関では、さまざまな政令や省令などの設定や改正・廃止を決める際に、事前にその案を公表し国民から広く意見・情報を募集しており、この手続のことをパブリックコメントといいます。

パブリックコメントは、全省庁に適用されている制度で、この記事で解説する法人保険については国税庁から通達のあったパブリックコメントとなっています。

法人保険のパブリックコメント:税務変更の背景

法人保険のパブリックコメント:税務変更の背景

国税庁から法人保険の保険料取扱いを見直す改正通達案が付された背景について確認していきましょう。

企業が役員や従業員に対して生命保険契約などに関する権利を支給(名義変更した)した場合、所得税法においては、支給時に解約した場合に支払われる解約返戻金額で評価されることになっています。

その一方で、「低解約返戻金型保険」や「復旧可能な払済保険」といった解約返戻金額が低い保険契約などについては、一般的な取引において低い解約返戻金額で名義変更を行うことはほとんどないことから、支給時の解約返戻金額で評価することは適切でないという指摘があります。

このような不公平な状況を改めるべく、改正案が通達されるに至ったとされています。

低解約返戻型保険を活用した節税方法を解説

企業が取る節税対策のひとつに「低解約返戻型保険」を活用した節税対策があります。それが、今回の国税庁の法人保険のパブリックコメントで論点とされている税務ですが、具体的に行われている税務について確認していきましょう。

  1. 企業が、契約者=法人、保険料支払者=法人、被保険者=役員や従業員として、「低解約返戻金型保険」を契約します。※【例】低解約返戻型保険(年間保険料100万円、契約後9年間は解約返戻金率が払込保険料の20%程度だが、10年目の解約返戻率が90%に上昇)
  2. 解約返戻金額が上昇する前の9年目に保険名義(権利)を役員や従業員に変更します。
  3. 解約返戻金額が上昇した後(10年目以降)に役員や従業員が保険契約を解約し、解約返戻金を受け取ります。

現行制度では、法人保険の権利を役員や従業員に名義変更したときは「保険契約の権利」を無償で譲渡したことになるため、解約返戻金相当額が給与所得として課税対象になっています。

このケースでいうと、9年目に名義変更をした際の解約返戻金は

100万円×9年×20%=180万円

となり、180万円が給与所得に該当し課税対象となります。

一方、名義変更を翌年の解約返戻率が上昇するタイミングにすると、解約返戻金は

100万円×9年×90%=810万円

となり、9年目に名義変更する場合と比較して、課税金額が高額になります。

また、法人保険を名義変更してから受け取れる解約返戻金は「一時所得」に該当しますが、一時所得では「最大50万円の特別控除」が受けられるうえに課税所得は2分の1のみとなり、税金の支払い負担が軽減されます。

ここまでの流れをまとめると、法人名義の保険を解約返戻金額が上昇する前に個人に名義変更し、名義変更後に個人が解約することで、税金の支払い負担が軽減された「一時所得」として保険金を受け取ることができる、ということです。

法人保険のパブリックコメント:国税庁からの速報通達による税務改正

法人保険のパブリックコメント:国税庁からの速報通達による税務改正

今回、国税庁から速報のあった通達の税制改正案は、前章の低解約返戻型保険の名義変更をした際の所得税の評価を見直すという内容のものです。

法人税の基本通達によると、法人保険契約における権利については、支払保険料の一部を「前払保険料」として資産計上するように決められています。

この法人税基本通達の概要を踏まえて、企業が役員や従業員に対して解約返戻金額が低い保険契約の権利を支給したは、次の金額で評価するように改正されます。

  • 解約返戻金額が資産計上額(前払保険料等)の70%未満である法人保険契約等に関する権利を支給した場合は、解約返戻金相当額ではなく「資産計上額」で評価するように改正
  • 復旧可能な払済保険などの法人保険契約等に関する権利を支給した場合は、法人税基本通達の通り支払い時の資産計上金額に損金算入金額を加算した金額で評価するように改正

国税庁の法人保険についてのパブリックコメントにより付された改正により、この節税対策は税務上のメリットを大きく失うことになります。

法人保険のパブリックコメントにより令和元年7月8日以降契約分から適用

今回の法人保険のパブリックコメントにより改正となる法人保険は、以下に該当するものです。

「法人税通達9-3-5の2に基づいて資産計上されている2019年7月8日以降に契約された法人保険で、令和3年7月1日以後に低解約返戻金型保険等の権利を役員や従業員に名義変更する契約」

なお、これに該当しない法人保険契約は、これまで通りの評価方法が適用されます。

まとめ

国税庁からの「法人保険についてのパブリックコメント」により、今後「低解約返戻型保険」などを活用した節税対策は大きくメリットを失うことになります。

今後も、この記事で解説したパブリックコメントや通達などが国税庁から付されることも考えられるため、税制改正関連の最新情報をチェックし、適正な税務処理ができるようにすることが大切です。

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