本記事は、2021年(令和3年)の通達改正(令和3年7月1日以後の「保険契約等に関する権利の支給」に適用)について解説します。
国税庁から、「所得税基本通達の制定について」の一部改正に関するパブリックコメントが公表されました。
内容は、低解約返戻金型保険など解約返戻金が低い期間を持つ保険契約等をめぐり、法人から役員・従業員へ権利を支給(名義変更等)する場面の評価が、実態に合わないケースがあるとして見直すものです。
この記事では、国税庁のパブリックコメントの要点と、実務で押さえておきたい変更点を解説します。
法人保険のパブリックコメントとは
各行政機関では、政令・省令などの制定や改正・廃止にあたり、事前に案を公表して広く意見・情報を募集することがあります。この手続をパブリックコメントといいます。
今回取り上げるのは、保険契約等に関する権利を役員・従業員へ支給する場面の評価方法を見直す内容です。
法人保険のパブリックコメント:税務変更の背景

国税庁から改正通達案が示された背景を確認していきましょう。
企業が役員や従業員に対して生命保険契約等に関する権利を支給(名義変更等)した場合、所得税の取扱いでは、一定の前提のもとで、支給時点の解約返戻金相当額を基に評価される考え方が示されています。
一方で、「低解約返戻金型保険」や「復旧可能な払済保険」など、解約返戻金が低い期間を持つ保険契約等については、一般的な取引の実態に照らして、支給時の解約返戻金相当額による評価が適切なのか、という指摘がありました。
こうした点を踏まえ、評価が著しく低くなるケースへの対応として、見直し案が示された位置づけです。
低解約返戻型保険を活用したケース(背景の理解)
ここでは、今回の見直しが想定している背景を理解するために、典型的な流れを整理します。
- 企業が、契約者=法人、保険料支払者=法人、被保険者=役員や従業員として、「低解約返戻金型保険」を契約します。
※【例】低解約返戻金型保険(年間保険料100万円、契約後9年間は解約返戻金率が払込保険料の20%程度だが、10年目の解約返戻金率が90%に上昇) - 解約返戻金率が上昇する前の9年目に、保険契約等に関する権利を役員や従業員へ支給(名義変更等)します。
- 解約返戻金率が上昇した後(10年目以降)に、役員や従業員が契約を解約し、解約返戻金を受け取ります。
現行の考え方では、法人から役員・従業員へ保険契約等に関する権利を支給した場合、その支給時の経済的利益が課税対象となります(支給の形により所得区分の扱いは異なります)。
この例では、9年目に支給した場合の解約返戻金は
100万円×9年×20%=180万円
となり、支給時の評価(課税の基礎となる金額)は180万円になります。
一方、支給を翌年の解約返戻金率が上昇するタイミングにすると、解約返戻金は
100万円×9年×90%=810万円
となり、支給時の評価額が大きくなります。
また、支給後に契約を解約して受け取る解約返戻金等の課税関係は、契約形態や保険料負担の状況などにより扱いが変わります。一時所得として扱われるケースでは、特別控除(最高50万円)や2分の1課税の仕組みがあります。
法人保険のパブリックコメント:国税庁からの改正案のポイント

今回示された改正案は、低解約返戻金型保険等の権利を支給(名義変更等)する場面で、所得税側の評価の考え方を見直す内容です。
法人税基本通達では、法人保険契約等に関する権利について、支払保険料の一部を「前払保険料」等として資産計上する取扱いが示されています。
この取扱い等を踏まえ、解約返戻金が低い期間の権利の支給(名義変更等)について、次のような評価方法を用いる方向が示されています。
- 解約返戻金相当額が資産計上額(前払保険料等)の70%未満である保険契約等に関する権利を支給した場合は、解約返戻金相当額ではなく「資産計上額」で評価する方向
- 復旧可能な払済保険などの保険契約等に関する権利を支給した場合は、支払時の資産計上金額に損金算入金額を加算した金額で評価する方向
この見直しにより、低解約返戻期間に権利の支給(名義変更等)を行う設計では、評価額の考え方が変わります。その結果、想定していた税務効果が得にくくなる可能性があります。
【適用時期】令和3年7月1日以後の「権利の支給」から適用
今回の見直しは、令和3年7月1日以後に行う保険契約等に関する権利の支給(名義変更等)に適用されます。
あわせて、対象となるのは、法人税基本通達9-3-5の2に基づき資産計上が行われる保険契約等(例:2019年7月8日以後に契約されたもの)に関する権利を前提とする点にも注意が必要です。
なお、要件に該当しない保険契約等は、従来の評価の考え方が適用されます。
まとめ
国税庁のパブリックコメントでは、解約返戻金が低い期間に権利を支給(名義変更等)する場面で、評価額が著しく低くなるケースへの対応として、評価方法の見直し案が示されています。
見直しの影響は、契約内容や支給のタイミング、設計によって変わります。制度改正の動きや通達の内容を確認し、前提を踏まえたうえで適正な税務処理につなげていきましょう。
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