
法人保険の解約返戻金は、役員退職金などの原資として使えるなど、さまざまなメリットがあります。
一方で、解約返戻金は税務上、益金に算入するため、法人税の税負担が増える点がデメリットです。
このデメリットを抑えてメリットを活かすには、法人保険の仕組みと、解約返戻金の受け取り時の注意点を押さえる必要があります。
ここでは、法人保険の基本的な仕組みと解約返戻金、税金について押さえておきたいポイントを解説します。
解約返戻金の経理上の処理
法人保険には、個人向けの保険と同様にさまざまな種類があります。解約返戻金を受け取れるタイプもあれば、解約返戻金がないタイプもあります。
また、保険の契約内容によって、解約返戻金がどの程度戻るかは異なります。
さらに、法人保険を解約する時期によっても、解約返戻金の金額は変化します。契約時点で、解約返戻金の有無と見込みを確認し、加入判断を行いましょう。
運用目的で法人保険に加入する場合や、退職金などの支払い原資を確保する目的の場合は、解約返戻金がある法人保険を選ぶことが重要です。
解約返戻金と返戻率
解約返戻金を基準に法人保険を比較する場合、返戻率を比較すると分かりやすいです。
解約返戻金の返戻率とは、受け取った解約返戻金を、支払った保険料の累計金額で割ったものです。返戻率が100%を超えると、支払保険料の累計より受取額が大きくなります。
ただし、返戻率が100%を超える場合は税負担にも注意が必要です。
解約返戻金は税務上、益金として処理します。多額の解約返戻金を受け取ると、法人税の負担が重くなる場合があります。
ただし、損金に算入せず資産として計上していた保険料相当額(帳簿上の残高)がある場合、解約返戻金の受取と同じタイミングで、その残高を費用(損金)として計上します。その結果、解約返戻金の受取額すべてが課税対象になるとは限りません。
一方、保険料を全額損金算入しており、帳簿上の資産計上額がない契約では、解約返戻金の受取額がそのまま益金として計上されます。
法人保険を活用するメリット
法人保険に加入する主なメリットは3つあります。
①保険料の損金算入ができる
1つ目は、保険料の損金算入によって、税制上のメリットが得られる点です。
法人保険の保険料は、全額損金算入できる場合と、一部算入できる場合、まったく損金算入できない場合の3つに分かれます。
保険の種類や保険金受取人などの契約条件によって、損金算入の可否は変わります。
損金算入が認められる法人保険に加入すれば、保険料の支払いで課税所得を減らせるため、税負担の軽減に役立ちます。
②欠損金がある年度は、解約返戻金の税負担を抑えられる
2つ目のメリットは、税務上の欠損金(繰越欠損金)がある年度に解約返戻金を受け取ると、税負担を抑えられる点です。
解約返戻金は益金に算入します。益金が増えると課税所得も増えやすいため、解約返戻金の受け取りに良い印象を持っていない経営者もいるでしょう。
ただし、税務上の欠損金(繰越欠損金)がある場合は、その範囲で所得と相殺され、法人税の負担を抑えられます。
なお、欠損金控除には要件や控除限度があるため、事前に税理士などへ確認しましょう。
③資金準備ができる
3つ目は、法人保険に加入することで、将来必要になる資金を計画的に準備できる点です。
貯蓄性がある積立型の法人保険なら、資金が必要なタイミングで解約し、解約返戻金を受け取れます。
また、保険料は口座引き落としで支払うため、積立のペースを保ちやすい点も特徴です。
解約返戻金を役員退職金などの準備資金として受け取れるようにしておく活用法もあります。法人保険は、資金準備の手段としても活用できる点がメリットです。
法人保険の活用に重要なこと
①目的を明確にする
法人保険に加入する目的はさまざまです。経営者や従業員の死亡保障を得る目的で加入する場合もあれば、将来の役員退職金や設備投資に備えた資金を準備する目的もあります。
ただし、目的があいまいなままだと、保障額などの契約条件を判断する基準が定まりません。その結果、保障が不足する保険や過大な保険に加入してしまったり、想定していた解約返戻金が得られなかったりするリスクが高まります。
目的が不明確な状態で保険料を支払い続けると、経営判断の軸がぶれやすく、いざというときに「保険料をなぜ支払っているのか分からない」といった悩みにもつながります。
目的を決めたうえで法人保険に加入し、支払っている保険料を事業に役立つ支出として位置づけていきましょう。
②出口戦略を決める
出口戦略も、法人保険加入時に設定しておくことが重要です。
法人保険における出口戦略とは、受け取った保険金や解約返戻金の使い道をあらかじめ決めておくこと、また法人保険の解約タイミングを想定しておくことです。
保険契約を「どのように終わらせるか」のプランだと捉えましょう。
特に出口戦略で注意すべきなのは、法人保険を解約する時期です。
解約返戻金は、契約して間もない時期に解約すると、ゼロもしくは少額になることが多いです。
また、法人保険の種類によって、解約返戻金が大きくなる時期は異なります。
あらかじめ解約の見込み時期を把握し、その時期に高額な役員退職金や大型の設備投資などの支払いイベントが重なるように、法人保険を検討しましょう。
赤字会社こそ法人保険に加入すべき?
赤字経営の企業ほど、法人保険の見直しや解約が経営に役立つという見方もあります。
法人保険に加入する目的のひとつとして、「利益の繰り延べ」を挙げる場合があります。
解約返戻金の活用方法には、役員や従業員の退職金準備、設備投資などの高額な費用の準備などがありますが、資金不足が生じた局面で、解約返戻金が資金繰りの助けになる点も挙げられます。
企業が黒字の年度に解約返戻金を受け取ると、益金算入により法人税の負担が増える場合があります。
一方、赤字の年度でも解約返戻金は益金に算入します。ただし、税務上の欠損金(繰越欠損金)がある場合は、その範囲で所得と相殺され、法人税の負担を抑えられます(要件・控除限度あり)。
法人保険の契約者貸付を活用する方法もある
法人保険を解約して解約返戻金を受け取る方法に加え、まとまった資金を確保できれば資金繰りが改善する企業では、契約者貸付を利用する選択肢もあります。
契約者貸付とは、加入中の法人保険の解約返戻金の範囲内で資金を借り入れる仕組みです。法人保険を解約しないため、保障は継続したまま資金を確保できます。
契約者貸付は、一般的な融資と比べて手続きが簡単で、借入までのハードルが低い点が特徴です。
ただし、借入可能額や条件は商品・保険会社ごとに異なり、利息も発生します。借入残高が解約返戻金相当額を上回ると契約に影響が出るため、返済計画も含めて確認しましょう。
内部留保で積み立てるのは効率が悪い
退職金といった将来必要になる資金は高額になる場合があるため、その場しのぎで用意するのではなく、長期間かけて準備することが大切です。
退職金支払い用の資金は、法人保険に加入して用意するだけでなく、現金で内部留保を増やす方法もあります。
ただし、内部留保の積み上げで退職金を準備する方法は、税引後利益を原資にするため、資金が積み上がるまでに時間がかかります。
内部留保を積み上げる場合、原資は税引後の利益です。税引後利益を原資として内部留保を積み上げるには、継続した黒字が前提になります。
赤字経営の場合は内部留保が積み上がるどころか減少することになります。
また、税引後利益が出ていても、利益額が少額だと十分な内部留保を確保しにくいでしょう。
さらに、将来のために資金を留保すると、事業に使える手元資金が減る点も課題です。
その点、法人保険なら定額の保険料を継続して支払うため、資金準備を仕組み化できます。
退職金の支給タイミングについても課題があります。退職金は費用です。内部留保を原資として退職金を支払う場合、多額の費用が発生します。
退職金の額が大きいと、その影響で赤字決算になる場合もあります。
法人保険で資金を用意する場合は、解約返戻金や保険金という収入と、退職金支払いという支出のタイミングを合わせ、利益への影響を小さくできます。
解約返戻金を事業資金にあてる場合の注意点
解約返戻金は使途制限のない資金です。そのため、経営者は自由に使い道を決められます。
使い道としては、「事業資金に充当する」という選択肢もあるでしょう。
たとえば、多額の資金を投じて設備投資を行う場合は、法人保険を解約し、解約返戻金を投資資金にあてる方法があります。
また、予定外の事業運営上のトラブルが生じて一時的に運転資金が不足する場合などは、法人保険を一部解約して解約返戻金を受け取り、資金を確保する選択肢もあります。
ただし、注意点もあります。
解約返戻金の受け取りは、益金が発生する取引です。そのため、受け取った資金をそのまま使わずに置いておくと、解約返戻金を受け取った事業年度の税負担が重くなる場合があります。
資産として計上していた保険料相当額は費用(損金)として計上できますが、それでも課税所得が増える場合があります。
このような事態を避けるためには、設備投資などの計画を立案し、事業資金が必要になるタイミングを明確にしておくことが重要です。
支出のタイミングが分かれば、それに合わせて解約返戻金を受け取れます。
収入と支出の時期を近づけると、税負担の増加を抑えられます。
ただし、設備投資支出は支出額の全額を損金算入できるわけではありません。
設備の使用期間にわたって分割して損金計上する減価償却の計算が必要になる点は押さえておきましょう。
雑収入として計上することを避ける方法
法人保険から解約返戻金を受け取ると、雑収入として処理し、法人税の計算上は益金算入となります。
法人税は、益金から損金を差し引いた課税所得に対して一定の税率を乗じて求める仕組みです。
そのため、益金が増えると税負担も増えます。
解約返戻金の受け取りで益金が増える年度は、退職金の支払いを同じ事業年度に行うと、税負担を抑えられます。退職金の支払い対象者は、役員でも従業員でも問題ありません。
退職金は、法人税の計算上、損金処理が認められています。
一部、役員に対する過大な退職金は損金算入が認められませんが、原則として退職金の支払いは損金の計上につながります。
この性質を利用することで、解約返戻金による税負担を軽減できます。
ポイントは、解約返戻金を受け取った事業年度内で退職金を支払うことです。
こうすることで益金を損金で相殺できます。タイミングがずれると狙った効果を得にくくなります。
退職金は、対象となる役員や従業員の退任・退職を前提に支払われます。退任や退職は、急に決めると混乱が生じるため、早めに決めておくことが重要です。
また、定年退職であれば時期は明確です。その時期に合わせて法人保険を解約すれば、解約返戻金の受け取りによる税負担の増加は回避できます。
自社に合った法人保険に加入する
法人保険に加入する場合は、「必要な保障が得られる保険か」「解約返戻金で資金が得られる保険か」など、さまざまな点を検討して保険を選ぶことが大切です。
また、契約の段階から、保険金や解約返戻金として受け取る資金の使い道も検討しておきましょう。
自社に適した保険かどうかを判断するためには、目的をはっきりさせておく必要があります。
それでも、世の中に出回っている保険商品の数は多く、すべての保険について特徴などを自ら調べて保険を選ぶことは大変難しいです。
そういった場合は、税理士など保険に詳しい専門家のサポートを受けることをおすすめします。専門家に保険加入の目的を正確に伝えることで、的確なアドバイスが得られるでしょう。

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