生命保険
低解約返戻金型逓増定期保険とは?仕組みや活用法を徹底解説

低解約返戻金型逓増定期保険の仕組みと特徴、加入時の注意点について

低解約返戻金型逓増定期保険とは?仕組みや活用法を徹底解説

低解約返戻金型逓増定期保険は一定期間の解約返戻金が少ない、法人に人気の逓増定期保険です。

保険期間に応じて保険料が最大5倍まで膨れ上がるのが魅力で、保険期間も比較的短く設定されています。

本記事では、低解約返戻金型逓増定期保険の仕組みから活用法、注意点まで詳しく解説。

税制改正前後の経理処理シミュレーションも解説するので、節税効果も併せてご確認ください。

低解約返戻金型逓増定期保険とは?

低解約返戻金型逓増定期保険とは?

低解約返戻金型逓増定期保険とは、契約から一定期間の解約返戻金が低く設定された、逓増定期保険の一種です。

一定期間経過後は保険金が最大5倍まで増加するため、将来的な事業承継や退職金準備などに備えられます。

長期平準定期保険などの保険商品と比較すると保険期間が短く、短期の保障を希望する経営者におすすめです。

通常の逓増定期保険との違い

低解約返戻金型逓増定期保険は、契約初期の解約返戻金が少ない代わりに、保険料が割安に設定されています。

保険料が安いことで、保険期間中の支払い負担が少なく、キャッシュフローを圧迫せずに保障を受けられます。

それ以外は通常の逓増定期保険と大きな違いはなく、保険料払込期間満了後の解約返戻金も同程度の金額です。

低解約返戻金型逓増定期保険の特徴

低解約返戻金型逓増定期保険の特徴

ここでは、低解約返戻金型逓増定期保険の特徴を3つ紹介します。

  • 貯蓄性が高い
  • 契約者貸付制度を利用できる
  • 払済保険への変更ができる

貯蓄性が高い

低解約返戻金型逓増定期保険を利用する一番のメリットが、貯蓄性の高さです。

保険金が保険期間に応じて最大5倍まで上昇し、解約返戻率(累計の支払保険料に対する解約返戻率の割合)が他の定期保険より高く設定されます。<

解約返戻金は企業の資金準備として使え、緊急時や事業拡大時の運転資金、退職金の原資などに充てられます。

ただし、解約返戻金はピークを過ぎると受取額が減少します。満期保険金もないため、解約時期は計画的に決めることが重要です。

契約者貸付制度を利用できる

低解約返戻金型逓増定期保険は、契約者貸付制度を利用できます。

契約者貸付制度とは、解約返戻金を担保に保険会社から貸付を受ける仕組みのことで、解約返戻金の7割〜9割の借入が可能です。

利子はビジネスローンなどより低く設定されていて、完済すれば解約返戻金を満額受け取れます。

銀行融資より簡単に資金調達ができるため、急に資金が必要になった際に重宝するでしょう。

払済保険への変更ができる

低解約返戻金型逓増定期保険の中には、払済保険へ変更できる商品があります。

払済保険とは、解約返戻金を一時保険料に充てて、保険料の払い込みをストップしつつ保障を継続する仕組みのことです。「保険料は支払えないけど保障は継続したい!」というときに使います。

受け取れる保険金は減ってしまう場合もありますが、保障は満期まで継続できます。

低解約返戻金型定期保険の注意点

低解約返戻金型定期保険の注意点

低解約返戻金型逓増定期保険には、メリットだけでなく注意点もあります。

特に初期段階で解約すると大きな損失につながるので、計画的に加入することが大切です。

早い段階で解約すると大きな損になる

契約初期の解約返戻金が低いため、早い段階で解約すると大きく損をするので注意しましょう。

たとえば、年払保険料が800万円で、1~4年目の解約返戻率が10%だった場合、3年目で解約すると解約返戻金は24万円にしかなりません。

そのため、低解約返戻金型逓増定期保険を契約する際は、数年で解約する可能性がないか十分に吟味する必要があります。

契約初期は見直しがしにくい

加入後数年間は解約返戻金の額が目減りすることから、早期での見直しがしにくい点もデメリットです。

保険商品にもよりますが、低解約返戻金型逓増定期保険の解約返戻率のピークは、加入してから20〜30年後となっています。

創業期や成長期にある企業では、外的・内的要因で状況が常に変わります。その中で、20〜30年後まで解約できない保険を抱えていると、保険料が却って重荷になるかもしれません。

解約返戻金を受け取る時期から逆算して、計画的に加入を検討するようにしましょう。

低解約返戻金型定期保険は節税にならない?税制改正の影響

低解約返戻金型定期保険は節税にならない?税制改正の影響

低解約返戻金型逓増定期保険は2019年の法人税基本通達の一部改正、2021年の所得税基本通達の一部改正により、節税スキームのメリットが大きく低下しています。

改正前のルールでは、解約返戻金が上がる直前に保険名義を法人から個人(役員や従業員)に変更し、翌年に個人が解約して解約返戻金を受け取るというスキームがありました。

法人から個人への名義変更は、そのときの解約返戻金相当額で前払保険料相当の保険資産を売却したとみなされるため、法人は差額を売却損として計上できました。また、個人が解約返戻金を受け取ったときは、課税所得が1/2となる一時所得で課税されます。

法人にも個人にも税制上のメリットがあり、節税効果の高い「名義変更プラン」として人気を集めました。

こうした節税スキームに対して、2021年に国税庁が通達を改正。名義変更時の解約返戻金率が70%未満の場合、「資産計上額」で評価するよう見直されました。

改正前後の経理処理シミュレーション比較

ここで、税制改正改正前後の経理処理シミュレーションを比較し、節税効果を変化を確認します。

【条件】

  • 年間保険料600万円
  • 40%を損金算入、60%を資産計上
  • 4年目に名義変更、解約返戻金率は20%
  • 5年目に解約、解約返戻金率は80%

上記の条件でシミュレーションした場合、改正前は下記のようになります。

改正前

【名義変更時の評価額】
600万円×4年×20%=480万円
【法人の経理処理】
「480万円-(600万円×60%×4年)=▲960万円」なので、960万円の損金計上

一方、税制改正後のシミュレーションは下記のとおりです。

改正後

【名義変更時の評価額】
600万円×60%×4年=1,400万円
【法人の経理処理】
「1,400万円-(600万円×60%×4年)=0円」なので、損金計上はなし

改正後は損金が生じないため、節税効果がなくなっているとわかります。

まとめ

まとめ

低解約返戻金型逓増定期保険は、契約初期の解約返戻金が低い代わりに、比較的安い保険料で保障を受けられる保険です。

貯蓄や契約者貸付制度、払済保険への変更など、法人にとって複数の活用方法があります。

ただし、早い段階で解約すると大きく損をしてしまうので、加入前に十分な検討が必要です。

税制改正で節税効果は薄まりましたが、上手に活用すればメリットが多い保険なので、仕組みを理解したうえ加入を検討してみましょう。

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