PL保険は製品や仕事の結果が原因で、消費者を死傷させたり財物を損壊させたりした場合の損害賠償責任を補償する保険です。
PL保険の適用範囲は保険商品・特約によって異なるため、加入前に正しく確認しておく必要があります。
本記事では、PL保険の適用範囲と適用対象になる事例を詳しく解説。
適用範囲外となる損害も解説するので、加入を検討中の方はぜひ目を通してみてください。
PL保険の適用範囲

PL保険は、製造業者が製造した製品や工事事業者が行なった工事が原因で、消費者を死傷させたり財物を損壊させたりした場合の損害賠償責任を補償します。
製造物責任法ではPL法の適用対象になる製造物は「製造または加工された動産」です。
具体的には、工業的に大量生産された製品やジュース、ベッド、窓ガラスなどが挙げられます。新品だけでなく、中古品も含まれます。
反対に、形のない電気やソフトウェア、サイバー攻撃、自然産物などはPL法の対象外です。
主な補償内容

PL保険の主な補償内容を紹介します。
なお、実際の補償は契約内容にもよるので、保険商品のパンフレットや約款を実際に確認することが大切です。
対人・対物の損害賠償金
対人・対物の損害賠償金は、PL保険でメインになる補償対象となります。
製品や仕事の結果に起因する物損や傷害に対して、賠償責任を補償します。
製造した機械の不具合や、飲食店での食中毒、販売した化粧品のアレルギーなど、様々な理由の損害賠償に対応しています。
訴訟費用
PL事故に伴う訴訟費用や弁護士報酬についても、PL保険では補償されます。
海外、特にアメリカでは訴訟費用が賠償金額に相当するほど高いことは珍しくありません。
輸出業者や海外展開事業については、国内のものとは別に「海外PL保険」として商品が展開されています。
緊急措置費用
緊急措置費用とは、対人・対物を問わず、損害の発生または拡大を防止するために講じた費用です。
例としては、PL事故発生時の応急手当てや護送などの費用が挙げられます。また、被害者に対する見舞品購入費用や花代なども適用範囲内です。
協力費用
協力費用は、被保険者が保険会社からの要請を受けて行った行為の費用を指します。
文書作成費用や事故現場の調査費用、交通費など、自己解決に必要だった費用が補償されます。
PL保険の適用対象となる事例

平成7年にPL法が施行されて以降、消費者は製品の欠陥を証明するだけで損害賠償請求が可能になりました。
消費者が容易に請求できる分、企業のPL保険は重要度を増しています。
ここから各業種における、PL保険の適用範囲や事例を見ていきましょう。
飲食業
飲食業でPL保険の適用範囲に当てはまるのが、食中毒事故や異物混入です。
厚生労働省の「食中毒統計資料」によると令和5年の食中毒発生件数は1,021件で、患者数11,803人、死者は4人でした。
飲食店やグルメフェスなどを中心に、何かしらの食中毒が発生するリスクは高いといえます。
食中毒は一度発生すると複数人に被害が及ぶことが多く、損害賠償金も大きくなりやすいので注意が必要です。
事例:料亭で提供されたイシガキダイが原因の食中毒
料亭で提供されたイシガキダイに含まれるシガテラ毒素が原因で、複数の客が下痢や嘔吐の症状を訴えました。
イシガキダイは自然産物なので製造物責任法の対象外ですが、加工されていたために裁判では製造物に当たると判断されたのです。
料亭は損害賠償金総額およそ3,800万円を求められ、実際には1,200万円ほどを支払っています。
建設業
建設業では、施行後の事故による賠償責任と、製品や設備による損害賠償がPL保険の適用範囲になります。
建設現場では、常にPL事故が発生するリスクがあります。例えば工事完了後の看板が落下して通行人にケガを負わせたり、建物が崩壊したりするケースです。
損害賠償金や訴訟費用が高額になると、中小の建設会社や工務店は廃業に追い込まれる可能性もあるでしょう。
事例:塗装工事中に塗料が飛散して近隣に被害
塗装工事で飛散防止用のネットが外れ、塗料が飛散。隣の駐車場に停めてあった車に付着した事例です。
塗料が付着した車は全部で6台あり、磨き作業で対応できるものと部品交換が必要なケースに分かれました。
被害総額は150万円でしたが、修理費用や代車費用に全てPL保険が適用されています。
化粧品製造業
化粧品による皮膚トラブルは、消費者センターや国民生活センターにも多く相談が寄せられます。
化粧品の場合、設計・製造・使用方法の指示や警告のいずれかで欠陥があり、人や財産に損害を与えるケースが一般的です。
PL保険に加入すれば、損害賠償金や権利保全行使費用、訴訟費用などが補償されます。
大手化粧品メーカーの美白化粧品が原因で白斑症状が現れた事例
大手化粧品メーカーが製造・販売した美白化粧品のユーザーから、肌がまだらに白くなる被害が報告されました。
メーカーは化粧水や乳液など8ブランド54製品の自主回収を発表。同社の調べでは、同様の症状が出たケースが39例ありました。
いずれも自社開発した医薬部外品の美白成分「ロドデノール」が配合されており、累計で436万個が出荷されています。
回収費用は50億円程度になるとされ、その規模の大きさから多くの人たちの関心を集めました。
適用範囲外となる損害

ここでは、PL保険の適用範囲外となる損害を紹介します。
- 故意または重大な過失によるもの
- 仕事の終了前に発生した原因によるもの
- 納期遅延によるもの
- リコール費用(特約をつけられる場合あり)
「PL保険がおりると思ったら対象範囲外だった!」とならないよう、事前に把握しておきましょう。
故意または重大な過失によるもの
故意や重大な過失によるものは、PL保険の適用範囲外です。
つまり、あまりにも杜撰な仕事で起きた事故や、悪意をもって引き起こされた事故では、PL保険は適用されません。
PL保険の補償を受けるためには、日頃から誠実に仕事をこなす必要があります。
仕事の終了前に発生した原因によるもの
PL保険は仕事の終了後の事故は補償されますが、作業やサービスの途中で発生した事故は補償されません。
例えば、工事中に資材が落下して通行人にケガを負わせた場合、補償の適用範囲外です。
作業中の損害をカバーしたいときは、請負業者賠償責任保険へ加入する必要があります。
納期遅延によるもの
事業を行っていると、生産ラインが停止したりやり直しに時間がかかったりして、納期に間に合わないこともあります。
納期遅延で損害賠償金を請求される場合もありますが、こういったケースだとPL保険は適用範囲外です。
ただし、納期遅延による経済損害事故を補償する保険商品・特約もあるため、PL保険と併せて検討してみるのも良いでしょう。
リコール費用(特約をつけられる場合あり)
リコールによる回収費用は、PL保険では原則補償されません。
ただし、保険商品によっては特約をつけられる場合があるので、補償を手厚くしたい場合は保険会社に相談してみましょう。
まとめ

PL保険は「製造または加工された動産」が適用範囲となります。
具体的には家電製品やお菓子、ドア、窓ガラスなどです。
反対に電気やソフトウェア、自然産物などの形のないものは補償の対象外になります。
適用範囲外の損害でもリコール費用などは特約に含めることもできるため、事業内容と併せて確認してみましょう。
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