不動産売却にかかる税金は高額なので、税負担を少しでも軽くすることが重要です。
節税するためには、法人税の内容や経理処理について正しく知っておく必要があります。
この記事では法人の不動産売却益に対する税金の種類や計算方法、節税対策について解説します。
経営者や財務担当者で不動産売却や節税について考えている方は、ぜひ最後までご覧ください。
法人の不動産売却益はどう課税される?

不動産売却益にかかる税金の仕組みは、法人と個人とで大きく異なります。
まずは、法人の不動産売却益に対する税制の基本を見ていきましょう。
法人の売却益は「事業所得」として課税される
法人の不動産売却益は、事業所得として法人税等が課税されます。
個人の場合、不動産売却益は給与所得などと分けて計算する「分離課税」ですが、法人は他の事業所得と合算される「総合課税」です。例えば不動産売却益が5,000万円、事業所得が1億円だった場合、合算した1億5,000万円が課税対象となります。
収入だけでなく損金も一緒に計算されるため、他の事業で赤字が出た場合は不動産売却益と相殺することが可能です。
法人にかかる税金の種類と税率
不動産売却益を含む事業所得への課税の種類として、法人税等が挙げられます。内訳は以下の4種類です。
税金の種類 | 内容 | 税率 | 計算式 |
---|---|---|---|
法人税 | 法人が事業で得た所得に対して課せられる国税 | 23.2%(資本金1億円以下の中小法人の場合、800万円の部分まで15%) | 法人税 = 所得 × 法人税率 – 控除金額 |
法人事業税 | 法人に事業所得に対して課せられる地方税 | 法人の区分や所在地の都道府県によって異なる | 法人事業税 = 所得 × 法人事業税率 |
法人住民税 | 法人所在地の自治体に納める地方税 | 法人税割は都道府県ごと、均等割は法人の資本金や従業員数によって異なる | 法人住民税 = 法人税割 + 均等割 |
地方法人税 | 地域間の財政調整を目的に制定された国税 | 法人税 × 10.3% |
地域や事業規模などによりますが、法人税等の実効税率(実質的な税負担率)は30~35%程度が目安です。
上記に加えて、課税事業者は建物部分に消費税が課税されます。
不動産売却益の計算式

不動産売却にかかる税金を正確に把握するには、課税対象となる「不動産売却益」の計算方法を理解しておく必要があります。
単純に売却価格と購入価格の差額を求めるのではなく、減価償却や売却経費も考慮したうえで計算します。
ここからは、具体的な税額の計算式を解説します。
計算式は「売却益=売却価格-帳簿価格-売却費用」
法人の不動産売却益は、以下の式で算出されます。
売却益 = 売却価格 − 帳簿価格 − 売却費用
このうち「帳簿価格」とは、物件の取得価格から、これまでに計上した減価償却累計額を差し引いた金額(簿価)を指します。建物は毎年一定の割合で価値が減っていくとみなされるため、帳簿上の評価額も徐々に減っていく仕組みです。
一方で、土地は減価償却の対象外となるため、取得価格のまま計上されます。
また、売却にかかった費用には、仲介手数料や登記費用、広告費、測量費などが含まれます。以下は、主な取得費・売却費用の一覧です。
取得費 | 物件購入価格、不動産取得税、登録免許税、仲介手数料、リフォーム費用、固定資産税(清算分)など |
---|---|
売却費用 | 仲介手数料、広告費、登記費用、測量費用、ローン一括返済手数料など |
建物の減価償却と土地の非償却性も考慮する
建物は減価償却資産に該当し、取得価格を耐用年数にわたって費用計上していきます。一方、土地は非減価償却資産のため、減価償却の対象外です。
法人が所有する建物の減価償却方法は、原則として「定額法(毎年一定額を費用として計上する方法)」が適用されます。
ただし、平成19年4月より前に取得した資産については、旧定額法・定率法が適用される場合があります。具体的な処理方法については、税理士に確認しましょう。
法人の不動産売却で活用できる節税方法

ここからは、法人の不動産売却で活用できる節税方法を紹介します。
それぞれの節税方法をうまく活用して、損のない不動産売却をしましょう。
節税方法① 不動産売却益を他の損失と相殺する
法人の不動産売却益は、他の事業と損益通算できます。
事業収益が赤字であれば、不動産売却益との損益通算により非課税となる可能性もあります。
例えば、役員の退職金支給と不動産売却のタイミングを合わせれば、税負担の軽減が可能です。
節税方法② 設備投資や事業拡大に回す
不動産売却で得た利益を設備投資や新事業の立ち上げに活用すれば、節税しつつ将来の成長につなげられます。
特に、中小企業が活用できる「中小企業経営強化税制」や「中小企業投資促進税制」は、設備投資により大きな節税効果を得られる可能性があります。これらの制度では、対象設備の取得に対して即時償却または税額控除(7~10%)が適用可能です。
- 160万円以上の機械装置(製造業など)
- 70万円以上のソフトウェア
- 30万円以上の器具備品(複数台でも可)
これらの制度を利用するには、「経営力向上計画」の申請・認定や「認定支援機関(税理士など)」の確認書が必要になります。また、制度は年度ごとに改正されるため、適用タイミングや対象設備を事前に確認することが重要です。
売却益をそのまま納税に充てるのではなく、将来への投資に変えることで、節税と成長の両立を図りましょう。
節税方法③ 利益確定日のタイミングを調整する
法人の不動産売却における利益(売却益)の確定日は原則として「不動産の引渡日」ですが、以下の要件を満たす場合、例外的に「売買契約日」を確定日として認める場合があります。
- 売買契約に基づいて物件のリスク(損壊・滅失リスク)や経済的利益の移転が完了していること
- 代金支払も実行済みであること(または支払日が到来している)
- 買主による使用収益の実態が契約日から発生していること(登記や鍵の引渡し等)
この制度を利用し、他事業での損失が大きい年度に利益確定日が来るよう調整すれば、通常より節税できる可能性があります。
ただし、上記はあくまで特殊なケースなので、必ず税理士などの専門家と相談のうえで判断しましょう。
まとめ:不動産売却時は戦略的な節税対策が大切

法人の不動産売却益は「売却価格 − 帳簿価格 − 売却費用」で求められ、他の事業所得と合算して課税されます。
ただ売却するだけだと高額な税金を課せられる可能性があるため、設備投資にかかる支出と合算するなど、計画的な節税対策が重要です。
税理士などとも相談し、適切な経理処理をしつつ節税の戦略を立てましょう。
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