会社の利益に課税される代表的な税金は法人税です。会社は定められた時期までに決算を完了させたうえで法人税申告書を作成して納税額を計算し、納期限までに法人税を納める必要があります。
期限後に納付すると、延滞税などを加算して支払わなければいけません。そのため、法人税の申告期限に関しては詳しく理解しておくことが重要です。
また、年1回の申告書の作成や納税以外に、中間納付が求められる場合もあります。
そこで今回は、法人税の納税に関する基礎知識について徹底解説します。
納税の基礎知識!法人税の支払時期を把握する
会社が利益を上げた場合に課税される国税は、法人税です。
法人税の課税所得(※)は、売上や受取利息などの収益から、消耗品費や旅費交通費、減価償却費などの経費である損金を引いて求めます。
会社は、税法上、少なくとも年1回決算を行って法人税の申告書を作成することが必要です。(※年間収入から経費である損金を引いたものを課税所得という)
収益(売上・受取利息など) - 経費(消耗品費・旅費交通費・減価償却費など) = 課税所得
法人税の申告書提出期限は、事業年度終了日から2カ月以内で、法人税の納期限も同様とされています。
事業年度とは、会社が定めた会計期間のことで、法人税法においてもこの事業年度が課税対象となる期間です。暦年単位とされている個人の所得税計算の対象期間とは違い、自由に定めることができます。
たとえば、事業年度終了日が3月31日の場合、5月31日が申告書提出期限であり納税の期限ということです。6月1日になると2カ月後になってしまうため納期遅れとなりますので注意が必要です。
しかし、規模が大きい会社になると2カ月以内に決算を完了して申告書を完成させることが大変になるケースが多いです。大企業の場合は取引先も多く、複雑な取引が増える傾向にあります。決算書の作成に必要な事務作業は多くなるでしょう。
また、会社の利益は決算書を完成させるだけでなく、株主総会で決算の承認を得ないと確定させることができません。決算書を完成させて株主総会まで終わらせると2カ月では準備期間が足りないというケースは珍しくないといわれています。
さらに、金融商品取引法の規定により、東京証券取引所などに上場している会社は、決算書について監査法人などの会計専門家による会計監査を受けることが義務付けられています。
会計監査とは、専門家が決算書の決められたルールに従って作成されていることや個々の取引が事実に基づいていることをチェックする手続きです。監査人は監査が終了すると意見書を会社に対して提出することになっています。
これらの必要な手順を踏んでいくと申告書作成や納税が2カ月を超えてしまう可能性があります。そういった場合には申告期限の延長をすることができます。制度の名称は「申告期限の延長の特例」です。
この特例で求められている延長期間は1カ月となっています。特例の利用にあたっては申請が必要です。ただし、一度申請すれば翌事業年度以降も自動的に延長が認められます。
納税における2つの注意点
納税の際に気をつけて頂きたい点が2つあります。
2つの注意点
- 定款の内容
- 納期限の延長は許されていない
定款は会社の事業内容などを定める基本的なもので、会社法により法人設立時に定款を作成しておくことが求められます。
定款で2カ月内に決算を完了させるとしている場合は、2カ月を超えてしまうと会社法の規定に反することになります。申告期限の延長をしたい場合は、定款も3カ月以内に決算を行うとしておくようにしましょう。なお、定款の変更に際しては株主総会の決議が必要となっています。
2つ目は、申告期限の延長を行ったとしても納期限の延長までは許されていないことです。特例を利用することによって申告期限を延長することはできますが、法人税の納付期限は2カ月以内のままです。
そのため、延長を行って申告書を3カ月後に提出すると同時に法人税を納付する場合は、1カ月納税が遅れたことになってしまいます。そういったケースでは、利子税の負担が求められます。
利子税を支払わないようにするためには、事業年度終了日までに見込納付をしておくことで回避可能です。見込納付とは、申告書の提出前に概算で法人税を算出して納税することです。
概算ですので、確定税額とは一致しない可能性があります。見込納付税額と確定税額との差額は、実際に申告書を提出した時点で過不足精算を行う仕組みです。
見込納付による納税額が確定税額よりも多かった場合は還付してもらえます。ただし、還付を受ける場合は、別途、更正の請求手続きを行うことが必要です。不足していた場合は差額について追加納税を行います。
見込納付を行った金額に関して利子税は課税されませんが、不足額については利子税の負担が発生することになっています。
中間納税が必要になるケースとは?
会社が法人税法上の所得を得た場合、原則として年1回申告書を提出して納税することが必要です。しかし、場合によっては、年1回の納税以外に中間申告・納税を行う必要があります。
中間申告が義務付けられる条件は、前事業年度の年間法人税が20万円を超える場合です。条件に該当する会社は、事業年度の途中で一定の計算に基づく法人税額を納めることが求められます。
前事業年度の税額が20万円以内の場合は、原則通り年1回の申告と納税を行えば問題ありません。
中間申告の支払対象となる所得は、事業年度前半6カ月の分についてです。また、支払いの時期は事業年度前半6カ月を経過した日から2カ月以内とされています。
たとえば、4月1日から3月31日の1年間を事業年度としている会社の場合、4月1日から6カ月を経過した日である10月1日から2カ月以内ということになります。そのため、中間納税額を11月30日までに納付することが必要です。
中間納税額の計算方法
中間納税額を求める方法としては2つの方法が認められているので、それぞれご紹介します。
予定申告方式
予定申告方式では、前事業年度の納税額を基礎として中間納税額を求めます。具体的には、前事業年度に納付した確定税額の半額です。この方法によれば、課税事業年度の所得は問われません。
メリット | 課税事業年度の法人所得を求めるために中間決算を行い、 半年分の法人課税所得や税額計算を行う手間をかける必要がない |
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デメリット | 課税対象となる事業年度の半年分の所得に対応する税額より、 多い税負担が生じる可能性がある |
前事業年度の確定税額が20万円を超える会社のなかには、中間決算を行う事務作業が負担となる中小企業なども多いです。そういった会社の場合、納税のために決算を行う必要がない予定申告方式を選択することは有効でしょう。
デメリットに関して、前事業年度の売上が好調で多額の法人税を納付し、課税事業年度の前半については業績不振だという場合です。事業年度の後半も業績が回復しなければ事業年度終了後に確定する税額は少額になる可能性があります。
赤字になれば法人税額はゼロです。そうなると、前事業年度に基づく予定申告方式による納税は資金負担が大きくなってしまいます。
この場合でも、事業年度終了後の確定申告により多く納税した金額は還付されますが、納める必要がなかった資金が還付を受けるまでの約半年間手元からなくなってしまう点もデメリットと言えます。
仮決算方式
仮決算方式とは、事業年度前半について事業年度終了後と同様の方法で決算を行い、6カ月分の課税所得と法人税額を求める方法です。この方法を選択することによって、中間納税対象期間である事業年度の前半6カ月分の課税所得に対応した納税額を算出できます。
メリット | 仮に前事業年度の納税額が多額だったとしても、 課税事業年度前半の所得が少なければ仮決算によって算出した 少ない税額を納税すれば済む |
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デメリット | 仮決算に伴う事務作業負担が発生すること |
デメリットに関して言うと、事業年度終了時に行う決算と申告書作成作業以外に中間納税のために同様の労力をかけることになります。
仮決算を行って中間納税する場合は、事業年度終了後に確定する税額に対して生じた差額は精算可能です。たとえば、事業年度前半の業績が好調で後半は不調だった場合などは中間納付税額の還付が発生することになります。
実務的に対応可能な場合は、予定申告方式と仮決算方式の両方で中間納税額を計算し、税負担額が小さい方法を採用して納税するとよいでしょう。
延滞税や加算税がつくケースとは?
法人税法には、延滞税や各種加算税に関する規定があります。一定の場合に該当すると、通常の法人税額に加えて延滞税や加算税を納付することが必要です。税法のルールを守っていれば避けられる税金ですので、正しく理解しておくことが必要になります。
まず、延滞税についてです。延滞税はいわゆる利息に相当する税金だといわれています。法定納期限翌日から納付する日までの日数に応じて追加で課税される税金です。
法定納期限翌日から2カ月を経過する日まで完納した延滞税の税率は、原則として年利7.3%に相当する金額とされています。ただし、特例があり、7.3%と特定基準割合+1%のいずれか低い率が適用される仕組みです。
特定基準割合は、市中金利などを参考にして決められています。具体的には、各年の前々年10月から前年9月までの各月における民間金融機関の短期貸付利率に一定の率を加算して決定する方法です。
定期的に変更される可能性があります。納期限翌日から2カ月を経過した日より後に納付する場合は、延滞税の適用利率がさらに上がります。原則は年利14.6%に相当する額で、特例は14.6%と特定基準割合+7.3%のいずれか低い率です。
延滞税が生じる主なケースは以下の3つがあげられます。
- 原則で定められている事業年度終了後2カ月以内に完納できない場合
- 期限後修正を行ったことなどにより納期限後に追加納税を行う場合(※追加納税分のみ対象)
- 税務署による更正や決定の処分を受けたことにより納税する場合
税務調査などにより更正や決定の処分を受けると追加納付を命じられることになります。この場合も、必然的に納付期限を超えて法人税を納めることになりますので、延滞税の負担が生じます。
続いて加算税をみていきましょう。
4つの加算税
続いて加算税です。加算税は追加課税のことで、本税や延滞税に加えて負担する必要があります。主なものとしては無申告加算税や過少申告課税、不納付加算税、重加算税の4つがあげられます。
4つの加算税
名称 | 概要 | 加算% |
---|---|---|
無申告 加算税 |
申告義務があるにもかかわらず、
法人税の申告書を提出しなかった場合に課税させる罰則税。 |
自主的申告:5%
納税額50万円以下:10% 納税額50万以上:15% |
過少申告 加算税 |
申告書を提出して納税を行っていたとしても、 納税計算に間違いなどがあり 本来納めるべき税額が少なかった場合に課税される。 |
自主的納付:5% 税務署からの告知有:10% |
不納付 加算税 |
源泉所得税を納付期限までに 納付しなかった場合に課税される税金。 会社は、従業員に給料を支払った都度、 一定の所得税を源泉徴収して納税する義務がある。 |
自主的納付:5% 税務署からの告知有:10% |
重 加算税 |
所得があることについて仮想隠ぺいして申告しなかった場合や、 過少申告した場合に適用される罰則税。 |
過少申告:35% 不納付 :35% 無申告:40% |
見て頂くとわかるように、自主申告であれば加算%は小さいため、わかった時点で申告・納税するようにしましょう。
法人税の支払い忘れは要注意!支払時期を守る
会社が利益を上げると、その金額に応じて法人税を負担する必要があり、法人税の確定申告書の提出と納税が必要です。
申告書の提出に関しては、申告書提出期限の特例適用を受けることによって1カ月の延長が認められます。ただし、納税額の支払時期については延長に関する規定はなく、原則は年1回の負担が生じます。
また、条件によっては中間納税を含めて2回の納税が必要です。法人税を納付する資金が不足して納税できない場合は、利子税や延滞税、場合によっては加算税が課されることになり、余分な税負担が生じてしまいます。
そういった事態を避けるためには、あらかじめ法人税額を予想して資金繰りをしておくことが大切です。税負担額を考慮して資金繰りをすることによって納付期限を守って納税することが可能になります。
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