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サラリーマンが法人設立で節税するメリット7選!条件や注意点を解説

サラリーマンが法人化で節税できる基準は?収入目安と得られるメリットについて

サラリーマンが法人設立で節税するメリット7選!条件や注意点を解説

副業や投資などで高所得を得ているサラリーマンは、法人化によって節税できる可能性があります。

ただし、具体的な収入目安や法人化にかかるコストなど、法人化にあたって押さえておくべき知識も少なくありません。

この記事ではサラリーマンが法人設立で節税するための条件や注意点、具体的な手順を解説します。

「具体的な節税対策が知りたい」「法人化して節税できる収入目安を知りたい」といった方は、ぜひ参考にしてください。

サラリーマンが法人設立するメリット7選

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サラリーマンが法人設立で得られるメリットは、次の7つです。

  1. 法人税を適用できる
  2. 役員報酬で利益圧縮ができる
  3. 給与所得控除が使える
  4. 経費として認められる範囲が広がる
  5. 赤字を10年間繰り越せる
  6. 消費税の免税期間がある(設立後2年間)
  7. 相続税の軽減ができる

それぞれ詳しく解説します。

①法人税を適用できる

サラリーマンにかかる「所得税」が超累進課税である一方、法人にかかる「法人税」は定率課税のため、法人化することで節税できる場合があります。

以下は、法人税と所得税の税率の違いです。

課税所得金額 所得税の税率 法人税の税率
195万円以下 5% 原則23.2%
※中小法人(資本金1億円以下の法人)は800万円の部分まで15%
195万円超〜330万円以下 10%
330万円超〜695万円以下 20%
695万円超〜900万円以下 23%
900万円超〜1,800万円以下 33%
1,800万円超〜4,000万円以下 40%
4,000万円超 45%

法人税は最大でも23.2%ですが、所得税は最大で45%まで上がります。各種控除など他の要因にもよりますが、一定の収入を超えると法人税のほうが税負担を軽減可能です。

②役員報酬で利益圧縮ができる

役員報酬は損金として計上できるので、事業の利益を圧縮可能です。

法人化した場合、自分や家族に役員報酬を支払うことで、法人に対する課税を軽減できます。

ただし、役員報酬を損金として計上するためには、以下いずれかの基準を満たす必要があるので注意しましょう。

  • 定期同額給与(毎月同額を支給する)
  • 事前確定届出給与(金額等を事前に税務署に届け出る)
  • 業績連動給与(業績と連動して支給する)

また、役員報酬には受け取った人には個人として所得税が課税されるため、法人と個人それぞれで税負担のバランスを考慮する必要があります。

③給与所得控除が使える

先に解説したとおり役員報酬には所得税がかかりますが、給与所得控除によって税負担を軽減できます。

給与所得控除とは、給与を受け取った際に給与収入から一定の金額を差し引ける制度を指します。具体的な控除額は以下のとおりです。

給与等の収入金額 給与所得控除
162万5,000円以下 55万円
162万5,000円超〜180万円以下 収入金額×40%-10万円
180万円超〜360万円以下 収入金額×30%+8万円
360万円超〜660万円以下 収入金額×20%+44万円
660万円超〜850万円以下 収入金額×10%+110万円
850万円以上 195万円(上限)

例えば副業で1,000万円の売上があるとき、法人化して役員報酬を500万円に設定したとします。給与所得控除は「500万円×20%+8万円=144万円」なので、個人としての課税所得は「500万円-144万円=356万円」です。

法人化しなければ1,000万円がそのまま課税対象となるところ、法人化後は500万円に法人税、356万円に所得税という課税関係になるため、全体で見れば節税につながります。

④経費として認められる範囲が広がる

法人化すると、個人事業主のときより経費の範囲は大きく広がります。

以下は、経費にできる項目の代表例です。

  • 経営者本人の給与・退職金
  • 家族への給与・退職金
  • 生命保険料や健康保険料(法人契約に限る)
  • 家賃(社宅制度を利用した場合)
  • 出張手当
  • 健康診断にかかる費用
  • 福利厚生にかかる費用
  • 慶弔費

経費を最大限活用すれば、法人化前より大きく節税できる可能性があります。

⑤赤字を10年間繰り越せる

法人化すると事業で赤字が出た際の損失を、最大10年間繰り越せます。個人事業主でも損失は繰り越せますが、最長で3年間しか繰り越せません。

損失を翌期に繰り越すと利益から損失を相殺でき、赤字が出た事業年度以降の税金を節税可能です。長期間にわたって所得を減らせるのは、法人化する大きなメリットといえます。

ただし、個人事業主で抱えていた赤字は法人化しても引き継がれない点は注意しましょう。

⑥消費税の免税期間がある(設立後2年間)

法人化は法人税だけではなく、消費税も節税できる場合があります。

通常、課税売上高が1,000万円を超えると、課税事業者となって消費税を納税しなければなりません。

しかし、資本金1,000万円未満の新設法人は、2年間は納税義務が免除されます。

ただし、インボイス制度に登録する場合は課税事業者になる必要があるので、消費税免除の恩恵は受けられないため注意が必要です。

⑦相続税の軽減ができる

財産や不動産を多く持っているサラリーマンは、財産を法人に移転することで相続税の節税対策になります。

なぜなら相続税は「個人」が所有する財産に課税されるものであり、「法人」に移すことで相続税の対象外になるからです。

相続税の税率は最大55%と非常に高いことから、節税効果は非常に大きいといえます。

ただし事業の実態がなく節税対策として法人設立するのが明確な場合、税務署から認められない可能性があります。

サラリーマンが法人化で節税効果を得られる収入の目安

サラリーマンが法人化で節税効果を得られる収入の目安

ここでは法人化で節税効果を得られる、収入の目安を解説します。

副業の課税所得が900万円を超えたとき

サラリーマンの副業で課税所得が900万円を超えるようなら、法人化のタイミングといえます。

課税所得が900万円を超えると所得税は33%ですが、法人税なら最大23.2%です。

法人住民税など関連する税を含めても30%前後で収まることから、課税所得が多いサラリーマンほど大きな節税効果を得られるでしょう。

副業の年商が1,000万円を超えたとき

サラリーマン副業の年商が1,000万円を超えたときも、法人設立の検討タイミングです。

年商が1,000万円を超えるとその2年後から課税事業者となり、消費税の申告と納税義務が発生します。

しかし、法人化すると設立2期目までは2年前の売上がない事業主として、消費税の納税義務を免除されます。

注意点として、消費税の納税義務が免除されるためには、資本金が1,000万円以下でなければなりません。また設立1年目の前半6ヶ月の売上や給与支払額が1,000万円を超えた場合、2期目から消費税を納めることになるので注意が必要です。

本業と合わせて年収700~800万円を超えたとき

事業や不動産投資などとあわせてサラリーマンの年収が700〜800万円を超えたら、資産管理会社を設立することで節税になる可能性があります。

資産管理会社とはプライベートカンパニーとも呼ばれ現金や不動産、有価証券などを保有する人が、資産の管理・運用を目的に設立する法人のことです。

前述したとおり、法人税率は法人住民税を含めても最大30%程度で済むことから、個人に課せられる所得税より税負担を抑えられるという仕組みです。

節税目的で法人設立する際の注意点

法人設立にはさまざまメリットがある一方、注意すべき点も少なくありません。

ここからは、事前に押さえておくべきポイントを解説します。

法人設立にコストがかかる

サラリーマンが個人事業主として働いてもコストは発生しませんが、法人化にはコストがかかります。

法人設立に必要な費用の一例は、次のとおりです。

  • 会社の設立登記費用
  • 定款にかかる費用
  • 会社印鑑や印鑑証明書などにかかる費用
  • 資本金
  • 顧問税理士への報酬

株式会社の設立には登録免許税などで20万円〜30万円は必要です。また、法人住民税や各種事務費用、顧問税理士を雇う場合はその報酬など、年間で30万~100万円以上かかる可能性があります。

事務作業の手間が増える

法人化することで、確定申告や決算作業といった頻雑な事務作業が多くなります。

法人決算は自分で行うこともできますが、必要以上に時間がかかるためサラリーマンの仕事をしながら事務作業を進めるのは大変です。

節税効果を高めるためには専門的な知識が欠かせないことから、税理士に依頼することも検討してみましょう。

社会保険料の負担が増える

法人化し、給与や役員報酬を支払う場合、たとえ自分1人しかいなくても社会保険料を支払われなければいけません。

サラリーマンの場合、勤務先でも社会保険に加入しているため、2か所で支払うことになります。また、社会保険料は会社と本人で半分ずつ負担しますが、自分の会社であれば実質的に全額負担していることと同じです。

対策としては、役員報酬をギリギリまで低くするなどの方法があります。ただし、不自然な役員報酬設定は税務署や年金事務所に指摘される可能性もあるため、注意が必要です。

赤字でも納税義務がある

法人は副業サラリーマンと違って、赤字でも「法人住民税」を納める必要があります。

法人住民税とは、法人が事務所を構える地方自治体に対して納める税金ですが、この税金は「法人税割」と「均等割」で構成されます。

法人税割は「法人税額×税率」で算出する一方、均等割は資本金や従業員数などで金額が決まっているため、売上と課税に因果関係がありません。つまり、赤字でも均等割の分は必ず支払うことになります。

自治体によって基準は異なりますが、最低でも数万円は毎年課税されます。

廃業時にも費用がかかる

法人は一度設立すると、廃業時にも費用が発生します。主な費用は以下のとおりです。

  • 解散登記:3万円
  • 清算人登記:9,000円
  • 清算結了登記:2,000円
  • 公告費用:3万~4万円程度
  • 司法書士や税理士への報酬:20万~40万円程度

手続きをすべて自分でやるとしても、最低で4万~8万円程度はかかります。節税効果が見込めるからといって、安易に法人化すべきではないといえるでしょう。

本業の会社が副業禁止の場合がある

本業の会社が、副業を禁止している場合もあります。勤務先によっては、副業が原因で懲戒処分を受ける可能性もあります。

副業がバレる理由としては、社会保険料の通知や住民税の増加、またはうっかり周囲に情報を漏らしたケースなどが挙げられます。

法人化がバレないためにも、本業を続けている間は、役員報酬の受け取りを身内だけにしたり保留したりすると良いでしょう。就業規則で禁止されているのであれば、円満退職のうえ独立することも選択肢の1つです。

法人化するための具体的な手順

法人化するための具体的な手順

ここではサラリーマンが法人化するための、具体的なステップを解説します。

税理士や銀行など横とのつながりも強化できれば、法人化した後で事業を有利に進められる可能性が高いです。

ステップ①必要書類の準備

まずは、会社設立に必要な書類を準備します。

主な必要書類と取得場所は、次のとおりです。

必要書類 取得場所
登記申請書 登記所、法務局証明サービスセンター窓口、オンライン
登録免許税の収入印紙貼付台紙 法務局
定款 作成(公証役場で認証)
設立時取締役・設立時代表取締役の就任承諾書 作成
設立時取締役の印鑑証明書 区役所、コンビニエンスストア、オンライン
発起人の同意書 作成
資本金の払込証明書 作成
印鑑届出書 登記所

ステップ②定款の作成

定款とは、会社や法人の基本原則をまとめた文書のことです。

会社法上必ず記載しなければならないのが「絶対的記載事項」で、目的や本店の所在地、設立に際して出資される財産の価額または最低額などを記載します。

副業の範囲で会社を設立するならば、インターネット上のテンプレートを使って作成しても良いでしょう。

定款を作成したら、会社の本店所在地を管轄する公証役場で認証を受けます。

ステップ③資本金の入金

次に発起人個人の銀行口座に、定款に記載した資本金を入金します。

会社法上資本金は1円でも問題ありませんが、会社を安定して運営するならある程度まとまった金額を設定することが望ましいでしょう。

なお、既に口座に資本金以上の残高があったとしても、新たに振込や入金を行わなければなりません。

資本金を入金したら通帳のコピーを取り、登記の際に必要になる払込証明書を作成します。

ステップ④登記書類の作成・申請

法人登記に必要な書類を準備して、法務局で法人登記申請を行います。

窓口の場合は資本金の払込後、2週間以内に手続きしなければならないので注意しましょう。

なお会社設立日は、登記申請した日になります。

また法人登記は申請から10日ほどで完了しますが、法務局から法人登記完了の連絡は特にありません。

ステップ⑤法人口座の開設

登記申請後は会社の印鑑証明と登記簿を取得して、法人の銀行口座を開設しましょう。

法人口座を開設すれば、個人の口座と分けて、法人でのお金の動きを管理できます。

近年は違法行為に銀行口座が使われる事案が増えており、銀行側は口座開設に対して慎重です。ネット銀行は比較的法人口座を作りやすいため、銀行との付き合いにこだわりがなければネット銀行を選択しても良いでしょう。

ステップ⑥公的機関への届け出

会社の設立が完了したら、税務署や都道府県税事務所、市町村役場に法人設立届出書を提出します。法人設立届出書の提出期限は、会社設立から2ヶ月以内です。

他にも年金事務所に「健康保険・厚生年金保険新規適用届」、ハローワークに「適用事業所設置届」などの届出が必要になります。

まとめ

まとめ

この記事では、サラリーマンが法人設立で節税するメリットから注意点までを解説しました。

法人化を検討している方は現在の課税所得や売上、事業の安定性を十分に考慮してから法人化しましょう。

  • 副業の課税所得が900万円を超えたとき
  • 副業の年商が1,000万円を超えたとき
  • 本業が年収700~800万円を超えたとき

法人化はメリットが多いものの、社会保険料や源泉徴収、事務作業の負担などが増加します。

「節税対策を十分に行いたい」「本当に法人化して良いか不安」という方は、税理士やFPなどに相談してみるのも良いでしょう。

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