法人保険の種類
法人保険「第三分野」とは?損金処理・活用例・注意点まで完全解説

「第三分野」の定義とメリット、法人保険の経理処理について徹底解説

法人保険「第三分野」とは?損金処理・活用例・注意点まで完全解説

2001年から本格的に販売が開始された第三分野の法人保険は、その活用方法や経理処理の方法が注目されています。

2019年の税制改正と相まって、経営処理の複雑さに頭を悩ます方も多いでしょう。

この記事では第三分野保険の概要から活用方法、経理処理までをわかりやすく解説します。

経理処理を知ることで自社にどのような保険が必要かが理解できるので、ぜひ参考にしてみてください。

第三分野保険の基本を解説|法人保険の種類について

第三分野保険の基本を解説|法人保険の種類について

第三分野の法人保険の活用方法を知る前に、まずは概要を理解しましょう。

ここでは、第三分野保険の基本から法人保険の種類までを順番に解説します。

第三分野とは?生命・損害保険との違い

保険の第三分野保険とは、生命保険(第一分野)と損害保険(第二分野)の中間に位置する保険で、医療保険やがん保険、介護保険などを指します。

第三分野保険の歴史は浅く、1995年に抜本的な保険業の改正を経た後、2001年から保険商品の販売が開始されました。

生命保険と損害保険との概要をまとめると、次のようになります。

保険の種類 概要
生命保険(第一分野) 被保険者が死亡、または保険期間満了時に生存していた場合に保険金が支払われる保険のこと。主に生命保険会社が取り扱う。
損害保険(第二分野) 偶然の事故や災害で発生した損害に対し、保険金が支払われる保険のこと。主に損害保険会社がが取り扱う。

生命保険会社と損害保険会社は、第一分野と第二分野の兼営はできません。

一方、第三分野はそれぞれの保険会社の取扱いが可能です。

法人が加入できる第三分野保険の例

第三分野の法人保険には、次のような種類があります。

第三分野保険の種類 概要
医療保険 ケガや病気で手術・入院した際に給付金を受け取れる保険のこと。
がん保険 がんによって手術・入院した際に給付金を受け取れる保険のこと。他にも診断給付金(一時金)や通院給付金、死亡保険金などさまざまなものがある。
介護保険 寝たきりや認知症で要介護状態になった場合に給付金が受け取れる。介護保険制度の要介護度に応じた「連動型」と、保険会社独自の基準に沿った「非連動型」がある。
傷害保険 急激・偶然・外来の事故により、入院したり死亡したりした場合に保険金が支払われる保険のこと。
3大疾病保険 がん・急性心筋梗塞・脳卒中のいずれかに罹患した際に保険金が支払われる保険のこと。3大疾病は日本人の死亡原因の約半数を占めており、医療保険を補完する形で加入する人が多い。

第三分野の法人保険は、経営者・従業員が病気やケガに備えるための保険といえるでしょう。

掛け捨て型と積み立て型があるため、事業の状況やライフプランに合わせて選択する必要があります。

法人保険としての第三分野の活用目的とは?

法人保険としての第三分野の活用目的とは?

第三分野の法人保険は、万が一の事態に備えたり、従業員のモチベーションを高めたりと、得られるメリットは非常に多いです。

ここからは、第三分野保険の具体的な活用方法を解説します。

経営者・役員の医療リスク対策

第三分野保険を契約して経営者・役員を被保険者とすることで、病気やケガに見舞われたときの事業保障になります。

経営者が病気などで入院・介護状態などになれば、法人の信用力が低下したり売上が減少したりするリスクがあるのです。

特に日本の中小企業の経営者は高齢化が進んでおり、病気やケガをするリスクが高まっています。

医療リスク対策として第三分野保険を活用することは、重要な意味があるといえるでしょう。

勇退時の退職金

第三分野の法人保険を、経営者・役員が勇退する際の退職金代わりに現物支給するのも効果的です。

終身タイプの場合、法人で契約して保険料払込後に個人へ名義変更すると、保険料負担がゼロのまま一生涯の保障を確保できます。

例えば医療保険を法人から個人へ譲渡する際には、その時点での解約返戻金相当額で法人から個人が買い取るのがルールです。

医療保険の解約返戻金は商品によっては入院日額の10倍ほどであり、数万から数十万円になることがあります。

つまり、入院給付金が1万円なら買取金額は10万円ということです。

従業員の福利厚生

第三分野の法人保険を、従業員の福利厚生に活用する方法があります。

具体的には病気やケガの保障、退職金代わりの現物支給などです。

福利厚生が手厚い会社なら従業員に安心感が生まれ、人材の定着率が高まったり確保につながったりするのがメリットといえます。

なお、従業員の福利厚生を目的に医療保険へ加入する場合は、保険料が比較的低い「定期タイプ」がおすすめです。

税金対策

「解約返戻金相当額がない」「少額の医療保険(一生涯保障)を契約する」といった場合、以下の条件下で保険料を損金算入できます。

  1. 保険料払込期間を終身払いとする場合
  2. 保険料払込期間を短期払いにして、被保険者の年間保険料が30万円以下の場合

短期払いとは保険料の払い込みが一定期間になるもので、5年や10年などがあります。

保険料を損金算入することで、課税所得が圧迫され法人税を減少する効果が見込めます。

【2019年税制改正】経理処理の方法と特例ルール

【2019年税制改正】経理処理の方法と特例ルール

2019年10月8日以降に契約した第三分野保険では、新しい損金算入ルールが適用されます。

かつて「全損」と呼ばれた人気商品は販売が停止され、現在は最高解約返戻率に応じて資産計上や損金計上が必要になりました。

第三分野保険の経理処理は非常に複雑なので、この記事を通じて損金算入ルールと年間保険料30万円特例をきちんと理解しましょう。

第三分野保険の損金算入ルール

第三分野保険(医療保険、がん保険、介護保険など)の法人契約における保険料の損金算入ルールは、保険金の受取人や解約返戻金の有無、保険の種類、年間保険料の金額、払込方法などによって分類されます。

①法人が保険金を受け取る契約の損金算入ルール

A.保険料が全額損金算入となるケース(解約返戻金がない、またはごく僅かな掛け捨てタイプ)

保険金の受け取りが法人であり、解約返戻金がない、またはごく僅かである掛け捨てタイプの第三分野保険(例:定期型の医療保険やがん保険、保険期間が終身でも保険料を生涯払い続けるタイプで解約返戻金がないもの)の保険料は、原則として全額を支払保険料として損金算入できます。

■経理処理の例:
年間保険料が60万円の場合
借方 貸方
支払保険料 600,000円 現金・預金 600,000円
B.解約返戻金がある場合の資産計上ルール

解約返戻金がある第三分野保険の場合、一般的な定期保険の損金算入ルールと同様に、最高解約返戻率に応じて資産計上します。

最高解約返戻率は「50%以下」「50%超〜70%以下」「70%超〜85%以下」「85%超」に区分され、支払保険料の一部を資産計上し、残りを損金算入します。最高解約返戻率が高くなるほど、損金算入できる割合は少なくなります。

C.終身タイプの第三分野保険で保険料を短期で払い込む場合の資産計上ルール

終身タイプの第三分野保険(例:終身医療保険、終身がん保険)において、保険料を短期間でまとめて払い込む「短期払込(有期払込)」の契約形態は、税務上、実質的に解約返戻金が蓄積される性質を持つとみなされ、払込期間中に保険料の一部を資産計上する必要があります。

支払保険料のうち損金算入できる金額は、主に以下の計算式を用いて算出されます。

損金算入額=年間保険料×(保険料払込期間÷保険期間※)

※終身タイプの第三分野保険における「保険期間」は、税務上の解釈に基づき、「116歳 – 契約年齢」の計算式で算出します。

上記の損金算入分を差し引いた残りの金額を、「前払保険料」などの資産として計上します。また、保険料の払込期間が終了した後は、被保険者が116歳になるまで(あるいは保険期間が終了するまで)、資産計上した「前払保険料」を取り崩しながら、支払保険料として損金算入していきます。

■経理処理の例:
年間保険料60万円、払込期間5年、被保険者の契約年齢45歳の場合
損金算入額 = 600,000円 × 5年 ÷ 71年(116歳 – 45歳) = 42,253円
年度 借方 貸方
1〜5年目 支払保険料 42,253円
前払保険料 557,747円
現金・預金 600,000円
6年目以降 支払保険料 42,253円 前払保険料 42,253円

② 福利厚生として従業員等に支払われる契約の損金算入ルール

D.福利厚生費の要件を満たしている場合

保険金の受け取りが被保険者(従業員)やその遺族であり、以下の福利厚生費の要件を満たしている場合は、期間経過に応じて全額を損金算入できます。

福利厚生費として認められる主な要件

  • 全従業員への普遍的なメリットがあること:特定の役員や従業員のみに限定せず、広く従業員が利用できる制度であること。
  • 保険金の金額が妥当であること:社会通念上、常識的な範囲内の金額であること。
  • 現金以外での支給であること:原則として現物支給であり、現金や商品券など換金性の高いものでないこと。

また、税務調査で福利厚生費として認められるためには、福利厚生規定を整備しておくことが重要です。

E.福利厚生費の要件を満たしていない場合

保険金の受け取りが被保険者やその遺族であっても、福利厚生費の要件を満たさない場合は、役員や従業員への「給与」として経理処理されます。

要件を満たさない事例

  • 特定の従業員のみを対象としている場合
  • 従業員への貸付金としての性質がある場合
  • 現金や商品券など、換金性の高いものを支給した場合

この場合、給与として扱われるため、会社側では損金算入ができず、受け取った個人側では所得税や社会保険料の課税対象となります。

年間保険料30万円以下の少額特例について

2019年10月8日以降に契約した第三分野保険で、1人あたりの年間保険料が30万円以下の場合、法人保険の少額特例で経理処理をします。

複数の保険を契約している場合でも、通算した年間保険料が30万円以下なら保険料を全額損金計上できるというものです。

ただし、この特例を適用するには「保険料払込期間を通じて解約返戻金がない、またはごく僅かである」という要件を満たす必要があります。

終身タイプで短期払込の契約など、実質的に解約返戻金が蓄積されるとみなされる契約は、この特例の対象外となる場合がありますので注意が必要です。

もし通算した年間保険料が1円でも30万円を超えてしまうと、この少額特例は適用されず、通常の法人保険の損金算入ルールに従うことになりますので注意しましょう。

まとめ

まとめ

今回は、法人保険の第三分野の活用方法や経理処理について解説しました。

重要なポイントをまとめると、次のようになります。

  • 2019年の税制改正で法人保険は最高解約返戻率に応じた経理処理が必要になった
  • 第三分野保険の損金算入は保険料の払込期間などによって4つに分けられる
  • 年間保険料が30万円以下なら全額損金算入できる

第三分野保険の経理処理は非常に複雑なため、知識や経験を兼ね備えた法人のプロに相談することも大切です。

自社が抱えるリスクをカバーしながら、長期的に継続できる保険商品を選択しましょう。

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