法人保険による節税
法人保険の経理処理をわかりやすく解説!保険期間中から解約・満期まで

法人保険の経理処理をわかりやすく考えるためのポイントと具体例

法人保険の経理処理をわかりやすく解説!保険期間中から解約・満期まで

「法人保険の経理処理ってどうやるの?」
「損金算入のルールが難しすぎる」

このように考えている経営者や財務担当者の方は少なくありません。

法人保険の経理処理は複雑なので、1つずつ仕組みを理解しながら、慎重に対応することが大切です。

本記事では、法人保険の経理処理について、具体例を交えてわかりやすく解説。保険期間中から解約時・保険金受取時の処理方法まで網羅します。

法人保険は、上手に活用すれば税金対策としても効果が期待できます。適切な経理処理を行い、経営の武器として役立てましょう。

法人保険の経理処理をわかりやすく考えるためのポイント

法人保険の経理処理をわかりやすく考えるためのポイント

まずは、法人保険の経理処理を理解するために重要なポイントを解説します。

法人保険の種類を知る

法人保険にはさまざまな種類がありますが、税務上の主な区分けは以下の通りです。

法人保険の種類 主な契約形態・特徴 税務上の取扱い(保険料) 備考
定期保険 長期平準定期保険、逓増定期保険など一定期間の保障 解約返戻率に応じた損金算入(通達対応) 2019年通達により、返戻率に応じた損金割合が適用
終身保険 終身保障、貯蓄性あり 原則:全額資産計上 特に短期払(高返戻率)の場合は損金否認リスク高
養老保険 満期と死亡保険金が同額、貯蓄性あり 条件次第で「半額損金」または「全額資産計上」 受取人の設定と加入対象によりハーフタックス適用可
医療保険・がん保険など(第三分野) 疾病・入院等を補償、貯蓄性なし 従業員向け:全額損金役員向け:原則資産計上 福利厚生目的か、経済的利益かの判断がポイント

解約返戻率や貯蓄性の有無によって、経理処理の方法が異なります。まずは契約する保険がどのタイプに当たるのかを正しく把握しましょう。

経理処理の考え方を知る

経理処理とは、伝票作成や仕訳、現金管理や経費精算など資金の動きに関する一連の業務を指します。会計処理(帳簿への記帳業務)も経理処理の一部です。

法人保険の経理処理では、以下3つの観点が重要となります。

  • 保険料の取扱い…支払った保険料を「損金(費用)」にできるか、「資産計上」すべきかの判断
  • 解約返戻金・保険金の処理…解約や満期、保険事故による保険金の受け取り時など取引によって適切に仕訳する
  • 税務との整合性…経理処理と法人税上の損金算入可否が一致しているか(税務否認リスクがないかの判断)

特に保険料の取り扱いは重要です。定期保険などは保険料の一部を一定期間資産として計上する必要があり、手元資金の増減と異なる場合があります。

他にも、契約形態(契約者や受取人が誰になるか)や加入目的(福利厚生の要件を満たすかどうか)などで処理が異なるため、個別の状況に応じて適切な処理方法を把握しましょう。

法人保険の節税効果を知る

法人保険は、保険料の損金算入により課税所得の圧縮(=税負担の軽減)ができますが、恒久的な節税にはなりません。なぜなら、解約返戻金や保険金の受取時、益金として課税されるためです。

税務上、保険料によって軽減した課税額が、解約返戻金や保険金の課税額を上回ることは原則ありません。つまり、法人保険による税負担の軽減は「課税の繰延(先送り)」であり、トータルの課税額は変わらないということです。

ただし、課税の繰延自体にもメリットがあり、手元資金の確保や利益調整による財務状況の改善といった効果が期待できます。法人保険による節税効果を正しく理解し、目的に応じて活用することが大切です。

法人保険の経理処理ルールと仕訳の具体例

法人保険の経理処理ルールと仕訳の具体例

ここからは、法人保険の種類ごとに経理処理のルールをわかりやすく解説します。

仕訳の具体例も記載するので、実際の業務でもぜひお役立てください。

①定期保険の経理処理

定期保険とは、期間の定めがある生命保険です。終身保険より保険料が割安で、必要な期間だけ保障を確保できる点が特徴です。

解約返戻金(解約時に保険会社から払い戻される金銭)を受け取れる商品が一般的で、経営者の万が一に備えた事業保障資金確保や、役員の退職金準備などに使われます。

保険料の損金算入が可能ですが、最高解約返戻率に応じたルールが定められており、返戻率が高いほど損金算入が制限されます。

解約返戻率とは?
支払済の保険料総額に対する解約返戻金の割合。最高解約返戻率は、保険期間を通して最も高いときの返戻率のこと。

具体的な損金算入ルールは以下の通りです。

最高解約返戻率 資産計上期間 資産計上額 取崩期間
50%以下 なし なし なし
50%超〜70%以下 保険期間開始日から40%を経過するまで 保険料の40% 保険期間の75%経過後から終了日まで
70%超〜85%以下 保険期間開始日から40%を経過するまで 保険料の60% 保険期間の75%経過後から終了日まで
85%超 次のいずれか長い期間まで
①保険期間開始日から最高解約返戻率となる期間の終了日まで
②①の期間経過後で「(当年の解約返戻金相当額-前年の解約返戻金相当額)÷年換算保険料相当額」が70%を超える期間
保険期間開始日から10年経過するまでは「保険料×最高解約返戻率の90%」、11年目以降は「保険料×最高解約返戻率の90%」 解約返戻金相当額が最も高い金額となる期間経過後から保険期間終了日まで

※例外として、保険期間3年未満の場合、または最高解約返戻率が70%以下かつ被保険者1人あたりの年間保険料が30万円以下の場合は全損処理。

わかりやすく言うと…

  • 最高解約返戻率に応じて損金算入の割合が決まる
  • 高返戻率ほど契約期間前半の損金算入が制限される
  • 資産計上した分は取り崩し期間に分割して損金算入

保険料の経理処理例

条件

  • 保険料:年額100万円(毎年払込)
  • 保険期間:20年
  • 最高解約返戻率:80%

横スクロールできます →

時期 借方科目 貸方科目
資産計上期間中
(20年の40%経過まで=8年目まで)
支払保険料 600,000円
前払保険料 400,000円
現金・預金  1,000,000円
資産計上期間の終了後 支払保険料 1,000,000円 現金・預金  1,000,000円
取り崩し期間
(20年間の75%経過後以降=16年目以降)
支払保険料 1,640,000円 現金・預金 1,000,000円
前払保険料 640,000円(400,000円×8年÷5年)

保険料の経理処理は資産計上期間が設けられ、最高解約返戻率に応じて一定割合の資産計上が必要です。

最高解約返戻率が80%の場合、保険期間の80%経過日までは保険料の4割を資産として計上します。その後は全額を損金算入しますが、取り崩し期間(保険期間の75%経過以降)に入ると、資産として計上した分を残りの保険期間で分割し、損金に加えます。

解約返戻金や保険金の経理処理例

条件(解約返戻金受取の場合)

  • 前払保険料(累計):320万円
  • 解約返戻金:800万円
借方 貸方
現金・預金 8,000,000円 前払保険料 3,200,000円
雑収入 4,800,000円

保険金や解約返戻金の受取時は、それまで資産計上した分を取り崩し、差額を雑収入もしくは雑損失として計上します。

②終身保険の経理処理

終身保険は、被保険者が亡くなるまで保障が一生涯続く保険で、保険料を払い終えた後も保障が続くのが特徴です。

解約返戻金を受け取れる商品もあり、事業保障や相続対策、役員退職金の原資などに活用できます。

保険料の経理処理は、保険金の受取人によって取り扱いが変わります。

法人が受取人 保険料積立金(資産計上)
被保険者の遺族が受取人 給与

ただし、被保険者の遺族が受取人の場合、要件を満たすと福利厚生費となり、被保険者の所得税課税を避けられます。

福利厚生費として認められるためには、普遍的加入(特定層だけでなく全社員を加入対象とすること)や、保険料が適正であることが求められます。

わかりやすく言うと…

  • 保険金の受取人によって経理処理が異なる
  • 法人が受取人の場合は全額資産計上
  • 被保険者の遺族が受取人の場合は給与扱い
  • 一定要件を満たせば福利厚生費扱い

保険料の経理処理例

条件(法人が受取人の場合)

  • 保険料:年額100万円(毎年払込)
借方 貸方
保険料積立金 1,000,000円 現金・預金 1,000,000円

法人が受取人の場合、保険料は全額資産計上となり、課税の繰延効果はありません。

解約返戻金や保険金の経理処理例

条件(解約返戻金受取の場合)

  • 前払保険料(累計):320万円
  • 解約返戻金:800万円
借方 貸方
現金・預金 8,000,000円 前払保険料 3,200,000円
雑収入 4,800,000円

保険金や解約返戻金の受取時は、それまで資産計上した分を取り崩し、差額を雑収入もしくは雑損失として計上します。

③養老保険の経理処理

養老保険とは、保険期間の定めがあり、死亡や高度障害状態になったときは死亡保険金が、満期まで生存すると満期保険金が受け取れる商品です。

保障と貯蓄の両方を兼ね備えており、事業保障や退職金準備に使われます。

保険料の経理処理は、保険金の受取人によって下記のように変わります。

受取人 保険料の経理処理
死亡保険金:法人
満期保険金:法人
保険料積立金
死亡保険金:被保険者本人または遺族
満期保険:被保険者本人または遺族
給与
死亡保険金:被保険者本人または遺族
満期保険金:法人
福利厚生費と保険料積立金で1/2ずつ計上

死亡保険金を被保険者本人または遺族、満期保険金を法人の受取にすることで、福利厚生費として半額損金算入が可能です。この制度を利用し、「福利厚生プラン」や「ハーフタックスプラン」という名前で売り出されるケースが一般的です。

ただし、福利厚生費として認められるためには、先述した普遍的加入などの要件を満たす必要があります。

わかりやすく言うと…

  • 保険金の受取人によって経理処理が変わる
  • 半額損金算入が可能だが、福利厚生として認められるためには全社員の加入などが必要

保険料の経理処理例(ハーフタックスプランの場合)

条件

  • 保険料:年額100万円(毎年払込)
  • 死亡保険金の受取人:被保険者本人またはその遺族
  • 満期保険金の受取人:法人
借方 貸方
保険料積立金 500,000円
福利厚生費 500,000円
現金・預金 1,000,000円

ハーフタックスプランに該当するときは、保険料のうち1/2を保険積立金として資産計上、1/2を福利厚生費として損金算入します。

保険金・解約返戻金の経理処理例(ハーフタックスプランの場合)

条件

  • 保険金:1,000万円
  • 保険料積立金:500万円
借方 貸方
現金・預金 10,000,000円 保険料積立金 5,000,000円
雑収入 5,000,000円

満期保険金を受け取った場合、保険料積立金を取り崩し、差額を雑収入として計上します。

死亡保険金や解約返戻金の受取時も考え方は同じで、差額を雑収入もしくは雑損失として計上します。

④第三分野(医療保険、がん保険など)の経理処理

第三分野とは、生命保険(第一分野)や損害保険(第二分野)に当てはまらない保険の種類です。医療保険やがん保険などが当てはまり、福利厚生目的での契約が一般的です。

保険料の経理処理は、契約内容・受取人・被保険者の関係により、損金算入の可否や範囲が異なります。

解約返戻金がある場合 定期保険の経理処理に準じる
役員・従業員が被保険者、保険金受取人が法人 原則として全額損金算入可能
役員・従業員が被保険者、本人または遺族が保険金受取人 福利厚生の要件を満たすことで全額損金算入可能(満たさない場合は給与扱い)
終身タイプで短期払い 一部損金算入(年間保険料が30万円以下なら全額損金算入)

注意すべきなのは、終身タイプで短期払いをするときの経理処理です。短期払いとは、本来の払込期間より短時間で保険料を納める方法です。

短期払いをする場合、保険料のうち「年間保険料×払込期間÷保険期間」で計算した金額を損金算入し、残額を資産計上します。終身タイプなので保険期間は本来定まっていませんが、この計算では「116歳-契約年齢」が基準となります。

払込期間の終了後は、116歳になるまで上記で計算した金額を損金算入しつつ、資産計上分を取り崩します。

わかりやすく言うと…

  • 契約内容・受取人・被保険者によって損金算入の方法が異なる
  • 解約返戻金があれば定期保険と同じ経理処理
  • 定期タイプなら全額損金算入が可能
  • 終身タイプで短期払いの場合、税務上のルールに従い損金算入の金額を計算

保険料の経理処理例(終身タイプ・短期払いの場合)

条件

  • 保険料:年額100万円(毎年払込)
  • 受取人:法人
  • 保険期間:終身
  • 払込期間:5年(短期払い)
  • 契約年齢:50歳

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時期 借方科目 貸方科目
払込期間中(1~5年目) 支払保険料(損金処理) 75,757円
前払保険料(資産計上) 924,243円
現金・預金 1,000,000円
払込期間終了後(6年目以降) 支払保険料 75,757円 前払保険料 75,757円

上記の場合、払込期間中は保険料のうち「1,000,000円×5年÷(116歳-50歳)=75,757円」が損金算入、差額の924,243円が資産計上となります。

払込期間の終了後、支払保険料と同額で前払い保険料(資産計上分)を取り崩します。

給付金受取時の経理処理例

条件

  • 入院給付金と手術給付金で50万円受取
借方 貸方
現金・預金 500,000円 雑収入 500,000円

第三分野保険で給付金を受け取った場合、その金額を雑収入として益金算入します。

まとめ:保険の種類ごとに損金算入ルールを理解することがポイント

まとめ:保険の種類ごとに損金算入ルールを理解することがポイント

法人保険の経理処理は、「保険の種類」「支払期間」「返戻率」「保険金や解約返戻金の受取」など多くの要素で判断が分かれます。</p>

定期保険や養老保険など貯蓄性がある商品は資産計上が前提となり、節税効果を得るためには、返戻ピークの時期や損金算入割合を正しく理解することが重要です。

契約内容に応じて正確な仕訳や計上方法を実施することで、税務上のトラブルを回避し、安心して保険活用ができます。判断が難しい場合は、税理士への相談を早めに行うことをおすすめします。

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