法人にとって寄付は、社会貢献になるのはもちろん、節税メリットも非常に大きいのが魅力です。
ただし寄付金には種類があり、場合によっては節税につながらない場合もあります。
この記事では、法人が寄付することの節税効果と注意点をわかりやすく解説します。
「税金対策のために寄付を検討している」という経営者の方は、ぜひ参考にしてください。
法人の寄付は一定の節税効果がある

結論から伝えると、法人の寄付は一定の節税効果が見込めます。
全額もしくは一部を損金算入できるため、課税所得を少なくして法人税を減らすことが可能です。
他にも、税額控除によって税金自体を減らせる場合もあります。
寄付先の種類と法人の節税効果

法人の寄付金には5つの種類があり、節税効果も異なります。
それぞれどのような制度内容なのか、詳しく解説していきます。
①国や地方公共団体
国や地方公共団体への寄付は、全額を損金算入できます。
例としては、災害発生時の義援金や、公共施設への寄付などが挙げられます。
企業の社会的責任(CSR)として行われるケースも多く、地域社会との信頼関係構築や企業イメージの向上になる点もメリットです。
②指定寄付金
指定寄付金とは、公益法人などが募集する寄付のうち、教育や科学の振興、文化の向上などに寄与し、緊急を要するものです。財務大臣が指定します。
具体的には、赤い羽根共同募金やオリンピックの開催、国宝や重要文化財の修復などへの寄付が挙げられます。他には私立学校の教育研究や、国立大学法人の教育研究なども含まれます。
国や地方公共団体への寄付金と同様に、寄付金を全額損金算入できるので、大きな節税効果が見込めます。
③特定公益増進法人など
特定公益増進法人とは、教育または科学の復興、文化の向上や社会福祉への貢献など、公益の増進を目的に運営される法人のことです。
独立行政法人や日本赤十字社、自動車安全運転センターなどが該当します。
寄付金は、特別損金算入限度額として一般の寄付金とは別枠で損金に算入できます。特別損金算入限度額の上限は以下の通りです。
普通法人、一定の労働者協同組合、協同組合等、人格のない社団等(下記に挙げるもの以外) | (資本金などの額×事業年度の月数/12×3.75/1,000+所得額×6.25/100)×1/2 |
---|---|
資本または出資を有しない普通法人や協同組合等・人格のない社団等、非営利型の一般社団法人・一般財団法人・NPO法人(認定NPO法人を除く)などのみなし公益法人等 | 所得の金額×100分の6.25 |
特別損金算入限度額を超える部分に関しては、一般の寄付金として損金算入が可能です。
④一般の寄付金
一般の寄付金とは、ここまで紹介した「国や地方公共団体」「指定寄付金」「特定公益増進法人」以外への寄付金のことです。
神社やお寺といった宗教法人への支援金、町内会への寄付金、政治団体への寄付金が挙げられます。
損金算入限度額があり、以下の計算式で算出した金額が上限となります。
(資本金などの額×事業年度の月数/12×2.5/1,000+所得額×2.5/100)×1/4
なお、損金算入限度額を超える部分は損金算入の対象外となります。
⑤企業版ふるさと納税
企業版ふるさと納税(または地方創生応援税制)は、地方公共団体が行う地方創生の取り組みに対する寄付制度です。
寄付金額のうち、最大60%を税額控除できます。
法人住民税 | 寄付金額の40%を税額控除(上限:法人住民税法人税割額の20%) |
---|---|
法人税 | 法人住民税で40%に達しない場合、残額を税額控除(上限:寄付額の10%かつ法人税額の5%) |
法人事業税 | 金額の20%を税額控除(上限:法人事業税額の20%) |
損金算入による節税効果※と合わせて、最大で寄付金の約90%まで税負担を軽減できます。
※地方公共団体への寄付に当たるため全額損金算入。法人関係税を約30%として計算。1,000万円を寄付した場合、損金算入で「1,000万円 × 30% = 300万円」の節税、税額控除で「1,000万円 × 60% = 600万円」の節税、合計で900万円の節税になる。
手続き上の注意点

法人の寄付は大幅な節税効果を見込めますが、いくつか注意点もあります。
「思ったより節税できなかった」といったことが起こらないよう、事前に押さえておきましょう。
損金算入できるのは寄付金の支払い後
実際に損金算入となるのは、寄付金の支払い後のみです。
したがって「寄付金の支出が確定している」「寄付先と調整が完了している」という場合でも、支払い前なら損金算入はできません。
例えば、決算月が3月の場合、3月31日までに支払った寄付金は当該年度の損金として算入できますが、4月1日以降に支払うと翌年度の扱いとなります。
法人の経費の多くは「取引が発生したタイミング」で計上しますが、寄付金に関しては現金主義での計上になる点に注意しましょう。
支出によっては「寄付金かそれ以外か」の判断が難しい
支出によっては、「寄付金かそれ以外か」の判断が難しいケースがあります。
例えば、以下のようなケースは、寄付までの経緯や相手先との関係性、事業との関わりなどを慎重に考慮する必要があります。
社長の子供が通う大学に寄付をした場合 | 個人的な寄付金と判断される可能性がある。 |
---|---|
協賛金を支出した場合 | 協賛企業として読み上げがあると広告宣伝費となる場合がある。企業名が公表されなければ寄付金扱いされる可能性が高い。 |
取引先へ贈与をした場合 | 今後の事業に影響を与える可能性があり、接待交際費になる場合がある。 |
寄付になるかの判断が難しい場合は、税理士などの専門家に相談するのも手です。
内国法人で完全支配関係にある場合は節税にならない
完全支配関係にある内国法人(国内に本店や主たる事務所がある法人)への寄付は、全額損金不算入となります。
つまり、100%資本関係がある親法人と子法人の間で寄付をしても、節税にならないということです。なお、寄付を受け取った側も益金不算入となります。
なお、寄付金の益金・損金算入はありませんが、企業としての実態価値を調整するために「寄付修正」という税務処理が必要です。詳しくは税理士などに相談しましょう。
まとめ

この記事では法人が寄付をすることで得られる節税効果や計算例、注意点について解説しました。
節税を目的に寄付を行う場合は、寄付先や利用する控除を十分に検討する必要があります。
適切な手続きに則り、寄付による節税効果を最大限活用しましょう。
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