保険の税金対策
法人保険で税金対策!節税の仕組みと効果について詳しく解説

法人保険を活用した節税方法とは?損金計上のルールも合わせて解説

法人税対策

2019年6月、国税庁より法人保険の定期保険及び第三分野保険に係る保険料の取扱いについて見直しが行われ、税制改正のよる通達で法人保険に関する新たなルール案が公表されました。

法人保険の取り扱いは税制改正後の新しいルールによる運営され、当記事に関しても新ルールに基づいた解説をしております。

税制改正後の法人保険に関する新ルールについての詳細は、国税庁・金融庁・各保険会社が公表する内容を合わせてご参照ください。

決算時期が近付くにつれ、法人保険で「節税対策」をしようと考えている経営者の方は多いのではないでしょうか。

2019年度に国税庁が発した通達改正による税制改正によって、以前のような節税対策が難しくなっています。

しかし、法人保険の保険料を損金として全く算入できなくなったわけではありません。長期的な目線で節税を考えれば、税制改正後の現在でも法人保険を利用して節税対策をすることが可能です。

そこでこの記事では、「2023年最新版!法人保険の節税効果と活用方法」として、改正された新ルールに基づいた法人保険の節税効果の現状と活用方法を解説します。

なお、対面相談や保険契約に進みたい方は、保険代理店の利用がおすすめです。下記リンクから、当サイトと提携している保険総合代理店「R&C株式会社」に問い合わせられるので、ぜひご活用ください。

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当記事の監修者:金子 賢司

  • CFP
  • 住宅ローンアドバイザー
  • 生命保険協会認定FP(TLC)
  • 損保プランナー

東証一部上場企業で10年間サラリーマンを務める中、業務中の交通事故をきっかけに企業の福利厚生に興味を持ち、社会保障の勉強を始める。
以降ファイナンシャルプランナーとして活動し、個人・法人のお金に関する相談、北海道のテレビ番組のコメンテーター、年間毎年約100件のセミナー講師なども務める。
趣味はジャザサイズ。健康とお金、豊かなライフスタイルを実践・情報発信しています。

Contents
  1. 法人保険で節税対策はまだできる?知っておきたい注意点とは
  2. 2019年(令和元年)税制改正での変更点
  3. 必見!法人保険の種類別税金対策の効果
  4. 税金対策の効果が期待できる法人保険
  5. 改めて復習しておきたい法人保険による節税の仕組み
  6. 損金と返戻率を理解して法人保険の仕組みを知る
  7. デメリットも理解する
  8. 節税保険は過去にも問題に。2018年(平成30年)に起こった税制改正とは
  9. 節税対策は会社法人以外でもできる
  10. 開業医の法人税対策としておすすめの保険
  11. 個人事業主の場合はどうなる?節税は可能?
  12. 税制改正により法人保険の専門家のアドバイスがより重要に

法人保険で節税対策はまだできる?知っておきたい注意点とは

多くの経営者の方は、「法人保険での節税対策はまだできるのか?」「税制改正で節税は難しくなったのではないか?」とお考えかと思います。

結論から言えば、2023年現在も法人保険の保険料は損金に算入することができ、賢く利用すれば節税効果は期待できると言えます。

しかし、以前よりも損金取り扱いに関するルールが複雑化しているため、法人保険加入の際によく吟味する必要があります。

法人保険による節税対策について知るために、まずは現状の損金取り扱いに関するルールから簡単に見ていきましょう。

2019年(令和元年)税制改正での変更点

以前は、法人保険による節税対策は多くの経営者の方が利用していました。

支払った保険料を損金として計上することで会社の利益を圧縮し、結果として利益に対し課せられる法人税も少なくできる。

なおかつ、解約返戻金で将来的にお金が手元に戻ってくるというのが、法人保険を利用した節税の手法です。

しかし、こういった節税目的での法人保険の活用は問題視されることも多く、国税庁から指導が入ることもしばしばありました。

そしてついに、2019年に「税制改正の通達」という形で保険業界全体に対して法人保険の損金取り扱いに関する新たなルールが設けられることになったのです。

税制改正の対象となったのは、法人保険の定期保険および第三分野商品(医療保険、がん保険など)。

税制改正の大きな変更点を簡単にまとめると、「解約返戻率が高く(=貯蓄性の高い)保険ほど、契約から一定期間の間、損金として計上できる割合が小さくなった」という形です。

この新ルールについて具体的に見ていきましょう。

最高解約返戻率50%超の定期型法人保険は損金取扱いを厳格化

国税庁が出した通達による税制改正は、ピーク時の解約返戻率が50%を超える場合は保険料の一部を所定の期間に渡って資産として計上し、残りを損金に計上するという内容になっています。

資産として計上する期間はそれぞれ定められており、所定の期間が過ぎると資産計上した分を取り崩して損金に計上します。

つまり、貯蓄性が高い法人保険について、契約当初は損金に計上できる金額が少なくなってしまうのです

下記が、国税庁が発表した通達改正による最高解約返戻率50%超の場合の新たな保険料取扱一覧です。

ピーク時の
返戻率
項目
取扱
50%以下 資産計上不要(全額損金算入)
50%超
70%以下
資産計上
期間
保険期間開始~前半4割期間
※一被保険者の年換算保険料合計額が30万円以下の場合は資産計上不要
資産計上
割合
支払保険料×0.4(6割損金算入)
資産取り崩し
方法
前半3/4期間経過後から均等取り崩し
70%超
85%以下
資産計上
期間
保険期間開始~前半4割期間
資産計上
割合
支払保険料×0.6(4割損金算入)
資産取り崩し
方法
前半3/4期間経過後から均等取り崩し
85%超 資産計上
期間
① 保険期間開始~解約返戻率ピーク時まで
② 1の期間経過後において、年換算保険料に対する解約払戻金の増加割合が0.7を超える期間があれば、保険期間開始からその期間の終わりまで
③ 1または2の期間が5年未満の場合は、5年間
(保険期間10年未満の場合、保険期間の1/2期間)
資産計上
割合
当初10年間:支払保険料×ピーク返戻率×0.9
11年目以降:支払保険料×ピーク返戻率×0.7
資産取り崩し
方法
解約返戻率のピーク年度経過後から均等取り崩し

50%以上の解約返戻率は3つの区分が設けられ、返戻率が高いほど資産計上額が大きくなり、損金算入の割合が抑えられています。

(50%以下の解約返戻率の場合は、従来通り全額損金として算入することが可能。)

しかし、反対に言うと、資産計上しなければいけない期間はそれぞれ定められているものの、それを過ぎれば全額を損金として計上できるということ。

よって、加入した法人保険を解約するタイミングによっては、税制改正以前に存在したいわゆる「半損(支払保険料の半分を損金計上すること)」の法人保険と同じくらいの節税効果を見込めることもあるのです。

「この期間は損金に計上できる割合は少ないが、それを過ぎれば全額損金に。解約するまでのトータルの金額で考えれば、意外と節税効果を見込める」

このように、目先の損金計上割合ではなく、解約するまでの総合的な金額で考えれば、まだ節税効果は見込めます。

ただし、先程紹介したルールのとおり、法人保険の会計処理は以前より複雑化しているため、経営者ご自身だけで全てシミュレーションするのは困難でしょう。

そのため、法人保険加入の際には、保険会社や保険代理店のスタッフなど専門知識のあるプロに相談しながら検討することをおすすめします。

より節税効果の高い最適な保険商品を探すことができるでしょう。

法人保険の第三分野商品も改正の対象

2019年の税制改正の通達により、定期保険だけでなく「保険期間が終身かつ保険料払込期間が短期の第三分野保険商品」に関しても変更が及ぶことになりました。

第三分野の保険とは、医療保険やがん保険などを指します。

これらの法人保険は、以前は節税目的で利用されるケースが多くありました。具体的には、保険期間を終身にし、保険料の払い込みを短期で終わらせることで損金に計上できる金額を大きくする、といった手法です。

しかし、今回の税制改正によって、保険期間が終身で保険料払込期間が短期の第三分野保険商品は、年間保険料30万円までしか損金として計上できないルールに変更。30万円を超える場合には、期間に応じて損金計上が制限されます。

これを見ると、終身医療保険の短期払いは節税対策としてほとんど効果を期待できないように思えます。

しかし、短期払いの医療保険は、たとえば退職金代わりとして法人から個人に名義変更をすると、資産計上していた分の保険料を取り崩して名義変更のタイミングで損金に計上することが可能。

つまり、こちらも長期的な目線で考えれば、節税効果はまだ期待できる場合があるのです。

このように、2019年に税制改正が行われ、法人保険の損金取り扱いに関するルールは厳しくなりました。

しかし、長い目で見れば、節税効果を期待できるような法人保険はまだあります。

次は、こういった現状を踏まえて、今でも節税対策として活用できる法人保険の種類を見ていきましょう。

必見!法人保険の種類別税金対策の効果

節税効果

ここからは、現在の状況の中で節税効果がある程度見込める法人保険の保障内容について、具体的に見ていきたいと思います。

節税効果を期待できる保険の種類として、ここでは3種類の法人保険を取り上げていきます。

養老保険・年金保険

まずは、養老保険や年金保険です。

養老保険
被保険者の死亡時には死亡保険金、生存のまま契約満期を迎えた際には満期保険金が支給される法人保険のこと。

社員の福利厚生として加入すれば、支払保険料の半分を損金に計上することが可能。

年金保険
契約時に定めた時期を迎えると、所定の期間中契約者に年金が支払われる保険のこと。被保険者が年金を受取る前に死亡した場合、死亡保険金などが支払われる。

社員の福利厚生として加入すれば、支払保険料の1/10分を損金に計上することが可能。

養老保険、年金保険とも、社員の死亡保障等の福利厚生として活用する方が多いです。

また、貯蓄性に優れているため、満期保険金・年金の受取人を法人にして、社員の退職金準備を目的として活用される場合もよくあります。

特に養老保険は、社員の福利厚生や退職金の準備として活用でき、その上「支払保険料の半分を損金計上」という節税効果も期待できるため、これから再注目されると予想されています。

ただし、養老保険や年金保険で節税効果を狙うには、福利厚生を目的として加入しなければならないという点に注意。

具体的には、

  • 福利厚生規定を作成し、保険の加入目的として役員や従業員の生存退職金・死亡退職金・弔慰金の資金準備を明確に挙げている
  • 全ての役員・従業員を加入対象とする
  • 役員と従業員の大部分が同族関係者ではない
  • 契約形態は下記の通りにする
契約者 被保険者 死亡保険金受取人 満期保険金受取人
法人 役員・従業員
(原則として全員が加入)
被保険者の
遺族
法人

などの条件を満たす必要があります。特に、全ての従業員を加入対象とした場合には保険料の負担も大きく、キャッシュフローに影響を与えるリスクもあるため、注意が必要です。

長期定期保険・逓増定期保険

長期定期保険や逓増定期保険は、ある一定期間の死亡保障を目的とした生命保険です。

長期定期保険
保険期間を長期で設定できる定期保険。解約返戻率が高く、70%~90%ほど
解約返戻率のピークを迎えるのは加入後10年~30年ほどで、ピークの持続期間が長い。
契約満期を迎えた際の満期保険金はゼロ。
逓増定期保険
契約後、死亡保険金額が契約当初の5倍ほどまで増える生命保険。
解約返戻率が高く、70%~90%ほど
契約後の早い段階で解約返戻率のピークを迎えることが多い。満期保険金はゼロ。
デメリットは、保険料が高額になる傾向が多い点。

長期定期保険も逓増定期保険も、資金形成効果の高さから退職金準備や事業保障に活用されることが多いです。

解約返戻率が70%~85%の間であれば、保険期間開始~前半4割期間の間は保険料の40%を、それを過ぎれば保険料の全額を損金として計上することが可能です。

ただし、保険商品や被保険者の年齢契約期間によって解約返戻率が変わるため、加入時にしっかり確認することが重要です。

医療保険・がん保険

医療保険・がん保険を法人保険として節税効果を発揮させるためには、いくつかのパターンに分けて考える必要があります。

2019年の改正を踏まえて、法人保険としての医療保険・がん保険を節税対策として活用する方法は以下の通りです。

従業員の福利厚生として節税

従業員を被保険者として、法人保険として医療保険・がん保険に加入をすることで従業員の福利厚生に活用することができます。

従業員の福利厚生として、医療保険・がん保険といった第三分野の保険を、掛け捨てタイプの法人保険として準備すると、保険料は全額損金扱いとなり、結果的に従業員の福利厚生を充実させながら節税をすることができます

なお、第三分野の法人保険が従業員の福利厚生として認められるためには、「原則、従業員が全員加入をしていること」、「役員と従業員の大半が同族関係者ではないこと」、「福利厚生規定そそなえていること」、この3つを満たしている必要があります。これらを満たしていない場合は、法人保険は従業員の福利厚生としてみなされません。

終身タイプの短期払いの医療保険・がん保険として節税

経営者、役員、従業員を被保険者として短期払いの医療保険・がん保険に加入をした場合、一人当たり年間支払保険料30万円までは全額損金計上することができるため、金額に制限はありますが節税対策とすることができます。

また、法人保険として節税をしながら、医療保険・がん保険の払い込み満了まで保険料を負担する一方、払い込み期間満了後、法人保険から個人に名義変更をすることで個人は保険料を負担することなく、一生涯の医療保障・がん保障を手に入れることができます。

本来は、法人保険から個人に名義変更する際には、軽税的な利益の供与があったと見なされますが、法人向け保険の資産価値は、解約返戻金相当額で判断されます。

しかし、短期払いの医療保険・がん保険は解約返戻金が全くないか、あってもごくわずかなので実質、ほとんど課税されません。

税金対策の効果が期待できる法人保険

税対策効果

ここからは、税金対策の効果を期待できるおすすめの法人保険を2つ紹介します。

税金対策の効果が期待できる法人保険①:ソニー生命「特殊養老保険(無配当)」

ソニー生命
特殊養老保険
養老保険
ポイント
  • 保険金額が基本保険金額の2倍になる
  • 従業員や役員の福利厚生として活用される
  • 満期保険金は一括または年金形式で受け取り可能

節税対策効果が期待できる法人保険のひとつに、ソニー生命の「特殊養老保険(無配当)」があります。この商品は従業員や役員の福利厚生を目的として活用されるケースが多いです。

ソニー生命の「特殊養老保険(無配当)」の保険金額は、保険期間の前半は基本保障金額までの保障にとどまりますが、後半は基本保険金額の2倍になるまで毎年増加し続けるという特徴があります。

保険期間中に被保険者となる従業員や役員が死亡・高度障害状態になった場合、死亡保険金または高度障害保険金を受け取れ、無事に満期日を迎えた場合は基本保険金額(契約当初の保険金額)の2倍の満期保険金が受け取れます。

なお、満期保険金の受け取り時に、一括受取のほかにも「5年ごと利差配当付年金支払特約」を付加することで、年金形式で受け取ることも可能です。

また、基本保険金額が所定の金額以上の場合、「高額割引制度」が適用され保険料が割安になることや、解約返戻金の一定の範囲内で「契約者貸付制度」を利用できるというメリットもあります。

ソニー生命「特殊養老保険」を詳しく見る

税金対策の効果が期待できる法人保険②:マニュライフ生命「Prosperity 新逓増定期保険」

マニュライフ生命
Prosperity 新逓増定期保険
逓増定期保険
ポイント
  • 当初4年間は解約返戻金の水準をおさえ、保険料を抑えめに
  • 契約から5年経過後に保険金が増加、
    最大で当初の保険金額の5倍に

節税対策効果が期待できる法人保険として、マニュライフ生命の「Prosperity 新逓増定期保険」もあります。

この商品は、保険期間が経過していくにつれて死亡・高度障害に対する保険金額が増加していくという特徴があり、会社が成長していくにしたがって徐々に責任が重くなっていく経営者に最適な法人保険といえます。

マニュライフ生命「Prosperity 新逓増定期保険」は、基本的な特徴については一般的な逓増定期保険と変わらず、保険金が5倍にまで増加していきます。

保険期間は、第1保険期間(契約日から5年または7年)と第2保険期間(第1保険期間の翌日から保険期間満了日)のふたつに分かれており、第1保険期間経過後に最大5倍となります。

マニュライフ生命の「Prosperity 新逓増定期保険」に支払った保険料を経理処理する際、保険料の損金算入は解約返戻率の大きさによって異なります。

  • 最高返戻率が70%~85%:保険期間の前半4割は支払い保険料の4割を損金計上
  • 最高返戻率が85%以上:当初10年間は支払保険料×ピーク返戻率×0.1を損金計上

一般的に逓増定期保険は、保険金額が高額なため保険料もそれに応じて高くなる傾向にあります。

しかし、マニュライフ生命のProsperity新逓増定期保険では「低解約返戻金特則」という期間を設け、契約後4年間の解約返戻金の水準を低く設定することで保険料を抑えています。

そのため、逓増定期保険の中でも比較的加入がしやすい法人保険商品と言えるでしょう。

マニュライフ生命「Prosperity 新逓増定期保険」を詳しく見る

今回紹介した保険商品はほんの一部で、他にも節税効果を見込める保険商品は様々あります。

法人保険による節税について興味のある経営者の方は、最適な保険を探すためにも、一度法人保険のプロに相談してみることをおすすめします。

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改めて復習しておきたい法人保険による節税の仕組み

節税メリット

さて、ここまで法人保険を活用した節税の現状と、おすすめの法人保険をご紹介してきました。

ここからは、「そもそも法人保険で節税とはどういう仕組なのか」を知りたい方に向け、法人保険を活用した節税の基本的な知識について解説していきます。

ます、法人保険を活用することで期待できる節税効果は、下記の2つです。

  • 「会社の資産」に対する節税:会社が支払う法人税を節税する
  • 「経営陣の資産」に対する節税:経営陣が受け取る役員報酬などにかかる税金を節税する

法人保険による節税というと、会社にかかる「法人税」だけを減らすイメージが強いかもしれませんが、法人保険を上手に活用することで経営陣の個人資産を賢く増やすことも可能。

たとえば、役員報酬を毎月支払う代わりに法人保険を利用し、経営陣の手元に残るお金をより多くする効果が期待できます。

また、もちろん法人保険は加入してから解約するまで、死亡保障などの保障メリットを受けることが可能です。

賢くお金を貯めながら、保障メリットも享受する。それが、法人保険を利用した節税対策の優れたポイントです。

損金と返戻率を理解して法人保険の仕組みを知る

法人保険による節税対策の仕組みを理解するには、「損金」、「解約返戻金」、「出口戦略」の3つが重要です。

これらを考慮して法人保険に加入することが、賢く節税するポイントになります。

「損金」「解約返戻金」「出口戦略」それぞれを簡単に説明すると、

  • 損金:会社の費用のうち、税制上で法人税を減らすことができるもの
  • 解約返戻金:将来、法人保険を解約した際に得られるお金
  • 出口戦略:解約返戻金の活用法を考えること

法人保険で節税をする際には、これらの性質を理解した上で、うまくコントロールすることが成功の鍵となるのです。

それでは、ここから損金と解約返戻金、出口戦略について、それぞれもっと詳しく見ていきましょう。

損金

損金とは、税務上法人税を減らすことができる費用のことを指します。

法人税の課税対象となる“法人所得” = 会社の益金 – 損金
会社の費用の中でも、損金として計上できる費用と、できない費用があります。

損金として計上できる金額が大きいほど法人所得が減り、結果として法人税も小さくなります。そのため、特に法人税の節税を考える際には「損金」が大きな鍵となります。

そういった中で、法人保険は支払う保険料を損金として計上できる場合があるため、節税の方法として活用されているのです。

保険料の損金を考える際の注意点

法人保険の損金を考える際には、1つ大きな注意点があります。

それは、法人保険の種類によって保険料のうち損金計上できる割合が違い、節税効果が異なるという点。

法人保険の保険料は、必ずしも全額を損金として計上できるわけではありません。

特に現在は、先にご紹介したとおり、2019年の税制改正によって法人保険の保険料の損金計上ルールが複雑になり、法人保険のもつ特徴に応じて損金計上できる割合と期間が細かく決められています。

そのため、法人保険による節税対策を考える際には、法人保険や税務処理についての知識が豊富なコンサルタントや保険代理店のスタッフに相談するのが安心です。

ルールを十分に把握せずに法人保険に加入しても、思っていたより節税効果が出なかったということも有り得ます。そのため、加入前にプロの目でアドバイスをもらうことをおすすめします。

解約返戻金と解約返戻率

法人保険による節税を語る上ではずせないのが、法人保険解約時の解約返戻金。

貯蓄性がまったくなく解約返戻率がゼロという掛け捨て型の保険を除いて、法人保険の多くは解約返戻金があります。

だからこそ、先ほど紹介した法人保険の損金算入ルールとして「解約返戻率の最大値が高い保険ほど、損金として計上できる割合が小さい」といった、個々の解約返戻率に応じた内容が設けられた面があると言えます。

法人保険の解約返戻率は、契約時からだんだん右肩上がりに高くなっていき、最も高いピークを迎えた後に徐々に下がっていくのが一般的です。

つまり、解約返戻率のピーク時期を逃してしまえば手元に戻ってくるお金は少なくなってしまうため、解約返戻率の高い時期に解約するのがベスト。

ピーク時期を迎える早さや、ピーク時期をキープしている長さは保険商品によって異なります。また、法人保険の加入年齢や保険期間によっても違いが生まれるため、加入時に入念にチェックしておきましょう。

解約返戻率は保険商品のパンフレットに記載されていたり、保険代理店や保険会社のスタッフが各個人の年齢・保険期間に応じて返戻率の推移を出してくれたりします。

これをしっかり把握しておかなければ、損金に参入できる保険料の割合が想定と違ったり、解約するタイミングを間違えてしまい損をしたりする可能性があるため、要注意です。

法人保険の出口戦略

ここからは、法人保険による節税対策の最後のポイント、出口戦略について説明します。

出口戦略とは、解約返戻金の使い道のことを指します。

実は、法人保険の解約返戻金は受取時に益金として計上されます。益金は法人税の課税対象となるため、解約返戻金をただ受け取るだけでは法人税が増えてしまうのです。

そのようなことを避けるため、解約返戻金を受け取った際に同じだけの支出ができるように、あらかじめ返戻金の使いみちを考えておくことが重要です。

出口戦略としては、たとえば社長や役員の退職金が考えられるでしょう。また、社長が退職し、後継者に事業を譲る際の事業承継費用にも利用できます。

このような出口戦略を考える際に大切なことは、解約返戻率のピーク時期と支出が起こるタイミングをきちんと合わせることです。

解約返戻率はピーク時期を過ぎるとどんどん減少していきます。解約のタイミングが遅くなると返戻金も少なくなり、結局損をしてしまうことになりかねません。

そのようなことを避け最大限に節税メリットを享受するためには、保険商品の解約返戻率のピーク時期、ピーク期間の長さをきちんと把握してから、しっかり出口戦略を立てることが鍵になるのです。

さて、以上が法人保険で節税効果をあげるためのポイントでした。改めてまとめると、

  • 保険料を損金計上することで節税効果が生まれる
  • 法人保険の保険商品によって損金に計上できる割合が異なる
  • 解約返戻率が高いほど、大きな解約返戻金が手元に戻ってくる。しかし、解約返戻率の高い法人保険は節税効果があまり期待できない面もある
  • 解約返戻金は益金として課税対象となるため、受け取るときには出口戦略が重要

「損金」「解約返戻率」「出口戦略」をしっかり理解すること、それこそが節税対策の鍵です。

しかし、法人保険に加入した際には、節税効果や保障などメリットばかりがあるわけではありません。注意をしなければ、思わぬ損をする可能性もあります。

次の章で、節税目的に加入する法人保険についてデメリットを説明していきます。

デメリットも理解する

デメリット
法人保険を活用した節税対策には、メリットがある反面もちろんデメリットも存在します。

法人保険加入の前に以下を確認しておきましょう。

法人保険解約のタイミングによって損失も

法人保険は解約のタイミングによって返戻率が異なり、一般的に早期解約をした場合には、返戻率が低いことが多いです。

早期解約の場合、返戻率が40%以下、つまり、支払った保険料の半分以上が戻ってこないこともあり、大きな損失が出る可能性も。

きちんと節税効果をあげるために、法人保険に加入する際は返戻率が低いタイミングで保険を解約することがないか、あらかじめ入念に確認しておきましょう。

会社の資金繰りが悪化する

法人保険に加入する際には、ある程度まとまった金額を毎月あるいは毎年支払っていく必要があります。

年間500万円なら、500万円分のキャッシュが一時的になくなるというデメリットが生まれてしまいます。そのため、キャッシュフローが安定していない時期に法人保険に加入することは危険です。

まずはある程度収益の基盤が安定してから、法人保険を活用した税金対策を考え始めるのが得策だと言えます。

適していない法人保険加入は節税にならない

「とにかく節税したい」という気持ちだけで、単純に損金の割合が大きい法人保険に加入する方もいますが、これでは効果的な税金対策になりません。

保険商品によって、返戻率のピーク期間の長さや保険料の安さなど特徴は様々。そして、その特徴にもとづき「退職金の準備に適したもの」、「福利厚生に適したもの」など活用目的が異なってくるのです。

それを無視して加入してしまえば、せっかくお金を払っているのに自分には無駄な保障しか得られなかったり、戻ってくる返戻金が最大になる前に解約することになり損をすることになってしまう可能性があります。

法人保険を最大限に利用するには、節税効果だけを考えるのではなく「今自分の会社に最適な保障は何なのか?」という視点も忘れずに検討することが重要です。

以上のようなデメリットをしっかりと踏まえた上で、節税効果と保障を考えた保険選びをしていきましょう。

節税保険は過去にも問題に。2018年(平成30年)に起こった税制改正とは

2019年に行われた税制改正以前にも、何度か法人保険に関する改正が行われてきました。

今後の法人保険の動向を考える上でも、最近起こった法的な改正を知っておくことは非常に重要です。

ここでは、2018年に起こった税制改正についてご紹介します。

ニュース1.
平成30年から法人保険に関する支払調書が変更
ニュース2.
平成29年6月23日、札幌高裁が「法人負担の保険料について、名義変更後の個人の一時所得から控除することを認めない」という判決を出した

ニュース2については、近年節税方法として人気があった「低解約返戻金型逓増定期保険」の名義変更スキームで、簡単に言うと、「法人がお金を払ったのに、法人に属する個人がその返戻金をもらう」といったものです。

法人は保険料を払うことで税金対策の効果を得ることができ、個人は保険料を払わずに返戻金を手に入れることができる。法人も個人も、大きなメリットを享受できるものでした。

今まではグレーゾーンの税金対策でしたが、上記の札幌高裁の判決で、ついにメスが入る形となったのです(最高裁においても上告を棄却・不受理)。

そして、ニュース1の支払調書の変更で、今後法人保険の名義変更をすると新しい基準が適用されることになりました。こうした変化から、国税庁の姿勢が「租税回避」のための保険活用に対して厳しくなっているということが伺えます。

【お知らせ】
2021年6月25日、国税庁から「保険契約等に関する権利の評価について」の通達がなされ、法人保険を法人から個人へ名義変更する際の評価方法が変更になりました。

これまで、法人保険を名義変更した際の権利の評価方法は、原則的に「解約返戻金の額」により評価されてきました。

しかし、改正通達により、名義変更時の解約返戻金相当額が資産計上額の70%未満になる場合は、資産計上額で評価されるように変更となっています。

改正の対象となるのは以下の法人保険契約です。

  • 2019年7月8日以後に契約し、2021年7月1日以後に名義変更をするもの
  • 解約返戻金が資産計上額の7割以下となるもの

2019年7月8日以前に契約された法人保険や2021年7月1日以前に名義変更した法人保険は対象外です。

また、解約返戻金が7割超の法人保険を名義変更する際は、従来通り支給時の解約返戻金の額で評価しても問題ないとされています。

節税と租税回避

ここで出てきた、「租税回避(そぜいかいひ)」とは何でしょうか? 厳密には学問上の概念なのですが、節税「脱税」と比較すると、どのような意味合いになるか確認しておきましょう。

学術的な詳細は国税庁-審議会・研究会等をご確認下さい。

  • 「節税」…合法であり、税務署が想定内の減税方法
  • 「租税回避」…合法だが、税務署のウラをかくような減税方法

ちなみに違法な減税方法は“脱税”となり、法律上罰されるものです。

租税回避は、いわば「行き過ぎた節税方法」ですが、現状はっきりとした基準はありません。そのため、個々のケースによっては裁判沙汰になることもあるのです。

こうした社会的な背景があるため、法人保険節税を考える際には、会社の顧問税理士や、保険会社・代理店のスタッフなどによく相談した上で検討することが重要です。

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節税対策は会社法人以外でもできる

さて、ここまでで会社の節税のために法人保険が一定の効果を持つということはお分かりいただけたかと思います。

しかし、法人保険は「会社」だけの特権というわけではありません。他の法人も、法人保険を利用して節税対策をすることができるのです。

ここからは学校法人やその他の法人団体の方に向けて、法人税課税の有無や、法人保険を使った節税の方法について説明していきます。

学校法人の税金対策

学校法人
学校法人も法人保険に加入することは可能ですが、そもそも学校法人の場合は納税義務が収益事業に限られます。

収益事業による課税が多いのであれば、会社法人同様に法人保険の加入による節税が可能となります。

その他の団体の節税対策

その他の団体
宗教法人も、法人保険に加入することは可能です。学校法人同様、収益事業には納税義務があるため収益事業の節税に対して法人保険は効果があります。

ただし、収益事業を行っていない宗教法人の場合、基本的に税金を払う必要がないため、節税として加入することは滅多にないでしょう。

節税以外の目的で法人保険に加入する場合、住職の退職金積み立てや、お寺の修繕費の積み立てが一般的です。

また、社会福祉法人やNPO法人、法人格のない団体(町内会、マンション管理組合、学会など)も、宗教法人と同じような取扱いとなります。

開業医の法人保険と節税対策

開業医
開業医の方も法人保険を使った節税が可能。また、開業医の方は節税目的以外にも法人保険で備えておくと良いリスクがあります。

ここでは、開業医が法人保険を使って行えるリスクヘッジと節税対策や、おすすめの保険を紹介していきます。

開業医が設立できる法人

開業医が設立できる法人は医療法人とMS(メディカル・サービス)法人があります。

MS法人は“通称”であり、実際の法人格は株式会社や合同会社となるため、法人保険を使った税金対策が可能です。

医療法人であれば、一般の株式会社等の法人と税制面で多少異なる部分があり実効税率は若干低くなっていますが、法人保険を活用した節税は問題なく行うことができます。

節税対策を準備すべき理由

1.被雇用方法の変化~勤務医から開業医へ~

開業医になった瞬間から、保障に必要な内容が大きく変化します。

医療法人、もしくは常時従業員が5名以上の法人などにつとめる勤務医は、一般的な会社員と同じく健保組合に加入し、厚生年年金に加入しています。

しかし、開業医や従業員が5名未満の常勤医は、健康保険や厚生年金の加入義務がありません。よって、国民健康保険と国民年金に自分自身で加入する必要があります。

医療法人などでの勤務医時代は、健康保険料の半分を事業所が負担していたでしょう。しかし、一般的に開業医になると全額自己負担となり、一般的に遺族年金も介護年金保障も減額します。

このような変化があるため、法人化して法人保険でリスクヘッジを行うことを検討した方が良いのです。

2.医療設備の投資返済~病院を開業するために借入した資金~

ご自身が動けなくなり収入が0になっても、金融機関から借り入れした借金の返済は続きます。

そのためにも所得保障や、万が一お亡くなりになった際に、ご家族の生活を守るための保障も必要となります。

法人保険を使った節税

医療法人は、一般法人と同じく保険料の一部を損金として処理することができます。

開業医(個人事業主)は自分自身を被保険者とした場合、保険料の損金算入が認められないケースもあります。

しかし、医療法人として従業員を被保険者として法人保険に加入すると、損金算入ができる可能性があります。

また、法人保険は節税だけでなく解約返戻金による貯蓄も可能なので、病院で設備投資を必要としたときに解約返戻金を充当するといった選択肢もあるでしょう。

開業医の法人税対策としておすすめの保険

開業医が法人保険を利用して節税する際、おすすめの商品を紹介します。

日本生命
スーパーフェニックス
長期平準定期保険
ポイント
  • 長期平準定期保険の全期払いタイプ
  • 貯蓄性が高く、資金リスクや事業継承のための貯蓄に最適

日本生命(ニッセイ)のスーパーフェニックスは、最低20年以上の長期間の契約が前提となった定期生命保険です。

被保険者が死亡・高度障害状態になった際に保険金が支給される生命保険ですが、解約返戻率のピークが75%~85%ほどと貯蓄性が高い点が特徴です。

契約期間が長いため、開業医として長く務める際の資金リスク・万が一の生命のリスクに備えられるだけでなく、事業継承をするための資金貯蓄にも活用できます。

日本生命「スーパーフェニックス」について詳しく見る

個人事業主の場合はどうなる?節税は可能?

ここまで、さまざまな法人保険の節税方法について解説してきましたが、個人事業主の場合も法人保険で節税対策をとることは可能なのでしょうか。

個人事業主は法人保険で節税できない

原則として、個人事業主が法人保険に加入した場合は、保険料を経費化することはできないため節税に役立てることはできません。なぜならば、事業主個人やその家族にメリットがあるだけで、事業には直接関係がないためです。

法人保険は、法人という組織で契約するからこそ保険料を経費化できるものであり、個人事業主はあくまでも個人なので、個人のお金で支払うべきものと解釈されます。

仮に事業用の口座から個人事業主の保険料を支払って費用に計上した場合、税務調査を受けた際に否認され、個人事業主に現物支給があったものとみなされ課税対象となります。

たとえば、事業主の保険料を20万円支払った場合、20万円の給料が支払われたことになり、それに対応する所得税や住民税が発生することになります。

ただし従業員の福利厚生なら損金算入可能

ご説明したように、個人事業主の場合は法人保険に加入しても保険料を経費化できず節税に役立てることはできませんが、例外として従業員の福利厚生で法人保険に加入する場合は、経費化が可能となり節税効果が期待できます。

ただし、経営者とその家族だけが加入する場合は経費化が認められず、従業員全員が法人保険に加入することが条件となります。一部の従業員だけが加入している場合も不可で、正規雇用の従業員は全員加入している必要があります。

このような条件を満たしていれば、個人事業主でも保険料を損金計上し節税に役立てることができます。

具体的な節税方法

個人事業主が法人保険で節税するには、通常の法人のように従業員を養老保険に加入させる方法があります。

その際に、ハーフタックスプラン(福利厚生プラン)といったプランに加入すると、保険料の半分を資産計上し、もう半分を損金に計上できるため半分を経費化し節税に役立てることができます。

ただし、契約形態を以下のようにする必要がありますのでご注意ください。

契約者 個人事業主
被保険者 従業員
死亡保険金受取人 従業員の家族
満期保険金受取人 個人事業主

なお、養老保険は保険料が高額になる傾向があるため、すべての従業員に加入させると保険料の支払い負担が大きくなってしまいます。

その場合は、医療保険に加入させるという方法もあります。医療保険であれば養老保険よりも保険料が安く、1人あたりの年間保険料が30万円以下であれば全額を損金算入できるため節税効果が期待できます。

税制改正により法人保険の専門家のアドバイスがより重要に

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法人保険は、国税庁による税制改正が行われるまでは節税効果を得ながら貯蓄性も期待できるため、税金対策として有効な手段の一つでした。

節税によって現金を企業内に留保できることから、中小企業にとっては企業体力を付けて事業を展開していく上に効果的な方法でしたが、現在は損金取り扱いのルールが複雑化したため、簡単に加入を検討できなくなっているのも事実です。

また、決算前に慌てて法人保険に加入しても、税務署から法人保険の損金計上を否認されてしまう可能性もあります。こうなると、節税にならないどころか重課税の対象となることも考えられます。

このような状況を踏まえると、無駄な費用や時間をかけずに法人保険を利用した節税対策をするならば、法人保険や税務の知識が豊富な専門家に相談することをおすすめします。

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