
企業経営を行っていれば、法人税や法人事業税、法人住民税などの多くの税金を支払う必要があります。
月末や決算期に多額の法人税の支払いが押し寄せると「なにかいい裏ワザのような税金対策の方法はないものか」と悩む経営者の方も多いのではないでしょうか。
しかし、法人税の支払いを回避したいからと言ってむやみに税金対策を行えば、会社の資産を目減りするリスクを抱えてしまいます。
本記事では、税務上で認められている税金対策をデメリットも併せ、詳しく解説していきます。
法人の税金対策は2種類に分けられる
税金対策をするには、主に2つの税制システムを活用することになります。
- 控除を利用する方法
- 損金を計上する方法
重要なのは、所得隠しのような違法行為ではなく、税制上のシステムを活用することです。
税制を守らない場合は脱税行為であり、犯罪です。脱税行為と、法律の範囲内で支払う税金を最小限に抑える税金対策は、まったく異なるので注意しましょう。
①控除を利用する方法
1つ目は、控除の利用です。控除とは課税対象となる所得金額から、一定の金額を引くことができる税金対策です。
控除には様々な項目があり、所得に適用される基礎控除、生命保険料控除、小規模共済等掛金等控除などが挙げられます。
法人がこの控除制度を利用する場合には、従業員の人数や給与面を条件に判断されることもあるので、自分の会社が控除制度に適応されているかどうかを決算前にはあらかじめ確認しておきましょう。
ただし、会社の運営状況によって利用できる控除は限定されているため、大きな税制上のメリットが得られない場合もあります。
②損金を計上する方法
2つ目は、損金(費用)を計上して会社の所得金額を減らすという方法です。
法人は個人事業と比べて、損金計上できる費用の種類が多いため、税金対策として実行しやすい方法といえます。
ただし、無計画に出費を増やしていると、かえって経営に悪影響を及ぼす可能性があります。
ただ損金を増やすのではなく、「効果的な出費」としてどのように活かすがが大切です。
代表的な法人の税金対策12選

法人が行える税金対策にはどのようものがあるのか、今回は厳選して12個紹介していきます。
代表的な法人の税金対策12選
- 役員報酬を適正水準に設定する
- 決算賞与を活用する
- 福利厚生費を整備する
- 出張手当(日当)規程を導入する
- 設備投資と減価償却を活用する
- 中小企業向け共済制度を活用する
- 不要資産を除却・売却する
- 人材採用・広告宣伝へ再投資する
- 法人契約の生命保険を活用する
- 不動産を法人で賃借する(個人所有活用)
- 中古資産の短期償却を活用する
- 不動産投資で長期的利益を圧縮する
1.役員報酬を適正水準に設定する
税金対策でまずやっておきたいのが役員報酬の設定です。役員報酬とは、いわゆる経営者の給料です。
そもそも、役員報酬は損金として算入ができません。
損金として算入するには一定の条件を満たし、なおかつ所定の手続きを踏む必要があります。
まず、役員報酬を損金に算入するためには「定期同額給与」「事前確定届出給与」「利益連動給与」のどれかに該当しなければなりません。ただし、利益連動給与については中小企業で利用することはほぼないものです。
まず、「定期同額給与」とは支給時期1カ月以下の一定期間に支給される給与で、事業年度内の各支給時期の給与額がすべて同額であるという条件を満たしたものを言います。
たとえば、毎月必ず100万円の報酬を支払うときは、定期同額給与になるので損金算入が可能です。
しかし、役員報酬が常に一定ということは難しいです。業績が良ければ上げることもありますし、逆に悪くなると下げる必要も出てきます。そのため、役員報酬の改定があった場合でも損金算入が可能です。
損金算入ができる改定については3つあります。
- 通常改定:
期首から3カ月以内に改定した場合に認められる - 臨時改定事由による改定:
職務上の役員の地位変更といったやむをえない状況のときに行われる - 業績悪化改定事由:
会社の業績悪化が原因で改定を余儀なくされたなどの理由で改定する場合
3つ以外では、改定後の損金算入は認められませんので注意が必要でしょう。
次に、事前確定届出給与です。事前確定届出給与は、所定の時期に確定している給与を支給することを定め、それに基づいて給与を支給するものです。
なお、損金算入をするためには事前確定届出給与事業開始年度から3カ月以内に役員報酬を決定し、事前確定届出を所轄税務署長に届ける必要があります。
2.決算賞与を活用する
この税金対策は、従業員のモチベーション向上にもつながり、さらに税制上のメリットもある一石二鳥の方法です。
従業員への臨時のボーナスとして決算賞与を活用します。
注意点をあげるとすれば、決算賞与を税金対策として利用するには次の3つを満たしていなければなりません。
- 事業年度度終了までに従業員全員に賞与額を伝える
- 翌事業年度の最初の1ヶ月以内に支給する
- 決算賞与の額を未払金として経費に計上している
特に重要なのは、2つ目の「翌事業年度の最初の1ヶ月以内に支給する」です。
仮に1ヶ月以内に決算賞与の支払いをしていない場合、決算賞与として設定した金額は経費として認められなくなるのでご注意ください。
最後に、決算賞与を支払えば当然、法人のキャッシュは少なくなります。決算賞与を支払った後の会計バランスにも気をつけましょう。
3.福利厚生費を整備する
福利厚生費は、役員・従業員の働きやすさや満足度を高める施策であり、要件を満たす範囲では損金として計上できます。ポイントは「福利厚生として合理的か」「給与や交際費に該当しないか」を、支出の内容と運用実態で説明できることです。
たとえば、役員や従業員の健康維持を目的とした健康診断費用、一定の条件を満たす社員旅行や社内レクリエーション費用などは、福利厚生費として処理できるケースがあります。
ただし、福利厚生費として損金算入するには、以下を整備しておくことが重要です。
福利厚生費として説明しやすくするための観点
- 対象の公平性:
特定の役員・一部社員のみを不自然に優遇していない - 金額の妥当性:
社会通念上、過大ではない - 運用の明確化:
条件(対象者・範囲・上限など)を社内ルールとして整理し、必要に応じて根拠資料を残す
上記のいずれかが欠けると、福利厚生費ではなく給与課税(または交際費等)として扱われるリスクがあるため、制度設計と運用をセットで考える必要があります。
4.出張手当(日当)規程を導入する
遠方への出張が多い会社では、旅費規程(出張規程)を整備したうえで、交通費・宿泊費に加えて日当(出張手当)を支給する運用が考えられます。
社内規程と実態(出張命令・行程・出張報告など)が整っていれば、法人側では旅費交通費等として損金に算入できます。
一方で、日当は「支給すれば必ず非課税」という扱いではありません。金額が社会通念上の範囲を超える、出張の実態が確認できない、役員だけが不自然に優遇されている、といった場合は、税務上給与(役員給与)として扱われるリスクが出ます。
運用上は、次の点を押さえると説明がしやすくなります。
- 旅費規程に「対象者・金額・支給条件(距離・宿泊有無など)・精算方法」を明記する
- 出張命令書・旅程・出張報告書など、出張の事実を示す資料を残す
- 役職や出張区分で差を付ける場合は、合理的な根拠を用意する
なお、消費税の取扱いは出張の内容(国内/海外、支出内容)で判断が分かれます。日当の話に消費税の結論を直結させず、必要に応じて税理士に確認する方が安全です。
5.設備投資と減価償却を活用する
設備投資を税金対策として考える場合、基本は減価償却です。設備を購入しても取得費用を一括で経費化できるとは限らず、原則は耐用年数に応じて毎期減価償却費として損金に算入していきます。
加えて、一定の要件を満たす中小企業等では、設備投資に対して特別償却や税額控除などの優遇税制が使える場合があります(例:中小企業投資促進税制など)。
ただし、対象資産・金額要件・適用期限・手続きは制度ごとに異なり、「設備投資をすれば法人税から控除される」と一律に言い切ることはできません。
ここで押さえるべきポイントは次の3つです。
- 設備投資の目的(生産性向上・省力化など)が事業上説明できること
- 減価償却の前提(資産区分・耐用年数・取得時期)で当期の損金額が変わること
- 優遇税制を狙う場合は、制度名と要件を確認し、必要書類(証明・申請・届出等)を揃えること
6.中小企業向け共済制度を活用する
中小企業が活用しやすい共済制度として、代表的なものに「中小企業退職金共済(中退共)」「経営セーフティ共済(倒産防止共済)」「小規模企業共済」があります。
これらの掛金を損金算入などすることで、課税負担の軽減が可能です。
- 中小企業退職金共済(中退共):
法人が従業員の退職金制度として導入する仕組み。掛金は原則として法人の損金に算入できます。 - 経営セーフティ共済(倒産防止共済):
取引先の倒産リスクに備える制度。掛金は原則として法人の損金に算入できます(上限等あり)。 - 小規模企業共済:
加入は経営者個人が主体で、掛金は個人側の所得控除の対象です(法人の損金ではありません)。
共済は節税だけでなく、退職金準備や資金繰りの備えとしても使われます。目的(退職金なのか、取引先倒産への備えなのか、経営者個人の退職準備なのか)に合わせて制度を選ぶことが重要です。
関連:「小規模共済の特徴とは?メリットとデメリットを徹底解説!」
7.不要資産を除却・売却する
社内で使わなくなった固定資産を処分することも、税金対策のひとつとして挙げられます。特に購入時の価格が高いものであれば、固定資産除却損として長期的な税制上のメリットを得ることができます。
さらに、不要な資産を処分するということは、固定資産税を減らすことにも繋がるので、固定資産の見直しは重要だと言えるでしょう。
帳簿上では資産といっても、保有する建物や土地を維持するためにはそれなりのコストがかかります。損金として計上できる除却損の中には、建物などの取り壊しに必要になった費用も含めることができます。
すぐに取り壊しができない場合には、現状のままで除却する「有姿除却(ゆうしじょきゃく)」といった方法もあります。この場合、現在の資産価値から処分見込額を差し引いたものを、固定資産除却損として経費扱いすることができます。
注意点としては、除却損を計上するためには「今後一切資産の使用がない」ことが条件となる点です。一時的に使っていないと言うだけでは、除却損として認められないので気を付けましょう。
8.人材採用・広告宣伝へ再投資する
人材採用や広告宣伝は、将来の売上や事業成長につながる投資であり、支出の内容が当期の費用に該当する範囲では損金として計上できます。税金対策としては、利益が出た年度に「必要な投資を前倒しする」発想で検討しやすい方法です。
たとえば、求人広告費、採用媒体の掲載料、会社案内やサービス資料の制作費、販促キャンペーンの広告費などは、内容に応じて広告宣伝費等として処理されます。
ただし、「決算間際でも必ず経費にしやすい」とは限りません。支出のタイミングだけでなく、「当期の役務提供に対応しているか(前払費用にならないか)」が論点になります。
実務では、当期対応分と翌期以降対応分を区分できる形で、契約書・請求書・掲載期間などの根拠を揃えると、経理処理がしやすくなります。
9.法人契約の生命保険を活用する
法人向け生命保険は、契約形態(契約者・被保険者・受取人の関係)や商品性(貯蓄性の有無など)によって、保険料の税務上の取扱いが変わります。一般に、保険料は全額または一部を損金算入できる場合があり、退職金準備や事業保障と組み合わせて検討されます。
法人保険の実務上のメリットは、税務面だけではありません。万一の際の事業資金の確保(事業保障)や、将来の資金需要に備える設計が可能な点が挙げられます。また、解約時に解約返戻金が発生するタイプもありますが、返戻金の有無・水準は商品ごとに異なり、保険料を上回る場合もあれば下回る場合もあります。
注意点として、解約返戻金を受け取る場合は会計・税務上の処理が必要であり、解約のタイミングによって税負担(利益計上)が発生し得ます。
税務上の効果だけで判断せず、目的(保障・退職金準備・資金繰り)と出口(解約・満期・保険金)まで含めて設計することが重要です。
10.不動産を法人で賃借する(個人所有活用)
役員(社長)や家族が所有する不動産を法人が借り、賃借料を支払う形にすると、法人側では業務に必要な範囲で地代家賃等として損金に算入できる場合があります。
一方、個人側で受け取る賃料は原則として不動産所得となり、固定資産税、火災保険料、修繕費、減価償却費(建物部分)など、所得計算上の必要経費を差し引いたうえで課税されます。
この方法は同族間取引になりやすいため、賃料の妥当性と実態の整備が重要です。具体的には次の点を押さえます。
- 賃貸借契約書を作成し、使用目的・範囲・賃料・支払条件を明確にする
- 周辺相場などを参考に、賃料が社会通念上妥当である根拠を用意する
- 法人が実際に業務で使用している実態(利用状況)を説明できるようにする
形式だけ整えて実態が伴わない場合は、損金性を否認されるリスクがあるため、契約と運用をセットで設計する必要があります。
11.中古資産の短期償却を活用する
中古資産を活用した税金対策は、購入した資産を減価償却で損金化する点は同じですが、資産によっては新品より耐用年数が短くなり、結果として損金化のペースが早まる場合があります。
ただし、「中古車を買えば取得価額の全額を1年で損金にできる」とは限りません。中古車の耐用年数は、一定の計算方法(簡便法など)で算定され、年数に応じて償却します。購入時期が決算直前であれば、当期に計上できる償却費が限定される点も同様です。
また、即時に損金算入できる可能性があるのは、次のような特例に該当するケースです。
- 取得価額が少額の資産(例:30万円未満)で、少額減価償却資産の特例などを使える場合(適用条件・上限あり)
中古車は維持費(保険・税金・修理等)も継続して発生します。税金対策として購入を検討する場合でも、事業上の必要性と総コストを踏まえて判断するのが安全です。
12.不動産投資で長期的利益を圧縮する
不動産投資が税金対策として語られる理由の一つは、建物部分について減価償却費を損金に算入できる点です。不動産の取得価額は土地と建物に按分され、土地は原則として減価償却の対象になりません。一方、建物は耐用年数に応じて償却し、毎期の損金(減価償却費)として計上します。
ここで注意したいのは、減価償却費の金額は「建物の種類・構造・用途・取得時期(新築/中古)」などで大きく変わる点です。例示で耐用年数を固定して断定すると誤解につながるため、本文では「条件で変動する」前提を明確にしておく方が安全です。
また、不動産の売却を使った利益調整は、売却益が出れば課税対象になり、売却損が出れば損金になり得ます。したがって、単に「赤字なら売却すれば健全化できる」と言い切らず、次の観点で判断する必要があります。
- 売却時の損益見込み(譲渡益/譲渡損)
- キャッシュフロー(返済・修繕・空室リスク)
- 長期保有を前提とした収支シミュレーション
不動産投資は資金規模が大きく、税務・会計・金融(融資)も絡みます。導入前に、税理士等と条件をすり合わせたうえで試算することが現実的です。
まとめ:裏ワザに頼らずに真正面から取り組んでいく
税金対策で重要なのは、税法上の規則に従って無駄な税金を支払っていないかを確認するという点です。
一般的に、裏ワザと呼ばれる税金対策は、税務局から脱税行為とみなされ、ペナルティを負うリスクがあります。
また、最終的な収益を目減りするために、経費の額を多く見せるのも問題です。
経費が増えれば、それだけ会社の資産も減り、今後の経営状況を悪くする原因になりかねません。対外的に見て会社の資産が少なすぎる場合、取引がうまくいかなかったり、金融機関からの融資も受けづらくなったりします。
今回こちらでお教えした税金対策も、合理的、経営上で妥当な理由がなければ、税務署からの否認は必至です。
一度否認を受けてしまえば、せっかくの税金対策も逆効果となってしまいます。
税金対策は、利益と費用のバランスを考えることが非常に重要です。法人税を減らすことだけに注目するのではなく、将来的な会社への投資のために、「その費用は、会社にどのようなメリットが得られるのか」を考えながら税金対策を心掛けるようにしましょう。
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