
「法人保険」と一言にいっても、その種類は様々です。
退職金準備、事業保障など、加入する目的によって適した種類の法人保険を選択しなければ意味がありません。また、契約・解約などのタイミングも考慮しておかなければ、保険料や法人税の負担に悩まされる可能性もあります。
この記事では、企業の状況に応じて適した法人保険の選択ができるよう、法人保険の種類やそれぞれの保険のメリット・活用方法について徹底解説していきます。

記事監修した保険のプロ:
40代/男性
- AFP
- トータル・ライフ・コンサルタント(生保協会認定FP)
- 個人情報保護士
外資系大手保険会社での営業経験を活かし、生保・損保問わず企業向けに保険提案を行っている。保険商品だけでなく、金融商品・税金に関する知識は幅広く、お客様からの紹介が後を絶たない。
まず押さえたい!法人保険の目的は大きく2つ
法人保険は、「生命保険」と「損害保険」という2種類に大きく分類されます。それぞれの種類の特徴は以下のようになっています。
生命保険
生命保険は「ひと」に関するリスクに備える種類の保険の総称です。一般的には、人の生死に関するリスクに備える死亡保険が中心となります。
なお、病気やケガなどに備える医療保険・がん保険は生命保険ではなく「第三分野の保険」と呼ばれることもありますが、ここでは生命保険に含んで解説していきます。
法人向けの生命保険には、下記の4種類があります。
- 経営者の死亡などによる経営リスクに備える(事業保障)保険
- 死亡退職金や弔慰金の支払いに備える保険
- 生存退職金支払いに備える保険
- 相続や事業承継に備える保険
法人保険は、経理処理の上では支払う保険料を損金として計上できる商品もあり、資金計画や利益の見通しに応じて、税負担のタイミングを調整しやすくなることがあります。
注:保険料を損金算入することで当該年度の課税所得を圧縮できますが、将来的に受け取る保険金や解約返戻金は益金として課税されます。そのため、法人保険による節税は「課税を繰り延べる」というものであり、課税額を恒久的になくせるわけではないので注意しましょう。
損金算入できるかどうかやその割合は、保険の種類や解約返戻率、保険金の受取人などの契約内容によって大きく異なるため、個別の契約ごとに最新の税務ルールを確認することが重要です。
損害保険
損害保険は主に「もの」に関するリスクに備える種類の保険の総称です。法人の損害保険には2種類あります。
- 自らが所有する財産が受けた損害を補償する種類
- 第三者に対して損害を与えてしまった場合の賠償責任を補償する種類
代表的な損害保険の種類としては、法人向けの火災保険や自動車保険、賠償責任保険などがあります。
また、法人保険としての損害保険には、不測の事故によって営業ができないことによる休業損害に備える種類、事業活動中の従業員のケガを補償する種類などもあります。
生命保険の種類
まずは法人保険の大枠の種類について説明しました。ここからは生命保険の種類を細分化して見ていきましょう。
- 逓増定期保険
- 長期平準定期保険
- がん保険
- 養老保険
- 医療保険
- 生活障害保障定期保険
- 収入保障保険
逓増定期保険
逓増定期保険とは、加入から一定期間経過後に死亡保障額が増加していく種類の生命保険です。
法人保険としての逓増定期保険は貯蓄性が高く、主に経営者や役員の死亡退職金・弔慰金の準備、解約返戻金を活用した勇退退職金の準備として用いられることがあります。
逓増定期保険の特徴は、解約返戻金のピークが加入後5年〜10年程度の間にくる点です。ピークが比較的早いため、数年以内の勇退予定に合わせて退職金を準備したり、近い将来の設備投資計画に備える資金準備など、短期的な資金需要に合わせて対策することができます。
一方で、逓増定期保険は解約返戻金のピークを迎える期間が短いというデメリットにも注意が必要です。解約返戻金のピークを過ぎてしまうと解約返戻率が急激に低下していくため、解約のタイミングを逃すと大きな損失が生じるリスクを伴います。
またピークを迎える前の早期解約についても、解約返戻率は低くなってしまい同様のリスクがあります。そのため、加入と解約の時期は事前にしっかりと計画しておかなければなりません。
- 貯蓄性が高く、高額な死亡保障も得られる種類の法人保険
- 解約返戻金のピークが加入後5年〜10年程度の間にくるため、短期的な資金需要への対策に向いている
- その反面、解約返戻金のピーク時期が短いため、加入・解約の計画をしっかり立てることが重要
長期平準定期保険
長期平準定期保険とは、一定期間の死亡リスクを保障する定期保険の中でも、保障期間が98歳や100歳までなど長期に設定されている種類の生命保険です。
長期間にわたり経営者や役員の死亡リスクを保障できるため、事業保障・事業承継対策として利用されます。また、解約返戻金を活用した急な資金需要や勇退退職金対策にも向いています。
長期平準定期保険は、解約返戻金のピークが加入後10年~30年後と比較的遠く、ピークを迎えた後も比較的長い間高い返戻率が維持される特徴があります。
そのため、退職時期がまだ先の場合や、将来の設備投資など資金需要は見込まれるものの時期がはっきりしない場合に向いている種類の法人保険です。
その反面、解約返戻金のピークに達するまでの長さが裏目に出ることもあります。
たとえば、企業の経営状態悪化などで早期に法人保険を解約しなければならなくなってしまった場合には、解約返戻率がまだ低い状態のため、支払った保険料に対する損失が出てしまうリスクが伴います。
なお、一時的なキャッシュフローの悪化であれば、法人保険を解約することなく契約者貸付制度などによって資金を調達することで、キャッシュフローの改善を図ることも可能です。
- 貯蓄性が高く、保障期間の長い種類の法人保険
- 解約返戻金のピークが加入後10年〜30年程度にくるため、長期的な資金需要への対策に向いている
- その反面、早く解約すると解約返戻金が少なくなるため、解約の計画をしっかり立てることが重要
関連記事:長期平準定期保険の特徴と活用方法を解説
養老保険
養老保険は、保険期間中に被保険者が死亡・高度障害状態になったときには死亡保険金が、生存したまま保険期間満期を迎えたときには満期保険金が支払われる法人保険です。
死亡・生存のどちらのケースでも保険金を受け取ることが可能な貯蓄性の高い種類の保険と言えます。
法人保険として活用するには、役員や従業員の死亡退職金・弔慰金対策と生存退職金対策の両方に備える福利厚生の一環として加入することが一般的となっています。
養老保険の大きな特徴は、貯蓄性の高さに加えて、契約形態によっては保険料の半額が福利厚生費として損金算入できる点です(いわゆる「ハーフタックスプラン」)。
- 普遍的加入(全従業員が加入対象者など)
- 死亡保険金の受取人が遺族
- 満期保険金の受取人が法人
実際の税務では、加入対象の範囲や運用実態によって判断が変わります。具体的な制度設計については、税理士や保険代理店と相談しましょう。
- 死亡保険金・満期保険金のどちらかが支給される法人保険。従業員の福利厚生として活用できる
- 所定の条件を満たせば、福利厚生費として保険料の半分を損金に算入できる
- 福利厚生としての取扱いは、加入対象の範囲や運用実態によっても整理が変わるため、設計時に確認することが大切
がん保険
法人保険における「がん保険」は、事業保障の一環として、治療・療養に伴う資金手当てや就業制限に備える目的で設計されます。保障内容や保険期間、給付の条件は商品によって異なるため、必要な保障と保険料のバランスを確認して選びましょう。
また、多くの個人向けがん保険が掛け捨て型であるのに対して、法人保険としてのがん保険では、終身型で貯蓄性のある保険商品もあります。
加入時の手続き(診査の有無や告知内容)も商品によって差があるため、加入条件は事前に確認しておくことが大切です。
その一方、法人向けのがん保険は手厚い保障内容や貯蓄性を備える分、保険料は掛け捨て型のがん保険と比べて高額になりがちです。さらに、解約のタイミングを誤ってしまったりすると、思いがけない損失が生じることもあるため注意が必要です。
医療保険
法人保険における「医療保険」は、保障内容自体は個人向けの医療保険と近い一方で、法人契約としての設計や活用方法に特徴があります。
法人保険として医療保険に加入するメリットは、事業保障となることに加え、終身保障タイプの医療保険を経営者や役員の退職に合わせて保障を引き継ぐといった使い方ができる点にあります。
※この場合、医療保険は終身保障タイプのものであることが必要です。
※名義変更時、解約返戻金相当額などを基準に、法人・個人それぞれに課税関係が生じる場合があります。
役員が退職するタイミングに合わせて保険料の支払いをすべて終わらせておき、保険契約者の名義を役員個人に変更することで、役員は一生涯の医療保障を得ることができます。
ただし、退職金として扱うには、退職金規程や支給決議、金額の相当性などの要件が重要となるため、実行前に顧問税理士や専門家へ確認しましょう。
現金の退職金を一部保険契約の現物支給に振り替えることで、会社に残る現金を増やせる可能性もありますが、評価額や退職金規程との整合によって税務上の取扱いが変わるため、具体的な設計は顧問税理士や専門家に確認しながら進めることが重要です。
生活障害保障定期保険
生活障害保障定期保険とは定期保険の一種類で、死亡・高度障害状態に加えて、特定の「生活障害状態」、「介護状態」になった場合も保障の対象になる保険です。
保険会社によって保障内容は異なりますが、三大疾病(悪性新生物・急性心筋梗塞・脳卒中)で所定の状態になったときに給付対象になる商品もあります。
また、万が一要介護状態で就労不能になった場合にも対応できる商品があるのも特徴のひとつです。
法人保険として活用する際には、上記のような健康上のリスクへの備えに加えて、解約返戻金を活用した資金準備にも利用できます。被保険者が保険に加入する年齢が若いほど解約返戻率が高くなる傾向があるため、早めに加入しておくと良いでしょう。
しかし、まとまった保険料を継続して支払っていくことでキャッシュフローを圧迫してしまう可能性があります。最終的に不利益を被るおそれもあるため、加入にあたっては十分な検討が必要です。
収入保障保険
収入保障保険とは定期保険の一種で、死亡・高度障害状態となったときに保険金が一時金または年金形式で受け取れる保険です。
保険会社によっては、三大疾病に罹患した場合や介護状態・就労不能状態になった場合にも、死亡・高度障害状態と同様の保障を受けられる商品もあります。
大きな保障を割安の保険料で用意することができ、たばこを吸わない、健康状態によっては割引価格で加入することができる保険会社も多いです。
毎月年金形式で受け取れるため、経営者に万が一のことがあっても毎月の支払に対して資金を確保することができます。万が一のときの借入金返済対策としても用いられます。
損害保険の種類
ここからは、損害保険の種類について見ていきましょう。
財物損害の補償
火災保険や動産総合保険に代表される、火災などの不測の事故によって会社の所有する建物や設備・什器、商品などが受けた損害を補償する種類の保険です。
財物を修理するための費用、買い直すための費用が保険金として支払われますが、免責金額が設定されることがほとんどです。
休業による損害の補償
事故によって営業ができない間の利益を補償する種類の保険です。
災害や不測の事故によって店舗・事務所が損害を受け、営業ができない間の損害を補償してくれます。
損害賠償の補償
従業員がお客様にケガをさせてしまったり、製造した製品が原因で第三者に損害を与えてしまった場合などに、会社が負う法律上の賠償責任を補償する種類の保険です。
損害賠償リスクは、取引先・顧客・通行人など第三者との関係で発生し、業種を問わず起こり得ます。賠償額が大きくなりやすい事故もあるため、事業内容と取引形態に照らして、賠償責任保険で備えるという考え方が有効です。
従業員のケガなどの補償
従業員が業務中または通勤中にけがしてしまった場合を補償する種類の保険です。
法人保険としては、労災保険への上乗せとして、あるいは経営者として従業員に対する責任の一つとして加入します。
これらの補償を一つの契約にまとめて設計できる「事業活動包括型」の商品もあります(例:東京海上日動火災の超ビジネス保険など)。以下のように、カバーできる補償範囲が広いことが特徴です。
- 財物補償
- 休業補償
- 賠償責任に関する補償
- 労災事故に関する補償
超ビジネス保険は、上記のような法人保険として加入しておきたい各種の補償を一つの契約でまとめてカバーできる商品です。
各補償の中から必要となる種類を選んで加入するため、補償のモレ・ダブリを抑えながら、業種や事業規模に合わせて設計しやすい点がメリットです。
法人保険の加入時には目的を明確に!
法人保険は大きく生命保険と損害保険に分けられ、目的に応じて選ぶことが大切です。
法人保険には多数の種類があり、加入する際には目的に合わせた法人保険をしっかり選ぶ必要があります。
また、法人保険ごとに解約返戻率のピーク時期や保険料も異なるため、下記の点をしっかり考えなければいけません。
法人保険で特に考えたい2つのポイントは、次のとおりです。
- 法人保険の加入・解約のタイミング
- 法人保険を通じて、会社にどれだけ資金を残せるか
貯蓄性や保障内容だけを見て法人保険に加入してしまうと、結果的に損失が出てしまったり、保障が不十分となってしまうこともあります。
そのため、法人保険の加入においては必要な保障を確保でき、勇退時期や資金需要の発生時期などに合わせて活用できるよう、それぞれの種類の保険の特徴を理解した上で適切な種類の保険を選ぶようにしましょう。
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