残された家族のために生命保険に加入しても、生命保険金に相続税がかかるのか気になってしまうこともあるでしょう。
生命保険金は、相続税が発生する場合とそうではない場合とに分かれます。民法や税法といった法律で、保険金がどのように扱われるのかを知っておくことが大切です。
また、相続税については保険加入時から意識しておきましょう。
非課税となるケースや、課税となる場合にどれくらい税金がかかるのかについて、わかりやすく解説します。
民法上と税法上の生命保険金の定義
生命保険金は、民法と税法で見方が異なります。ポイントは、「契約者(保険料負担者)」「被保険者」「受取人」が誰か、という点です。
民法上、受取人が指定されている死亡保険金は、原則として受取人固有の財産となり、遺産分割の対象にはなりません。保険会社から受取人に直接支払われるお金であるためです。
一方で、受取人が指定されていない場合などは、死亡保険金が相続財産として扱われ、遺産分割の対象になることがあります。
民法では相続における権利義務関係を重視するため、被保険者・契約者・受取人が誰であるのかをきちんと押さえておく必要があるでしょう。
相続で注意したい点は、民法上は遺産分割の対象にならない場合でも、税法上は「みなし相続財産」として課税対象となることがある点です。
たとえば、保険契約者(保険料を負担している人)と被相続人が同一であるとき、死亡保険金は相続税の課税対象となり得ます。
税法でみなし相続財産とされるものとしては、死亡保険金や、一定期間内に支給が確定する死亡退職金などが挙げられます。
生前贈与については、相続税の課税価格に加算される期間(いわゆる生前贈与加算)が法改正により拡大しています。
「相続開始前3年以内」とされていた期間は、段階的に7年へ延長され、相続開始日によって適用される年数が変わります。
・~2026年12月31日に相続開始:相続開始前3年以内
・2027年1月1日~2030年12月31日に相続開始:段階的に対象期間が拡大(最大で実質7年へ移行途中)
・2031年1月1日以後に相続開始:相続開始前7年以内
また、被保険者が夫であり、契約者と受取人が妻であるといったケースでは、死亡保険金が所得税・住民税の課税対象となる場合があります。
さらに、被保険者が夫で契約者が妻、受取人が子どもといったケースでは、死亡保険金の贈与があったものとみなされ、贈与税が問題になることもあります。
相続税が非課税になるケースとは?
生命保険金は、みなし相続財産として課税対象となる場合であっても、一定の金額まで非課税枠が設定されています。非課税枠は「500万円×法定相続人の数」で計算されます。
たとえば、法定相続人が4人のときには、500万円×4人で2,000万円までが非課税枠となります。
法定相続人の数は、相続放棄があっても法定相続人として数える考え方になります。
また、養子がいる場合は法定相続人の数に算入できる人数に上限があります。
ただ、相続税の非課税枠が認められるのは、一般的に被保険者と契約者が被相続人であり、受取人が相続人のケースです。つまり、相続人以外の人物が保険金を得た場合には、非課税枠の適用はありません。
また、相続税の計算にあたっては「基礎控除」もあります。基礎控除は、残された家族の最低限度の生活を守るために設定されているもので、相続財産から差し引きます。
計算方法は3,000万円+600万円×法定相続人の数です。
たとえば、法定相続人が4人のときは、3,000万円+600万円×4人で5,400万円となります。相続財産が5,400万円を下回っているときには、相続税は発生しません。
非課税枠や基礎控除のほかに、「配偶者の税額軽減」という仕組みもあります。配偶者の生活を守るという点に注目した仕組みであり、法定相続分または1億6,000万円のいずれか多い金額まで、相続税がかからない制度です。
ただし、配偶者に相続財産を多く集めると、次の相続(配偶者から子どもへ)で相続税が問題になることがあります。次世代への相続も見据えたうえで、配偶者の税額軽減をどう活用するか検討しましょう。
課税金額を計算してみよう
非課税限度額と課税対象額の求め方(例)
生命保険金が課税となるケースについて考えてみましょう。たとえば、保険金の受取額が2,000万円、被相続人が夫、相続人が妻と子ども2人というケースで計算します。
妻の受け取り分を1,000万円、子ども1人あたりの受け取り分を500万円とします。まず、非課税限度額は500万円×3で1,500万円です。
課税対象額は、次の考え方で求めます。
特定の相続人について
(その相続人が受け取った保険金 ÷ 相続人全員が受け取った保険金の合計)× 非課税限度額
を求め、その金額を「その相続人が受け取った保険金」から差し引きます。
妻に課税される生命保険金の金額は次のとおりです。
医療給付金など非課税となる給付
生命保険には医療保障をつけている場合も少なくありません。不慮の事故や病気などによって受け取る給付金は非課税となることが決められています。
手術や通院に対する給付金、3大疾病保険金・がん診断給付金・先進医療給付金などに税金はかかりません。
また、被相続人が生前に残した借金や葬儀費用についても、債務控除として認められています。
実際に課税されるかどうかは、さまざまな控除も含めて確認しておく必要があるでしょう。
相続対策として生命保険を使うときの注意点
まず押さえたい:終身保険と非課税枠
相続対策が気になる場合、死亡時に保険金が支払われる終身保険は検討されやすい選択肢です。契約関係によっては非課税枠を活用でき、相続税の負担を抑えられる可能性があります。
税金の種類は「契約者・被保険者・受取人」で変わる
ただし、保険料を負担した人(契約者)・被保険者・受取人の組み合わせによって、相続税ではなく所得税(一時所得)や贈与税が問題になることもあります。税金の種類が想定どおりかを確認したうえで、保険金額や受取人を設計しましょう。
定期保険・養老保険は目的に合わないことがある
なお、死亡保障が一定期間内に限られる定期保険や養老保険は、満了後は死亡保険金が支払われないため、「死亡保険金を相続対策資金として見込む」という目的には合わないことがあります。
高齢期の選択肢:一時払い終身保険
高齢期に入ってから相続対策を考える場合は、一時払い終身保険を検討する方法もあります。保険料を一括で支払うため、手元の資金を保険に振り替えたうえで、契約関係によっては非課税枠の活用も見込みやすくなります。
不動産や多額の預貯金を残したまま亡くなると相続税が問題になりやすいため、一時払い終身保険のように、目的に合わせて受取人や保険金額を設計できる点はメリットになり得ます。ただし、効果は資産状況や契約形態によって変わるため、加入前に確認しましょう。
生前贈与を組み合わせる場合のポイント
相続までの期間がある場合には、生前贈与の制度を活用する方法もあります。年間110万円まで非課税として認められますし、親が子どもに贈与したお金で保険料を支払えば、子どもの負担も少なくなります。
相続税の課税対象となる資産を減らし、相続税を抑えられる可能性が広がります。注意点は、きちんと生前贈与と認められるようにポイントを押さえておくことです。
まず、贈与の意思を明確にするために贈与契約書を作成します。贈与する金額と時期を明記し、金額や時期は毎年同一に固定しない方が、形式的な取り扱いと誤解されにくくなります。
通帳と印鑑は贈与を受けた子どもが管理し、口座から保険料を支払っていきます。そして、贈与者である親の確定申告の際には、支払った保険料を生命保険料控除に算入しないことも大切です。
一時所得・贈与税になる代表例
被保険者・契約者・受取人の設定次第では相続税ではなく、所得税や贈与税が発生するケースもあります。たとえば、被保険者が夫で契約者と受取人が妻である場合には、受け取った保険金が契約者の所得とみなされ、所得税・住民税が課されることがあります。
また、被保険者が夫で契約者が妻、受取人が子どもといったケースでは、世代を超えて財産が移転したとみなされ、贈与税が問題になることがあります。
さらに、被保険者が夫で契約者と受取人を子どもにした場合など、契約関係によっては受け取った保険金が一時所得となることがあります。一時所得は、支払保険料などを差し引いたうえで特別控除(最高50万円)を考慮して計算されるため、状況によっては負担感が軽くなるケースもあります。
ただし、一時所得の税負担は他の所得と合算して税率が決まります。所得税の税率は(分離課税などを除き)5%~45%の超過累進で、住民税も関係します。有利不利は受取額・払込保険料・他の所得などで変わるため、設計時は税理士等に確認しながら進めると安心です。
最終チェック:課税関係は「保険料負担者」と「給付の性質」
なお、保険金・給付金の課税関係は、「誰が保険料を負担したか」「何のための給付か(死亡・満期・医療など)」で変わります。個別の税金の種類や課税対象の範囲は契約内容により異なるため、契約前に確認しておきましょう。
生命保険加入時から相続税を考える
加入時に決めておきたい3つのポイント
生命保険に加入するタイミングは、今後の生活や相続時の対策について考える機会でもあります。むやみに高額な生命保険金が設定されている保険に入るのではなく、被保険者が亡くなったあとに残される家族の状況を把握する姿勢が大切です。
多くの相続財産を子どもに残すと、相続税など支払うべき税金の負担が大きくなることがあります。保険金にかかる相続税は、非課税枠など控除できる部分を考慮したうえで、保険金額を設定することが重要です。
また、生命保険は「契約者(保険料負担者)」「被保険者」「受取人」の設定によって、課税関係や受け取り方が変わります。加入時点で、目的(生活保障・相続税の備え・事業承継など)に合った設計になっているかを確認しましょう。
遺産分割で役立つ:代償分割と生命保険
生命保険のメリットは、遺産分割の場面で役立つ点にもあります。不動産などは相続人が複数いる場合に分けにくく、資金が不足して調整が難しくなることもあります。
ただ、分けにくいからといって特定の相続人に相続財産が偏ることは避けたいところです。家族間で不満が生まれると、後々のトラブルの原因になるからです。
相続人が複数いるときには「代償分割」という方法を取ることがあり、生命保険は使い方次第で相続を円滑に進める手段になります。たとえば、相続人が2人いるときに、1人が不動産を相続し、もう1人が代償金を受け取る方法です。
代償金を支払う遺産分割の方法を代償分割と呼び、生命保険金を代償金の支払いに充てることもあります。保険金の受取人については、不動産を相続する人や代償金を受け取る人に、あらかじめ指定しておくとよいでしょう。
事業承継で役立つ:受取人指定と資金確保
保険金という形で財産を残すことは、事業承継などにおいても役立ちます。受取人が指定されている死亡保険金は受取人の固有財産となるため、遺産分割協議の対象にはなりません。
ほかの相続人の承諾を必要としないため、会社や事業を引き継ぐ相続人に対して、まとまった資金を残すことができます。
家族で決めておきたいこと:話し合いと遺言
相続を円滑に進めるためには家族間の話し合いが欠かせません。誰がどのように財産を引き継ぐのかを決めておくことが大切です。
単に口約束で取り決めるのではなく、遺言書という形でまとめておくことで、相続にまつわるトラブルを未然に防ぎやすくなります。家族間で話がまとまらない場合には、弁護士などの専門家も交えて話し合うことを検討しましょう。
まとめ
生命保険金は、契約者(保険料負担者)・被保険者・受取人の組み合わせによって、相続税だけでなく所得税や贈与税が問題になることがあります。加入前に課税関係と、非課税枠の適用条件を確認しておくことが重要です。
また、相続対策として生命保険を活用する場合は、非課税枠や基礎控除などを踏まえて保険金額を設計し、必要に応じて代償分割や事業承継の資金確保といった目的にもつなげていくとよいでしょう。
どの程度の保険金があれば家族が安心して暮らせるかを踏まえたうえで、納得のいく生命保険契約を結んでみてください。相続のことが気になり始めたら、早めに動くことで家族が話し合う時間も確保しやすくなります。
相続財産がどれくらいあるのか、どのように遺産分割を行うのかといった点も、よく話し合ってみましょう。
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