相続・事業承継
相続税の注意点

相続税計算の方法を理解する

家族の将来について考えるとき、遺産相続時にどれくらいの相続税がかかるのか気になるかと思います。

相続税の計算は一見、複雑そうに見えるものの自分で計算をすることができます。計算をする際に見落としがちな相続財産や債務などの負の財産をチェックする方法を見ていきましょう。

また、見落としがちな非課税となる財産についてもおさえておくことが大切です。

家族が円満に、相続の問題に取り組むためのポイントを詳しく解説していきます。

順番が大事な相続税の計算

相続税は手順を踏んで計算していくことが大事になります。まず、遺産の総額を調べると同時に、借金などの債務がないかを確認しましょう。

被相続人に債務が残っている場合には、相続財産から控除することができるからです。被相続人の財産は、亡くなった日の時価を基に計算されます。預貯金については亡くなった日の残高を調べれば済みますが、不動産については正しい価値を自分たちで把握するのは難しいものです。

ただ、国税庁が公表している「※路線価(ろせんか)」を使うことで誰でも計算をすることができます。不動産を時価で計算するというのは、すぐに換金をしたときにいくらになるのかを把握するためです。

参照:路線価(国税庁)

不動産鑑定士に依頼すると一筆あたり30万円程度かかってしまうため、今すぐ売却するのでなければ路線価を使って計算していきましょう。

路線価を計算するには、毎年4月~5月にかけて自治体から送付される固定資産税の納税証明書を使います。土地の地積を確認して、共有で保有しているときには持分割合も把握しておきましょう。

不動産の持分が不明なときは、法務局で登記簿謄本を取ることによって知ることができます。持分を把握したら、国税庁のホームページから路線価を調べてみましょう。

1平方メートルあたりの土地単価が表示されているので、所有している土地の面積を掛け合わせることで不動産価値を把握することができます。路線価を使って土地の時価を計算する方法は「相続税評価額」と呼ばれています。

相続財産について考えるときには、被相続人が住んでいた自宅の価値についても把握しておく必要があるのです。「小規模宅地等の特例」という制度があり、330平方メートルまでの物件であれば8割引の金額で評価することが認められています。

特例を受けるためには、配偶者か同居している親族が相続するといった条件が決められているものの、制度を活用することで税制上のメリットを期待できるでしょう。

課税対象となるすべての財産価格を把握したら、相続税の総額を割り出していきます。そして、各相続人がそれぞれどの財産を相続するのかを把握しましょう。

財産分与については、遺言書がある場合とそうでない場合に分けられます。遺言書がある場合にはその内容によって遺産を分割していくものの、法律で定められている遺留分については注意をしておきましょう。

家族間で偏りのある財産分与の内容だと、後々のトラブルを招いてしまう要因になるので、きちんとした話し合いが必要です。相続人の全員が同意をしたときには、遺言書の内容は変更することができます。

そして、遺言書が無いときは相続人全員で話し合って遺産分割協議を行うことになるのです。話し合いによって遺産を分割するものであり、相続人全員が同意するならどのような分け方でも構わないと言えます。

財産の評価が済んで、分け方が決まったら最後に相続税を計算していきましょう。時価で評価をした財産から各種控除を差し引き、各相続人が仮に法定相続分で相続したとみなして財産を振り分けていきます。

そして、相続税率をかけて家族全体の相続税を割り出したうえで、実際に相続した財産の割合に応じて各相続人に相続税を振り分けられます。

見落とし注意な相続財産とは?

相続財産というと預貯金や不動産といったものに目が向いてしまいがちであるものの、実際には遺産として該当するものはたくさんあります。

たとえば、被相続人が配偶者や子ども、孫のために開いた口座などです。名義預金と呼ばれるものであり、贈与の形をとっていなければ税務申告をする必要があるでしょう。

貸金庫や自宅に置いてある金庫の中身もチェックすることが大切です。現金や保険証書、権利書や貴金属などが置かれている場合もあるでしょう。また、友人や知人などに貸し付けているお金がないかも確認することが大切です。

有価証券やゴルフ会員権、骨董品なども専門家に鑑定してもらうなどして、時価を確定させる必要があります。特に税法上はみなし相続財産とされている生命保険金や死亡退職金についても把握しておきましょう。

保険金の請求が遅れてしまうと、税金の支払い時に負担が大きくなってしまう可能性があります。生前に財産価値のあるものについて、家族間で共有しておくことが大切です。

債務も負の遺産!しっかり確認

相続に関係がある財産とは、何も純資産だけとは限りません。借金などの負の遺産も、相続の対象として扱われます。

一般的な債務としては、銀行などの金融機関や消費者金融からの借り入れ、医療費の未払い、税金の未納分などが挙げられるでしょう。まずは債務の総額を把握して、必要に応じて関係機関に連絡をしておく必要があります。

債務の存在を把握していなかったり、把握していてもそのまま放置したりしていると、あとからトラブルを招いてしまう原因となってしまうからです。遺産の合計がマイナスになってしまうときには「相続放棄」といった手段を取ることもできるものの、弁護士など専門家の意見も聞くようにしましょう。

相続放棄は相続開始の事実を知った日から、3カ月以内に家庭裁判所に申し立てを行うことになっています。3カ月を過ぎてしまうと、すべての財産を相続することになるので注意が必要です。

また、相続放棄を行うときには家族にきちんとそのことを知らせておくことが大切です。相続人が相続放棄の手続きを取ったとしても、代襲相続によって別の相続人が新たに生まれてしまう可能性があるからです。

特に債務が多い場合は、ほかの親族にその債務が受け継がれる可能性もあり、あとから事実を知ったときには家族間でギクシャクしてしまうおそれもあります。

相続する財産がプラスかマイナスかわからないときは「限定承認」といった方法も取ることができます。

財産評価を試算して、債務超過に陥っている場合には相続人の固有財産で弁済する責任を負わないというのが限定承認です。

限定承認を行うときも、3カ月以内に家庭裁判所に申し立てを行う必要があります。特に相続人が多いときは、3カ月以内に財産調査を行い、相続の有無を決めるのは時間的な余裕がないこともあるでしょう。負の遺産も含めて、普段から家族間で情報共有しておくことが大切です。

損をしないために非課税財産もチェック

相続財産のなかには、非課税財産として認められているものがあります。主だったものとしては「葬儀費用」「生命保険金・死亡退職金」などが挙げられます。

葬儀費用とは、社会通念上認められる香典や通夜・葬式費用、通夜の飲食代などです。火葬や埋葬、納骨費用、寺院へのお布施なども認められています。

また、生命保険金や死亡退職金は税法上はみなし相続財産とされているものの、一定の非課税枠があります。「500万円×法定相続人の数」で計算されるものであり、法定相続人が3人であれば500万円×3人で1,500万円まで非課税として認められます。

ただ、この範囲を超えるものについては課税対象となるので注意が必要です。

さらに、国や地方公共団体、特定の公益法人などに寄付した財産も非課税財産として認められています。寄付を行ったときに非課税の特例を受けるためには、要件をクリアしておくことが重要です。

寄付した財産が相続や遺贈によって取得したもの、特定の公益を実現するために活動を行っている団体に寄付をすることといった要件が挙げられています。

特例を受けるための手続きとしては、相続税の申告書類に一定の証明書類を提出する必要があるので忘れないようにしましょう。

相続税計算方法を確認しよう

相続税計算を行うには、相続財産から債務や非課税財産分、基礎控除分などを差し引きます。基礎控除については法定相続人の数によって額が異なる点に注意をしておきましょう。

計算式としては「3,000万円+600万円×法定相続人の数」によって求められます。法定相続人が1人のときは3,600万円、2人のときは4,200万円。3人で4,800万円が基礎控除として認められます。法定相続人の数は、たとえ相続放棄をした相続人がいたとしても数に含めます。

相続財産から必要なものを差し引いた残りの金額を財産分与していきましょう。配偶者と子ども1人の場合には、配偶者と子どもで半分ずつ相続する形となります。

配偶者と配偶者の兄妹の場合では、配偶者に4分の3、兄妹に4分の1といった具合です。家族構成によって同じ立場の法定相続人でも相続する金額が異なるので注意をしておきましょう。

配偶者 血族相続人の相続分
父母 兄弟姉妹
1/2 1/2
2/3
1/3
3/4
1/4

そして、各相続人が仮に法定相続分で相続したものとみなして、財産分与された金額に相続税率をかけ合わせます。税率については国税庁のホームページで公表されており、10%~55%となっています。

各相続人の税額を合計したものが家族全体の相続税の合計額となります。これによって、相続財産全体にかかる相続税が把握できます。そして最後に、各相続人が実際に相続した割合に応じて、相続税を振り分けていきます。

たとえば、法定相続人が配偶者と子ども2人の場合には、配偶者が2分の1で子どもが4分の1ずつです。しかし、実際の遺産相続を家族同士の話し合いによって、3分の1ずつ財産分与したとします。

法定相続分にかかる税額と実際に相続した分にかかる税額に差が生まれるため、相続税の計算では段階を踏んで税額を確定させる仕組みをとっています。

配偶者にのみ認められている税制上の優遇措置として「配偶者の税額軽減」といったものがあります。夫婦間の相続では一定額まで相続税を課税しないことが決められており、非課税として認められる金額も1億6,000万円までとなっています。

相続税自体は非課税となるものの、申告は必要だということを忘れないようにしましょう。一見、有利な措置に見えますが子どもの代に相続をするときに、税負担が大きくなってしまうというデメリットもあります。

配偶者の税額軽減によって非課税であっても、配偶者自身が固有の財産も持っているということはあるものです。したがって、子どもが両親の財産を相続するときに多額の相続税を負担する可能性が出てきてしまいます。

また、子どもの代では相続人の数が減ってしまう点も税負担を大きくする要因となるでしょう。たとえば、夫と妻、子どもが2人といった家族構成のとき、夫が亡くなった時点での相続人の数は3人です。

しかし、その後に妻が亡くなると相続人は子ども2人だけになってしまいます。法定相続人の数が減れば、控除が認められる範囲も狭まるため、結果的に相続人1人あたりの税負担が大きくなるのです。

配偶者の税額軽減の方法を取るときには、子どもの代の税負担にも考慮して慎重に行う必要があるでしょう。

生前の話し合いが成功の秘訣

相続をスムーズに進めていくためには、相続財産や債務についてきちんと把握しておくことが重要です。

不動産や預貯金、生命保険金や有価証券などの有無について確認をしておきましょう。また、借金や未払いの医療費、未納している税金の額も確かめておく必要があります。

すべての財産を把握したうえで、誰にどのような分け方をするのかを考えなければなりません。そして、相続税の計算では非課税枠や基礎控除といったものを差し引いて、各相続人が負担する相続税を割り出していきます。

相続税を試算したときに負担が大きいと感じるときには、生命保険に加入したり寄付を行ったりして、純資産を圧縮することもあるでしょう。

遺産相続は相続財産が多かったり、相続人がたくさんいたりする場合には複雑になりやすいものです。したがって、遺言書を公正証書の形で作っておくなど、相続対策が必要となるでしょう。

相続は残された遺族のためにあるという性質を持っているものの、家族間で不満が生まれてしまっては後々のトラブルを生み出してしまう要因にもなります。

また、きちんと伝えるべきことを伝えていなければ、思いがけない債務に苦しめられたり、相続税の負担に悩んでしまったりするでしょう。

相続時のトラブルをできるだけ回避するためには、早めに相続対策を行っておくことが大切です。生前に家族と財産分与について十分話し合っておくなどして、相続が円満に進むように心がけてみましょう。

最適な法人保険を無料でご提案。
保険のプロの無料相談をご活用下さい。

当サイトでは、法人保険を扱う保険代理店と提携し、お忙しい経営者の方に向けて、法人保険の資料送付や、財務状況に合った最適な保険商品のご提案を無料で行っております。

  • 法人向けの損害保険に加入したい
  • 決算対策として最適な法人保険を検討したい
  • 経営リスク・事業継承に備えたい
  • 退職金を準備したい

忙しくて自分で法人保険をチェックする暇がない、どんな保険があるのか調べるのが面倒。そういった経営者の方に向け、法人保険や税の専門知識をもつ保険のプロが、本当に最適な保険を選ぶための力になります。

経営者の皆様の目的に合わせて、ニーズにあった最適な選択肢をご提案いたします。お問い合わせは無料ですので、ぜひご活用ください。

WEB問い合わせ(無料)

※無料相談サービスは、法人保険を取り扱う保険代理店と提携して運営しております。

無料相談サービス 利用規約

当サイトの記事は生命保険・損害保険に関する情報提供を目的としており、保険契約の勧誘を行うために作成したものではございません。実際に各種保険にご加入されるにあたっては、「契約概要」「注意喚起情報」「ご契約のしおり」「約款」などを必ずご自身でご確認ください。また法人向け定期保険等は、被保険者に万が一のことがあった場合に、保険金を事業保障資金等の財源としてご活用いただくための「死亡保障」等を念頭に置いた保険商品であるため、当サイトでは「払込保険料の損金算入による法人税額等の圧縮」および「短期間での中途解約」のみを目的とする加入等、保険本来の趣旨を逸脱するような加入を推奨しておりません。当サイトで紹介している情報は、私たちが信頼できると判断した情報を基にしておりますが、その情報が確実であることを保証するものではございません。また掲載されている情報は2018年12月以前の情報を基にしているため、現在の事実と相違している可能性がございます。当サイトの記載内容に関するご質問・ご照会等には一切お答え致しかねますので予めご理解をお願い致します。また当サイトで記載している内容につきましては、予告なしに変更する場合がございます。

フッターバナー