2019年6月28日に法人税基本通達が改正され、法人向け医療保険の短期払込契約は契約日が10月8日以降となる契約から全額損金扱いできる上限が年間30万円以下※1となります。
- ※短期払込契約とは、解約返戻金がないか著しく少額であり、かつ、保険料払込期間が保険期間より短い保険契約を指します。
- ※詳細については国税庁のホームページをご確認ください。
- ※1 被保険者あたりの上限になります。
法人向けの医療保険は、経営者の万が一の病気・ケガによるリスクに備えるため、または従業員の福利厚生の保険として活用されています。
商品によっては保険料が全額損金となることから副次的に税金対策としても活用されていましたが、2019年6月28日に法人税基本通達が改正され、法人保険としての医療保険の短期払込契約は契約日が10月8日以降となる契約から全額損金扱いができなくなりました。
ここでは法人保険の中でも医療保険を検討している経営者に向けて、
- 医療保険の基本的な特徴
- 法人向け医療保険の損金算入
- 社長・従業員向けの法人保険の活用方法
を解説していきます。
法人保険としての医療保険はどういうもの?
法人向けの医療保険に加入しようと考えている経営者の方。
保険というと自分が加入する時でさえよく分からないのに、法人保険なんてもっとわからない…という方もいらっしゃるでしょう。
そこで、まずは法人向けの医療保険について、基本的な特徴を説明していきます。
法人向けの医療保険とは、法人が契約者となり、社長や会社役員、従業員を被保険者とする医療保険です。
具体的な保障内容は、入院費や手術費といった治療にかかる費用を給付金という形で一定の範囲内で負担するものになります。
一般的なものとして、1日の入院で1万円の入院給付金の支給、手術は入院給付金の何倍、というように設定するものが挙げられます。法人保険とは言うものの、個人向けの医療保険とほとんど同じイメージです。
なお、保障内容は、保険会社によって付帯されるサービスが異なる場合があります。
たとえば、入院後に通院をした場合に支給される「通院給付金」があったり、医療の専門分野で活躍する名医の意見が聞ける「セカンドオピニオンサービス」が利用できたりします。
このようなサービスについては、自分や従業員のニーズに合わせて選ぶと良いでしょう。
法人が医療保険に入るメリット
先ほどの説明を読むと、法人保険としての医療保険は個人向けの医療保険とほとんど変わらないのではないか?と思った方もいらっしゃるかもしれません。
では、法人が医療保険に加入するメリットはどこにあるのでしょうか?
法人向け医療保険の特徴について、大きく以下の3つに分けて、説明していきます。
- 保険料を損金に算入できる
- あとから社長個人に名義変更できる
- 従業員の福利厚生として利用できる
保険料を損金に算入できる
まず、法人保険としての医療保険では、保険料を損金として算入できることが特徴として挙げられます。
法人保険の保険料を損金として計上すると、会社の利益が圧縮されます。会社の利益が減ると、法人税の課税対象となる金額が減ることになるので、企業が支払う税金を抑えることができるのです。
ただし、払い込む保険料のうちいくら分を損金として計上することができるのかは、保険商品によって違います。
法人向けの医療保険は、今までは保険料の全額を損金として算入することが可能でした。
しかし、2019年6月28日に法人税基本通達が改正され、法人向け医療保険の短期払込契約は契約日が10月8日以降となる契約から、全額損金扱いできる上限が一被保険者あたり年間30万円以下となりました。
このように、法人向け医療保険の保険料を損金に算入させることは可能ですが、金額に一定の制限が設けられています。
法人保険の節税メリットを狙って加入する際には、損金としていくら算入することができるのか、保険代理店のスタッフや税理士としっかり相談した上で検討することをおすすめします。
社長個人に名義変更できる
法人保険としての医療保険では、将来的に社長個人に名義変更ができる点も特徴。
意外と知られていないことですが、法人向けの医療保険であっても、保険契約者を個人に変更することができるのです。
保険料の払込期間を5年~10年ほどで短く設定し、法人が保険料をすべて払い込んだあとに医療保険の名義を社長に変更すれば、社長個人は保険料を払うことなく一生涯の保障を手に入れることができる可能性があります。
ただし、医療保険を法人から個人に譲渡する際には、その時点の解約返戻金相当額で個人が法人から保険を買い取ることになる点に注意。
とは言うものの、医療保険の解約返戻金は一般的には入院日額の10倍ほどなので、10万~50万円程度のケースが多いです。自分で保険料を支払い続けるよりもずっと安い金額で、終身保障を得ることが可能になります。
従業員の福利厚生に利用できる
法人保険としての医療保険は、従業員を被保険者とすることで、社員のための福利厚生として活用することができます。
ただし、法人保険を従業員の福利厚生として利用するためには、注意点があります。
従業員全員を加入対象にする
まず挙げられるのが、全従業員を加入対象とすると。
福利厚生を充実させる目的の1つは、従業員の働く意欲を向上させることです。そのため、特定の従業員しか利用できない場合、対象から外れた従業員は不信感を抱いてしまうでしょう。
このような不信感は、従業員の生産性を低下させる原因となります。社員を対象とした法人保険に加入する場合には、基本的に全従業員が加入・非加入を選択できるものにしましょう。
福利厚生規定を作成する
次に「福利厚生規定」の作成す。
福利厚生規定は、税務調査が入ったときに福利厚生の証拠として証明する為に必要な書類です また、従業員に保障内容と導入の目的を知らせる役割も持っているので、従業員に福利厚生制度を確実に利用してもらうためにも、作成しなくてはなりません。
さらに、福利厚生規定は税金対策の面でも重要です。
実は、福利厚生規定を作らなければ、医療保険の保険料を福利厚生費として損金に算入することが認められないことがありますそのため、福利厚生規定は必ず作成するようにしましょう。
また、福利厚生規定を作成しておけば、会社が給付金の受取人で、保険会社から受け取った給付金を従業員に「見舞金」として支払った場合に、社会通念上相当な金額であれば福利厚生費として損金に算入できます。
法人保険に加入する際の注意点
法人保険としての医療保険に加入する際には、注意点もあります。
具体的には、下記の2点が挙げられます。
- 法人が受け取る保険金は、課税対象になる
- 社長や役員・従業員に支払う給付金は、給与扱いになる
法人保険の給付金(保険金)は課税対象
まず挙げられるのが、法人が受け取る保険金は雑所得扱いになるいうことです。
個人で医療保険に加入した場合は、給付金は非課税になります。
しかし、保険金の受取人を法人に設定した法人保険の場合は、保険金を収益として利用する可能性も少なくありません。
そのため、法人契約の場合、受け取った保険金を雑所得として益金計上する必要があるです。
したがって、法人保険の保険金を受け取った際には企業が支払う税金が増えることになるので、何かしらの対策が必要です。
会社が社長・従業員に支払う給付金は給与扱い
法人が保険金(給付金)を受け取り、社長や役員・従業員に給付金を支払った場合には、支払ったお金が給与扱いになるースがあります。
一般的に、会社が社長や役員従業員に対して支払う見舞金は、福利厚生費として経費の扱いになります。
しかし、社会通念上の範囲を超えた金額の場合は「給与」とみなされることがあるです。
もし給与扱いになった場合、受け取った従業員は所得税や住民税が課税されます。また、役員に対して支払った見舞金が給与(役員報酬)として扱われた場合には、損金に算入することはできない上に、役員個人にも所得税がかかる結果に。
社長や役員、従業員に渡すことができる給付金の金額は、おおむね5万円程度が社会通念上の範囲されていますが、必ずしもその限りではありません。
そのため、心配な方は税理士など税金のプロフェッショナルに相談するのも1つの手です。
見舞金を福利厚生費として損金に計上したいからといって、仮に数百万円単位の金額を給付すると給与扱いとなり課税の対象になる可能性があるので、支給する額に注意しましょう。
効果的な活用法は「経営者の保障」と「従業員の福利厚生」
ここからは、法人保険としての医療保険を活用する方法について説明します。
法人向けの医療保険は、主に2つの活用方法があります。
- 経営者の万が一の場合の負担カバー
- 従業員の福利厚生
経営者の万が一のときに
法人保険としての医療保険は、経営者の万が一のリスクに備えるため利用することができます。入院や手術による医療費を、法人保険でカバーするという活用方法です。
経営者に万が一のことがあった場合、さまざまな場所で金銭的負担を余儀なくされる可能性があります。特に中小企業や家族経営の企業では、社長が倒れてしまうと事業が立ち行かなくなり、会社の利益が減少することも考えられます
このような事態に備えて、経営者が病気で入院したときに給付金が出るようにしておくと、もしものことがあっても対応が可能です。
新しい会社や経営者の影響力が非常に強い法人は、法人保険の加入は必須と言えるかもしれません。
従業員の福利厚生
法人保険は、従業員の福利厚生しても活用できます。福利厚生を充実させることで、従業員の働く意欲を向上させることができるでしょう。
最近では、福利厚生が充実した会社で働きたいという人も多く見られます。法人保険で福利厚生を充実させ社員に働きやすい環境を提供することは、職場の定着率を上げることにも繋がるでしょう。
法人向け医療保険の検討はお早めに!
今回は法人保険としての医療保険について基本的な情報や活用法について説明してきましたが、いかがだったでしょうか?
法人向けの医療保険は、経営者の万が一の際に備えること、従業員の福利厚生を充実させること、そして保険料の損金算入による副次的な節税効果という3つのメリットあります。
どのメリットも、会社にとっては非常に役立つものです。特に、従業員の福利厚生の面は最近注目されているところでもあります。
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